銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しい この世界の小さな驚異

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  • 朝日出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255011677

作品紹介・あらすじ

大森望さん推薦!
「明晰でわかりやすく、面白くて叙情的。
科学と詩情。
ここにはSF100冊分のネタが詰まっている。」


一日の長さは一年に0.000 017秒ずつ伸びている。
500億年のちは、一日の長さは今の一月ほどになるだろう――

空想よりも現実の世界のほうがずっと不思議だ、と感じるような、
物理学者のとっておきのお話を22、集めました。

・流れ星はどこから来る?
・宇宙の中心にすまうブラックホール
・真空の発見
・じゃんけん必勝法と民主主義の数理
・世論を決めるのは17%の少数者?
・忘れられた夢を見る技術
・反乱を起こす奴隷アリ
・銀河を渡る蝶
・飛び方を忘れた鳥にそれを教える…

真夜中の科学講座のはじまり、はじまり。

ほんのひととき、日常を忘れて、科学世界の詩情に触れてみませんか?
科学や文学が好きな人へのプレゼントにもぜひ。

「夜話と名乗ってはいるが、朝の通勤電車で、昼休みのひとときに、ゆうべの徒然の時間に、順序にこだわらず一編ずつ楽しんでいただければと思う。」――著者

感想・レビュー・書評

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  • 面白く、そしてわかりやすい科学エッセイ。
    科学の理論や研究の解釈というような小難しいものではなく、じんわりと感情に染み込むような繊細で美しい物語を読んだなぁという感覚になった。その一因となるのは、魅力的な挿画や図版が数多く掲載されていることだろう。そのなんともいえない古美術的な灰暗さにうっとりする。
    さらには各編扉には、吉田一穂の詩さえ載っているのだ。

     自我系の暗礁めぐる銀河の魚。
     コペルニカス以前の泥の拡がり……
     睡眠の内側で泥炭層が燃え始める。
           吉田一穂「泥」

    内容は理論物理学者か語る「天空」「原子」「数理社会」「倫理」「生命」の5つの章。どれも筆者の語り口が柔らかく、しっとりとした趣で描かれている。

    科学は人間とか世界とか、そういうものの根源に触れようとするのだろう。不思議で美しい。だからどうしても人は追究したくなるのだけれど、その先に広がる未来が幸せなことだけだとは限らない。
    チェコのヨアヒムスタール銀鉱に産するボヘミア装飾ガラスの緑色の原料、ウラニウム元素。美しい緑色ガラスの奥の極微世界に魔力が宿る。
    アンリ・ベクレルによる1896年のウラニウム放射能の発見が源流となり、放射能と原子核物理学の探求が欧州の各地で始まる。やがてウラニウム核兵器開発となって、広島に原爆が投下された。その凄惨な事実を忘れてはいけない。

    面白かったのは「パラレルワールド」「ディストピア」などのSF世界へと通じていくような話。
    たとえば、プリンストン大学の大学院生ヒュー・エヴェレットが発表した論文。
    「量子力学の多世界解釈」
    二つの可能性の重ね合わせの状態にあった一つの世界が、観測にかけられた途端に二つに分岐して、われわれはどちらかの世界に投げ出される。別のそっくりな世界には別のわれわれがいて、そこではこちらと相反する事象の生起を見届けている。重ね合わせ状態の選択肢は、二つとは限らないし、観測を行うのは特定の一人の観測者とは限らない。そうであれば世界が進行するに際しては、その無数の各瞬間に、いくつもの多世界への分岐があることになる。

    「思い出せない夢の倫理学」では、情報技術の社会への浸透で、本人の気づかぬうちに、個人の内面が容赦なく晒され、データとして、誰かのコンピューターに蓄積されていく。

    他にも、
    地球と月を結ぶ定期航路の天然の中継「ファースト・ラグランジュ・ホテル」
    「多数決による集団決定意思」
    「反乱を起こす奴隷アリ」
    などなど興味深いワードがたくさん登場する。

    “ここにはSF100冊分のネタが詰まっている。”
    帯に書かれた大森望さんの言葉は、全然大袈裟なことではなかった。

    • ハイジさん
      こんにちは!
      こちらとても読みたい本で、私の中で順番待ちしております♪
      地球っこさんのレビュー読んでますます気持ちが盛り上がってしまいました...
      こんにちは!
      こちらとても読みたい本で、私の中で順番待ちしております♪
      地球っこさんのレビュー読んでますます気持ちが盛り上がってしまいました(笑)
      科学と人のハートが融合されて暖かな感じが伝わってきます!
      とても楽しみです‼︎
      2020/05/04
    • 地球っこさん
      ハイジさん、こんばんは!
      ぜひぜひ、お手にとってくださいね。
      まずわたしは表紙に一目惚れでした。
      科学系がお得意な方には、知ってること...
      ハイジさん、こんばんは!
      ぜひぜひ、お手にとってくださいね。
      まずわたしは表紙に一目惚れでした。
      科学系がお得意な方には、知ってることばかりになると思いますが、
      わたしのような科学苦手なのに好きなんたよなぁって感じのものには、
      とても楽しく読めました。

      なんとも、哲学的というか詩情的というか、本当に星空のしたで読んでみたくなる本でした(*^^*)
      2020/05/04

  • 帯には「明晰でわかりやすく、面白くて叙情的」ここにはSF100冊分のネタが詰まっている…とある
    確かブクログのランキングで見つけ、即読みたいとピピっ!ときた本
    装丁はもちろん、挿絵も美しい
    美しいというのか、控えめできらりとセンスが光る
    海外の何を売っているのかよくわからないけど、入っただけでテンションが上がってしまうお店…みたいなイメージの本だ(科学って美しいって思うことがよくあるので自分の中のイメージには違和感はないのだが、一般的には意外性が魅力となっている本であろう)

    はじめに…の冒頭が以下である
    「科学に触れず現代を生きるのは、まるで豊穣な海に面した港町を旅して、魚を食べずに帰るようなものである。科学はしかし秘密の花園である。……通りすがりに簡単に魅力を明かさない。花園の壁に窓をつけることは、それゆえわれわれ科学の責務であろう。」
    キザっちゃキザなんだけど、らしくないシャレた感じがなかなか

    天空編、原子編、生命編…などに分かれておりまるで「火の鳥」みたいにワクワクする
    その各編ごとには素敵な詩がそっと添えられている
    各編4〜5個ずつの科学エッセイ的かつ完結する内容
    お風呂あがりにぼーっと読んでも良し、内容はもちろん本格的(失礼)な科学であるので、しっかり調べながら学ぶこともできる
    個人的にはいつもの如く「へーへー」のオンパレードで楽しめた
    科学が得意でなくても、読み物としてわかりやすく楽しめる上、幅広い分野の確認や、知識を増やすきっかけにもなる
    また理系の内容という箱に入れないよう気を使っておられるのか(そんなふうに感じた)、歴史や文学も融合されているので、幅広い方に楽しめる気がする

    例を挙げてみると…こんな感じ↓
    ■天空編 「海辺の永遠」
    〜1日の長さは1年に0.00017秒ずつ伸びている
    月が毎日満ち潮、引き潮を引き起こすとき、海水と海底との間の摩擦が、地球の回転をごく微弱に減速させるからである〜
    …と、ここまでは科学的な事実
    これにより、500億年ののち。1日の長さは今の45日ほどになる!が、もちろんそんな遠い未来よりはるか以前に太陽が終息するであろう
    このことからわれわれの世界には永劫の回帰は存在しないようだ
    これにニーチェの「永劫回帰」の解説もあってなかなか文学的な奥深さもある
    最後は
    〜生誕、成長、生殖、死の限りないサイクルの一瞬一瞬、生命の意識のあらゆる瞬間にこそ、永遠は宿るに違いない〜
    と叙情的に締められている
    と言った感じだ


    他にも興味深いトピックスがたくさんある

    ■宇宙の中心はどこであろうか
    ブラックホールや天の川銀河系の神秘


    ■付和雷同の社会学
    自らの判断がつきにくいことに、多数の他者の意見を参考にして決める習性…について書かれている
    これがまさに、ネット社会の暴走の恐怖


    ■多数決に秘められた力
    世論力学というものがあるらしい
    ここでは民主主義の多数決選挙について
    きちんと自分の意見を持つ「固定票タイプ」と、他人の意見を参考にする「浮動票タイプ」
    それぞれの比率がどのくらいになると、全員が賛成派になる…という面白い研究
    人は流されやすいのだ そっちのが楽なのだ 
    こんな浮動票をうまく使用し、それを権力者が操っている世の中だよなぁ
    意見を持つことの大切さを各自が自覚すべし!

    ■言葉による認知の影響
    フィンランドの労災事故の統計
    フィン語話者とスウェーデン語話者で圧倒的に異なる
    それはなんと言語の系統によるもの
    異なった言語を知ることは、異なった世界の見え方を会得できる

    ■トロッコ問題の倫理性 
    有名な、壊れた暴走するトロッコの二手に分かれたレバーの前にいるあなた
    さてどちらを救うか…ってやつですね
    人々の倫理哲学は、西洋、東洋、南洋で傾向が似通ったり、国により異なったりする
    例)東洋の特徴
    救える人命の数を重視、合法的な行動をとる人を優先的に救う、老人が尊重され、男女を等しく考える
    各国の特徴もあって興味深い


    ■革命や反乱を起こすアリの世界
    これはアリを見る目が変わる(笑)
    精緻に組織され、個体が協力し集団で狩猟を行う(われわれと大差ない)
    農業も行う(キノコを栽培する!)、戦闘係はもちろん、検査技師までおり、職能はカースト制
    他にもアリの祖先は蜂である、奴隷反乱がある…等
    (何となくアリ凄さは知っているつもりであったが…)驚きの生態が明らかに!面白い


    …と興味深いネタが盛りだくさん
    とりあえずゆるゆると楽しんだので、次はしっかり知識として再読したい
    何回読んでも楽しめそうだ♪

  • われわれが生きるのはただ発見するがためであり、
    他のすべては一種の待機である。
     ーハリル・ジブラン(オスマン帝国時代末期のレバノン出身の詩人、画家、彫刻家)

    明けましておめでとうございます。
    今年も本を通しての交流、新たな本を教えていただきたいです。
    みなさま今年もよろしくお願いします。

    令和三年、2021年読書初めは科学者の科学エッセイ。
    冒頭の著者の言葉「科学に触れず現代を生きるのは、まるで豊穣な海に面した港町を旅して、魚を食べずに帰るようなものである」から始まる。
    私には理論的なところは理解できず(+_+)ではあるが、芸術と科学が交差し、倫理とデータが重なるという目線と静かだが力強い言葉で語る科学の面白さと壮大さは十分に味わった。

    ー永遠とは?
    死と静止とが永遠ではない。
    潮の満ち引き、昼夜の交代、月の満ち欠け、絶えずめぐり繰り返すもの、周回して永劫に回帰する運動の中にこそ、永遠が見える。
    しかしその潮の満ち引き、一日の時間や一年の日数さえ長い長い年月で変化している。
    それなら世界があることを確証するには、それを認知する意識を持つものが必要だ。
    永劫回帰、永遠を予感させるには、生まれてから死ぬまでの日々を繰り返し、世界に意味を与えて人の世を動かす生命の意思があるからこそだろう。

    ー流星群がもたらした生命
    地球の重力に囚われた流星は、大気圏で燃え尽きることが多いが、大きすぎて隕石として落ちてくることもある。
    6600万年前に堕ちてきた巨大流星は巨大地震と津波と噴煙を巻き起こして、その時代の生命であった恐竜をほぼ絶滅させ、その後の哺乳類の世界となった。
    だが流星は破壊と生態系交代だけでなく、生命そのものを運んでくるという学説もある。
    水や有機物を含んだ彗星が地球と衝突したとこで、地球に生命体をもたらしたというのだ。
    彗星には、太陽系の果までゆき一周をかくのに数千年かかるものもある。まさに宇宙の使者のようなものなのだ。

    ー芸術と現実世界
    芸術が現実世界を模倣するのか、現実が芸術を模倣しているのか。
    オーソン・ウェルズはウラニウムによる核兵器と、それによる戦争被害を超えて世界規模での政府と平和の樹立を書いている。だがその後にできたウラニウム核兵器は戦争に使われることまでは小説をたどっているが、その後の平和は訪れる様子もない。

    ー分岐して無限に広がる
    電子機器から原子力発電までに使われる量子学だが、「不定であった粒子の方向が、観測した瞬間にでたらめに決まる」という道理の通らない原理を持っている。
    選択肢は増え続けて平行世界を作ってゆき、分岐して増殖してゆく。
    これも科学者の理論の前に文芸作品が出ている。
    ボルヘスの「八岐の園(枝分かれする小径の庭園)」。八岐の園とは一つの本で一つの庭で一つの迷宮。時間とは均一で絶対的なものではなく、増殖し分岐し交錯する無限の編目であるとしている。
    無限に広がった平行世界であっても、どこでも出会うべき必然を感じることもある。

    ー多数決を動かす数
    多数決においては、固定派と流動派がある。
    この固定派が17%いれば周りに影響を与えて最終的な多数を占めることになる。
    ものごとに通じたものが17%いるか、流言飛語に惑されるものが17%いるかで社会決定は全く変わる。

    ー言語と思考
    言語で示すことにより、しっかりと心に浮かべることができる。言葉の構造が人の認知に直接的影響を持つのだ。
    日本語やマヤ語には助数詞(一台、一本、一匹)があるが英語にはない。
    英語にはものを表す名詞が形の情報を含むが、マヤ語はそれを含まない。
    フィン語は名詞には時間序列が曖昧になっている、スウェーデン語は日常会話でも事象の時間関係が明確になっている。
    異なった言語により思考も全く変わる。
    そして同一言語であっても、社会階層によってはまた変わる。言語の違いは認知機能の違いにも繋がっている。

    ートロッコ問題から見る世界の優先順位
    「トロッコ問題」は、このまま5人を死なせるか、自分が介入して1人を死なせるかの選択だが、そこに彼らの年齢、立場、性別などが含まれたら人はなにを一番助けようとするのか。
    この先の社会であれば、切替器を操作するのはAIとなる。それならどのようにプログラムしておくべきなのだろうか。
    そこで全世界でのアンケートを取ったところ、地球上の地域ごとにおける倫理の違いが見えるようになった。
    その結果全世界の傾向は、欧州と北米の「西洋」、巨億等と南アジアと東南アジアの「東洋」、南米の「南洋」に分かれるものだった。
    「東洋」は救える人数を重視せず、合法的な人たちを優先する老人を尊重し、男女は区別しない。
    「南洋」は、社会的地位の高い人、若者と女性、そして健康な人が尊重される。人数や合法かどうかは重視されない。
    「西洋」は、特に何を重視すると言うよりもバランスよく考える傾向がある。自体への介入を避けて、なりゆきを尊重する。
    しかし地理的な所属から離れる国もある。フランスやチェコ、ハンガリーは西洋ではなく「南洋」の傾向、ベトナム、バングラディッシュ、スリランカ、そしてブラジルは南洋や東海で把握て「西洋」だった。
    この傾向は法整備にも使えるのではないか。
    しかしデータの本当の活用は、どのようにして未来を良いものにできるのか、ということだろう。

    ー学んだのだから
    渡りを忘れた絶滅種の渡り鳥を保護する動物学者と、グライダーで先導するパイロットがいる。
     人間は鳥から飛行を学んだのだから、飛べなくなった鳥に飛行を教えるのは我々の義務ナノではないかと感じたんです。
    古代アメリカの伝説によると、太陽が毎朝登ってくるためには、人間の気高い行いの奉納が必要なのだという。小さな恩返しの繰り返しが地球が回り続け生物の世を継続させているのかもしれない。

  • 8ページ程の科学ものエッセイが22編。
    寝る前に1編づつ読めば、ひと月弱楽しめます。
    なんですが、図書館で借りて予約待ちの人がいるのでチョット急いで2週間で読みました。

    最近読み終わった「脳はすこぶる快楽主義」に出てきたじゃんけんで勝つ方法の話題がここでも出てきた。
    グー、チョキ、パーを出す確率と負けた時に次にどれを出す確率が高いかというデータに基づいている。

    本書は、今年発行と新しいためか、人工知能の話題もあって楽しめた。

    有名なトロッコ問題で、「あなたならどうする?」ではなく「自動運転のAIにどう判断させる?」という問いかけをしている。
    老若男女の誰を大事だと思っているか、人数の大小をどれだけ優先するか、国ごとの文化風土で違いが出る。
    10人のじいさんを助けるか、若い女性と赤ちゃんの2人を助けるか、どちらかを選ばねばならない問題だ。
    自動運転のAIでは、このような突発的な非常事態をどのように回避するかを実装しなくてはならず、対応方法の正解はない。
    結局は国によって判断を変える、ということを考慮して自動運転車の開発を進めることになる。
    実際はそこにこだわるまで開発が進んではいないでしょうけど。

    ヒトの脳には10億のニューロンがあるらしいが、アリの脳のニューロンは人の1000分の1しかない。
    とは言え、100万ものニューロンがあるとは意外と多いと思う。
    現在の人工知能はまだ数万だそうだから、アリに追いつくのもまだまだ先だ。
    アリって凄い頭脳を持っているのだ。

    理系の人には少し物足りないかもしれませんが、気軽に気楽に科学のおもしろさに触れることができるいい本だと思います。

  • 現代科学のさまざまな分野の成果を紹介する、科学エッセイ。
    テーマは、天空編、原子編、数理社会編、倫理編、生命編の5つ。

    夜話とあるように、ちょっとした時間に1編ずつ読めるような構成。
    ひとつひとつは短めで、広く浅く、さくさく読める。

    数理社会編がおもしろかった。
    実体験として共感できる現象が、感覚的なものではなく、確率論など科学的に分析されてていくのが、たのしかった。

    科学的学問的というより、抒情的な紹介もあった。

  • 全22編の科学のいろんな話題に関するエッセイ。内容も1編あたりが短く10分くらいで読める。まとめて一気読みしたけれど、少しずつ読んでいくのがいいかもしれません。


    自由を求める奴隷アリ。トロッコ問題の着地点の文化による違い。真空や放射線など、”目に見えない物”を発見した歴史。パラレルワールドの理論の確立と嘲笑された過去。誤解しやすい確率。オスマン世界の傭兵の育成制度。
    平易な言葉で語られるけど、知らない話ばかりがわかりやすく説明されていて、どれも面白かった。詩的で、挿絵もきれいで、紙の本を本棚に置いておきたくなる一冊。図書館で借りた本だけど、買って時々読み返します。

  • 物理学者による、科学エッセイ22編。
    題材の選定から、タイトルや装丁を含めて、マーケティングの勝利だなぁと思いました。
    解説本かストーリーものになりがちな科学の分野において、「美しさ」を前面に出して、読んだ先にある理解や感動と言うよりも、読む時間そのものの価値を高めてくれる本という印象。
    ある意味、暖炉のある山荘で、スコッチでも飲みながら読むような贅沢な時間だと「錯覚」できるような不思議な本です。実際には、自分は都会の狭い自宅にいて、お供は缶ビールだったりするのですが(笑

    このジャンル、もっと花開いたら面白いですね。
    ちなみに、個人的には序盤は少々読みづらかったので、後ろの「生命編」あたりから読むと良いのではと思いました。

    総論としては以上で、あとは細かいツッコミです。
    まず、通常挿絵の脇に何らかの解説がついているものですが、本著は無いものの方が多いくらい。概ね文脈で理解できるものの、一部は「わざわざこの絵を入れる理由は何?」となるものも。
    (例えば、ラグランジュ点の末尾についている"North American Hotel"のブローシャ-らしきもの(関係ないですが、これってスティーブン・フォスターが亡くなったホテル?))
    個人的には「まぁ理解しなくて良いから気楽に読んで」だと解釈しましたが、ちょっとモヤモヤする人もいるかも。
    あと、意図的に漢字を多くしているようにも思える文章はちょっと読みづらいです。「在る」「何処」「亘って」等々、コレを漢字で書いても偏差値は上がらないと思うのですが、マーケティング上の理由でしょうか。

    続巻はもちろん期待したいところですが、このジャンルに色々な著者が参加してくると、もっと面白くなりそうです。

  • 大宇宙から原子世界まで、人間社会からアリの社会まで縦横無尽、馴染み深い話から全く聞いたことのない意外な話まで、どれも親しみやすい、それでいて明晰な文体で懇切に語られる。多数決の数理を扱ったいくつかの章が特に興味深かった。美しい装丁もグッド。

  • 物理学者による科学エッセイ。科学エッセイというジャンルがあることを知らなかった私は、そもそも高校で物理を選択しておらず、理科も数学も苦手であった。そんな私でも現代に生きていることが、まだ解明していない謎が世界にあることがうれしくなってくる、読んでいてわくわくする本だった。著者の科学へのときめきが伝染してくる、とても詩的な文章

    あと装丁が上品ですごくすき

  • 難しくてわからないお話もあってけれど、
    天体の話や生命の話などは興味深く、とても勉強になった。
    とにかく短く構成された章がいい。
    はじめに書かれているが、わかりやすく、楽しめるよう伝えようという意思が成功している。

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著者プロフィール

京都生まれの東京育ち、米国ワシントンが第三の故郷。東京大学理学部物理学科卒、東京大学理学系大学院物理学専攻博士課程修了、博士論文は原子核反応の微視的理論についての研究。専攻は量子力学、数理物理学、社会物理学。量子グラフ理論本舗/新奇量子ホロノミ理論本家。ジョージア大、メリランド大、法政大等を経て、現在高知工科大学理論物理学教授。著書に『エキゾティックな量子――不可思議だけど意外に近しい量子のお話』(東京大学出版会)などがある。

「2023年 『渡り鳥たちが語る科学夜話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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