終わりなき対話 やさしさを教えてほしい

  • 朝日出版社 (2025年4月15日発売)
4.33
  • (3)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 135
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784255013985

作品紹介・あらすじ

1980年10月、谷川俊太郎氏の仕事部屋で中島みゆきとの対話は行われ、1981年9月、『やさしさを教えてほしい』(朝日出版社)として刊行され、話題を呼ぶ。
42年後の2022年7月、新『やさしさを教えてほしい』企画のために二人の新たなる対話が谷川俊太郎氏の仕事部屋で行われた。
本書は、45年前の対話と最新の対話、及びこれまで二人が随筆で描いた「中島みゆきが描く谷川俊太郎」「谷川俊太郎が描く中島みゆき」を収めた、二人の詩人の精神のリレーの全記録。
また、二人の詩の世界が交互に、のびやかに展開される24編の詩を収録。

装画:黒田征太郎

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「うそ」と「ほんと」をキーワードに中島みゆきの在り方にせまった谷川俊太郎の一文が読めただけでも大収穫だった。シリアスな歌手の中島みゆきと明るく破天荒なDJやMCの中島みゆきを、どちらがうそでどちらがほんとと論じても仕方がない。「うそとほんとが分かちがたく溶け合っている心とからだの一番奥深いところ、歌はそこに根を下ろしている。」「中島みゆき自身が大好きな「私」を、ひとつの限定された役割の中に閉じこめまいとしている努力の現れと見ることもできる。」と。◆そこで引かれる、うそのなかにほんとをさがせ、ほんとのなかにうそをさがせ、という谷川俊太郎の詩もせまってくる◆1980年と2022年のふたりの対話、お互いのことをつづったエッセイ、谷川俊太郎の詩と中島みゆきの歌詞のいくつか、お互いに33個ずつの質問をぶつけたものがおさめられた一冊。

  • この二人、三百年後に再会している気がする!魂同士だとしても、形ある者だとしても…。

  • 昨年亡くなった日本随一の詩人、谷川俊太郎と北海道の産んだ稀代の歌姫、中島みゆきの対話集。どちらも好きだったので即買い。42年の時を経ての対談という座組にビックリ。それぞれへの一問一答も面白かった。
    「茄子の呪いあげ」ってなんだろう?

  •  貴重な、一冊。
     1980年10月、谷川俊太郎氏の仕事部屋での対話と、42年後の2022年7月、の新たなる対話。このふたつを読み較べるだけでも価値がある。どこか噛みあわないところもあった40年前。時を経て、それが、どうなるか。

     魂の存在について、信じられるとする中島みゆきに対し、当時、谷川は「非科学的な人」とばっさり。詩人にしては意外な印象を受けた。
     が、40年経った対談では、「今は、ぼくも完全に魂があると思ってるわけ」と谷川は語る。「それが一番大きな変化でしたね」とも。
     これは、その過ごした時間が、どの年代での40年間だったかの違いもあるか。最晩年の谷川の死生観でもあるだろう。

     一方、中島みゆきのほうは、自分を曝け出さない、どこか相手をけむに巻くような会話が、相変わらずという印象も受けた。
    「あたし、あんまり許容範囲が広くないんだろうな」と言っていた40年前と違って、なにか新たに受け容れた価値観はあったのだろうか。それはまた、彼女の最晩年に、作品の詞となって現れるのかもしれない。

     そんな時をまたぐ対話の挟んで、互いが互いについて語った文章や、詩人としての両者の作品が交互に並ぶ章は読み甲斐もあって楽しめる。メロディに乗っている詞、というかメロディの制約を受けている詞より、純粋に詩のほうが、つまり、谷川の作品のほうが、やはり、いいと感じるのはやむ無しだろうな。

     概して、谷川が中島みゆきを解析していく文章が読み応えがある。自分を隠そうとする中島の本性を見抜いてか、その表面的な人物像と、心の中の本性との差を、「うそとほんと」と題して、どちらにも、いや、どちらでもないという形で分析しているのが流石だ。
     そんな言葉の巨人を、中島みゆきは、一方的に憧れの対象として語るしかないのも、これもやむ無しだろう。

    “「何かを諦めることで世界がより正確に見える」っていうふうに、いまは思うようになってますね。”

     と語る最晩年の谷川の言葉は、これから老境を迎える自分にも響く。歳をとることも、楽しみになってくる、励みとなる言葉だ。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

中島みゆき
1952年札幌市生まれ。藤女子大学文学部国文学科卒。75年「アザミ嬢のララバイ」でデビュー。同年、世界歌謡祭「時代」でグランプリを受賞。76年ファーストアルバム「私の声が聞こえますか」をリリース。アルバム、ビデオ、コンサート、夜会、ラジオパーソナリティ、TV・映画のテーマソング、楽曲提供、小説・詩・エッセイなどの執筆と幅広く活動。

「2020年 『中島みゆき第二詩集 四十行のひとりごと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中島みゆきの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×