恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―

著者 :
  • 朝日ソノラマ
4.09
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本棚登録 : 105
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784257037002

作品紹介・あらすじ

宇宙へと産み落とされた嬰児「のぞみ」は、いってみればよちよち歩きを始めたばかりだ。それを、子供の目の前で手をたたくようにして火星まで導かなければならない。あんよはじょうず、あんよはじょうず。それは苦難に満ちた旅の始まりだった。あいつぐトラブル。それでも「のぞみ」は二十七万人の祈りと希望をのせて火星へと飛び続けた。火星探査機「のぞみ」の苦闘のすべてを描く、迫真の科学ドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  •  「あかつき」の先輩である衛星「のぞみ」と戦後の日本のロケット開発に携わった人間たちの泥臭く、かつ迫力のあるノンフィクション群像劇。
     兎に角、おっさんの涙腺は崩壊しました。それが全てかな?
     というか、いま、絶版なのかな?これはいい本だから文庫になればいいのに。

  • はやぶさから、宇宙開発や探査機に興味を持った方に。
    日本初の火星探査機、のぞみの物語。寄せられたメッセージの部分や、あと1億年は火星の軌道を飛び続けてるという部分が泣けました。
    若き日の川口プロマネも「軌道の魔術師」として出てきます。
    今になって読むと、のぞみの困難な旅路があったからこそ、その経験を生かしてはやぶさの帰還が実現したんだとよくわかります。
    無駄なことなんて何一つないんだと思えた本。
    絶版なので図書館で読みましたが、ぜひ復刊してほしい。

  • 「はやぶさ」より前,失敗に終わった日本初の惑星探査機があった。その構想から開発,延期の末の打上,トラブルからの軌道修正,運用停止まで。
    松浦氏らしく,技術と人,社会の三者を絡めて鮮やかに描いていて,読み物として面白い。火星に届くことは届いたけれど周回軌道への投入は断念,ミッションは失敗だったとはいえ,いくつかの観測はなされたし,長い旅路で得られた技術的知見は「はやぶさ」にも活かされた。今後の探査機にも活かされていくだろう。
    本書でも,分かりやすい説明を求めるマスコミに苦言を呈しているが,「何億円無駄にしたのか」といった安易な批判は不毛だ。こういうチャレンジの積み重ねに意味がある。もちろん国民による適切な監視は必要だ。著者も指摘するように,敗色濃厚になってからの「のぞみ」には情報公開の点で難があった。そういった問題点を克服してより実のある宇宙開発につなげていくことが大切。

  • ライターが書いたにしてはかなり読みづらい。技術、歴史的経緯の瑣末を盛り込み過ぎ。
    小説を書くくらいのつもりで書いたほうが読み物として良くなったと思う。
    思い入れのある第3者と考えると「はやぶささん」は白眉である。併せて読むべし。

  • 本書が書かれた時点で、「はやぶさ」は旅の途中、「あかつき」の打ち上げはまだまだ先の話。
    一方、読者としての私は「はやぶさ」の結末や「あかつき」の途中経過がわかっている。
    そういう今だからこそ、本書で語られる「のぞみ」の経験が「はやぶさ」に生かされたこと、「あかつき」の状況など、過去と未来に思いを馳せながら読むことができる。

    多くの人に読んでもらいたい良書。

  • いろいろ読みどころはあるが、極めつけはアクロバチックな三次元的軌道計算、「1ビット通信」、そして回路焼き切りのための数え切れないスイッチング司令。
    日本の技術者の、これでもか、という通信回復の努力。
    メタルカラーの感動は、執念が技術的困難を凌駕するときに生じる。
    工学の世界を目指す人に読んで欲しい本の一つ。

  • 日本初の本格火星探査機の末路。
    パラ読み。
    文中の例えである減量ボクサーと化した探査機が
    ボロボロになりながらもみんなの夢を乗せて宇宙をさまよう。
    数ページをさいたみんなの宇宙への思いを読むだけで泣けてくる。

  • 530

  • セツナイ。

    そしてのぞみを打ち上げたM-V。
    Mシリーズの開発も打ち切り。

    むしちゃん的にはJAMIC閉鎖くらいの衝撃
    つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

  •  1998年に宇宙科学研究所が打ち上げた火星探査機「のぞみ」の、プロジェクト開始から終結までのドラマを関係者の証言と資料からまとめたドキュメント。日常感覚からかけはなれた宇宙機の構造と軌道について判りやすく解説しつつ、これに関わった人々の人間ドラマも描くバランスの取れた一冊。

     宇宙関連で失敗と言えば「アポロ13」を思い出す。あの話と同様にこの本も、順調に進んでいる間よりトラブルが発生してからの方が面白い。次々に発生する問題に屈せず様々なアイデアを出して乗り越えていく技術者の姿が、実にかっこいいのだ。久しぶりにほぼ徹夜して一気に読み切ってしまった。

     最終的には失敗に終わったプロジェクトだが、失敗によって得られるものも少なくはない。多額の税金を投入した国家プロジェクトが失敗するとそれを税金の無駄遣いだと見る人も少なくないが、“無駄”と“失敗”は全く次元の違うもだ。

     “無駄”とは、そもそもプロジェクトの目的自体が無意味な場合に使うべき言葉であり、たとえ大成功に終わったとしても無駄は無駄なのだ。これに対し有意義なプロジェクトが結果的に失敗して目的を果たせなかったとしても、それは単に失敗なのであって無駄ではない。

     しかし、失敗したプロジェクトを放置して次に生かさなければ、税金を無駄にしたと言わざるを得ない。この点について、火星探査機「のぞみ」はどうだっただろうか。この本によれば、のぞみが得た教訓のいくつかは次機「はやぶさ」に生かされているが、はやぶさは彗星探査機であって火星探査機ではない。

     本当にのぞみを無駄にしないためにも、いつかは火星探査に再挑戦してほしいものだ。そして、そのために不可欠な「納税者の理解」を得るためにも、最近よく言われる科学教育の衰退に歯止めをかけてもらいたいと思う。それはどちらが先か、難しい問題ではあるけれど。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家/科学技術ジャーナリスト宇宙作家クラブ会員。1962年東京都出身。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。日経BP社記者として、1988年~1992年に宇宙開発の取材に従事。その他メカニカル・エンジニアリング、パソコン、通信・放送分野などの取材経験を経た後、独立。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

「2022年 『母さん、ごめん。2 ― 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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