機動戦士ガンダム 3 (ソノラマ文庫 174)

著者 :
  • 朝日ソノラマ
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784257761747

感想・レビュー・書評

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  • ■Ⅲ
    さて、これでソノラマ文庫版全3巻を読んだわけだが、結構面白かった。
    安直にこれが御大の描きたかったすべて、ありうべき展開、とはいえなさそう。
    というのも、アニメと同じ程度において小説版もまた、要望や作者発の企画に応じて、都度都度、作られたものだからだ。
    ゆえにひとまずは1巻で終わってもいい作り……にしてはアニメ版に依存しすぎな記述……になっているし、2巻3巻は1巻の記述に合わせる形で展開するためにアニメ版とは大いに異なるし。
    そのために、アニメ版をカノンとすれば小説は二次創作、小説を作者が想定した真実の見取り図とすれば、アニメ版があまりにもないがしろに……という、どこに正解があるかわからないまま、派生作品がダラダラと排出され続ける無数の排出口のひとつ、のように思われる。
    この感想、たぶん間違いではないだろう。
    御大御自身にも最終結論あるいは当初の無垢なる結論があったわけではなく、その時その瞬間でありうべきものを発信したにすぎず、状況や要望に応じてガンダム世界がズレや重なりや矛盾を孕みながら展開していった。
    その中で、ある程度の正統性が確保されているのがこの小説、というわけだが、にしてもなかなかの「灰汁の強さ」がある。
    「食えない奴」という表現があるが、本作は成立事情においても、作者の思想の強さにおいても、「食えなさ」が極まっている。
    だからこそある意味美味しい……「臭みが美味しい」類いの読書になった。
    各キャラの「出入りのタイミング」は、いずれ整理したいな。
    とにかく御大(1941-)が否応なく「性的人間」(大江健三郎1935-)であることは、ご自身の筆で、ハッキリ確認できた。



    008p チャップマンとか、ランドルフとか、ギレン関係の側近。
    011p ギレンはただ銀河の流れを眺めるのが好きなのだ。(周囲は軍略を練っていると思いがちだが。……アニメ監督として深読みされる御大自身?)
    017p ギレン「惜しむらくは、ジオンはアジテーターでしかなかった……」→地球を聖域とするために。
    026p セシリア・アイリーン。(ギレンを御大と見做せば、御大の愛人……?)
    031p 女性(Ⅱ巻ラストのセイラ)の手による平手打ちは力がこもっていないくせに、なぜこうも痛みが尾をひくのだろう。(というアムロの述懐。)
    032p アムロはララァによって埋め合わせてもらえないものを、そしてセイラは兄――キャスバルによって埋め合わせてもらえないものを、それぞれに求めた。その代償行為(強烈な自己批判!)
    035p 「金髪さん! 愛しているよ!」アムロは口の中で言ってみて、それが素晴らしい言葉であるのだろうと感じた。(わざわざこう言わなければならない、言語化の魔。にしても金髪さんという呼び方で、アニメを見るときも上書きしてみたいな)
    038p 人は平凡なのだ。ニュータイプも人全体の問題であるのなら、平凡な現れ方であるべきだ。(ここまでうっさいほどニュータイプニュータイプと語ってきたが、ここに自己懐疑、にして特権を放棄するという形での真っ当なニュータイプ論が、成立した。ZでもZZでも遊び道具になり下がっていたが、ここで答えが出ていたからなのかな。)
    061p 物の怪の形があるとすれば、このような形であろうと思えた。(アムロが、ドズル特攻に際して感じたこと)
    066p ブライト「女房みたいな口のきき方はやめてくれ」ミライ”感じすぎなのよね。優男ぶって……”と苦笑。
    067p お守り――つまり、恥毛を携帯するということなのだが、古くからの伝説がかなりの真実味を持ってパイロットたちの間で信じられていた。(アムロがセイラとセックスして陰毛を所望、と読んだことはあったが、それよりもカイ、ハヤト、ブライトらにアムロとセイラの性的関係が公然と知らされて、陰毛もらってこいとけしかけられる、そのノリ自体が強烈な挿話。しかも、)
    072p 「もらったことにしときなさい」→「僕が欲しいんですから、頼みます」「了解。G3,発進一分前、回線をデッキ・コントローラーに回します」(という、テレフォン・セックスめいた言葉の遣り取りが、実に卑猥!)
    082p マチルダはウッディ・マルデンに惚れ、さや当てとしてわざとアムロにちょっかい。セイラに、この作戦が終わったら私の結婚式に招待しますと伝えてください、と伝言。(わかりやすいフラグ!)
    098p シャワーを使うために部屋を横切ってゆくその肢体を見ながらアムロは、軍隊色のバスタオルでもセイラをひきたたせる道具になっているのを知って嬉しかった。(中学生の頃に読んでいたら、この「肢体」という言葉だけで、もう何度でも……と懐かしく想像した。)
    102p ハモンいわく、戦争が終わったらランバ・ラルと結婚する、とキシリアに。(このへん、アムローセイラ、ランバ・ラルーハモン、マチルダーウッディ、ブライトーミライ、といった、戦中の関係→戦後の関係の予定、という文芸的対比。)
    106p ”あの坊やがあんなに立派な男になっていたのか?”それは母親の情感にも似たものであった。(キシリアに性を見出すことはアニメではなかったが、小説では多少言及されるということか)
    116p キシリア「しばらくは同盟者と信じたい……こんな私を悲しい女と思うか?」
    117p またもシャア「マルガレーテには私の子を生んで欲しいのだ」
    124p 人同志の錯誤、をミライが感じる。
    132p セイラの経歴を調べたレビルが、皆の前で言う。(アニメにあったっけ? あれ、小説ラストでシャアが言ったらみんなびっくりしてなかったか?)
    147p セシリアもまたギレンの秘書兼愛人としてのせめぎ合い、あるいは性癖になじむもの。
    164p 「憎悪の輝きと憎しみの叫び!……」(システム=ソーラ・レイで、アムロが感じた)
    174p セイラ”この宇宙(そら)は屍を欲している……”
    177p ”あ、た、し、ア、ムロ、あなたの、ためによ、ル、ウ、ジ、ュを、ひく、れんしゅう、した、のよ、……お、か、し、い、かしら、ね、(小文字で)ね、ね……”(ルナツーで後方支援中、カツ・レツ・キッカを傍らにした、フラウ。この文字列を御大が原稿用紙に書いた、と想像するだに、どこかの何かしらが疼く……)
    181p シャリア・ブルが性急に和解・協働を持ちかけてくる思惟を、アムロは暴力、強姦と感じる。
    195p で、アムロは反撃したことを後悔・自己嫌悪。(1巻ではララァ、2巻ではクスコ、3巻ではシャリア・ブルの思惟を、撥ねつけたアムロ。)
    197p ハヤト死。
    197p アムロ「カイ! 赤い彗星は敵じゃあないぞ! 味方だ! 奴に手を貸せ!」カイ「なんだとォ! 今、ハヤトを撃ったんだ!」(アムロの死の間際の翻意と、勢いが止まらないカイ。)ドサクサな戦死。
    199p シャアに話し掛ける死者たち。ララァ。アムロ。クスコ。
    200p シャア「死んでも二人の尻を触れはすまいよ」
    203p セイラ、失禁。アムロが死者として話しかけてくる。キャスバルの妹ではなく、あなた自身でいて、みたいな。
    204p アムロの思念はフラウ・ボウにも。死者との別れ。
    209p ルロイ・ギリアム「俺は……とりかえしのつかぬことをしてしまった……」
    221p ふっとセシリアの肉を思い出す……。(ギレン)
    231p (ブライトと話すシャアを見て)”私も、アルテイシアでなくなっている……”。”あの男は、私の男を殺した男……”そうセイラに思えた。それは兄への訣別の始まりであった。
    249p キシリアがギレンを撃ち、シャアがキシリアを撃つ。見たのはルロイ。肉塊という描写。
    250p カイ「なあ……アムロ……これでいいのか?……」カイ・シデンはシャア・アズナブルが嫌いになっていた。
    250p もう、アムロにはみえない……。セイラは一人で自在に泳げるのだ。

  • 1981年刊。

     「G3! ガンダムだ。赤い彗星は我々に協力を求めている。この空域はギレンのレーザー攻撃のターゲットになっている。脱出するんだ! シャアに続いて……」
     シャアの赤いリック・ドムがガンダムを目視して、そのパイロット-アムロ・レイが全く異なる行動に転化したのを認めた時、ガンダムは二機のリック・ドムの……。

     全3巻中の最終巻。
     キャラクターの関係性や精神年齢はTV版とは異なる。また、TV版に全く登場しない、あるいは端役のキャラクターも魅力的である(特にシャリア・ブル)。
     言い回しが独特ではあるが…。

  • 既読本

  • TV版とは違うとどこかで聞いた気もするが、まさかアムロが?と愕然としてしまう。スペースオペラは書かれた時代を背負う。まさか宇宙にまで飛び出た人類が仲人を気にするとは、とか。台詞回しや考え方、男が女がとか、40年前な古さを感じるところはあるけれど、それでもTV版とはまた違った味わい。ニュータイプとて恋のひとつもする普通の人間てスラッガーのつぶやき。シャアが部下を信じすぎた故の悲劇。レビルの、これは厳命だ、生き延びろ、という訓戒の皮肉。そして、戦後のカイテンシデンの、シャアの演説への違和感が目に止まった

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