- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260007153
感想・レビュー・書評
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筑波大学の授業科目「音声学概論b」、大学院科目「聴覚障害病態生理学」の教科書。
実態の観察とモデル構築のバランスが適切。
人の体のどの部位が、音のどんな要素が、どうコミニケーションに携わっているか、に重点を置く。声道と耳それらを司る筋肉や脳、神経のはたらきを図解と共に丁寧に解説する。各種の実験の結果と、様々な研究者の唱える仮説・学説が紹介され、研究史や研究途上の事項も詳しい。
ボリューム充分であるが、入門の名の通り、込み入った理論は省かれ概念的な解説に留まる。分析手法の原理・理論の解説が無く少し残念だが、実務上の使い分けが示される点が良く、実験・処理の初心者には大変ありがたい。
言語学の多様な知見と、システマチックな情報処理や制御モデルと、生身の体のつかみどころの無さとが、混在してバランスよく議論されている点が非常に良い(変に原理主義でもなく、単なる事例紹介でもない)。本文の要所に音声ファイルが添えられており、読者が実際に音を聞いて確かめられるのが良い。特に範疇知覚(VOTやホルマント遷移)の実験用に作られた音声は貴重でおもしろい。
ただし英語を対象としているため、他の言語の特徴や方言への適用には言及されない。
目次
○イントロダクション
1.ことば,言語,思考
2.ことばの科学の先駆者達
○音響学
3.ことばの音響学
○ことばの生成
4.生理学的基盤―神経支配,呼吸
5.生理学的基盤―発声
6.母音の構音とその音響学
7.子音の構音と音響学,韻律
8.フィードバック機構と生成モデル
○ことばの知覚
9.聴覚
10.ことばの音響的特徴
11.知覚機構とモデル
○ことばの科学の研究機器
12.音響分析と音声知覚
13.音声科学と音声生理学
○補章
14.耳で聞く資料集詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間のことば、特に音声言語は、どのように生成され、また、どのように知覚されるのか。言語学、音声学、医学を網羅し音声言語の深いところを味わうことができる一冊です。
特に、様々な言語音がどのようにして造られるのかについては、外国語を習得する上でも、ためになりそうな内容が盛りだくさんです。たとえば、英語と[r]と[l]は、それぞれどのように調音されるのか。舌をどう動かし、口内のどの部分にどのように移動させるのか、また、唇はどのように動かすのか。普段なかなか見ることのできない、調音時の口の中の状態に様々な写真で接することで、音声言語に対する理解も一層深まることでしょう。
さあ、これから、ことばの科学の世界にジャンプしてみてはいかがでしょうか。
(2013 ラーニング・アドバイザー/人社KIM)
▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1429841&lang=ja&charset=utf8
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