俺に似たひと

著者 :
  • 医学書院
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本棚登録 : 260
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260015363

感想・レビュー・書評

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  • 介護は、大変、苦痛、疲弊と言うようなマイナスな先入観を持ってましたが、ちゃんと実態を知りたいと思い、この本を読んでみました。

    健常者の価値観で不憫に思う事が、必ずしも要介護者にとって不幸な事では無く、むしろ、せん妄や認知症が、自己防衛能力として働いているのではないかという考え方には、深く感嘆し、自分が介護に感じる、ぽっかりとした穴を埋めてくれた気がしました。

    もし自分が親を介護する立場になった時、度々心の救いになると感じた本でした。

  • 老いていく父親を介護し、葬儀を終え、遺品整理をするまでの期間を綴った本。

    病気であれば入院して健康な状態に戻っていく。けれど、「老い」は病気や異常ではない。治せるものではない。
    頑張れと声をかけても、すでに頑張っていると父親は応える。入浴と食事だけが楽しみだったが、食べることも困難になっていく。

    医療が発達した結果、寿命はどんどん伸びている。現代社会には老人がたくさんいる。
    死を待つだけの老後というのはあまりにも寂しい。では人生の最期に何をすればいいんだ。難しい。

    介護が必要になり、せん妄状態で周囲を困惑させている自分を想像してみると、生きていくのが怖くなる。
    人生ってなんなんだろう。わからないな。

  • ある方のブクログレビューを読んで、興味を持って借りてみました。
    「俺に似たひと」=介護が必要になった(実)父、です。

    自分が実父の看病をしているときのことを思い出しました。
    看取る、とはいっても、「最後の最後(死の確定は医師しかできないわけで)」は病院にゆだねるわけですが、なんとなくそういったことも思いだしました。
    キレイにまとめてある印象です。

    でも、当時、どうしても辛かったこと、も思いだしましたし、
    以前介護していて、気持ちを整理しきれていない方は、この本を読んで気持ちの整理がつくかもしれないです。
    これから介護が始まる方も、なんとなく覚悟、ができるかも。

    • みつきさん
      コメントありがとうございます♪
      まっき~♪さんのブクログはちょくちょく見ては読書の参考にさせていただいてます。

      親の介護のことは、思...
      コメントありがとうございます♪
      まっき~♪さんのブクログはちょくちょく見ては読書の参考にさせていただいてます。

      親の介護のことは、思いだしたくない、でも折りにふれては思いだしてしまうような。そんな思い出です。

      追い込まれるような日々から解放されて(体よりも、気持ちがツライです)
      ようやく少し、気持ちの整理がついてきたというか。



      この本は良書でした。
      ブクログで紹介してくださって、ありがとうございます。
      これからも、まっき~♪さんのブクログにはちょくちょくお邪魔しますので、
      レビューはいっぱい書いてください(笑。

      自分のお体(と心)大切になさってくださいね。
      2015/12/20
  • ほぼ事実を書いているのでしょう、地名も旧友の内田樹さんも実名で出て来ます。なぜ小説にしなければならなかったのかな?
    多分、本当に多分だけど、これがノンフィクションだったら本人にとって唯一無二の経験である介護体験記になるところ、小説だから一例からの普遍性を書けたんだろうか。実名ゆえのリアルを感じさせながら、その経験は社会に数多ある経験の中の一つでしかないという冷めた感覚ゆえに、逆にこの一例と他の多数に通底するものがあるのを感じます。
    いずれ自分も老いて行くのを、自分に似た人(父親)の老いの進行を見つつ感じている著者。読者である自分にも、親の姿に自分の未来を重ねる視線が移って来る・・・・。
    今老い、死にゆこうとする親と、いずれ老い死にゆく自分は同じものだと、「俺に似たひと」というタイトルが語ってします。
    俺に似たひとを見つめながら、自分がやがて老いることを受け入れていく経験を、読みながら共有できた気がします。

  • どうにもならないことがたくさんあるけれど、

    なんとかなる

    どうにかなる

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    平川克美・著「俺に似たひと」(医学書院)に
    こんな一文がありました。

    この本は、著者が、父親を介護した体験をつづった物語です。

    父親よりも先に、母親を亡くしているのですが、
    その際、真っ先にお焼香に来てくれた近所の知人女性が、
    仏壇に手紙をお供えされていたそうです。

    その手紙に書かれてあったのが、上記の言葉。

    「どうにもならないことがたくさんあるけれど、なんとかなる。どうにかなる」

    というもの。

    著者が言うとおり、
    「仏壇は、生きるものと、逝ったものが会話する場所」なのかもしれません。

    逝ってしまった人が、具体的な答えを返してくれるわけではありませんが、
    仏壇という場で、逝った人に向かって語りかけることは、
    生きている人が、
    自分自身の気持ちを確かめたり、
    気持ちを前向きに切り替えたりすることにつながるように思います。

    逝った人は、生きている人に力を貸してくれる存在でもあるんですね。

    本書の記述より、もう一つ。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
     最も会いたいときには会えず、最も必要なことはついに語られないのが、ひとの世の常なのかもしれない。
    思い通りになる世の中などは、どこにも存在していない。
    始まりの合図も終わりを知らせるエンドマークも出ない。
    いつも唐突に始まり、宙吊りの状態で突然終止符が打たれる。
     人生は映画のようでもないし、ましてや何度も繰り返すことのできるゲームのようでもない。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

     誰かの死に立ちあうことは、自分の生に向き合うことになるのかもしれません。
     
    たまには、ちょっと立ちどまって、ただ、「生きていること」、そのものの価値を感じておきたいと思います。

  • 1年半の介護を通して、父と向き合い、生と死、人生について語られる。率直で、飾らない言葉が胸を打つ。いくつも心に残る言葉があり、手帳に書き写しながら読んだ。
    私の両親はまだ元気だが、それがとても幸せなことであると同時に、決して永遠に続くものではないことを再認識させられた。身につまされるドキュメント。

  • 老いるということを忘れて生きてていいのかと思う。

  • 涙を、堪えつつ、時にポロポロこぼしながら読んだ。

  • この本は、NHKテレビでも紹介され、「生前供養としての介護」いう言葉が話題になりました。
    平川氏のお父様は、80代半ばまで奥様と2人で生活をしていましたが、その後奥様を病気で亡くし認知症が進行しました。
    平川氏は、80代半ばを過ぎた老夫婦の生活は危機的なものであったが、その現実に息子として目を向けようとしなかったと語っています。
    それからお父様の介護を亡くなられるまで1年半にわたる父子の介護生活が始まりました。
    介護生活通じてざまざまな心の葛藤を体験しています。

  • 先と終わりの見えない状態で「なんとかなる」「楽しかった」と嫌悪する事なくなぜ、自ら進んで受け入れられるようになるのか。
    どうしたら憎まず、思いやれるのか。
    できることと、できないことの違いはどこにあるんだろう。

    いつかの「その日」までの長い道のりをどう決意して、向かって行ったらいいのだろう。

    同性の親と異性の親で、違うんだろうか。

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著者プロフィール

1950年、東京・蒲田生まれ。文筆家、「隣町珈琲」店主。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン。著書に『小商いのすすめ』『「消費」をやめる』『21世紀の楕円幻想論』、『移行期的混乱』、『俺に似たひと』、『株式会社の世界史』、『共有地をつくる』『「答えは出さない」という見識』他多数。

「2024年 『ひとが詩人になるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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