- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260016735
作品紹介・あらすじ
ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。
感想・レビュー・書評
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映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい手を差し伸べたくなるような愛嬌あるロボット達から教えられたことがたくさん。
簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。 -
ロボットと聞くと何でも助けてくれるドラえもんや、とっても強くて見た目も人間と変わらないアトム、もしくは今現代のハイテクなロボットを思い浮かべるかもしれない。
しかしながらこの本で出てくるロボットは
よわい
外見も一つ目小僧のようなロボット「む~」
ひょこひょこ歩いてゴミを見つけては人にすり寄る「ゴミ箱ロボット」
はなんとも外見も中身も不完結で弱そうに見える。「できないならやってもらばいい」そんな他力本願なロボットたち。
しかしそんな弱いロボットが人は愛くるしく思え、まるで子供をあつかうかのように、彼?(彼女なの?)らとお話をしたり、ゴミを捨ててコミュニケーションをとるのである。
ロボットの低い目線を通して、コミュニケーションとは何か?弱さとは何か?が書かれている。
行為の意味は相手に受け取られるまで「不定」になってしまう、しかしながら相手が応答groudingしてくれることにより意味を持つ。
ロボット=物理的に何かをしてくれるのではなく、ロボットを介して人が成長していく=彼らの弱さが人の発達を助けている。ロボットと人間が対立したり上下関係を築くのではなく双方向の学びを築く。
周囲に身を委ねながら1つの行為を作りあげていく、そんな弱いロボットをわたしたちに置き換えて考えてもいいのではないだろうか。 -
出版されてから10年も経っている本をもう一度手に取って読んでみた。
ロボットに求めるものは何かをもう一度考えるきっかけになった。不完全であるが故の良さという捉え方もあり? -
ロボットといえば、人間の代わりに何の作業をしてくれるものなのか、どのように便利なのかと性能や機能、または、どれだけ人間らしいか、を見るものだと思っていた。そして、医学書院のシリーズ「ケアをひらく」でロボットといえば、介護の代わりのロボットなのか、話し相手、遊び相手の代わりになるロボットの話なのか、などなど想像してしまったけれど、これは違う。目から鱗の連続だった。まず、人間が「何気なく」している会話は、まずロボットにはできない。その「何気ない」に焦点を当てることから始まるこの本書。ロボットは言い淀みをエラーとして処理してしまうが、人は言い淀むことを前提に話し始めるのだ。会話はお互い相手の不足分を支えたり、不足分を委ねられたりして進行する。相手が返してくれると思って言葉を発し、返してくれなければ不安になるし、返さなくてはならない責任も感じるものである。そして、ただ歩くという行為でさえ、地面に委ね、地面に支えてもらっているという不安定さがあると、本書にはある。また、「支えてあげるもの」「守るもの」があって、人は成長することがある。ただ色を指摘するだけのロボット、ゴミを集めたいのにゴミを拾えないロボット、それらに対して、今まで弱者でしかなかった人が、教える側にまわって、少し変わっていくし、そんなロボットが人と人のコミュニケーションの触媒となっていく。人は1人では生きてはいけない。改めてそれを、ロボットという無機物を通して再確認する1冊だった。
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「毎日新聞」(2012年9月30日付朝刊)の「今週の本棚」で
紹介されていました。
(2012年10月1日) -
◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB10094985 -
[ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。]
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身体とコミュニケーションについてとても深く考察された素晴らしい本。
「私たちは地面を歩いていると同時に地面が私たちを歩かせている」というのはとてもハッとさせられました。
読んで損はない一冊だと思います。 -
流し読みだったが、自分の専門外の分野を学ぶのってやっぱり新鮮だった。
ロボットやAIの技術には無頓着だけど、言語学をやっていた身としては、なにげない談話っぽいやりとりを再現するには?という考えがとても面白い。
AIやロボットを作る意味って、人間に利便性を与えるだけではなく、改めて人間の活動やコミュニケーション、人間がその対象をどう受け取るのかという認知的な研究にも繋がるように思った。
そしてこの本の主人公である弱いロボットたち…。
弱さが人とロボットを結びつけるなんて!
ものすごく感心してしまった。
すごいロボットではなく、ポンコツな部分も持つロボットたちは、開発者よりも一般人たちに受けが良いよう。
それも子供やお年寄りたちに大人気…。
猫や犬がいると、家族の会話が弾んだりするけれど、弱いロボットたちも、誰かと誰かを結びつけることがある。
助けられてばかりでは人間性ってなくなるのかも。
助けることを教えてくれるロボットたちが、これからの未来でどう私たちの暮らしに寄り添ってくれるのか、非常に楽しみになる。
簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。