物語としてのケア―ナラティヴ・アプローチの世界へ (シリーズ ケアをひらく)

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  • 医学書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260332095

作品紹介・あらすじ

社会構成主義によるケア論の革新、「ナラティヴ」の時代へ。ナラティヴ。このたった一つの言葉が臨床の風景を一変させた。「精神論vs.技術論」「主観主義vs.客観主義」「ケアvs.キュア」…二項対立の呪縛を超えて、「新しいケア」がいま立ち上がる。

感想・レビュー・書評

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  • 20年前の本ですが、深い。内在化と外在化によって脳は楽をしたがるけれど、それらを超えた関係性について常に語り直していくこと。今年読んで膝を打った「能力の生きづらさをほぐす」に通じるところもあり、刺激的な読書となりました。

  • p.14
    文学領域の用語である「物語」や「語り」はなぜ「臨床」で注目されるようになったのか?→「言語論的転回」「物語論的転回」と呼ばれる現代思想の大きな動きがあったから。
     私たちが生きる世界において「言葉」がとても重要な役割を果たしていること、その「言葉」が「語り」あるいは「物語」という形式をとるとき、とても大きな力をもつことが注目されるようになった。
     
    人間の織りなすさまざまな行為や関係を、「言葉」「語り」「物語」という視点からとらえ直す作業が、人文科学、社会科学のさまざまな領域で活発化してきた。こうした動きを象徴的にあらわす言葉が「ナラティヴ」という言葉なのである。

    p.16 言葉は世界をつくる
    社会構成主義とは…世界がまずあって、それが言葉で表現されるのではなく、言葉が先にあって、その言葉が指し示すような形で世界が経験されるという主張。


    p.39
    語ることで確かさを増すもの、それが「自己」なのである。逆に言えば、「自己」は語られなければ不確かな存在になってしまう。自己は以前の自己語りから時間が経つにつれて、しだいにその輪郭をぼやけさせ、不確かさを増していく。そのぼやけた輪郭を描き直す作業が「自己語り」なのだと考えることができる。

    p.46
    物語はいったんできあがると、現実の見え方を方向付け、制約する作用をもったいる。このことは自己物語にもあてはまる。わたしたちは、自分で物語をつくり出す存在である一方で、すでにできあがっている物語を生きる存在、物語に制約される存在である。

    p.58
    「気の持ちよう」が変えられなくて困っているひとに、「気の持ちよう」を変えなさいということほど無意味なことはない。あるいは、残酷なことはない。それは、結果的に、「気の持ちようを変えられないダメな奴」というレッテルを貼ることにつながる。皮肉なことに、このアドバイスは、「何をやってもうまくいかない」状況を変えるのではなく、それを強化するように作用してしまうのである。

    ・多くの人がつい言いたくなる「常識的な」「善意の」言葉か、実は不幸の物語をより強固、そしてそれにふさわしい事態を引き寄せてしまう

  • カウンセリングでの経験を思い出しながら読んだ。 人は語ることで物語(人生)が構成されていくという。一度通して読んだだけではまだまだピンとこない部分も多い。 今後繰り返し読んでいきたい本。

  • 人が問題を抱えていると我々は、その人のどこかが悪かったからそうなっていると考えがちである。この本はそのような視点から離れ、問題を抱えている人のナラティブ(物語)に着目して問題に向き合っていく姿勢を紹介してくれる。本書は臨床の視点から書かれており、直接的な教育向けの本ではないが、生徒指導の場面等に役立つこともあると思うので、おすすめの一冊である。(K.K)

  •  ナラティヴとはあまり聞いたことない専門用語であるが「語り」「物語」という意味合いが含まれている。人は語ることにより物語を作り、それには多大なる力がある。言葉は今を左右し、常に変容して人に与える認識を根こそぎ変えてしまうこともあるという。
     また、自己を人々は語ることにより自分を作り出している。まず、自分という言葉があり、それに付属する言葉がついて自己は成り立っている。(しかし、それは側面でしかないのだが)

  • …本書は専門的な本ではなく、人は語って生きていくということが、豊富な事例を交えてやさしく書かれています。…著者は、ケアには従来の技術と精神という二項対立ではなく、「関係」が重要であると考えています。そしてあらゆる「関係」は「言葉」によって作られ、「語り」によって維持されているから、「言葉」や「語り」、そしてそれを織りなす「物語」に注目することで、新しい「関係」が見えてくると説くのです。…一人暮らしのお年寄りや、話を聞いてもらえない子どもたち。いや大人だって慌しい日々に忙殺されて、親しい相手にじっくりと話を聴いてもらえないことが、どんなに多いことでしょうか。人は語らなくては生きていけないことを思い出させてくれる、大切な一冊です。

    http://koganeikouza.blog21.fc2.com/blog-entry-39.html

  • 取り上げられているのがぜんぶ精神医学の事例だった。同じ「ナラティブ」でも、ナラティブ・メディスンとはちょっと違う分野なのかな?

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB10032622

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著者プロフィール

東京学芸大学教育学部教授
北海道大学大学院社会学専攻博士課程単位取得退学
主著『物語としてのケア:ナラティヴ・アプローチの世界へ』(医学書院,2002),『ナラティヴの臨床社会学』(勁草書房,2005),『ナラティヴ・アプローチ』(編著,勁草書房,2009)。

「2014年 『ナラティヴ・セラピー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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