物語としてのケア―ナラティヴ・アプローチの世界へ (シリーズ ケアをひらく)
- 医学書院 (2002年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260332095
作品紹介・あらすじ
社会構成主義によるケア論の革新、「ナラティヴ」の時代へ。ナラティヴ。このたった一つの言葉が臨床の風景を一変させた。「精神論vs.技術論」「主観主義vs.客観主義」「ケアvs.キュア」…二項対立の呪縛を超えて、「新しいケア」がいま立ち上がる。
感想・レビュー・書評
-
20年前の本ですが、深い。内在化と外在化によって脳は楽をしたがるけれど、それらを超えた関係性について常に語り直していくこと。今年読んで膝を打った「能力の生きづらさをほぐす」に通じるところもあり、刺激的な読書となりました。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
p.14
文学領域の用語である「物語」や「語り」はなぜ「臨床」で注目されるようになったのか?→「言語論的転回」「物語論的転回」と呼ばれる現代思想の大きな動きがあったから。
私たちが生きる世界において「言葉」がとても重要な役割を果たしていること、その「言葉」が「語り」あるいは「物語」という形式をとるとき、とても大きな力をもつことが注目されるようになった。
人間の織りなすさまざまな行為や関係を、「言葉」「語り」「物語」という視点からとらえ直す作業が、人文科学、社会科学のさまざまな領域で活発化してきた。こうした動きを象徴的にあらわす言葉が「ナラティヴ」という言葉なのである。
p.16 言葉は世界をつくる
社会構成主義とは…世界がまずあって、それが言葉で表現されるのではなく、言葉が先にあって、その言葉が指し示すような形で世界が経験されるという主張。
p.39
語ることで確かさを増すもの、それが「自己」なのである。逆に言えば、「自己」は語られなければ不確かな存在になってしまう。自己は以前の自己語りから時間が経つにつれて、しだいにその輪郭をぼやけさせ、不確かさを増していく。そのぼやけた輪郭を描き直す作業が「自己語り」なのだと考えることができる。
p.46
物語はいったんできあがると、現実の見え方を方向付け、制約する作用をもったいる。このことは自己物語にもあてはまる。わたしたちは、自分で物語をつくり出す存在である一方で、すでにできあがっている物語を生きる存在、物語に制約される存在である。
p.58
「気の持ちよう」が変えられなくて困っているひとに、「気の持ちよう」を変えなさいということほど無意味なことはない。あるいは、残酷なことはない。それは、結果的に、「気の持ちようを変えられないダメな奴」というレッテルを貼ることにつながる。皮肉なことに、このアドバイスは、「何をやってもうまくいかない」状況を変えるのではなく、それを強化するように作用してしまうのである。
・多くの人がつい言いたくなる「常識的な」「善意の」言葉か、実は不幸の物語をより強固、そしてそれにふさわしい事態を引き寄せてしまう -
カウンセリングでの経験を思い出しながら読んだ。 人は語ることで物語(人生)が構成されていくという。一度通して読んだだけではまだまだピンとこない部分も多い。 今後繰り返し読んでいきたい本。
-
人が問題を抱えていると我々は、その人のどこかが悪かったからそうなっていると考えがちである。この本はそのような視点から離れ、問題を抱えている人のナラティブ(物語)に着目して問題に向き合っていく姿勢を紹介してくれる。本書は臨床の視点から書かれており、直接的な教育向けの本ではないが、生徒指導の場面等に役立つこともあると思うので、おすすめの一冊である。(K.K)
-
…本書は専門的な本ではなく、人は語って生きていくということが、豊富な事例を交えてやさしく書かれています。…著者は、ケアには従来の技術と精神という二項対立ではなく、「関係」が重要であると考えています。そしてあらゆる「関係」は「言葉」によって作られ、「語り」によって維持されているから、「言葉」や「語り」、そしてそれを織りなす「物語」に注目することで、新しい「関係」が見えてくると説くのです。…一人暮らしのお年寄りや、話を聞いてもらえない子どもたち。いや大人だって慌しい日々に忙殺されて、親しい相手にじっくりと話を聴いてもらえないことが、どんなに多いことでしょうか。人は語らなくては生きていけないことを思い出させてくれる、大切な一冊です。
http://koganeikouza.blog21.fc2.com/blog-entry-39.html
-
取り上げられているのがぜんぶ精神医学の事例だった。同じ「ナラティブ」でも、ナラティブ・メディスンとはちょっと違う分野なのかな?
-
<シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190
-
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB10032622