岩崎調べる学習新書 (1) マンガの歴史 1

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感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265008315

感想・レビュー・書評

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  •  マンガ史研究家としても評価の高いマンガ家・みなもと太郎さんが、「画業50周年」を記念して刊行開始した、書き下ろし(語り下ろし?)マンガ史の第1巻。全4巻の予定とのこと。

     図版がただの一つも使われていないという、シンプル極まりない本。「マンガ史本」としては異例だが、当然、はっきりした意図の下にあえてそうした体裁をとったのだろう。 

     この巻は、手塚治虫登場前夜(戦前・戦中)のマンガ状況から説き起こされ、手塚およびトキワ荘の面々の活躍、劇画の誕生、貸本マンガの台頭、初期の少女マンガ、週刊少年マンガ誌の登場などが、手際よくたどられる。
     最後の章で光が当てられるのが『巨人の星』だから、次巻は『あしたのジョー』の話から始まるのだろう。

     200ページに満たない本だからサラッと読めるが、マンガ史の肝を的確に押さえた記述はさすがだ。
     そして、『風雲児たち』の作者らしく、独自の確固たる「マンガ史観」が全編の底に流れていて、その史観に沿って戦後マンガ史をたどる内容になっている。各章がブツ切りになっておらず、日本のマンガ史が一つの太い流れとして理解できるのだ。

     蒙を啓かれる記述も多い。
     たとえば、私は「『あしたのジョー』はいま読んでもすごい名作だが、『巨人の星』はいま読むとお笑いマンガでしかない」と軽んじていたが、『巨人の星』がマンガ史においていかに画期的であったのかが、本書で初めて理解できた。

     「マンガ史本」はこれまでにも少なくないが、本シリーズこそ決定版になるのではないか。全4巻、買い続けることを決定。

  • みなもと太郎先生と岡田斗司夫の対談を見て、この人面白い!と思って読んでみた!!!

    今まで何冊か漫画の歴史を紐解いた本を読んできたが、この本はその本達と一線をかくすキレ味のある素敵な本だった。

    何しろ、みなもと太郎先生自体が、実際その時代を生き漫画家として過ごしたのだ、書き味のリアリティは別格だ。(多分に主観が入ってるかもしれないが)


    また、もともと歴史モノが好きな先生で、
    「歴史は数多くの名もなき人の、ちょっとしたことで大きく動くことがある」というメッセージも好きだった。

    書いてあって結構意外だったのが、
    手塚治虫が、意外と嫉妬深いというか、若手にライバル心を燃やしている人だったということだ。

    マガジンとサンデーのバトルや、
    劇画、かわいいという日本古来の概念、少女マンガなども面白かった。

    続きが見たくて仕方がないが、
    亡くなられたみなもと先生の置き土産として、
    続きは自分で妄想することに。

    ご冥福をお祈りいたします。

  • 必読の本。二巻が待ち遠しい。

  • 生けるマンガ史たる著者が、わかりやすくマンガを解いたもの。
     コマを構成単位とする物語性のある絵は、海外から来たものを参考にしてというのが定説であるが、著者はさらにそこから、その線条性のある絵の表現は日本の浮世絵からと説く。
     他、マンガ界のどろどろしたものや、トキワ荘に多数のマンガ家がいたことによるメリット、などを解説。
     貸本、雑誌の掲載による表現、インターネットでのもの、を網羅する執拗さは、凄まじい。

  • 『風雲児たち』という傑作を書いている作者の漫画史。続巻に期待。

  •  満点にしなかったのは図版が1枚も無いことから。
     価格を安く抑えたかったのだろうが、マンガの研究書で図版が無いのは隔靴掻痒。
     この本、異様なまでに開きやすく、最初は背割れしているのかと思った。コデックス装という特殊な製本らしい。
     苦言を呈したものの、全巻つきあうつもりでいる。
     マンガの背景描写の革新に関谷ひさしが一役買っているという指摘はさすがみなもと先生。

  • ちばてつやに関する件が一番興味深かった。むしろ、ちばてつやで一冊書いて欲しいくらい。朝日や青空を描くのではなく、目覚めて、起きて、布団を畳んで、顔を洗って…という一連の「生活」の流れをゆっくり、じっくり描くことで「朝」を表現したのが「新しかった」のだと。手塚、トキワ荘の流れとは別のところで育ったちばてつやだからこそなし得た新しさ。

    こういう視点で漫画を読んだことなかったので非情に参考になった。漫画に限らず映画でも何でも、「何気ないシーン」にも何か意味がある(何かを表現している)、というのは何となく意識はしていたけれど、こういう読み解き方をすればいいのだ(そう簡単なことではないけれど)。

  • 『マンガの歴史』作者:みなもと太郎という文字列だけで買うべきとわかる本。
    あまりに有名な「トキワ荘」中心のマンガ史観にとらわれすぎていて見えなかった日本におけるマンガという文化の歴史を、丁寧に紐解いている。映画も様々な作品群から影響を受けて歴史の流れが生まれているのとなんら変わらず、マンガも影響し、影響されあって発展していったのだということがよくわかる。
    小学生以上向けに書かれていることもあり、文は平易も平易。しかし書かれていることはガチ。

  • 読みやすくてわかりやすい。
    手塚治虫のくだりなんて他でも何かと何度も
    見聞きしてるハズなんだけどあらためて
    手塚治虫という革命と奇跡と宿命・運命を
    思い知らされました。
    図版は必要ないと思います。調べてくれ、買って読め
    と言う事でしょう”調べる学習新書”。
    手間のかかった開きやすい製本は
    いかにも本がばらけそうで怖いですがw

    それと、こういう目の付け所は岩崎夏海お見事!
    と言うかありがとう!と言えば良いのか。

  • 重要人物や出来事がシンプルに書かれていて、分かりやすいし読みやすい。特に、貸本マンガの興亡から劇画誕生の流れがとても面白かった。取り上げるマンガが載って無いので、ググりながら読みました。
    欲を言えば、参考資料として取り上げるマンガのコマを載せて欲しかった。ただ、「調べる新書」とあるので、自分で調べながら読むのも良いか。

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著者プロフィール

1947年、京都府生まれ。漫画家。漫画研究家。代表作に革新的なギャグ漫画『ホモホモ7』、ギャグ大河漫画『風雲児たち』他。手塚治虫文化賞特別賞、日本漫画家協会賞コミック部門大賞を受賞。2021年、逝去。

「2021年 『お楽しみはこれもなのじゃ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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