しずかな魔女 (物語の王国 2-13)

著者 :
  • 岩崎書店
4.13
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本棚登録 : 371
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265057931

作品紹介・あらすじ

中一の草子は、現在不登校。図書館に通う日々を送っている。
あることをきっかけに、初めてレファレンスを希望する。

やがて司書の深津さんから渡されたのは「しずかな魔女」というタイトルの白い紙の束。
ふたりの少女の、まぶしい、ひと夏の物語だった。

物語を読み終えた草子の胸に、新しい何かが芽生える。
それは小さな希望であり、明日を生きる力だった。

感想・レビュー・書評

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  • 中学の草子は、平日を図書館で過ごす。
    本を読み、考えごとをし、ときどき勉強をした。
    目立たない片隅で、どきどきしながら時を過ごす。
    図書館司書さんの思いやりで、シルバーサークルに来ていた人からキツいことばを投げかけられても逃れることができた。
    司書さんは、「しずかな子は、魔女に向いてる」ということばを残して…。

    その本を借りたいとレファレンスを希望する。
    司書さんから渡されたものは、本ではなくて白い紙の束。
    それは、2人の少女の夏物語だった。

    夏の思い出が、特別なものになってもう一度会いたいと願う。
    気持ちを込めて手紙を書くと…。
    けっして無駄じゃなかったと

    〈また会える だって同じ地球の上だし〉

    草子にとって、それは魔法の書だった。
    彼女は、それを読んで気持ちが前向きになったのだから。
    彼女にもいっしょに夏休みを楽しめる友だちがきっとどこかにいるはず。


  • 学校に行かない草子の居場所は図書館で、他の利用者の「学校はどうしたの?」視線に怯えながらも、司書の深津さんのさりげない気遣いに助けられていた。ある日知らない人に面と向かって不登校を非難され傷ついた草子に、深津さんは<静かな子は魔女に向いている>と書き、「これ、お守りです。だから、だいじょうぶ」と言うのだった。
    この言葉が気になった草子は、このタイトルの本を探し始めるが見つからない。ついにレファレンスカウンターにこの文章が出てくる本を探してくれるよう依頼する。カウンターにいた深津さんは、この言葉はそのようなものではないと断るが、どうしても読みたいと食い下がる草子に承諾する。しばらくして<館長>から手渡された茶封筒には、白い紙の束が入っていた。それは、作者名のない「静かな魔女」と書かれた物語だった。

    理解されにくい少女が、周囲の優しさから勇気を得ていく物語。



    *******ここからはネタバレ*******

    傷つきやすい草子への、図書館の人たちの心配りがとてもとても優しい。

    野枝とひかりの物語も、愛らしくて楽しい。
    ユキノさんが魔女修行の先輩として、とてもいい味を出しています。
    「他人の心はね、その人だけのものよ。じぶんの心は、じぶんだけのものですからね」

    お化け騒動や、いつも美味しいものが入っている「焼きのり」の金色の缶に入っていたのが、干ししいたけだったところには笑ってしまいました。
    小学校4年生のお話なのに、ラストでは泣きました。

    この年代の話になると、人生の問題が山積みなものが多いのに対して、この本はとてもシンプル。舞台も図書館の中だけです。華やかさはないけれど、優しさがじぃっと沁み入るお話です。

    不登校の話の多くは、再登校することでハッピーエンドとなるものが多い(「鏡の孤城」もそうでした)のに対して、ここでは草子はこのあとも学校ではなく図書館に通います。著者が、安易に不登校の解決場所を「登校」としなかったところに、大きな大きな拍手を贈りたい。

    中学年から読めるとは思いますが、これはすべての人にオススメしたいです。

  • 児童文学作家さんのイベントで登壇なさる方の作品を読んでいます。こちらはたださんのレビューと『魔女』という本の名前が気になったので図書館からお取り寄せ。
    図書館のレファレンスをたまに利用するのだが、司書さんの得意不得意分野がある様子で、熱意があるときと返答に困って他の方も呼んで対応されるときがある。図書館は出たときに入る前よりも少し元気になったようなすっきりしたような状態になる気がする。

    学校ではなく図書館を自分の居場所として感じる主人公と、図書館に勤める方々との交流。
    いいなあ、こんな図書館。
    司書さんは緑色のエプロンを身に着けている図書館。
    親切の押し売りを「なまぬるい熱の残る手」として表現、ドキッとさせられる。私もそういう事していないだろうか。
    「ぴったりな言葉を取り出すのに、人よりちょっと時間がかかる」野枝とおばあちゃんちに一時的に身を寄せたひかりとの夏休みを描いた『しずかな魔女』
    心の片隅にあるいつかの夏を懐かしむような感覚。
    「おひさま紅茶」なんて素敵なんでしょう。黒白猫のボスの登場は風格を感じるくらいの存在感。「ぜっかいのことう」に私もいつか行ってみたい。
    「ありとあらゆることが入ってる、だれにだって会えるし、どこにだって行ける」本からいろんなものを得ているんだなあと気づきのきっかけになった。ブグ友の皆様の出会いにも感謝です。

    • たださん
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます♪

      市川朔久子さんのイベントを調べていたら、ひとつ心当たりを見つけまして、もしかしたら、ベ...
      ☆ベルガモット☆さん、お返事ありがとうございます♪

      市川朔久子さんのイベントを調べていたら、ひとつ心当たりを見つけまして、もしかしたら、ベルガモットさんの住まわれているところは・・・なんて、想像してしまいました。
      市川さんが、どのような事を話されるのか、私も興味津々です。
      ぜひ楽しんできて下さいね(^∇^)
      2023/10/01
    • ☆ベルガモット☆さん
      たださん、イベント検索なさったんですね!
      どこかの本のレビューでもカミングアウトしていたかもです(≧▽≦)
      短歌掲載雑誌にも載ってますし...
      たださん、イベント検索なさったんですね!
      どこかの本のレビューでもカミングアウトしていたかもです(≧▽≦)
      短歌掲載雑誌にも載ってますし。
      イベントは『作家のいちにちー書くということ・伝えたい想い・本ができるまでー』ということで、児童文学作家の方々のトークが聴けるので楽しみです。なんと無料なんですよ~
      またどうだったか報告いたします♪
      2023/10/01
    • たださん
      ☆ベルガモット☆さん
      やはり、そうでしたか(^^)
      私、千葉なので、結構離れたところから、こうしてコメントのやり取りをしてると思うと、何だか...
      ☆ベルガモット☆さん
      やはり、そうでしたか(^^)
      私、千葉なので、結構離れたところから、こうしてコメントのやり取りをしてると思うと、何だか感慨深いものがありますね。

      良いんですか?
      ありがとうございます(^o^)
      ご報告、楽しみにしております♪
      2023/10/01
  • フォローしている方のレビューを読んで、図書館で借りました。ご紹介いただき、ありがとうございます。

    市川朔久子さんの作品は、今まで2冊読んだことがある。
    いずれも中学生が主人公で、学校や家庭に居場所がないと感じている子たちの話だった。
    当事者である中学生が読むには、ちょっと重い感じがするなぁ…というのが正直な感想だった。

    この作品は、不登校の主人公の置かれている状況がメインではなく、主人公が手にしたある物語がメインに描かれている。
    その物語を読んだ後の、主人公のなかに起こる小さな変化と、それによって簡単に学校に行けるようにはならない、その誠実さがよかった。
    2020.8.6

    • 図書館あきよしうたさん
      ロニコさん、こんばんは。

      これ、読まれたんですね。

      優しいお話で、私は結構気に入ったんですけど、中の物語が中学生には幼すぎるということで...
      ロニコさん、こんばんは。

      これ、読まれたんですね。

      優しいお話で、私は結構気に入ったんですけど、中の物語が中学生には幼すぎるということで、残念ながら、今取り組んでいる選書本には載らないことになってしまいました。

      うちには3人の不登校経験者がいる(娘全員ですね(笑))ので、周囲の目に怯える気持ちや家に居づらい気持ちとか、よくわかるんです。そして、学校へ行くことができるのがゴールではないことも。
      だから、親としては、こういうお話はありがたいと思いました。

      でもきっと、当事者の子どもは、他の話の方が読みたいかも知れないですよね。
      もしかしたらこれは、当事者を慮るための周りの人たちのための本かもしれないですね。



      市川朔久子さんは、私の好きな作家さんで、「小やぎのかんむり」が一番のお気に入りです。


      ロニコさんはいかがでしたか?
      2020/08/09
    • ロニコさん
      図書館あきよしうたさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます。
      返信遅くなりごめんなさい。

      お嬢様方の成長過程で学校に行けな...
      図書館あきよしうたさん、こんにちは^_^

      コメントをありがとうございます。
      返信遅くなりごめんなさい。

      お嬢様方の成長過程で学校に行けない時期があったとのこと、色々と心配されたこともあったのではないでしょうか。
      いつもあきよしうたさんのレビューを読み、「こんな風に書けたらいいなぁ」と思って読ませて頂くので、きっと懐の深い素敵なお母様なのだと思います。私の言葉は出過ぎだことかもしれません、すみません。

      市川朔久子さんの作品は、「ABC!曙第二中学校放送部」と「小やぎのかんむり」を読みました。
      中学生のリアルな日々が描かれているなぁ…と実感を交えながら読んだのですが、当事者である中学生はこういうお話を読みたいのかな?とふと思いました。
      主人公一人に絞って書かれているよりも、何人かの登場人物に分散されて書かれている方が、少し距離を取って読めるのではないかな?などと考えたこともあります。

      この作品は、主人公から離れて別の物語が展開されているところが、ワンクッションあっていいな、と思いました。
      確かに、物語の内容がちょっと幼いですよね…そこのバランスが難しい…。

      私の勤め先の中学も1クラスに1人の割合で不登校の生徒さんや別室登校の生徒さんがいます。中学校という場は一部の生徒さんにとっては、非常に居辛い場なのだなぁと感じます。
      世の中の変化に合わせて学校のカタチも柔軟に変えていかないといけない時期にきているのだと、日々思うのですが…。

      まだまだ暑い日が続きそうですね。
      あきよしうたさんも、どうかご自愛下さい^_^
      2020/08/12
  • 学校に行けなくなった「草子」が、図書館の司書「深津さん」に探してもらった物語のタイトルが「しずかな魔女」。

    そして、キーワードが「しずかな子は、魔女に向いてる」。いったいどういうことなのだろうと、好奇心が湧き、読んでみた物語は、大いに私のノスタルジーを刺激した、二人の女の子のひと夏の想い出。内容のひとつひとつが事細かく新鮮でいて、かけがえのないものに感じられた物語は、本当に素敵だった。

    また、その物語は草子自身にも、大きな影響を与えており、他人に解決してもらうのではなく、自ら意識を変えさせるよう促す物語の構成が素晴らしい。

    更に教えてくれたのは、本の素晴らしさ。当たり前なんだけど、本の世界では誰にでもなれるし、何処にでも行ける。楽しくて、素敵だ。

    でも、それだけでなく、「本の力で人生を変えることだって出来るんだよ。」ということを、この作品は教えてくれた。これって、すごくないですか?
    児童書だということで、読まないのはもったいないですよ。

  • 「学校が死ぬほどつらい子は図書館へいらっしゃい」と呼びかけたのは、鎌倉の図書館の司書さんでしたね。
    「自殺したくなったら図書館へ」は、米国の図書館に貼られていたポスターの文言だそうだ。図書館には問題解決のヒントや人生を支える何かがあるというメッセージだそうだ。
    そして利用者の秘密を守るのも、図書館の大事な原則だということも。
    中学生の草子が、学校に行かずに図書館で静かに過ごす事ができるのも、この原則のおかげだ。
    そんな図書館にいても、周りを気にしてオドオドしてしまう。
    ある時、図書館司書の深津さんから「しずかな子は、魔女に向いている」と言う不思議な言葉をお守りとしてもらう。草子は、その言葉がでてくる本をレファレンスサービスで探してもらい、読むことになった『しずかな魔女』のおはなし。
    このおはなしがまた良いのです。
    読み終えた草子は、すこし生きやすくなった。自分の気持ちを言葉で伝えようと一本前に踏み出す。
    この本には、静かな森にたとえた居場所としての図書館と素敵な司書さんが登場する。
    図書館好きの心に響くお話です。

  • 不登校の中学生・草子は、図書館で司書の深津さんに出会う。人の視線を気にする草子に、お守りになると言って、深津さんはある言葉を教える。

    生きづらさを抱える少女を、文字どおり「見守っている」司書たちの視線が温かい。無遠慮に立ち入ったり、訳知り顔で近づいたりすることなく、ただ、彼女の居場所を設け、さりげなくサポートし、必要なときにそっと手を差し伸べる。

    社会にそんな余裕があるといい。

  • 19年6月新刊★しずかな魔女 - 株式会社岩崎書店
    https://www.iwasakishoten.co.jp/news/n29889.html
    HIRASAWA Tomoko illustration
    http://studio-dessin.com/

    岩崎書店のPR
    中一の草子は、学校に行けなくなってしまい、今は図書館に通う日々を送っている。
    ある日、ふとしたことをきっかけに、初めてレファレンスを希望する。

    やがて司書の深津さんから渡されたのは「しずかな魔女」というタイトルの白い紙の束。
    ふたりの少女の、まぶしい、ひと夏の物語だった。

    物語を読み終えた草子の胸に、新しい何かが芽生える。
    それは小さな希望であり、明日を生きる力だった。
    https://www.iwasakishoten.co.jp/book/b451935.html

  •  平日の日中、図書館で過ごしている草子。「あなた中学生でしょ。よく見かけるけど、今日が何曜日が知ってる?学校はどうしたの?」知らない人にそう言われ、言い返すこともできずにいた草子を司書の深津さんが助けてくれた。
     草子は、お礼を言いたいのだけれど、しゃべるのが得意ではなくてうまく伝えられない。深津さんは、<しずかな子は、魔女に向いてる>と書かれた紙をお守りだと言って渡してくれた。
     間に『しずかな魔女』という物語がはさみこまれている形。そちらの主人公は、野枝という4年生の女の子。

  • 不登校の草子が毎日通っている図書館には、温かく心優しい大人たちがいる。びくびくと周りの様子を気にしながら過ごしているが、実はそっと見守られているのだ。「しずかな魔女」の作者であろう深津さん、勝手に草子が「館長」と名付けた男性司書。草子自身もそれに気が付くのだが、それは草子が成長していく大きなきっかけになっていくに違いない。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。『よるの美容院』で第52回講談社児童文学新人賞受賞。同作でデビュー。『紙コップのオリオン』は厚生労働省児童福祉文化財選出、『ABC! 曙第二中学校放送部』は第49回日本児童文学者協会新人賞受賞、第62回青少年読書感想文全国コンクール課題図書選出、『小やぎのかんむり』は第66回小学館児童出版文化賞を受賞する。ほかに『おしごとのおはなし美容師 かのこと小鳥の美容院』などがある(以上講談社)。

「2018年 『よりみち3人修学旅行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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