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Amazon.co.jp ・本 (32ページ) / ISBN・EAN: 9784265068272
感想・レビュー・書評
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ダグラス ウッド (著), ジム バーク (イラスト), 品川 裕香 (翻訳)
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教科書の文字が読めない男の子が,自身の経験・五感・興味をかき立てられる『ちいさな島』(ゴールデン マクドナルド, 童話館出版,ISBN:978-4924938625)の読書指導を通して,文字を読むことに立ち向かうストーリ.
この作者の自伝的な物語.担任の先生がひたすら寄り添うのがポイント. -
奥付より*
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読書には、情報を得るための読書と
読むという行為そのものを楽しむ趣味としての読書がある。
情報を得るために読書をすることは、誰もが必要とすることだが、
読書を趣味として楽しむことについては、
それを「必要とする人」と「しない人」がいて、
それはもう人種といってもいいくらい
きっぱりと分かれているものだと私は思っている。
リトル先生と出会ったことによって、本を読む喜びを知り、
大人になって本を25冊、ミュージック・アルバムを6枚出したぼく(ダグラス・ウッド)の姿は、
フォルカー先生に、自分に合った方法で字の読み書きを教えてもらい、
大人になって絵本作家になったトリシャ(パトリシア・ポラッコ)と重なった。
(『ありがとう、フォルカーせんせい』)
ダグラスは、著者あとがきの中で、自分自身についてこのように書いている。
ADHDはすぐに気が散り、忘れっぽく、ものごとに集中するのも苦手です。
読むことも学ぶのも苦手なのですが、それはそんなことが背景にあるからだと思います。
なにしろ、じっと座っていることややるべきことをすることさえ、むずかしいのですから。
トリシャについては、巻末にLDであると書かれている。
本書、そして、『ありがとう、フォルカーせんせい』は、
どちらも、読みに困難のある著者が小学校時代に理解ある先生に出会えたおかげで、
字が読めるようになり、作家になったという自伝的作品である。
ここでもう少し、ダグラスとトリシャの素地や環境に迫ってみたい。
パトリシア・ポラッコの家系は、『彼の手は語りつぐ』を読むと
代々ディスレクシア傾向を持った家族がおり、
口伝で大切に伝えてきた物語があることがわかる。
だが、彼らは、本が嫌いだったわけではない。
『ありがとう、フォルカーせんせい』に書かれているように、
子どもが5歳になると、
「ハチミツは あまーい。本も あまーい。
よめば よむほど あまくなる!」
と、ハチミツを本にたらして、
本を読む練習をする日を祝う儀式をしていた。
日本語訳されていないが、パトリシア・ポラッコの母である、
Mary Ellenを主人公とした"The Bee Tree"という絵本がある。
この本を読むと、ポラッコ家の人々が、なぜ代々「はちみつの儀式」をするのかがわかる。
トリシャが、本を好きになったのはフォルカーせんせいに出会う以前に、
こういった家庭環境が本好きになる素地を作っていたからだと考えられる。
一方、ダグラスは、生き物が好きという素地を持っていた。
特に、カメが大好きで、のちに執筆してリトル先生に贈った本はカメの本だった。
ダグラスは、リトル先生との居残りの時間に、"The Little Island"という本を読むのだが、
この本を手にしたときに、彼はすでに「島のことをしっていた」。
なぜ、島のことをしっていたかって?
だって、毎年、夏になるとおじいちゃんが
ぼくの家族全員をミネソタ州の北にある
カベトガマ湖につれていってくれていたからだ。
湖の名前はカベトガマとながったらしいけれど、
ぼくはちゃんといえたし、よむことだってできた。
だって、ぼくはカベトガマがだいすきだったから。
本書は、"The Little Island"を表紙側から絵に入れるだけではなく、文字側からも絵に描いている。
表紙側からの情報でタイトルと著者名がわかった。
現物を手に入れて、ダグラスがこの本に出会った時の感動を一緒に味わってみたくなった。
絵本を文字側から入れたページで、
本書の中にあるページと開いた原書の絵が一致して、興奮してしまった。
ダグラスがどのラインを読んでいたのかがわかる。
どのページを読んで、彼自身の体験とどのように結びつけたのかがわかる。
ダグラスは、picnicのつづりが、なんでpiknikじゃないんだろうと思ったりするけれど、
「そんなことにこだわるより、そういうところはカンをはたらかせて、よみつづけること」にした。
「リトル島でのピクニックがどうなるか、しりたかったから」。
体験や興味関心と本の中の世界、文字の世界がつながろうとして、つながる瞬間がここにある。
ピクニックにはこねこもいっしょにやってきた。
こねこはあんなにちいさいのにリトル島をたんけんし、
ひみつの場所をみつけたり、いろんな魚や動物たちから
島のひみつをいろいろとおしえてもらってきた。
それはなんと、ぼくがカベトガマをたんけんしたときに
発見したひみつとおなじだったから、なんだかすごくうれしかった。
こねこが教えてもらった秘密とダグラスが発見した秘密が、両者をつなげたのだ。
こねこと秘密を共有したダグラスは、"The Little Island"の難所に突入する。
本の中も嵐なら、言葉もどんどん難しくなる。
「草木におおわれた”や・ま”みたいにおおきな波がやってきて、
“いな・づま”や“かみ・なり”がとどろき、
ずっと“ヒ・ヒュー・ヒ・ヒュー”と
“う・な・る”風の音がしていた」だって。
ダグラスが読みにつまっているところは違う字体で書いてある。
やっと本をよみおえたとき、
ぼくは大きなうなばらにうかぶリトル島に
いつかいけるかもしれないとおもえるくらい、
この島のことがわかるようになっていた。
体験が本と結びついた次の段階として、本の世界がまた次の体験を呼ぶ。
ポラッコ家の人たちは、
「本を読むことは、走って蜂蜜の木を探しにいくのと同じことで、
本のページを通して探しにいかなくてはならないけれど、
そこには冒険や知識や知恵がつまっているんだと」という
思いを込めて、「はちみつの儀式」をやっていた。
「だって本をよめば、世界中をたいけんすることができるのだから!」と
大興奮しているダグラスは、そのままポラッコ家の人たちのイメージと重なった。
ダグラスもトリシャも、先生との出会いを通して、
「読書を趣味として楽しむことを必要とする人」になったのだと思う。
本書は、私が「私の本」に出会った時の感激がそのまんま描かれているように感じた1冊だった。 -
2年生のダクラスは、転校生で、チビ。なにより字が読めないのが問題だった。でもリトル先生がゆっくりゆっくり読み方を教えてくれて…。とうとう1さつの本を読み終わったときのうれしさ! ダグラスは本を読めるよろこびにめざめたのです。
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