ミシシッピ冒険記 ぼくらが3ドルで大金持ちになったわけ

  • 岩崎書店 (2021年7月19日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784265860500

作品紹介・あらすじ

注文したピストルの代わりに届いたのは壊れた懐中時計だった! この奇妙な品がぼくらを遠くシカゴの街へと導き、陰謀の渦中へ誘うことになるとは、誰に想像できただろう。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。マカロニミッドウエスタンわらしべ長者。
     原題は”有名なウォーカー&ドーン社カタログ”という感じ。イタリアのベストセラー小説。舞台はルイジアナ、ニューオリンズ郊外のフランス移民を中心とする田舎町、テ・トワ、エディ、ジュリー、ティトという4人の子供が主人公で、4章をこの4人がそれぞれ視点人物となりリレー式で語られるという後日譚。1904年ごろ、ジムクロウ真っ只中の時代、秘密基地で遊ぶ4人が3ドルを発見し、タイトルのウォーカー&ドーン社カタログで通信販売でピストルを購入したが、送られてきたのは壊れた懐中時計だった。先日読んだ”ザリガニ”の舞台と似たような環境の半世紀昔の話という感じ。本文でも言及されるがトウェインを思わせるミシシッピ川を旅する様子がとても素晴らしい。旅に出た後は家族とも縁が切れているのも当時らしくて良い。特にテトワやティトは南部ではどうにもならなかっただろうし。ニューオリンズからセントルイスまでは船、セントルイスからシカゴへは列車。シカゴでは少しそりゃ無茶な、という箇所もあるが、とても面白い結末だった。

      挿絵とか、カタログ(もちろん物語に出てくるフェイク)がものすごく精巧というか、当時の古本をそのまま使ってる感じがいい味わい。

  • ミシシッピ川の河口流域に住む4人、テ・トワ、エディ、ジュリー、ティトの冒険譚。テ・トワは冒険好きで無鉄砲な男の子、エディはひ弱だが博識でシャーマンの素養もある男の子(ネイティブの血を引く?)、エディは心に鎧をまとった冷静で明晰な赤毛の少女、ティトは黒人の血を引く無口なジュリーの弟(自閉症?)。

    沼地に隠れ家を持つ彼らは、バイユーに丸舟を浮かべて釣りをし、空き缶を釣り上げた。その中に硬貨が3ドル入っていたから4人は大喜び。4人は大人に内緒で通販で拳銃を購入することにした。ところが、手違いで故障した古い懐中時計が届き、失望する4人。だが、4人の前に通販会社の販売員が現れて、時計を高く買い取りたいという。

    ニューオーリンズからシカゴへ、アメリカを南北に縦断する4人の波瀾万丈の冒険が始まった。船旅、追い剥ぎの襲撃、無賃の列車旅、補導・拘束…。4人はやがて、ミスター・ダースレイ殺人事件に絡んだ懐中時計後に謎に辿り着く。ミステリー仕立ての冒険譚。

    掛け値なしに面白かった。聡明でやんちゃな子供達の大人社会への反発心がメインテーマだが(たぶん)、根深い人種差別や女性蔑視など、1900年当時のアメリカの世相も丹念に描かれていてる。子供向けの作品なようでいて、読者の年齢を選ばない、良作だと思う。

  • 1900年代初頭のアメリカを舞台にした冒険小説。上質な紙を用いたハードカバーで、装幀も挿絵も原書の精緻なイラストを用い、児童書というよりはむしろ大人向けの少し古風な冒険小説のよう。著者がイタリア人というのが不思議で、どうしても「マカロニウェスタン」を思い出してしまうけど、苦みに満ちた……というようなこともなく、ハラハラしながらも安心して身を委ねられる物語になっている。

    ハックルベリー・フィンばりにミシシッピをさかのぼる描写もあれば、貨物列車の外側につかまって前の車両に移動するというよくあるアクションもあり、列車から飛びおりる描写あり、つかまって鑑別所のような施設に監禁される場面もあり、およそ冒険小説といったら思いつくような場面がてんこ盛りで、つぎからつぎへとテンポよくたたみかけてくる。

    主人公たちも、冒険家気質でワイルドなテ・トワ、物静かで研究家タイプのエディ、苦難に耐え忍ぶ泣かない少女ジュリー、ジュリーの腹違いの弟で黒人の(そしてたぶんアスペルガー的傾向のある)ティトと、それぞれ特徴があって、心を寄せやすく、エンタメとしてとてもすぐれている。一気読みでした。

  • 20世紀初頭の米国、ミシシッピ川河口の町に住む4人の少年と少女。沼で釣り上げた3ドルで通販カタログのピストルを買う。が、とどいたのは壊れた懐中時計だった。でも、この時計はとんでもない価値があったのだ。
    拾った3ドルで、大金持ちになった4人の冒険物語。

    米国とはいえ、この時代なので様々な偏見、差別が横行しているし、道徳的価値観も様々。面白いしかけなんだけど、最後まで納得できないのは、子どもたちが冒険に出たあとの家族たちはどうなんだ!と思う。もともと失格の親もいるみたいだけど、突然冒険の旅に出たら親は心配するよ。そのへんのフォローが、最後までなかった。
    そして、作家はイタリア人。ダメではないけど、なんでイタリア人がアメリカの少年少女のミシシッピ川の大冒険を題材にしたのか。いろいろ???だった。

  • 少年少女向けのものがたり。図書館にいったとき、なぜか気になって借りてみたものです。
    ほんとに子ども向けものがたりだと思うんですけど、人種差別や女性問題のエッセンスを含んだエピソードが入っていたりして、けっこうおもしろかったです。【2022年8月11日読了】

  • ルイジアナに住んでいる4人の少年少女は、偶然見つけた3ドルでカタログ通販を利用して拳銃を手に入れようとする。しかし送られてきたのは古く壊れた時計だった。その時計がひじょうに価値のあるものだとわかり、4人はその時計を売って大金を得るためにシカゴまで行くことを決める。

    まずアメリカの地図を開いて、おお、こんなところまで行ったのか!?と驚いてしまった。
    4人の旅は危険がいっぱいだ。子どもだけの旅だから当然で、多くの人に出会うが、誰を信用すべきかわからずハラハラドキドキする。
    表紙や中にところどころ挿入されているカタログや新聞が面白いなと思った。
    各章で語り手が変わるのがいい。語り手によって植え付けられた人物の印象が、別の語り手に変わるとともに変わる。テ・トワはエディのことをのろまで頭の回転もよくないように語るけれど、エディが語るのを読むと、丁寧で慎重なだけだとわかる。また、ジュリーはおてんばな明るい少女なのだと思っていたけれど、思慮深く弟を守るために必死なことが分かる。また、意外に少女でなく、もう女性であることも。泣けない少女、ジュリー。彼女が語り手の章ではいろいろなことを考えさせられた。ほんのり語られる恋心もいい。ほんのりなところが。
    ティトが黒人であることや、KKKについてなどは軽く触れられてるいるだけだが、この時代背景を知っていると、よくティトはジュリーと一緒にいれたなとか、よく一緒に旅できたなと思う。

    ただの冒険譚で終わっていないところも面白い。大人が読む方が面白く感じるかもしれない。

  • 昔のことが知れたししました。たとえば昔はよくこどももタバコを吸っていたとか

  • 20世紀はじめのアメリカが舞台。著者はイタリア人。カタログショッピングで間違えて送られてきた壊れた時計をめぐる大冒険。

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