アラミスと呼ばれた女

  • 潮出版社 (2006年1月5日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784267017360

感想・レビュー・書評

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  • 幕末の長崎の出島。カステラ、ワイン、ギヤマン、オランダ人、坂道、宣教師、教会。
    そんな長崎に通訳として召し抱えられた父について、江戸からきた柳の一生の物語。

    歴史と実在の人物と、主人公の一生がからまって、とても興味深く読んだ。

  • 時代は幕末から明治。

    江戸の錺職人の父は、外人の土産のかんざしなどを作っていた。意匠を依頼主の外国人と通詞を介して話すのに、江戸っ子の父親は回りくどいと感じて、自分でオランダ語会話を独学で習得。続いて英語も習得。そんな錺職人を幕府の役人が放っておくわけがない。
    通詞の最下級の「稽古通詞助」の少し上「小通詞並」として出島に派遣。
    もともと外国語習得が得意な父平兵衛はみるみるうちに、フランス語にも意欲を見せる。平兵衛の娘「柳」もフランス語を学びたいと父に教わる。

    平兵衛と江戸時代から懇意にしていたのが榎本釜次郎。子供の頃から密かに釜次郎に思いを寄せる柳はフランス軍の兵法を教えるフランス人の世話を頼まれ、男装してしごとをする。

    榎本釜次郎は五稜郭で官軍に反旗を翻した張本人だが、続く戦で坂本龍馬を始め多くの人材を失った政府は、釜次郎の人物ぶりを惜しみ、助命嘆願運動がおきた。

    アラミスと言うあだ名はフランスでも高く評価され、日本でも後から勲章を受ける生え抜きの軍人ブリュネがつけた名前で、あの三銃士のアラミスを彷彿とさせるため名付けた。

    このあまりにも、ノンフィクションかと思わせる物語は、実はこのような男装の女性フランス通詞は他に存在する。ブリュネによるスケッチにも描かれている。
    『田島勝』と言うらしいが、何しろ女性通詞は認められていないため、詳しい記録が残っていない。

    後から調べるまで、全部本当のことと、思い込みたくなる実にリアルな物語に仕上がっている。

    登場人物柳の家族以外は、かなり史実に則している。

  • 肥前長崎。出島は女人禁制。
    しかし、お柳(アラミス)はフランス語通詞への
    憧憬をひそかに抱いていく…。
    榎本武揚と共に幕末を生き抜いた男装の
    通訳の数奇な運命を描く。

  • 幕末、海軍の軍事顧問団の一員として来日し、明治の世になって、勲二等瑞宝章を授与された、ジュール・ブリュネ。
    彼が日本滞在中に描いたスケッチの中には、歴史に記されていない、フランス語通詞・アラミスという人物が存在する。
    歴史の隙間にひっそりと息をひそめる「アラミス」とは何者なのか。
    作者なりにその人物像を掘り起こした、半・フィクション。

    幕末、長崎は出島でオランダ通詞を務める父親の娘に生まれた「田所柳」(お柳)は、英語・フランス語に堪能。
    海軍伝習所に通う、榎本釜次郎と知り合い、その人生と関わっていくこととなる。

    幕末動乱期の政治、主義、力関係の推移は、何度読んでも難しい。
    加えて、新政府に従うを良しとせず、元幕臣たちを率いて品川沖から出航し、東北を転戦しながら北上する釜次郎たち「幕府軍」の戦いなどの説明が延々と続くのが、なかなかに大変だった。

    女が役人になれなかった時代、お柳の通訳としての仕事は無かったことになる。
    その事に忸怩たる思いを抱いたこともあったが…
    人生の大半を終えた彼女の、サッパリとした思い切りには目を見張る。
    しかし、サッパリと思い切れるのも、彼女が釜次郎のために力を尽くし、通詞の仕事も人並み以上にこなし、悔いのない生を生ききった結果なのだろう。

  • 宇江佐さんお得意の、実在(お柳さんは定かではないけれど?)人物を描いたほうの小説。人情物のほうも好きだが、こっち系のほうも嫌いではない。
    明治初期にお柳さんのように3カ国語を話せる女性がいたことに力強さを感じる。

  • 宇江佐氏の作品はあやめ横丁から読み始め、幻の声、アラミスと読んできましたが…コレはちょっとやられた感がありました。
    時代背景、戦争の詳細を詳しく差し入れながらの展開は少し煩わしくもありましたが、お柳の人生から見える時代の移り変わりは歴史して知っている人達が生き生きとしていて新しい見方がありました。
    柳の強さは時代背景の詳細ががあってこその物だったと反省と再読の決意をしました。

  • 長崎の出島で通詞をする父のもとでフランス語を覚えたお柳。父は攘夷派の者に暗殺され、江戸で芸者をして暮らすが、縁のある榎本武揚と再会。榎本に誘われ、男装の通詞として幕末維新の蝦夷地へ向かう・・。父が図書館で借りてきた本を自分も読んでみました。どこまでが本当なのか分かりませんが、物語として面白かったです。時代小説もいいなと思った一冊。

  • 9/12/10図書館

  • 読んだ日 2008.3(借:大村市民図書館)(17/105)

  • お雇いフランス軍人が残したスケッチにあるが,写真がない通辞〜田所柳の父は簪職人であったがオランダ語に通じていたお陰で役人に取り立てられ,女房娘を連れて江戸から長崎に移り,攘夷論者に殺害された。江戸に住まっているときに知遇を得ていた榎本家の次男が海軍練修所補欠で来ていたのを世話し,江戸に戻って芸者になって,榎本釜次郎と再会し,男装をしてフランス語通辞として幕府軍に協力する。武揚と共に蝦夷に行き深い仲になる柳であったが,五稜郭が墜ち,フランス人将校と共に江戸に戻って女児を生む。武揚は官軍に投降し,外交官として活躍し,娘・お勝は外交官と結婚し,英語を話す機会を得る。柳は子供時代を過ごした長崎に帰る〜フランス軍人・ブリュネは勲2等を授与されている。榎本武揚と行動を共にし,スケッチを多数残したが,三銃士の登場人物一人のアラミスと呼ばれたが一枚の写真も残っていない通訳がいた。それを女とし,武揚の子を産んだとするフィクション。史実に充実であろうとする部分は退屈で眠くなる

  • 幕末から戊辰戦争までを、幕府通司お柳(アラミス)を通して、榎本(釜次郎)武揚の生涯を語る。釜次郎の江戸弁・お柳の長崎弁もいい

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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