こころと脳の対話

著者 :
制作 : 茂木 健一郎 
  • 潮出版社
3.63
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本棚登録 : 275
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267017995

作品紹介・あらすじ

「脳」は「悩」を救えるか!?人生を二倍楽しく生きるココロとアタマの活用法。

感想・レビュー・書評

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  • 河合さんが病気で倒れる4ヶ月前の対談が載っている。
    茂木健一郎という人は脳科学者であるがとても宗教的な考え方をする人で、養老孟司さんと似ている。
    茂木さんは、河合さんのフワフワした話を、茂木フィルターで読者にわかりやすく整えてくれるので、とてもわかりやすい。
    「夢の話」と「関係性の話」が特にためになった。
    ★夢の意味を自分で考えてみる
    河合:簡単な例をいうと、僕がある人に「ちょっとお金を貸してほしい」といったとしますね。すると、その人は僕にとってはお金を貸してくれるかもしれない人だから、もうその時点で、その人を尊敬せざるをえないような気持ちでいっているんですね。だから、「親切そうな、いい人や」というのが、僕の意識的目的に適っているわけですね。
    ところが、まさに僕のなかの「クオリア」では、「変なおっさんやな」というのも、やっぱりどこかでは思ってるわけです(笑)。しかしそれは意識化されない。「変なおっさんやな」というのと、「いい人や」というのは矛盾するわけでしょう。しかも、意識のうえでは矛盾せずに。そして帰って寝るでしょう。そしたら寝ているあいだ、その変なほうが動き出すんですよ。それを夢に見るんです。
    わかりやすくいうと、僕らが生きているということ自体、ものすごく無理をしているわけでしょう。それを無理しているだけではもたないから、寝たときに調整するわけです、全体性のなかに。その全体性のなかに調整する動きを、脳のなかで視覚的に把握したものが夢ではないかと、僕はそう思ってるんです。
    だから夢を見るということ自体が、ものすごい大事なことなんですね。それは解釈しなくてもええぐらいなんだけれど、解釈したほうがおもしろいと。いろいろ役にも立つし。夢を見なかったら、だんだんおかしくなってきますね。だから夢というものは、生きていくために必要なものだと僕は思っているわけです。それは一種の調整作用みたいなもの。

    私:確かに、ストレスを相殺するような夢を見ているような気がする、ではそのストレスとは何かを考えても自分では答えが出せないことが多いと河合さんは言っている、それを探り出すのがカウンセラーの役目だとも。

    ★「関係性」とは心のつながり
    河合:わかりやすい例を挙げますとね、不登校の子どもさんに、「きみ、学校へ行ってないんだってね」と.「ではまず、玄関まで行きましょう」と.行ったら「えらかったね。じゃあ、次はあの角のところまで行きましょう」。また行ったら「えらかったね」とやるわけですよ。これが行動療法ですね。
    それを実際、僕の知っている学校の先生でやった人がいるんです。そしたら、どんどん学校に近づいていくわけですよ。とうとう、学校の保健室まで行ったわけ。
    そしたら、保健室にほかの先生がきて、「おい、なにをボヤボヤしとるんや。ここまでこれるんやったら、教室へ行って、勉強せい!」ってやったわけですよ。
    そしたら、その子は家に帰って、もう学校にこなくなった。つまり、そこで関係性がパーン、と切れたわけですよ。
    ここで大事なのは、「ここまで行った」「あそこまで行った」というのは、科学的、論理的にうまいこといってたんやない。それは、先生とその子との関係性で行われていた、ということなんです。
    茂木:行動が切れたんじゃなくて、関係性が切れたということですね。
    河合:こういうことを、僕は「関係性の科学」とか「新しい科学」とかいっているんですけれど、それをもっと考えないといけませんね。

    私:この本を読んで、関係性を切らないことが重要と知ると、自分の言葉は切ってばかりいると感じた。つまり、他人を怒らせるような発言だ。 「関係性を切らない喋り」「関係性を切らない喋り」「関係性を切らない喋り」、いつも気にしてないと忘れる。(笑)

  • 大好きなお二人の対談。ためになることが満載でした!!

  • 河合隼雄先生と、茂木健一郎さんの対談は、スラスラ読めるて、とてもわかりやすく楽しい。

    河合隼雄先生の書かれた本では、難しいと感じる部分でも、対談だからこそ、ストンと落ちる部分がある。
    シンクロニシティ(ユング)、ただいること。が、腑に落ちた。
    心理学を勉強し始めて10年近いが、河合隼雄先生がご存命の時に学びたかったなーと切に思えてくる。



    第1回 心と脳の不思議
    ユングは人間の何を見ようとしたか/学生時代の箱庭体験/安易に「言語化」することの怖さ/夢の意味を自分で考えてみる/心の盲点が夢に現れる/「気づき」の感覚を忘れた科学/「関係性」とは心のつながり/「愛は盲目」は脳科学的に正しい/「中心統合」の欧米、「中空均衡」の日本/「三年に一人、本物が出ればいい」/無用な決まりごとが多すぎる/「診断を下す」ことが患者を苦しめる/「私」とは「関係の総和」/変化という「可能性」に注目する/脳科学では心の一部分しか見えない/近代科学が排除してきたもの/ひとつの事例は普遍に通ずる/話を聞くだけで疲れてしまう人/人は極限で同じ心の動きをする

    第2回 箱庭と夢と無意識
    箱庭のなかの「生」と「死」/「わからない」ことを大事にする/ニワトリが牛耳る不思議な世界/箱庭をして帰って行ったゴリラ/世界全体を見ている「誰か」/そのアイテムを選ばせる「無意識」/東洋人の箱庭のには自然が多い/無意識につかみ出すとっかかり/「シンクロ」はどうして起こるか/非因果的連関をおもしろがる/因果のしがらみを解きほぐす/箱庭で体験するシンクロニシティ/世の中を縦糸と横糸で見てみる/関係性でのみ成り立つ確実性/科学主義との果てしない戦い/箱庭をしているときの脳活動/科学と「人生」との乖離/身の上話に夢中になる運転手/「運命の人」も文脈のせい?

    第3回 「魂」を救う対話
    脳治療の倫理的課題/脳科学に限界はあるか/夢の中で「意味」がつながるとき/自己矛盾を解決するための装置/言語に依存しすぎの現代人/相手の苦しみを正面から受け止める/「中心をはずさずに」/相づちの達人/相手の「魂」だけを見つめる/治療が必要かどうかの見きわめ/「偶然」というものを大事にする/何年も経って意味がわかる夢/全体に、平等に注意力を向ける/数学から心理学の世界へ/脳科学の「科学的真実」への疑問/現代人の不安の根本原因/「関係性」を扱う科学は生まれるか/答えを与えるより、悩みを共有する/「わかった気になる」落とし穴

  • 欧米の中心統合と日本の中空均衡:一神教・中心がパワーを持っている欧米、多神教・リーダーがなにもせずにみんなのお伺いでやる日本。どっちもこれから大事。

    カウンセリングをしていて、ふつうの話をして帰ったのに、こっちはものすごく疲れている場合がある。その場合はその人の病状は深い。こちら側が相手との関係を保つためにものすごく苦労している証拠。一般的にも、あの人と話すと疲れる、という人がいる。あるとき相手が一生懸命話してて、こっちも一生懸命聞いているのにどうしても眠くなってしまって、正直に言って、なにか心当たりがあるか聞いたら「一番大事なことを言っていません」と。

    間違って因果関係を捉えてることがある。あの子が悪いのは父親が酒を飲むせいだ、とか。

    貴重なものを扱ってる時にいきなり壊したり、まじめにデートしてるのにいきなり相手の頭を叩いたり。そういう人は、どこかで無意識的な力に忠実に動いている。

    偶然というものをすごく大切にしてる。今日ここに来る途中にきになる店があって入ったと、それで今日の対談を忘れてしまったら大変だけど、普通の人はちょっと常識の区画の方に入り過ぎている。約束があるから行かないとか、これ買っておかないといけないとか。なるべくはずそうと思って生きてる。バランスが大事だけど。

    Depressionの脳の部分に電流をあてると本当にいきなり何も悲しくなくなる、まったく普通になる。

    夢:誰かに会って、あの人はいい人、と思ってても本当は別のところでもっていた、ちょっと変なひと、どうも目つきがあやしかった、とかそういう余計な感情を知覚しても排除している。自分にいいところばかり記憶する。でも夢のなかではその排除したほうの部分が出て来たりする。通常の意識に入れてないけど知覚している部分はたくさんある。

    まっすぐに受け止めて聞いてさえいれば、「中心をはずさずに」そこにいる。それができれば相手は治る、変わる。奥さんの悪口ばっかり言ってる人に、そう悪口ばかり言うなよ、っていうのはもうはずれている。悪口いいたがっているんだから、それをバチっと正面から受ける。簡単にはできないけど。中心をはずさないということ、顔にも服装にも全然を関心示さない。あえて言うなら魂だけを見ている。私は悲しいことにあいました、っていう人にふつうは、へー!とか言うけどほとんど言わない。人によっては冷たい人だなと思うけど、冷たいとか、あったかいとか親切、一生懸命、とはまったく別次元で座っている。そういう風に自分を鍛えてきた。現代は、そういう魂よりも、Detailsに引きずられちゃう。
    釈迦は死後の世界について聞かれた時、そういうことには答えないのだ、と言った。答えをすぐ求めすぎる傾向は現代病。言葉とか細部に引きずられすぎる。判断が早すぎる。年収聞いたらトップから下まで全部順番がついてしまう。ちょっとでもお金の多い方に行こうとする。頑張っているようだけど、実は個性を摩滅させる方に頑張っちゃってる。だから細部に飛びつかない、という姿勢がものすごく大事。人を全体としてみる。

    相槌の達人:河合隼雄がタクシーに乗ってるだけで、運転手が身の上話を始める。はぁ?とかふうん、とか言うだけで。

  • ・シンクロニシティ= 意味ある偶然の一致。
    ・箱庭療法
    ・関係の総和が「私」。(華厳経の考え方)
    ・「分からない」ということ。

    <blockquote>「わからない。わからないのが大事なんです。だから、それが「可能性」なんです。だからこれを続けると、その可能性が活躍したりするんですよ。
    可能性がもう出てきてる。自分でもわからない可能性があって、そのへんが活躍しだす」</blockquote>

    ・全体で見る。顔でも服でもなく、魂を見て話す。
    ディティールに囚われない。

  • 河合隼雄先生のなんていうか、あまりにも人間的な面白さが対談のおかげで会話になっているのでよく伝わってきた。

    だいたいにおいて、河合先生は偉ぶらず、ユーモアがある方というイメージ。関西弁が面白い。私の好きな人たちは、皆さん河合先生のことが好きなので、もっと知りたい。

    シンクロニティの話から、河合先生が因果関係についてさらっと述べたことが印象的

    _非因果的ということはものすごく大事。それが、どうしてもみんな因果的にものを言いすぎる。_

    それから、これはお2人とも同意されていた、

    _答えをすぐ求めすぎるというのは現代の深刻な病_

    ええなぁ。

    箱庭療法にものすごく興味をもってしまった。次は河合先生の箱庭についての本を読んでみよう。

  • 久しぶりに良い本読んだー!
    夢解釈、無意識の選択、傾聴、関係性、真ん中にいること…etc。もう勉強になりすぎて付箋でいっぱい。
    人間は、その刹那の微妙なやり取りで響き合う生き物。人間を救うのは、やっぱり人間なんだなと思った。

  • ”心脳問題のハードプロブレム”に取り組む茂木先生の悩みを河合先生が聴く…という話ではないですが、
    それに近い内容です。

    科学ってのは、無駄を削って単純化して、因果関係で考えますが、
    こころを見る時にはその無駄な部分や、因果関係の分からない無意識の働きが重要だったりしますよね。

    「因果関係でがんじがらめになった現代の思考パターンを解きほぐしたい」という河合先生の言葉が印象的です。

    シンクロニシティだとか、理由はよく分からんけど気になるもの、
    いつもと違う方向にこころを開けば、世界がもっと広がる気がしました。

  • 対談というか茂木さんが河合先生に気を遣いながらインタビューしているような…そんな印象

  • 臨床心理学者と脳科学者との対話。こころと科学との乖離、関係性、無意識について。脳科学の話題は、あまり出てこなかった。13.12.29

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