潮新書 目の見えないアスリートの身体論 なぜ視覚なしでプレイできるのか

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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267020599

作品紹介・あらすじ

あなたは目をつぶって一〇〇メートルを走れますか?リオ戦士たちの「目で見ない」世界はおもしろい。

感想・レビュー・書評

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  • 副題『なぜ視覚なしでプレイできるのか』
    →それそれ!なんでできるの?と、常日頃不思議に思っていたことがらへの答えがここに!
    俄然、読みたくなってきます…!
    著者の伊藤さんは、名著が多い◎『ケアをひらく』シリーズの、『どもる体』の著者でもあるのですが、人間の身体にとても興味関心がある方なのだなぁ~。深く調べているなぁ~と、著書を読むたび感服いたします。ちなみに、著者の専門は『美学、現代アート』

    裏表紙に記されている文章を紹介します。

    『私たちの多くがいつもやっているのとは違う、別バージョンの「走る」や「泳ぐ」。それを知ることは、障害のある人が体を動かす仕方に接近することであるのみならず、人間の身体そのものの隠れた能力や新たな使い道に触れることでもあります。
    「リハビリの延長」でも「福祉的な活動」でもない。身体の新たな使い方を開拓する場であることを期待して、障害者スポーツの扉を叩きました』

    『メッシのドリブルはブラインドサッカーの動きそのもの』という、本書の中の記述があるのですが、今年、ワールドカップ開催&日本代表決勝トーナメント出場と歓喜していた自分にとっては……!タイムリーでした( ≧∀≦)

  • 目の見えないアスリートの身体論

    走るとは両足を地面から離す行為

    1.空間の人工性
    生活の空間はエントロピーが大きく、スポーツの空間は小さい
    ブラインドサッカーは街中よりはるかに安全と語る日本代表選手

    2.ゲーム条件としての視覚なし
    ゲームとは制限を設ける事
    サッカーの原型は祭り
    制限のひとつとしての障害

    3.目の見える人と見えない人の相互関係

    水泳、木村選手 イメージはない。

    スポーツはエントロピーが少ない。
    純粋に自分の運動一点に集中している。

    気づいたら見えなくなっていた

    見えてない人と夢は違う?

  • 恐るべき才能の出現である。2冊読み、思わずBABジャパン社にメールを送った。直ちに伊藤亜紗を起用して日野晃や初見良昭〈はつみ・まさあき〉を取材させるべきである、と。単なる説明能力ではない。柔らかな感性から紡ぎ出される言葉が音楽的な心地よさを感じさせるのだ。その文体は福岡伸一を凌駕するといっても過言ではない。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/12/3.html

  • スポーツは、目の見えない人にとっては、安全な場所。という感覚に驚いた。

    ルールがあるからこそ、自由に出来る。それは、フィールドやコートといった仕切られた空間も同様。

    ルールがあるから自由、安全という感覚は、一般的な社会においても、示唆を与える。

    とにかく、特殊な状況を理解することは、物事を理解する上で、様々な気付きを与えてくれる。

  • スポーツに限らず日常においても視覚からの情報というのは非常に大きい。

    そんな視覚情報を使わないスポーツ競技のアスリートは一体どのように身体を使いこなしているのか。

    未知の世界の身体論は非常に興味深かったです。

  • 前著「目の見えない人は世界をどう見ているのか」の一流アスリート編。興味深い世界が開かれていく。視覚障害に対して、かわいそうではない、平等な地平がスポーツを通して見えてくる。

  • 対談形式でのパラスポーツのあれこれ。
    考え方、捉え方が分かって面白かった。

  • 当然ながら今の巷が大好きなお涙頂戴的感動話ではなく、パラアスリートの身体や脳の動きを科学的に分析するのが主題。たとえば視覚障碍者は健常者のようなイメージトレーニングは出来ないが、世界トップレベルのパラアスリートがしている代替手段などは一般市民アスリートである私にも目から鱗的なヒントとなった。

  • ブログをこちらに書きましたので、宜しければお読みください。

    http://sommelierofbooks.com/politics/blindathletes/

    2020年に東京で
    オリンピック・パラリンピックが
    行われます。
     
    でも『パラリンピック』は
    ルールも分からないし、
    どこをどう楽しんだらいいのやら・・・
    というのが正直なところでしょう。
     
    しかし、ルールさえ分かれば
    パラリンピック競技を楽しめる
    可能性は十分にあるのです。
     
    今回は『目の見えない人』の競技に絞った
    本を紹介します。

  • 『目の見えない人は世界をどう見ているのか』のアスリート版。
    目が見えなくなったその人の物語ではなく、競技に対する技術と戦略のはなし。空間の中で自分をマッピングして俯瞰と主観を切り替えていく話がおもしろかった。また目から鱗。

  • 目をつぶって10m歩くことはできますか。歩くどころか100m走る、サッカーをする、こんな「離れわざ」をやってしまう視覚を使わない運動のひみつにせまる。A

  •  ブラインドサッカー、陸上、水泳、ゴールボールの読ん選手のインタビューを通して視覚障害者のスポーツの世界に迫る。

     そもそもスポーツとはルールという制限をかけて行うものであり、一見遠いように見える障害とスポーツは非常に相性がいい存在だった。視覚障害者のスポーツはただ障害者がやるスポーツではない。目が見えないという制限は新たな技術や駆け引きを産み、新しいスポーツへと発展させている。
     目の見えない人の世界の理解にも役立つが、スポーツと障害というものの関係から改めてパラリンピックの意味を感じることができた。

     東京パラリンピックまでに多くの人に読んでほしい一冊。

  •  いい試みの一冊だった。
     
     障害者と健常者の違いをハンデと称し、その差を埋めて同じにすることを平等とする、そんな一般認識に一石を投じる。「同じ」にすることを強調するのでなく、「違い」に注目する。注目するだけでなく、その違いの先にさらなる可能性を見出そうとする試みが、明るい!

     本書では視覚障碍者を取り上げる。視覚障碍者によるスポーツは
    「私たちの多くがいつもやっているのとは違う、別バージョンの「走る」や「泳ぐ」」
     だという。さらに、
    「それを知ることは、障害のある人が身体を動かす仕方に接近することであるのみならず、人間の身体そのものの隠れた能力や新たな使い道に触れること」
     と考えることがすごい!見えないことで発揮される他で研ぎ澄まされる感覚を「能力」とする発想が前向きだ。

     その発現をルールの定められたスポーツの場に求める。そのルールは敵味方とも平等だし、ハンデではないのだ。なんなら、その同じルールの下で、つまり、「視覚を使わない」という“ルール”で視覚障碍者も晴眼者も同じ土俵で戦えばいいのかもしれない。
     そこまで本書は突っ込んでないけれど、究極はそういうことじゃなかろうか? 条件さえ満たせば、ブラインドサッカーにJリーガーが完全目隠しして同じピッチに立つということだ。それが究極の平等なのかも?という可能性を垣間見せてくれた。
     ブラインドサッカー、水泳、陸上、ゴールボールのパラリンピック選手との対話がメインの本書。視覚に頼らない「能力」を有する彼らの発言が実に前向きなのが何より素晴らしい。彼等には我々に見えていないものが見えている。

     スキルを高め、判断力を磨くために、ブラインドサッカーの、つまり視覚に障碍を持つ加藤健一選手が、
    「視野を広く持ち、次にどうなるか予測を立てておくことが必要」
     と言ってのける。これに快哉をとなえずにいられようか。天晴だ。

  • リオデジャネイロでのパラリンピックが盛り上がりは2020年に向けて障がい者スポーツへの関心のギアを一段階上げると思います。NHKの放送もソチの時は教育テレビの福祉番組が中心にあったように覚えていますが今回は総合テレビでスポーツとしての中継が存在感を増していました。本書も社会福祉的な論点ではなく身体論としての切り口が新鮮でした。手に取ったのは以前にたまたまお話を伺った5人制サッカーの日本代表の落合啓士選手がインタビューに答えているのを見つけたからなのですが、その際、見えている時代にサッカーを見てからその後ブラインドサッカーに入る選手より、初めからの選手の方が可能性が高いかもしれない、と言われていたのを思い出しました。失ったものを取り戻す、のではなく、持っているものを強める。身体論としての障がい者スポーツが時代に投げかけるメッセージは大きいと思います。

  • 目の見えないアスリートたちが行う「離れわざ」の技術や戦略について触れる。障がいを抱えた人たちの運動を通して、私たちが気づいていない体の新しい使い方にであおう。

    2023年3月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00527103

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB22067899

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著者プロフィール

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専門は美学、現代アート。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。主な著作に『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など多数。

「2022年 『ぼけと利他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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