無縁老人 高齢者福祉の最前線

  • 潮出版社 (2024年2月5日発売)
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本 ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784267024191

作品紹介・あらすじ

誰もが最後にたどり着く高齢者福祉の“未来”を救え。

刑務所が終の住処   介護虐待   老齢LGBTQ
名もなき墓碑   日雇い老人の街  高度成長の闇
自殺者ゼロの取り組み   長寿日本一の村

今の日本では、〝無縁高齢化〞とも呼ぶべき状況が起きている――!
高齢者たちはどんな経緯で社会から切り離されたのか―
そこにどんな日本社会の問題があったのか―
今こそ目を見開いて未来を変えていく。

世界一の高齢化大国“ニッポン”の行く末をノンフィクションの革命児が徹底取材!


第一章 黒い黄昏
    刑務所という終の棲家―累犯者
    暴力化する介護―高齢者虐待
    腐朽する肉体―孤独死

第二章 過ぎし日の記憶
    海の怪物との戦記―捕鯨
    黒いダイヤの孤島―炭鉱

第三章 日本最大のドヤ街の今
    ドヤ街の盛衰
    命の牙城―LGBTQ高齢者介護
    名のない墓碑―葬儀

第四章 忘れられた日本人
    隔離と爆撃―ハンセン病
    闇に花を咲かせる―ハンセン病
    祖国は幻か―中国残留日本人

第五章 高齢者大国の桃源郷へ
    死の淵の傾聴―自殺
    もう一つの実家―介護
    村はなぜ、女性長寿日本なのか―寿命


世界最大の高齢化大国に生きている私たちは、もう高齢者の身に起きている現実に背を向ける余裕はないはずだ。
まだ目をそらして問題を先送りにするのか、今こそ目を見開いて未来を変えていくのか。
日本の将来は、読者一人ひとりの決断にかかっているのだ。(著者)

感想・レビュー・書評

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  • 信頼しているライターの石井さん(と言いながら、そんなに読んでいるわけではない)の最新作。月刊誌『潮』に2018年9月号から2020年7月号まで連載されたもので、日本における高齢者問題を様々な角度から切り取り分析する。
    犯罪常習者やヤクザのような自己責任の場合でも、ここまで面倒見る必要があるのかと呆れた。逆にハンセン病患者や中国残留日本人のように国に責任がある場合はもっと手厚くサポートすべきだと思う。
    雑誌連載のせいか章ごとにバラバラな印象で、このタイトルは正解だろうか。読み物としてはおもしろかったが。

  • 今月1冊目
    ★★★
    残留、障害、ドヤ、ハンセン病などを経験してきた老人はどうなっていくのかの過去の振り返りルポ。
    勉強になりました。
    今のヤングがじいさんになる頃には世の中どうなるのか

  • 第1章: 黒い黄昏

    介護と出所
    - 受刑者の背景: 篤弘と一郎は極悪人ではないが、欲望を制御できず、環境や支援者が不足しているために犯罪を繰り返す。
    - 高齢化の影響: 年齢を重ねることで逮捕される機会が増え、刑務所が居場所となる。認知症や車椅子生活が一般的になる高齢者累犯者の問題が深刻化。
    - 介護人材不足: 鳥取刑務所に唯一介護福祉士がいるが、他の刑務所では人材が集まらない現状。

    介護福祉士の活動
    - 佐藤氏の紹介: 鳥取刑務所で介護福祉士として働く若い女性。高齢の受刑者に対し、体調不良の訴えに応じる。
    - 高齢者の健康問題: 受刑者の約1割が65歳以上で、腰の痛みや排尿困難などの問題が多い。
    - 医療体制: 准看護師によるスクリーニングが行われ、本物の体調不良かどうかを見分ける。

    ---

    第2章: 過ぎし日の記憶

    漁業と文化
    - イルカ漁の歴史: 太地町でのイルカ漁が盛んになり、漁法が進化。突きん棒漁から鉄筒の使用へと移行し、漁獲量が増加。
    - 漁獲の価格変動: バブル経済により、鯨肉の価格が高騰。高級品として扱われるようになり、漁業界の競争が激化。

    組織の変化
    - 漁師たちの競争: 突きん棒組合と追い込み組合が競い合い、最終的に合併して「太地いさな組合」が設立される。
    - 伝統文化の保存: 漁業組合が漁の伝統を守りつつ、合法的な範囲で漁を続ける姿勢が描かれる。

    ---

    第3章: 日本最大のドヤ街の今

    釜ヶ崎の現状
    - 高齢者と福祉: 釜ヶ崎には多くの高齢者が住むようになり、介護や看護の必要性が高まっている。
    - 看護ステーションの活動: 松坂氏の看護ステーションが、高齢者の訪問看護を行っている。多様な背景を持つ人々との接触が重要視されている。

    LGBTQの支援
    - 性的マイノリティの問題: 松坂氏が経験したトランスジェンダー患者との出会いを通じて、LGBTQ支援の重要性に気づく。
    - ピアサポートの実施: LGBTQの高齢者を支援するため、福祉関係者が協力している。

    ---

    第4章: 忘れられた日本人

    ハンセン病患者の歴史
    - 宮古南静園の実態: 患者たちが過酷な環境で生活を強いられ、労働を強いられる状況を描写。
    - 家族との疎遠: 入所者が家族との接触を制限され、精神的苦痛を伴う。

    戦後の影響
    - 引き揚げ後の生活: 戦後の混乱の中で、ハンセン病患者が引き揚げられ、生活環境が悪化。医療体制の未整備が影響。

    ---

    第5章: 高齢者大国の桃源郷へ

    自殺防止活動
    - 秋田県の取り組み: 自殺者数を減らすための施策が進められるが、現場での支援が重要。
    - 若者と高齢者への支援: 若者の自殺も問題視され、精神疾患への早期対応が求められる。

    富山型デイサービス
    - 地域密着型の介護: 富山型デイサービスが家庭的な雰囲気を持ち、地域の人々が利用者と交流する場を提供。
    - 多世代共生の実践: 利用者

  •  高齢者の福祉が本書の大きなテーマだが、著者は高度成長期から現代までの社会の変化の中で、どのような者が差別され取り残されてきたのか、さらに今どのような動きがあるのか、ひとりひとりの半生に丁寧に光をあてている。
     読む前は高齢者の孤独死問題を主に扱っているのかと思ったが、それだけではなく捕鯨や炭鉱で潤った町の栄枯盛衰や、ハンセン病、中国残留日本人など国が見捨てた者にも目を向けている。個々のテーマの掘り下げ方にばらつきはあったが、特にハンセン病として隔離された人たちの差別はあまりにも非人道的で忘れられない。
     また、大阪の西成区のドヤ街が日雇い労働者が集まる場所という認識はあったが、その中でドヤ街に合った福祉を展開しようとしている人たちがいることは知らなかった。特にLGBTQ高齢者介護を手がけるなど、何重にも弱い立場の人たちに手をさしのべ寄り添う人たちの姿は印象的だった。

  • 孤独な高齢者たちに取材したルポルタージュ。
    高齢者たちのバリエーションがすごい。

  • さまざまな辛さを抱えた高齢者のルポ

    著者はあくまで弱い立場の側の人々に寄り添うので、言及されないが、
    この国は安い賃金で高品質のサービスを求めすぎであり
    一般市民、労働者の搾取によって成り立っている仕事が多いと言わざるを得ない。

    国会議員や経営者、特権階級のような人々はこういった本を読むことが果たしてあるのだろうか?
    弱い立場の人々の気持ちが少しでも理解でき得るのか、、


    第一章 黒い黄昏
    刑務所という終の棲家―累犯者
    暴力化する介護―高齢者虐待
    腐朽する肉体―孤独死

    第二章 過ぎし日の記憶
    海の怪物との戦記―捕鯨
    黒いダイヤの孤島―炭鉱

    第三章 日本最大のドヤ街の今
    ドヤ街の盛衰
    命の牙城―LGBTQ高齢者介護
    名のない墓碑―葬儀

    第四章 忘れられた日本人
    隔離と爆撃―ハンセン病
    闇に花を咲かせる―ハンセン病
    祖国は幻か―中国残留日本人

    第五章 高齢者大国の桃源郷へ
    死の淵の傾聴―自殺
    もう一つの実家―介護
    村はなぜ、女性長寿日本なのか―寿命

  • 人類が進化するのは世代交代があるから。養うべきは下の世代。生存競争に敗れた上の世代は捨て置かれる。累犯、自殺、孤独死。ドヤ街での職探しに、引き取り手のない遺骨。‥そんな中で立ち上がろうとする人々。助けようと奮闘する取り組み。過去があるから今がある。大人から子供が生まれ、老いる人がいるから若者が育つ。…隔離されてきたハンセン病患者。満州に置き去りにされた日本人。長らく理解されなかったLGBTQ。境遇は自己責任による結果ではない。命の終わりに、「生きて来てよかった」と、そう思わせてあげてもよいではないか。

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著者プロフィール

1977(昭和52)年、東京生れ。国内外の文化、歴史、医療などをテーマに取材、執筆活動を行っている。ノンフィクション作品に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『遺体』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『本当の貧困の話をしよう』『こどもホスピスの奇跡』など多数。また、小説や児童書も手掛けている。

「2022年 『ルポ 自助2020-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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