- Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
- / ISBN・EAN: 9784267902420
感想・レビュー・書評
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この漫画はアイヌの少女「ハルコロ」が主人公の物語であります。
純情なハルコロが成長するに従ひ、自分の属する社会(アイヌの世界)がどんなものかを学んでゆくのでした。
ハルコロを通じてアイヌ社会の神話から歴史、風習などが我々にも理解出来るやうになります。
原作はジャーナリストの本多勝一さん。アイヌモシリ(アイヌの土地)については諸説あるが、少なくとも北海道・千島・南樺太は明白にさうであると彼は語ります。北からはロシヤ人、南からはシャモ(=和人、即ち日本人)の侵略によりその固有の土地を追はれてきたといふ歴史があります。人類の歴史は侵略の歴史。
本多氏によると、元々「アイヌ民族」三部作を発表するつもりで、その第一部にあたるのがこの『ハルコロ』ださうです。神話から始まり、1457年のコシャマイン戦争を暗示するところで『ハルコロ』は終ります。
監修の萱野茂さん(アイヌ記念館館長=当時)も、内容の確かさに太鼓判を押します。
「随所に出ている説明文も史実に則って書かれているので、これから先、アイヌ関係のものを書こうと考えておられる方々が、参考文献として引用するに足りる内容を備えています」(2巻「解説」より)
つまりアイヌ民族入門の教科書と申せませう。
そして、この豊穣なる物語に新たな生命を吹き込んだ石坂啓さん。豪快な女性の印象がありますが、実に心憎い漫画を描いてくれたものです。これ以上の適役はありますまい。石坂さんにとつて商業的に成功した作品は他にも数多くあるでせうが、本作は代表作の一つに数へられるべきものでせう。力作。
本多氏によると、原作に加へ2-3割は石坂啓さんの創意も含まれてゐるとか。
第二部以降も漫画にして欲しいものであります。
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ずいぶん前に買った本が出てきたので再読。
石坂啓と本多勝一と萱野茂がからんでいる以上、読まずにいられない。
原作となった「アイヌ民族」も、当時併読したものだ。
女性である啓さん(多少面識があるので、こう呼ばせて頂く)のペンを通過したヒロインは、当然ながら女性性を増している。生理を扱った辺りなど特に。
北海道出身の私であるから、アイヌ文化への思い入れは深い。
作中、ところどころで語られるアイヌ神話が、日本神話の古層を伝えていることは間違いない。アイヌの神々は、出雲大社に封じられたオオクニヌシの親類縁者であろう。 -
アイヌの女の子の話.