真夏の航海

  • ランダムハウス講談社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270001424

感想・レビュー・書評

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  • カポーティの処女作。これを十代で書いたとは信じられない。
    彼の作品の登場人物はみんな何かが欠けていて、関係する人たちにそれを満たしてもらおうとして、結局悲劇的な最後に向かっていってしまう。この作品を書いた時点で彼の人生はもう決まっていたんじゃないかと思ってしまう。後半の疾走感は恐ろしさを伴っていてどんどん読んでしまった。

    安西水丸さんの訳した本を初めて読んだ。これまで読んだ翻訳ものとはまた違った雰囲気で面白かった。

  • カポーティの「遠い声、遠い部屋」の前に書かれたカポーティの処女作。天才作家の作品としては残念な気がする。多分全ての作品を読んだので今後、探すことはないだろう。

  • カポーティの幻の処女作。そして訳者は安西水丸さん。10代でこちらを書いたものの本人はゴミにする予定だったよう。

  • 金持ちの家に生まれ育ったグレディは夏のニューヨークにひとりで残ることにした。父親と母親は船でヨーロッパへ行った。
    グレディの恋人、クライドは駐車場で働いている。金持ちじゃない。有名な野球選手にも有名な弁護士にもなれなかったこと、発育障害だった姉の死、色んな過去が彼に影を落とす。
    グレディの幼馴染、ピーターは彼女を心配している。美人だけど、わがままな彼女はいつかトラブルに巻き込まれてしまう、と。

    クライドは自分の手首にグレディの名前を彫った。グレディもクライドもメンタルがボロボロ。クライドの友人、ガンプがくれたドラックを吸ってハイになった。ピーターも駆け付けたけど、なんやかんやで一緒の車に乗って暴走する。まるで落ちていくように。まるで死んでいくように。

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    上流階級のグレディが堕ちていき、彼女の周りにいた男たちも道連れになる。すべてはバッドエンドに向かうための前フリだった。うーん、とっても破天荒。

    物語のラストの衝撃もそうだけど、巻末に書かれていたトルーマン・カポーティ氏の人生も衝撃的だった。地位と名声、そして酒とドラッグ。まさに破天荒。

    カポーティ氏本人が発表したくないと言っていたこの作品をこうやって読めることに対して、どう思うべきなのかわからない。来年はトルーマン・カポーティ生誕100周年だ。

  • いわゆる、身分の違う恋、のお話。

    カポーティの作品を読むとよく思うのだけれど、原文でないと伝わりにくいものがあると思う。
    日本語に翻訳された段階で文章が流れにくくなってしまっているところがあって、読みにくい部分がある。

    グレディのクライドを見る視線の揺れを感じる。
    ふっと恋心を離れてクライドを見る瞬間があって、第三者である読者は、この先の破局を予感させられる。
    物語は狂気で終わる。
    この先、妊娠のこと、帰宅する両親のこと、冬の到来。
    気ままで頼りない夏の航海が終わりを迎えたとき、冬の荒波を越えて安住の地に上陸できるのか。
    私にはその姿は見えがたいが。

  • 本人が発表しなかったものを読んでしまう後ろめたさはどうしてもあるのだけど、私この小説大好きなの、カポーティごめん…。
    夏が死んで、青春が終わる。
    くだらない大人になるのか、子どものままでエンドマークを置くのか。
    たまらなく愛おしい。

  • 2018年の夏を楽しむための課題図書。
    書店で何度か文庫本は目にしていたのですが、今回図書館でこちらのハードカバー版を見つけて、久しぶりに本に呼ばれる感覚を味わいました。
    多少退屈なシーンもあって、もう少しブラッシュアップできるなという印象はあったけど、ゴミ箱に捨ててしまうにはもったいない。

    1945年のニューヨークが舞台。
    身分違いのひと夏の恋。
    確実に迎えるであろう悲しい結末。
    なんとなくグレート・ギャツビー的な話になるのかなあと思ったけど、もっと青臭い話でした。

    主な登場人物。
    ホリー・ゴライトリ-を思わせる脆さを孕んだ、箱入り娘のグレディ。
    腕にGRADYとか彫っちゃう、ユダヤ人クライド。
    歯に衣着せぬ物言いのお坊ちゃん、ピーター。

    ラストが真っ当な、アメリカ的オチだなと思いました。
    既視感。映画も含めて何度か見たことあるやつ。
    でもわたしはこういうベタなの大好きです。
    あの誰も報われない結末には、ほんとうにカポーティの美学が投影されている。失ってしまったものこそ輝きを増す、とか、儚いものは美しいとか、そういう考え方。いわゆる「イノセントなもの」。
    クライドの妹、アンの存在感も大きかったです。
    彼女の叶えられない祈りも含めて。
    「いつかわたしたちは月に到着しましょう。」というアンの手紙の最後の一言は、希望にあふれていて、とても印象的。
    こういう、救われない状況の中での希望の描き方が本当に美しくて、参ってしまう。

  • 安西水丸さん訳と知り興味を持ち読みました。私の生まれる前の、ギラギラした時代のアメリカの、成金の家に生まれてイライラしている美人と、駐車場で働くクールな男のちょっと身分違いの恋愛とか、その周辺の出来事。主人公グレディの苛立ちが伝わってくるようでけだるく、それが後半加速して爆発するところが良いです。

  • 子供から自分を1人の人間として自覚する思春期の心の揺れを描いた作品。
    暴力的なまでに無垢。
    カポーティは狂気と紙一重の純粋さを描くのがとても上手いと思う。

  • 避暑地へと旅立つ両親を見送り、ひとり真夏のニューヨークに残る17歳の少女・グレディ。社交界デビューを控えた上流階級のご令嬢を街にとどめたのは、駐車場で働く青年・クライドとの恋だった。
    神経質でいて大胆な性質をもち、人間関係に苦痛を感じる少女にとって、クライドは特別なはずだった――。
    熱波に茹だるニューヨークを無軌道に疾走する狂乱と刹那の青春、突然の終焉を描く、カポーティ19歳の処女作。

    作品としては未完とのことだが、まさに映画のラストシーンのような終幕に、これはこれで完結と言われても納得してしまいそう。

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