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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784270003121
作品紹介・あらすじ
弱小国家から帝国への第一歩を踏みだし激動の時代を迎えたエリザベス朝イングランド。その中心地として急成長するロンドンでは演劇という新しいビジネスがめざましい発展を遂げていた。宮廷の庇護と大衆の支持を受けてシェイクスピアが次々と生みだした名戯曲はどんな劇場で演じられどんな観客を楽しませていたのか?当時の時代背景を振り返り、時を超えて愛され続ける作品の魅力に迫る。
感想・レビュー・書評
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シェイクスピアの戯曲がどんな劇場で演じられ、どんな観客を楽しませていたのか?当時の時代背景を振り返り、作品の魅力に迫ります。原題は 「The Age of Shakespeare」、対をなす前作 「シェイクスピアの言語」 で避けていた、歴史的・文化的サブコンテクストと結びつけながらシェイクスピアを理解しようとしていて、とてもスリリングで面白いです。9章立で、各戯曲を説明する6章以降も、深い知識に裏付けられた解説が参考になります。「シェイクスピアの言語」 で、言葉の分析によって劇作家シェイクスピアの成長を跡づけ、シェイクスピアの言葉が1600年頃に大きな変貌を遂げたとし、その変貌は、エリザベス朝の演技の変革、それまでの大仰な激情的演技から、個々の人物造形に注意を払う繊細な演技への変化と密接に結びついているとしています。言葉が次第にねじれ、変転するメタファーにあふれ、韻文の調子が乱れてくるのは、シェイクスピア後期作品の特徴で、ハムレットに頻出する 「ニ詞一意」(hendiadysというらしい)といった技法は、劇の内部に深く入りこんでいく複雑さと重厚さを持っていると。「歴史的・文化的なコンテックストを理解すれば、テクストの意味が浮上してくるという歴史主義的発想それ自体が間違っている」 「台詞はあっという間に口にされ、観客はゆっくり考える暇もなく次の台詞に注意していかなければならない。とすれば、難解な台詞はそもそも観客の十分な理解など求めていないはずだ」 「グローブ座が満員で、観客が三千人入ったとしたら、そのうち二千七百人は教養人ではなかったと言って間違いないだろう」 と、カーモードは結論しています。
下婢としてわがを宿せいもうとよ
月蝕に翳生まるる茶碗
義母義兄義妹義弟があつまりて
花野に穴をほりはじめたり
父といて父はるかなり春の夜の
テレビに映る無人飛行機
王国の猫が抜け出すたそがれや
書かざれしかば生まれざるもの -
作品批評を素材にしながら、シェークスピアの時代をスケッチした佳品。よくもわるくも、枯れています。。
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カーモードは今年で90歳を迎える著名な文芸批評家ということで,翻訳も数冊あるが,残念ながらきちんと読んだことはない。しかし,ミッチェル編『物語について』(平凡社)に「秘密と物語のシークエンス」という文章を寄せていて,ちょっと変わったその名前を覚えていた。基本的にシェイクスピア研究には興味があるし,発売されたばかりの本書を古書店で見かけたので買うことにした。
原著のタイトルは『The age of Shakespare』というくらいだから,16世紀末から17世紀初頭にかけてシェイクスピアが活躍した英国の時代背景を見据えた上での作品論ということだが,「大英帝国の幕開け」というタイトルはいささかやりすぎではないだろうか。確かに,シェイクスピア作品には国王の名前をタイトルに冠した政治劇が少なくない。そのことについてかなり紙幅を割いて論じられてはいるが,やはりシェイクスピア作品の批評が中心だ。
先日もグリーンブラットによるシェイクスピア伝記をここでも紹介したが,その翻訳にも本書の監訳者,河合祥一郎氏が関わっていたりする。
まあ,90歳間近で描かれた本書ということなので,そんなに刺激を期待してしまってはいけない。あくまでも教科書的にさらっとシェイクスピア作品をその時代背景とともに評価したものだ。まあ,ともかくこの手の作品各論ではなく,作家総論を読むには多くの作品を読んでいることが必要とされるということを実感させられる。
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