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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784270005033
作品紹介・あらすじ
人から賛辞をあびたかった。弟よりもできる人間でいなければならなかった。だが、考えること為すこと、すべてが予想もしない不幸を呼んだ。哀れみと蔑みの視線しか向けられることはなかった。…そんな「父」に似ることは、ぼくにとって悪夢だった。ダメ男の遺伝子はどこまで受け継がれるのか!?オーストラリア一の嫌われ者マーティン・ディーンの不憫な生涯と、その息子ジャスパーの奇妙な半生を描いた、ナンセンスにして哲学的、悲惨にしてユーモラス、荒唐無稽にして綿密な世にも奇妙な父子の壮大なる物語。ブッカー賞、ガーディアン賞、最終候補作。
感想・レビュー・書評
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父ちゃんは国で一番の嫌われ者で、叔父さんは大英雄、んで母さんには会ったことも無いっていう主人公が、自由を奪われて牢獄に入れらるまでのあれやこれやの物語。ろくでもない出来事とろくでもない人物に取り巻かれて、くそったれで最低な挿話が満載なんだけど、どこをどう切り取っても大きな愛とユーモアに溢れてる。不器用でねじ曲がっているからこそ、どこまでも真実で強く深い愛、そして最低な世界を愛するためのユーモアと狂気。
父ちゃんと叔父さんの子供時代から始まって、主人公が大人になるまで、内面とかも含めてめちゃくちゃ緻密に描かれてるので、ディケンズとかアーヴィングとかの大作を読んでる感じになる。
そこにちょっとしたフックとして彩りを与えてるのが、プロジェクトと呼ばれる父ちゃんの馬鹿げた思いつきなんだけど、目安箱を作って街をみんなの好き放題にしたり、巨大な迷路の中に家を建てたり、国中の人を億万長者にしたりと、極めて風変わりなので、あっと驚く急展開も含めて、全く飽きることなく読み切れちゃう。
フレームストーリーとかの叙述テクニックも多彩だし。
でも挿話とかテクニックとかよりも全体を貫く深い愛にやっぱし打ちのめされるし、どうしたって泣けてしまうのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
荒唐無稽で繊細。
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厭世的ででとち狂った父親をめぐる鼻持ちならない愛すべき惨めな物語。でも笑える。「惨め過ぎて逆に笑える」とか「笑える惨めさ」とかじゃない。惨め、で、同時に笑える。唐辛子せんべいみたいな。しょっぱくて辛くてうまい、みたいな。違うか。
この例えは盛大に失敗した気がするけど、とにかくすごく面白かった。荒唐無稽で繊細。
伝説的な犯罪者として英雄扱いされる弟(叔父・テリー)と対照的に国中一の嫌われ者になってしまう兄(父・マーティン)。弟の伝説的な行動に多大な影響を与えたのは自分であるはずなのに、常に弟の陰として扱われ、たまに脚光をあびるとしてもそれは英雄の兄だから、という理由でのみ。
本当は自分自身が認められたくて仕方ないのに、それがかなわないものだから偏執狂的な妄想だけが肥大して、おかしなプロジェクトに次から次へと手をつける。結果やることなすこと裏目に出て、結局のところ世間から嫌われ続ける。
で、その父親の息子であることいやでいやで仕方ないのに、結局は父親の意思を完璧に理解できるほどに思考が似通ってしまう息子(ジャスパー)。
ストーリは少々強引な展開だけど、それを逆に楽しみに変えてくれるユーモアと緻密な想像力に溢れてる。
でも、なんだかんだで最終的にはいかれた愛の物語だ。 -
マーティンとジャスパーという、ダメ男の似た者父子の長大な物語。
2段組で600ページあるうち、半分近くが父マーティンの苦渋の独白で占められる。子どもの頃から、やることなすこと全てが裏目に出て周りと自分を不幸にしていく(町の提案箱と天文台の悲しいエピソードが秀逸)。オーストラリア一の嫌われ者になった誇大妄想狂の父の影響をもろに受けたジャスパーも、それを上回るくらい不幸を呼び込む人生をたどっていく。
とことんネガティブで、明るさの微塵も無い長い話。なのになぜか引き込まれるのは、「不幸ってどういうこと?」ということを、およそ考えられる角度から綿密に描いているからだろうか。
宇丹貴代実の作品
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