七秒しか記憶がもたない男 脳損傷から奇跡の回復を遂げるまで
- ランダムハウス講談社 (2009年9月23日発売)
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感想 : 11件
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784270005330
作品紹介・あらすじ
時間の感覚がなくなったまま、「生きる」とは?過労やストレスによる免疫力の低下、そして不運が重なったのか、イギリスの著名な指揮者の脳がウィルスに侵されてしまった。数秒前の記憶がつぎつぎに失われていく…過酷な運命を共にした妻が綴る、奇跡のストーリー。
感想・レビュー・書評
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膨大でしかも引き込まれてしまう脳障害の実態と終わりが見えない介護。イギリス在住の夫に起こった記憶障害。離婚も決意するが、それでも夫を忘れる事が出来ず新たなパートナーを考える余地もないほどに愛しているし、夫も妻を忘れる事なく同じ単語を毎分繰り返す。
愛してる、秒速で来てほしいダーリン。と。
生活困窮していてもなんとかなる、と楽観的で読んでいる限りでは必要に応じて何らかの援助、支援が提供されパワーあふれる印象だがやはり何十年も変わらない夫の介護と仕事の両立で海外に現実逃避。しても施設へ夫へ毎日電話で話し、自分は夫以外愛せないが同じ質問の繰り返しに疲弊。
読後、自分もこの本から学ぶ事が沢山あるがこのような生活は気が狂いそうだし、強さもない。夫ではなく親の介護に置き換えて考えてみるが終わりの見えない介護は耐えられるのか??
それともなんとか生活できると思う事ができるのか。
ズッシリとくる内容で翻訳本にしては読みやすかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
配置場所:摂枚普通図書
請求記号:936||W
資料ID:50900838 -
ヘルペス性脳炎により脳に甚大な損傷を負い、つねに持続的な記憶を形成できなくなった英国の音楽家に関する妻の回想録。彼は数分間しか記憶を持続できないため(タイトルの七秒は本文を読む限り無根拠。どこにもそのような記述はない)、つねに自分がたったいま昏睡から覚醒したと思い込んでいる。妻である筆者は夫の回復を助けたい一心から、英国には当時乏しかった脳損傷患者のためのプログラムを整備するところまで精力的に活動する。
史上稀有な症例を描いたノンフィクションだが、いかんせん視点が筆者である妻自身の生き様に終始しており、肝心の患者の回復過程をつぶさに活写しえたとは言い難い。
原題を直訳すると「永遠の今日〜愛と記憶喪失の回想録〜」。もしこのタイトルであれば内容は推して知るべしだった。
ともあれ、なかなか読むことのできない劇的な人生の記録には違いない。 -
支える妻が素晴らしい
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95
我が家の居間の真ん中で、私たちは手を取り合って迷子になった -
オリバー・サックスの「音楽嗜好症」で紹介されていたので読んでみた。
ウィルス性脳炎から海馬を破壊され、エピソード記憶の機能が失われてしまった男性の話。
短期記憶(作業記憶)の障害のお話というと、小川洋子さんの「博士の愛した数式」が思い出されるが、現実はもっと厳しい。
彼は瞬間瞬間でしか、自分自身の状況を理解することができないのだ。
何年も世話をしてくれている看護士や医師たちも、常に初対面。今この瞬間まで意識を失っていた、何も感じられなかった、死人だったという彼の言葉。
彼のおかれた状況は想像を絶するものであり、またそんな彼にとって唯一認識できた最愛の人(著者、但し彼女の名前すら思いだせないのだが)にとって、繰り返し問い続けられる(それこそ何年も)全く同じ質問に、どれほどの忍耐と愛情を持って接し続けてきたのか。
こんな状況が作り出されてしまうという恐ろしさと、そして同時に、そんな拷問のような状況にありながら、苦しみもがきながらも、愛情を持ち続けて今なおお互いを大切にしあい日々生きているという驚嘆すべき事実に、ただただひたすら圧倒された。
表題には「奇跡の回復を遂げる」とあるが、彼は回復などしていない。
確かに、彼の周囲の人々の献身的な態度と愛情によって、当初から比べれば驚くべき進歩はしているのだが、彼が発症以前に戻ることはあり得ない。
そんな絶望的な状況の中でも、この二人が幸せそうに、手を取り合って、前を向いて生きているのが本当に素晴らしかった。 -
脳が熱に弱いと聞いたことはありますが、こんな大変な記憶障害があることと、イギリスに彼のような重い患者を助けるシステムがまったくないということと両方に驚きました。
これはクライブ氏の物語というより妻デボラの物語と言ったほうが良いように思えました。
彼を支え戦うデボラのたくましさ、愛の深さに胸を打たれる一方、離婚手続きを進めたりやめたり、外国で暮らそうとフラフラ行ったりきたりした後でイギリスにとどまったり…というデボラの行動は、理解は出来ても正直100%賛同は出来ませんでしたが…。
それだけ彼女のストレスや苦悩が深かったという反動なのでしょうね。 -
脳障害により新たに記憶が出来なくなった男と妻の話。軽い感じで読み進めてたら、存外きつい話でした。
小説というよりは、記録ですね。最後の祈り~はあまりキリストの世界観に慣れない私としてはいまいちでしたが。 -
英国の指揮者が、ウィルス性の脳炎により海馬が破壊され、短期記憶だけではなく、長期記憶も失われ、「7秒しか記憶がもたなく」なったノンフィクションです。著者は音楽家の妻です。病気に至るまでの幸せな日々から、すさまじい闘病生活を描いています。
46歳のクライブは、目が覚めると質問します。
「僕が病気になってからどれくらい経った?」
「九週間!ぼくには何も聞こえなかった。何も見えなかった。何も触れなかったし、何のにおいもしなかった。まるで死人だ。まるで死人だということはどうゆうことか。それは誰にも分からない。それで、どれくらい経ったのかな?」
「九週間・・・・ぼくには何も聞こえなかった ・・・・・・」
というエンドレスゲームです。知性はありますが記憶がないため、クライブにとっては、その間は意識がない=存在しない、ということと同じことになります。
本人は一瞬の世界に閉じ込められ、苦しみますが、回りも大変です。筆者は、「時間が空いたときに一番したかったのは、ぬかるんだ岸に石のごとくばったり倒れこみ、土に埋もれて大声で叫ぶことだった」と、介護に疲れながら、前に向かって進みます。
精神障害ではない後天的な脳損傷に苦しむ患者をきちんとリハビリしてくれる医療施設はなく、筆者は受け入れてくれる病院を探し、クライブを同じような患者を救うために、組織を立ち上げます。ドキュメンタリー番組の作成、行政への働きかけと走り回ります。
記憶がないクライブは妻だけはいつも認識し、愛情は変わりません。
午後4時3分 初めて目覚めた。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
19分 真に、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
21分 すっかり、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
30分 完全に、同前。考えたこと - 光速でに飛んできてくれ、D!
33分 まちがいなく、同前。初めて意識的な散歩をした。すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
35分 このうえなく、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
50分 驚くほど、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
59分 徹底的に、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
5時 8分 まちがいなく、同前。最初に考えたこと - すぐに飛んできてくれ、ダーリン!
・・・・・・
ぼろぼろになりながら、組織を立ち上げ、理想的な医療施設で夫を見てもらうまでたどり着き、新しい人生を踏み出そうと
するところが、著者の強いところです。やるべきことはきちんとやり、その上で自分の人生を生きていく、というのは日本人
にはなかなか真似できないメンタリティかもしれません。
著者は一度離婚しますが、結局戻って来ます。副題にある「奇跡の回復を遂げる」というほどに病状は回復するまでには
至りませんが、妻を存在理由として、落ち着いて生きていく姿は感動的です。 -
09.10.12
書店でチラ見。
また読みたいなーと思う。
匝瑳玲子の作品
