- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270006498
作品紹介・あらすじ
相対性理論はどこから生まれたのか?20世紀最大の天才の創造性の秘密を明かす。伝記的にも理論的にもアインシュタイン評伝の決定版。
感想・レビュー・書評
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初めてアインシュタインの本格的な評伝を読んだ。手紙等から彼の生涯を事実に沿って記述。理論の概要にも触れてて,前提知識なくても抵抗感なく読める…はず。
個人的には最高評価の本だけど,それは彼について長く興味をもっていて(伝説の類も含めて)ある程度知ってるのが大きいかも。細かい話も含めて実証的に綴られているので,ああそうか!と膝をうつこと頻り。上巻は,彼の少年時代からエディントンの日蝕観測まで。
少年時代からやはり理数的素質はあって,学校での軍国主義的な教育にはかなりの反感を抱いていたらしい。大学へ入る前年にアーラウで受けた教育は,ものすごく性に合ったよう。これと、特許局時代の私的集まり(オリンピア・アカデミー)での哲学的議論が彼の仕事のバックボーンになってる。特殊相対論には,マッハとヒュームの影響大。
彼が就職に大変苦労したというのはなんだか切ない。結局,友人グロスマンの力添えでスイス特許局の審査官におさまる。ここでは,一日の仕事を二時間で終らせてあとは研究に精を出してたというから,なかなか良い身分だった。ここで,あの奇跡の年(1905)を迎える。
彼は初めの妻ミレーヴァとの間に息子2人を儲けるが,結婚前に娘を授かっていたらしい。これが大きな謎。この娘リーゼルは,その存在がアインシュタインの死後30年以上も発覚しなかった。夫婦の手紙から,娘がいたことは確かなのだが,アインシュタインは一度も会っていないらしい。その後夭逝したのか,養子に出されたのかは歴史に埋没して不明。
アインシュタインは若くして,光量子仮説やブラウン運動,そしてもちろん特殊,一般の相対論構築という大きな業績を成し遂げるのだが,その間には家庭でのごたごたが絶えなかった。ミレーヴァとの関係は修復できずに破綻。悲惨な戦争もあった。そんな中で研究に没頭して結果を出し続けるなんてすごいな…。
結局は離婚していとこのエルザと再婚。ぽっちゃりで家庭的なエルザはバツイチで,アインシュタインとは「いとこ(母方)」かつ「はとこ(父方)」。ミレーヴァは一緒に物理をやってたけど,エルザはごく普通。知的な会話ができる妻に当初は満足していたのだが,違うものを求めるようになってたのか。エルザとの手紙で,ミレーヴァのことを「厄介者」だとか「解雇できない召使いのように扱う」だとか,ひどい言いようだ。
ミレーヴァへの最後通牒には戦慄した。洗濯掃除炊事の要求と,必要不可欠な場合以外の同席の禁止,会話の打切や退去の要求権。そういう契約が交わされた。それでもミレーヴァは離婚を受け入れなかったが,将来のノーベル賞賞金を渡すことを条件に結局は離婚。のち半年でエルザと再婚する。
一般相対論の完成は1915年だが,その8年前にアインシュタインはかなりいいところまで行っていた。友人グロスマンの力添えでリーマン幾何学を勉強し,そこまでたどり着くが,これではだめかと方針転換。この回り道がなければ,もっと早く完成していて,ヒルベルトとの先取権競争もなかったかも。
上巻は1919年まで。一般相対論の重力方程式ができたからといって,それを使った研究はまだまだこれからだった。宇宙全体を扱う宇宙論が可能になって,発展を見た。上巻は,物理の革命家としてのアインシュタインを描いていたが,下巻では,量子論に抵抗する保守的な彼が描かれる。
以下メモ
アインシュタイン「数学者が相対性理論をひったくっていったので、私はもはや相対性理論がわからない」 って酷い冗談だな…。自分の数学の先生だったミンコフスキの仕事に関して。p.207
ポアンカレって死ぬまで(1912)エーテルと絶対空間を信じてたんだ…意外。相対性理論にかなり肉薄してた天才なのに。p.210
キュリー夫人は夫の死後,不倫の恋に落ちてるのか(相手は夫の弟子)。スキャンダルになってノーベル賞授賞式に来るなと言われて「私の科学的業績と個人的生活は何の関係もありません」と拒否。かっこええ…。p.259
スキャンダルが報じられたとき,アインシュタインはキュリー夫人とソルベイ会議で一緒だった。後で彼女を支持する手紙を書いたらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アインシュタインの科学的功績、後年の平和活動、プライベートをほぼ時系列に追った伝記作品。
アインシュタインには多数の伝記があるが、その中でも一般向けに平易に書かれている一冊ではないかと思う。
ただ、上下巻で800pを越す大著。先日ナショナルジオグラフィックチャンネルで放映されたアインシュタインの伝記ドラマ『ジーニアス』とかなりかぶっていたので、このドラマを見てからだと読みやすいかも(ただし、ドラマも45分×10話)。
上巻で特に面白かったのは、奇跡の年である1905年、アインシュタインが特殊相対性理論、光電効果理論、ブラウン運動、分子の大きさ計算する論文などを発表するまでのエピソードだ。幼少期から高等部での科学への接し方、数学や物理への直感(イメージを頼りに理論を構築する思考法?)、発表当時の勤務していていた特許局での仕事の合間の研究など、興味深いエピソードとともに描かれている。権威に盲目にならない科学的態度(政治的態度)、イメージで考える彼の思考法などが1905年の論文に結実しているさまがわかる。特殊相対性理論の記述も言葉を慎重に選んで書かれていると思う。
ただ、10年後の1915年に発表される一般相対性理論誕生までのエピソードはついていけなかった。有名な慣性質量と重力質量の等価性の発想までは理解できるものの、テンソル、リーマン幾何を使って理論を構築していくところは流石に本書だけで概要をつかむのは難しい。
重力場の方程式の構築にあたってアインシユタインは、二つの戦略をとる。物理学に対する彼の感覚から導かれるものをもとに(本書では触れられていないが思考実験をもとに)定式化する方法、そして数学を指南してくれたグロスマンたちが勧めたテンソル解析を用いて、より形式的な数学的要求をもとに方程式を演繹する方法だ。両者を並行して進めていくなかで数学的な方法を「プロトタイプ」理論としてちょこちょこと発表、数学者ヒルベルトにその意味を理解してもらおうと熱心に説明しすぎたため、彼との理論確立に向けての競争が始まるのだが、このあたりは物理的な素養、数学的な素養があればもっと楽しめただろう。
p293にある計量テンソル、リーマン幾何については、図解するなど初学者向けのフォローがあったほうがよかったかもと思う。このあたりは入門書で概要をつかんでおいてから読んだ方がアインシュタインの発想法が的確に理解できると思う。
また、科学的発想とともに驚いたのが、最初の妻、ミレーバに対する狭小な態度、発言の数々だ。
彼女の神経質的な性格に嫌気がさした、というところなのだろうけど、アイザックソンも
“アインシユタインが科学の問題を扱うときに示す強固な忍耐力と、個人的な厄介事を扱う際の忍耐力のなさは同じ程度なのである。”
と書くくらい、アインシュタインのミレーバに対する態度はひどい。
(p279の彼女に対する最後通牒は驚いたし、人としてどうかと思う)。
二番目の妻エルザと連れ子のイレザとの妙な三角関係についても少し触れられているが、アインシュタインの家族に対する態度はいまの常識とは相容れないところが多々ある。常識はずれということではなく、純粋に宇宙の理解に没頭するための手段(悪く言えば食事など日常生活を維持するための手段)としてしか考えていなかったのだろう。
上巻は日食時の星食現象による重力場の理論の立証によって話は終わるが、彼の科学的な業績はほぼ上巻で書き尽くされている。
科学的業績、それを生み出した思考実験がとてもわかりやすくまとめられている。彼の業績の全体像を知りたかったらまず手にしたい一冊だ。 -
最高に面白い。物理にハマった。世界って、物理って、こんなに面白かったのか。人の人生って、端折らないでちゃんとたどると、何と時代に翻弄され、周りにいた人に影響され、時代背景はいかに重要で、意識の強さとは何か。正しい判断とは何か?その時に一般的に正しい判断と、今言う当たり前の正しい事の違い。ヨーロッパの歴史背景の勉強にもなる。なにせものすごく面白い。読む人はある程度の理系の学力が必要だから、読める人自体多分スクリーニングされていて、図書館でずっと借りられるのでラッキー!
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あまりのクソ本ぶりに読後に調べると、問題は出版社の翻訳にあったというもの。編集者のつぶやきで「自動翻訳機を使った」とバレてた。評価は著者アイザックソンではなく、出版社に対する評価。読んでも全く面白くない。
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先生からのコメント:アインシュタインの伝記の決定版です。