ヴェネツィアの悪魔 (上) (ランダムハウス講談社文庫)

  • ランダムハウス講談社 (2007年10月3日発売)
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本 ・本 / ISBN・EAN: 9784270101254

作品紹介・あらすじ

水の都ヴェネツィア。10年前に殺害された美貌のバイオリニストの墓から、遺体とともに埋葬されたガルネリのバイオリンが盗まれるという事件が起こった。それから3ヵ月後。ヴェネツィアの骨董商スカッキの館に、夏の間だけ資料整理のアルバイトとしてやってきたイギリスの青年ダニエルは、館の地下で古い作曲者不詳の楽譜を発見する。消えたガルネリと楽譜にまつわる謎が、ダニエルを18世紀に起こった悲劇へと誘う…。歴史と音楽が紡ぐ幻想的なミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの大学生、ダニエルはふとしたきっかけでスカッキ家へ夏のアルバイトにやってくる。このスカッキ家は、300年におよぶ印刷業の末裔であり、ダニエルは、スカッキ家が隆盛の頃の資料の発掘という触れ込みでリクルートされたのである。そうして、古い屋敷の壁の中から作曲者不詳の楽譜が発見される。一方、ヴェネツィアの墓地から10年前に遺体とともに埋葬されたヴァイオリンの明記ガルネリが盗まれ、このガルネリと発見された楽曲により物語が展開される。物語の冒頭より退廃的なスカッキの現当主の生活が、現在のヴェネツィアの様子を暗示しているようであり、細かなヴェネツィアの描写はファンでなくとも楽しめる作品である。

  • ヴェネツィアを舞台の歴史ミステリ。
    現代の事件と、18世紀の出来事が交互に描かれます。
    どちらもヴェネツィアを訪れたj純粋な若者と、作者不明とされる美しい曲、バイオリンの名品ガルネリ、バイオリンを弾く美しい娘が出てくるので、やや混乱しますが。
    しだいにシンクロしながら盛り上がるのです。

    まずは現代。
    墓地の管理人が殺され、その日開かれた棺桶の中からは何かが盗まれていた。
    10年前に死んだ若い娘の遺体が抱いていたのは…?
    何か貴重な物が売られるという噂が流れ、女刑事ジュリア・モレッリが謎を追究します。
    10年前の事件を含めると、三重の構造。

    ヴェネツィアの古い邸の蔵書を整理するために夏の間だけ滞在することになったイギリス人の学生ダニエル・フォースター。
    骨董商の老人スカッキと恋人のポール、手伝いの女性ラウラが住む館。
    個性的な面々と馴染んだダニエルは、地下の壁から、古い楽譜を発見する。
    美術専門家のヒューゴ・マシターに売却を持ちかけることに。
    マシターは慈善家としても知られるが、実は故買屋だった。

    ダニエルは、音楽講座で、アメリカ人のまだ若いバイオリニスト、エイミーと出会う。
    ダニエルの作品と称して、エイミーに試しに弾いて貰うと、じつに良い曲なのだ。
    素晴らしい曲を作ったダニエルに惹かれるエイミー。
    ダニエルの物ではないと見抜いたマシターだが、作曲者は無名で、どちらにしても著作権が切れているので、お金にはならないとマシターに聞かされ、ダニエルはある取り引きを持ちかけられる。

    18世紀、ガルネリの弟がまだ存命でバイオリンを作っていた時代。
    親と財産を失った少年ロレンツォ・スカッキは、叔父のレオの元に身を寄せて下働きをしている。
    レオは出版社をやっていた。
    ロレンツォは、スペインにいる姉のルチアに手紙を書き続ける。
    レオの命令で、ユダヤ人の美少女レベッカ・レヴィをこっそり連れだし、教会のバイオリン弾きに参加させる企てに乗る。
    当時、ユダヤ人は、塀で囲われた特定の島に住まわされ、夜間の外出は禁止だった。
    まして、キリスト教会への出入りなどは出来ないこと。
    レベッカは美しく才能がありながら、女性とユダヤ人という意味で社会的には二重に否定されている存在だった。
    レベッカの兄ヤコポは有能な医師で、ドイツから移住してきて1年ほど、信仰心も薄い様子。
    危険な賭だということはレベッカ以上にわかっていたが。
    教会での演奏は姿を見せないので、可能だったのだ。
    レベッカは、自作の曲で認められることを夢見るが…?
    ロレンツォはレベッカと行動を共にするうちに、恋に落ちる…

    土地が狭いのでお墓も10年しか保管してくれない場所があるとか、ヴェネツィアならではの状況も。
    18世紀の状態は、特に興味深いです。
    司祭で作曲家のヴィヴァルディが、年はとっているけど生きていた頃。
    通称をピエタという慈善院の音楽会も、行われているのです。
    現代では、そこもすっかり改装されているそうですが、出てくるとちょっとときめきますね。
    フランス人のルソーが滞在しているときの、喜劇的な一幕も。

    2001年の作品。

  • ヴェネツィア大好き!っていう人には逆にお勧めできないです。
    理想郷としてのヴェネツィアを描く気は一切なく、ハリボテの裏側が見えすぎです。
    最初はとても読みづらい印象を受けますが、慣れてくると芝居がかった文体がクセになります。

  • ヴェネツィアが舞台というだけで読み始めた本でしたが、これは面白い!!

    歴史が繰り返すように起こった、作曲者不明のヴァイオリンコンチェルトとガルネリを巡る18世紀と現代の物語。
    異なる時代に登場する主人公の少年2人が、事件と恋愛を経て成長する様。
    時代を超えて変わらぬ、ヴェネツィアという街の魅力。
    是非もう一度読みたいと思いました。

    幼いラウラがダリオ館に見た幻のような光景は、きっと彼女のルーツなのだろうと妙に納得。

  • ベネチアを舞台に発見された古い楽譜を巡るストーリー。

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