ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
- ランダムハウス講談社 (2009年2月21日発売)
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感想 : 179件
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784270102770
作品紹介・あらすじ
クイズ番組でみごと全問正解し、史上最高額の賞金を勝ちとった少年ラム。警察は、孤児で教養のない少年が難問に答えられるはずがないと、不正の容疑で逮捕する。しかし奇蹟には理由があった-殺人、強奪、幼児虐待…インドの貧しい生活のなかで、少年が死と隣あわせで目にしてきたもの。それは、偶然にもクイズの答えであり、他に選びようのなかった、たった一つの人生の答えだった。話題の映画『スラムドッグ$ミリオネア』原作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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主人公のラム・ムハンマド・トーマスは、クイズ番組で優勝し、莫大な賞金が入るはずだったが、番組側が不正を疑い、警察に逮捕されてしまう。
拷問で無実の罪を認めそうになった彼の前に現れた若い女性弁護士。彼は彼女に対して、解答のヒントとなった生い立ちや経験を話しだす。
インドの厳しい差別や虐待の世界の中で強くたくましく生きていく孤児の青年に起こった奇跡を描く。
ラム・ムハンマド・トーマスの人生は波乱万丈だ。生まれてすぐに教会に捨てられ、一度は養子に出されるもののすぐに戻されてしまう。
名前も彼の波乱万丈の人生を物語っている。ラムはヒンドゥー教、ムハンマドはイスラム教、トーマスはキリスト教の名前。どの宗教の人たちにも文句をつけられないよう3つの名前を付けられたというわけだ。
大事に育ててくれた神父さんとも数年でお別れし、彼は孤児として貧困の中一人で生き抜いていくことになる。
彼の前に次々と立ちはだかるインド社会の闇は、幼い少年にはあまりにも過酷すぎるものだったが、彼は持ち前の機転とたくましさ、大切な人を守りたいという正義感によって、人生のピンチをからくも切り抜けていく。そうしたさまざまな経験がクイズ番組で彼を正解に導いていくのである。
彼がいかに濃密な人生を送っていたとしても、十数年の人生に起きた出来事がことごとくクイズ問題の解答のヒントになることは、実際は奇跡でないとありえないだろう。それでも、彼とともに人生を振り返り、彼がどれだけの苦難に立ち向かってきたかを理解している読者にとっては、彼が賞金を手にすることは当然の結果のように思えてくる。
彼が幸運のお守りとして占い師からもらった1ルピーのコイン。答えに迷ったとき、彼はコインを投げ、表が出たら前に進むことにしていた。コインの本当の意味がわかる物語のラストは、すがすがしい風が一気に吹き抜けるような爽快さだ。
なんだかうまくいかないときにちょっとした勇気と元気をくれるおすすめの一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人気クイズ番組で史上初の全問正解を果たし、史上最高額の賞金を勝ち取った18歳の少年ラム・ムハンマド・トーマス。孤児で学校も通ったことのない、しがないウェイターである彼が数々の難問に答えられたのはインチキに違いないと番組の制作会社は訴え、トーマスは逮捕されることに。
彼が挑戦した13問におよぶ難問。それらの問題を1問目から順に振り返り、なぜ彼がその正しい答えを知っていたのかを解き明かしていきます。それはトーマス自身の半生を知ることであり、同時にインドの抱える闇――虐待、売春、人身売買、強奪、経済格差といった実態が浮き彫りにされていきます。
孤児であるトーマスは常に貧しさと孤独と闘いながら生き抜いてきました。彼がインドの片隅で目にしてきたのは過酷で残酷な現実ばかり。一つ一つのエピソードは心苦しくなるものも多く、彼自身逆境の連続ですが、そんな中でも冷静に機転をきかせ前向きに進むことを忘れません。ひたむきに、正直に人と向き合い、交流を重ねます。
友人サリムが愛して止まない映画俳優アマーン・アリのこと。幼少のトーマスを6年間優しく育ててくれたティモシー神父のこと。アパートの隣に越してきた家族の家から薄い壁一枚を隔てて聞こえてきた天文学のこと……目にした、経験した全てが「知識」と「財産」となり彼を作り上げています。
最初から最後まで通して読むと、この巧みな作品構成に感心します。なぜトーマスがクイズ番組への出演に至ったのか、逮捕されたトーマスはこの先どうなるのか。トーマスが語った一つ一つのエピソードを一気に集約するように迎えるラストは読者を晴々とさせます。
映画『スラムドック$ミリオネア』の原作ですが、読み応えのある一編一編を思い出すとこの作品は本で出会って良かったなぁと思いました。この本には個人的な思い出もあり忘れられない一冊となりそうです。 -
ストーリー形式は、現在と過去を行き来する展開です。過去(今までの経験)があるから、今がある。現在の選択で将来が作られるのだと、考えさせられました。
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映画『スラムドッグ$ミリオネア』を観て原作を読みたくなりました。
舞台がインドで、過去を振り返りながらなぜクイズの答えを知っていたかを話していく、というストーリー展開は映画と共通ですが、ほぼ違う物語です。
学校へ行ったこともない最底辺で生きる主人公はクイズ番組に出場し、12問全問正解した。不正を疑われて警察に逮捕され、自白を強要するために拷問を受けいたところ、知らない女性弁護士がやってきた。主人公は弁護士になぜその答えを知っていたのか、答えにまつわる12の思い出を語る。
主人公の名前はラム・ムハンマド・トーマス。イスラム教徒ですが、ラムはヒンドゥー教、ムハンマドはイスラム教、トーマスはキリスト教の名前です。この変わった名前を生かしつつ、知恵と勇気と友情で様々な困難を乗り越えていきます。貧乏で搾取されていたり、しっかり犯罪やん、というのがあったり、ごった煮的なところがインドそのものような気がします。宗教対立やインドの社会問題を知ることができました。
この原作は例えるなら、12話のドラマのような感じです。
映画のように子供の頃の回想から順に話が進んでいくのではなく、1章(1問)ごとに時代や住む場所が変わる構成になっているのは、本ならではできること。流れがつかみにくいところはある一方で、「そういえばこんなことがあったな」的な思い出らしさを感じることができます。
一人称で書かれていて、私が考えないような青年らしい葛藤を感じとることができるのも本ならでは。
原作を大幅に変えて2時間の話に作り変えることに対して、「作者は変えられて嫌なんじゃないかな」と思うし「脚本家ってすごいな」とも思います。
原作も映画も素晴らしいので、比較して2倍楽しむことができました。 -
人種・宗教・階級等、いろんな物がごちゃ混ぜになり、
混沌としたインドいう国に暮らす人々の、
良くも悪くも圧倒的なパワーが伝わってくる。
正直者が報われる話で、最後はホッとした。
これがハッピーエンドじゃなかったら救いが無さ過ぎる。 -
スラムドッグミリオネアの原作で、インドのスラムの少年がクイズでミリオネアになる話。
と思ってたらそんな単純な話ではなく、なぜ質問に答えられるのか、またそもそもなぜクイズに応募したのか、といった背景に数々のドラマがあった。
話の作り、内容も面白いし、フィクションとはいえインドの社会問題なども垣間見ることができて非常に面白かった。 -
処女作とは思えない、、、。
多くの伏線回収にびっくりさせられたし、主人公を通じて様々な経験をさせてもらいました。
この作品では、インドが有する様々な国民性、抱える問題(今は幾分改善されてるかも)、文化に触れながら、主人公の体験談を小出ししていく形で物語が綴られています。社会という荒波に飲まれる中主人公はいい奴で行動力があるんだ。罪も逆境も乗り越え、自分の頭と身体で生きていく様は忘れられないよ。面白かったなぁ、、、。 -
時間軸がバラバラでありながら、読み辛いどころか面白味が増しており、展開が気になる構成になっている。
物語は主人公が逮捕されたところから始まる。逮捕された理由は主人公が、クイズ番組に全問正解したからだった。孤児で教養が無い少年が、難問に正解し高額な賞金を獲得するのは不正が行われたに違いない、と考えられた。しかし不正ではなく彼の過去に答えがあった。
暴行・強奪・自殺・物乞い・虐待・逃亡・殺人…彼は壮絶且つ悲惨な現場を目の当たりにし、或いは当事者になり、社会の負を凝縮したような波に流されながら、尚も決して投げやりにならず生きてきた。
物語の中で起こる出来事の強烈さ以上に、主人公の懸命さ・強さ・行動力に心を打たれる。全篇を通し主人公は体と頭と… 時には幸運の1ルピーを使い、理不尽な社会に翻弄されながらも行動し続け、考え、走り、実行し続けている。
どんな状況でも諦めなければ道はあると、胸が熱くなる話であるとともに、汚職・戦争・宗教やインドという社会と未だ根強いカースト制度についても詳細に描かれており 考えさせられる一冊。
驚きの展開も多く、ラストも秀逸。 -
初めての出版社、初めてのインド人の小説。
手持ちの本を読む予定だったけど、立ち寄った本屋でついつい買ってしまった。
映画は、お父さんが観てたのを見た、程度。こんなストーリーだったのだとやっと知る。
赤貧の身から、境遇に負けることなく成功者になっていく、というのは『おしん』を思い出す。世界共通に受け入れられるテーマなんだろうなぁ。
高額懸賞のクイズ番組の正解不正疑惑は、主人公の波瀾万丈の過去を辿ればその潔白が明らかになる、という設定も楽しかった。
インド社会も垣間見られて、興味深く一気読み。ただし、斜め読み部分もちょこちょこあった。-
2013/05/26
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そそ、その映画の原作。原作も面白かったよ。飛ばし読みは、戦争シーンとか、読み込まなくても想像出来る不幸と不公平とか…。そそ、その映画の原作。原作も面白かったよ。飛ばし読みは、戦争シーンとか、読み込まなくても想像出来る不幸と不公平とか…。2013/05/26 -
スラムドッグ・ミリオネアは面白かったです。アレの原作ですか!原作があったのも知らなかったです。興味深くレビューを拝見しました!スラムドッグ・ミリオネアは面白かったです。アレの原作ですか!原作があったのも知らなかったです。興味深くレビューを拝見しました!2013/05/27
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貧しい孤児だった少年がクイズ番組で次々難問に正解してしまった。
逆境や試練に打ち勝ち数奇な運命を生きた主人公。
その奇跡には理由があった。
映画の原作ともなり、楽しめる作品と思って読み始めたら…。
主人公ラムの生い立ちにからむストーリーが本当に辛いです。
あーインド…。
スラムの中は歩かなかったけれど、悲惨な境遇や出来事が目に浮かぶようだ。
歳をとるにつれ、社会の暗部や虐待、暴力といった人間の闇をずっしりと重く感じてしまうようになってきている。
書かれていることは現実に起こっていることなんだろうという思いがずっと拭えないまま次々と話が進んでいく。そして問題を正解していく!
なので次々出てくる辛い悲惨な話がひっかかって、ラムを見守りながらも心からは楽しめないのでありました。
それでもミリオネアでクイズを全問正解する展開はさすが評判の小説だと感心しました。終わり方も救いがあってよかったです。
楽しんで読んだわけではないのですが、数奇な出来事の重なったこんな話は忘れられません。インド社会の深淵を感じさせたこの小説に星4つです。 -
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気になりながら読んでいなかった本(ありすぎるほどあるけれど)のうちの一冊。
面白かった!!
インドという国の抱える問題がバンバンでてくるにもかかわらず、読後感がいい。
主人公の賢さ、孤児であっても孤独感がないところ、生き抜いていくたくましさがあるからではないだろうか。
混沌としたインドの奥深さを感じたりもした。
映画は見ていないが、この話をどうまとめたら面白く仕上げられたのか気になるところ。 -
文字を追いたくなくなるほど痛烈な文が多い。
1ルピーの神様、という言葉の意味。
運は自分が作り出す。 -
インドのスラムのウェイターがクイズビリオネアで優勝!
出題された問題がことごとく、彼の歩んできた人生で見聞きしたものだった。
1問1問答え合わせをしながら、インドの暴力、犯罪、貧困を織り交ぜつつ、彼の来た道をたどる。
んもう、終盤が! 卑怯な番組制作に嵌められて脱落させられそうになるあたりから、ハラハラドキドキ感が最高潮です。
あのシェイクスピアの問題! シェイクスピアだけ、彼の人生の中で接点がなかったので。その時のライフラインの「友人に電話」のやり取りが、実にリアルで手に汗握ります。
この電話した友人っていうのも、別に友人じゃなくて、病院の前でたった数分出会っただけの人なんですよね。
この辺から涙腺が崩壊。
和訳に違和感がなくスラスラ読めるので、著者は日本人と勘違いしてしまいそうだったです。 -
インド人が書いた、インドが舞台の小説。
今まで、外国人(日本人)が書いたインドの旅本、エッセイなどはたくさん読んできたけど、インド人が書いたインド内の物語ははじめて読んだ。
貧困問題など、考えさせられる内容がたくさんあり、胸が痛くなったけど、これがインドのリアルなんだ。
重い、深い内容ではあるが、何故か読了感は暗くないのは、主人公がこういう状況の中でも、たくましく生き抜いていく強さに惹かれたからかな。
とても読みやすく、久しぶりに一気に読みきった本。文句なしの5つ星。 -
物語の構成が興味深かった。
1問ごとに少年の過去が暴かれていく時、
自分の中での時系列整理に少々手間取りました。
ラストの清清しいまでのハッピーエンドにはニヤッとしてしまいます。 -
映画見て面白かったので買った。なんというかある程度の型になっていてクイズとリンクして進んでいくのが面白い。でもクライマックスは予想外に来てみたいなスリリングな展開だった。
でも1番心動かされたのはベドニという風習。ネットで調べてなかったから創作か実際にあるかはわからんが、お母さんが娘を売春婦にしてそのお金で家族が贅沢な暮らしをするなんて可哀想すぎる。
その風習は見つからなかったが僧院での売春婦制度はネットで探してるうちに見つけたから暗い気持ちになった -
再読。高校生の時に読んで好きだった本。
主人公の少年・ラムが、なぜクイズ番組で全問正解できたのか。その理由を彼の人生を追想して解き明かしていくストーリー。
過去の行動、積み重ねてきた縁、全てに意味がある。そして今の自分を形作っていく。伏線回収の妙に唸らされる!
貧乏な孤児の視点から、経済格差、児童虐待、警察の腐敗、宗教対立など、インドのリアルな社会問題も浮き彫りになっていく。そんな厳しい環境のなか、ラムの優しく真っ直ぐな心が輝いて見えた。 -
映画『スラムドッグ$ミリオネア』の原作本である本書は、元々『Q&A』という題名で出版されました。主人公がクイズ番組でミリオネア(最高賞金)を獲得するが、詐欺の容疑がかけられ、逮捕されてしまうという物語の導入部分は、映画の内容と全く同じでした。
主人公の生い立ちや、クイズ番組への出演を決意した経緯に関しては、映画とは異なりますが、別の物語として、楽しむことができました。主人公の生い立ちについては、時系列に解説されていないため、ページを捲る手を時々止めて、頭の中で情報整理しながら、読み進めました。
物語を通じて、人身売買や売春について触れているため、好き嫌いが分かれてしまう作品なのかなと思います。しかしながら、どの国にも悪い面は存在するのが現実です。そんな現実の中で、逆境に立ち向かう主人公の心の強さを多くの方に知っていただきたいと思いました。 -
主人公の少年が出遭った悲劇的な出来事について殊更悲劇的に描くのではなく淡々と書いているのが良い
ストーリーが出来すぎにも思えるが、少年はインドの貧しい者全員の集合体として描かれているとすれば納得 -
映画「スラムドックミリオネア」の原作です。学校にも行っていない孤児の男がなぜ史上最高額を獲得できたのか。という疑問が物語の起点となっていますが、知恵と機転で人生を切り開いていく姿も目が離せませんでした。 インド小説は初めて読みましたが、すごく面白かったです!そしてこの小説が著者のデビュー作と知り驚きました!すごい!
