サーカス象に水を (RHブックス・プラス)

  • 武田ランダムハウスジャパン
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270104057

感想・レビュー・書評

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  • 青年時代をサーカスで過ごしたジェイコブ。90歳を越えても口に出来なかった当時の秘密とは…。
    元弁護士が発した一言にジェイコブが激怒した理由が最初は分からなかったけれど、読み終わってみると納得です。こんな経験をしてきた人からしたら、サーカスにいたこともないのにそんなこと言われて黙っていられるわけがない。全てをなくしたけれど動物たちが自分の存在意義を教えてくれた。人を人とも思わない環境のなかで仲間ができた。命を懸けた恋をした。望んで入った世界ではないけれど、人生の最高も最低もそこにあったのでしょう。
    しかし現在のジェイコブは妻に先立たれ一人施設で暮らす日々。孤独を深め、寂しさばかりを募らせています。こんな経験をした人が、なんで幸せになれないのか。ずっと苦しみを抱えながら生きてきた人に、せめてもの見返りは与えられないのか。やりきれなくなった頃に現れる微かな明るさと、思わぬラストに驚き笑ってしまいました。若い頃のジェイコブと晩年のジェイコブが重なる瞬間の鮮やかさ。人の本質はいつまでも変わらないんですね。

  • タイトルに惹かれて購入したものの、ずっと積読になっていた一冊。読んでみたら期待以上に素晴らしかった。「夢見る宝石」を思わせる、サーカスや見世物小屋を舞台にした青春小説。プロローグの謎が最後に明かされるのが見事にキまっている。ただし老いた主人公が再び旅立つハッピーエンドは蛇足かな?いや、このシーンも夢と現の境目があやふやだと思えば魅力かも。登場人物がみな濃いのも魅力。特に犬を熱愛する小人のエピソードが切なく胸に残る。

  • 卒業試験目前に両親を事故で亡くし、父と一緒に獣医として働くはずだった人生がバラバラになり、失意のうちに衝動的に列車に飛び乗ると、それはサーカスの移動列車だった。ポーランド系のジェイコブ・ヤンコフスキの波乱の人生を、サーカスという一種のアウトサイダーの集団でのサバイバル模様を通して描いたお話。晩年、老いて施設に世話になりながら回想するジェイコブの現在と、回想シーンとが交互に書かれ、見世物小屋の延長線上にあるような、ちょっといかがわしいサーカスの独特の雰囲気もうまく出ていて、おもしろかったです。サーカスの話はジェイコブの青春の話なのですが、団員や裏方スタッフたちの家族との複雑な関係や、老いた後のジェイコブの思想などは、青春ばかりではない人生のややこしさがテーマになっていて、奥行きがありました。堪能して読了。映画化されているようです。

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