古書の来歴 (下巻) (RHブックス・プラス)

  • 武田ランダムハウスジャパン
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本棚登録 : 186
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (325ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270104101

作品紹介・あらすじ

500年の時を生き延びた稀代の古書"サラエボ・ハガダー"。それはなぜ造られ、どんな人々の手で守られてきたのか?鑑定をまかされたハンナがその本の中で見つけた白い毛、塩の結晶、ワインの染み、留め金の痕跡、蝶の羽が、15世紀スペイン、17世紀ヴェネチア、19世紀ウィーン、20世紀サラエボで起きた驚くべき苦難の物語を雄弁に語っていく!運命に翻弄されながらも激動の歴史に耐えた1冊の美しい稀覯本と、それにまつわる人々を描いた歴史ミステリ。翻訳ミステリー大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 500年分の重みに圧倒された。一冊の書物についての美しく、血なまぐさい物語。細部はフィクションでも、作中に登場するユダヤの書は実在し、本が焼かれ人が焼かれた歴史も確実に存在する。魂を込めて本を作った人がいて、命をかけてそれを守った人がいる。すごい奇跡。この作品は女性達の物語でもある。ハンナ、サラ、ローラ、ルティ、ザーラ。15世紀から21世紀の各時代で、苦境の中でも信念を持って生きる女性達の姿が強く印象に残る。せっかくそれなりに平和な国に生まれてきたのだから、ぼんやり生きていちゃいけないなと思った。

  • おもしろかった。でも、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教やヨーロッパの歴史に詳しかったらもっともっとおもしろかったんだろうなー。それがかなり残念。
    文庫になったら意外と上下巻が薄かった。それぞれの時代のエピソードがもっと長くてもよかったような気がする。それぞれの場面がありありと目に浮かぶような、あまりに豊かな物語だったので、もっと長くもっと詳しく読みたかった。どのパートも、章の終わりで終わりって感じがしなくて、またあとで続きがあるんだろうか、と思う感じ。なんとなく読み足りないような。そこがいいのかもしれないけど。
    それと、主人公ハンナと母親との確執の話がわたしはけっこうおもしろかった。これももっと長く読んでもよかったなあ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「キリスト教、ユダヤ教、イスラム教やヨーロッパの歴史に」
      この三つの宗教は元を同じくする兄弟。きっと争いを終わらせる道がある筈。もし気が向い...
      「キリスト教、ユダヤ教、イスラム教やヨーロッパの歴史に」
      この三つの宗教は元を同じくする兄弟。きっと争いを終わらせる道がある筈。もし気が向いたら色々読んでみてください。
      「古書の来歴」より落ちますがお薦めするのが、、ジルベール・シヌエ「サファイアの書」とマリア・ロサ・メノカル「寛容の文化」(ちょっと文章が硬いのが難点)
      2012/07/25
  • 文庫になったので購入

  • ミステリ

  • その本が守られて受け継がれてきた、ユダヤ人とその宗教文化を追う話だった。いつの時代も、宗教は自分のアイデンティティで伝統で文化。特にユダヤ教の境遇など知ることがなかったので勉強になった。
    歴史小説のようでもあり、生き生きと描かれている当時の人々に思いを馳せながらも、古書の謎を追うワクワク感、ずっしりしていてでも重すぎない書き方、間を挟むように書かれる母娘の確執とサラエボの話、おすすめです。

  • 本の装丁と修復から判明した些細な謎を元に、現代から逆に時代を遡ってその来歴を明らかにしていく歴史ロマン。宗教も人種も超えて素晴らしい、美しいものを守ろうとする姿には心が打たれる。実際に来歴は分かっていないらしいが、根深く難しい問題を孕んでいる彼の地で、実際にこう守られていたら素晴らしいのに、と心から思う。

    本をめぐる謎が好きな方にはぜひお勧めしたいミステリー。

  • 内澤旬子「捨てる女」つながり。偶像破壊を推し進めたはずのユダヤ教徒が作成した稀覯本サラエボ・ハガダーとは。古書に付着した物質や署名を手掛かりに来歴を探るストーリーはどんどんと時代を遡り、現代と交互に語られ、どんでん返しにどんでん返し、ここのエピソードがここに活きて、とからまり合い、息つかせず。面白かった。酢を使ったカレー、ヴィンダルー、食べてみたいと思った。/きみたちこそ迷信を信じてる。自分だけは死を免れると思いこんでて、それができないとわかると真っ赤になって怒る。/"私のなすことが私である。私はそのために生まれてきたのだ"(ジェラード・マンリー・ホプキンズ)/どんな小さな文字もすべて、ひとつの詩であり、ひとつの祈りであり、神の光輝へと通じる道だった。あらゆる文字に特有の道があり、特別な謎があるのだ。/ある事柄がなぜ私にとって大切なのか、なぜ私がそれを愛しているのかを(略)そういうことを理解できるかどうかが重要なのだ。それが根底になければ、私たちの会話はただの雑音でしかない。/この街の住人が、自分たちを隔てているものじゃなく、結びつけているものに気づけるかどうかを試すために。

  • 1冊の本が誰の手によって作られ、どのように守られて今に残されたかがドラマチックに描かれている。
    頁の間に残された虫の羽や動物の毛がどうしてそこにあったのか、物語によって1つ1つ明かされていく様子が謎解きをしているようで面白かった。
    あまりなじみのないユダヤ教のことが知れたのも○
    「古書の来歴」というタイトルが美しいと思って購入。読み終わって、本当に内容にふさわしいタイトルだとしみじみ思った。

  • サラエボ・ハガダーという実在の書物をモチーフにした物語。
    ユダヤ教の書物でありながら挿絵のある謎の多い古書をめぐる群像劇。様々な場所、時間を通して描かれる人々の人生を垣間見る構成である。このハガダーの来歴をたどる最後は歴史のつながりを一本の糸としてつなぐ作者の手腕が光る。『灰色の季節をこえて』でも中世ヨーロッパの村の雰囲気を見事に表現していたが、『古書の来歴』はそれを超えるまさに傑作。もっと世界史詳しかったらより楽しめたのかと思うと残念……

  • 民族だとか宗教だとか予想より内容が重く、読み応えがありました。上巻は出会ったその日に夜を共にする主人公にあきれましたがね。主人公の人生とサラエボハガダーの来歴はリンクするようでそうでも無い気がしました。

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