講座現代日本 1

制作 : 渡辺 治  後藤 道夫 
  • 大月書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272200610

作品紹介・あらすじ

再編の大波に洗われる90年代日本。「激変」の意味と構図を現代帝国主義化の視角から解明した本格的研究。

感想・レビュー・書評

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  • 冷戦終結後,日本と世界の情勢は激変を迎えた。日本にかぎって言えば,自衛隊の海外出動,コメなどの農業自由化政策,日本の高度経済成長を支えてきた企業社会の再編,規制緩和,などがそれである。いったい,これらの諸変化を推し進めているのは何か? 日本は,世界は,どこへ向かおうとしているのか? もし矛盾や困難が生じるなら,それを解決してよりよい社会を作る展望はどこにあるのか? 本書は,こうした一連の問いを解明するシリーズの第一巻である。

    本書では,冷戦後の日本と世界の激変を説明する様々な仮説を,まず事実に基づいて批判的に検討する。その上で,批判に終わることなく,それらの仮説に代わるものとしてレーニンが『帝国主義論』で構築した理論を現代的に解釈した「現代帝国主義」を掲げる。これを述べるまでの論理の緻密さ,思考の徹底振りには目を見張るものがある。この本が出版されたのは1996年だが,マルクス主義そのものに対する懐疑と黙殺が一般的になっていった中で,いかなる理論が現代の諸現象をより正確に説明し得るかという観点に立ち,その理論の選択肢からマルクス主義を除かなかったのは大いに評価されよう。

    この「現代帝国主義」理論を用いながら,第二次世界大戦後のアメリカ帝国主義について概観し,その上でアメリカの深い従属下にあった日本の戦後史を検証する。その中で,日本の帝国主義化を阻止し,また遅らせてきたのは,多くは戦後民主主義運動を中心とする国民の力であったことを解明しているのはこれを軽視しがちな論考が多い中で興味深い。

    本書が指摘している現代日本の矛盾の表れ,つまり?軍事大国化の平和志向である国民意識からの乖離,?企業社会の急激な再編による国民経済の破壊,?経済進出・軍事大国化に反発するアジア諸国,という問題は今なお深まっていると言える。ワーキングプア,首相の靖国参拝に対するアジア諸国の反発,改憲を掲げた安倍政権のあっけない崩壊などなど。しかし,その矛盾の表れの中から,例えば個人加盟のユニオン運動や「九条の会」の広がりが生じていることも事実であり,著者はそこに日本社会の展望を見出している。10年以上前の著作であるが,その中身は全く古くなっていない。

  • 1990年代日本の政治・社会の激変は一体何を根拠に生じたのか。日本はどこへ向かっているのか。「激変」の意味と構図を現代帝国主義化の視角から解明した本格的研究。


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