ファシズムの教室:なぜ集団は暴走するのか

著者 :
  • 大月書店
4.04
  • (27)
  • (29)
  • (18)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 500
感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272211234

作品紹介・あらすじ

76万PV*を記録しネットで話題沸騰した「ファシズムの体験学習」を紹介しつつ、ファシズムの仕組みを解説。ナチスの大衆動員の実態、ヘイトスピーチなど身近な問題も論じる、全く新しい入門書! *『現代ビジネス』記事https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56393

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ファシズムを体験学習する講座を考案し実践した著者による一冊。
    ファシズムやナチズムはいけないという漠然とした印象や意見を持つ人が多い中、それでは何がいけないのかを説明できるでしょうか。
    暴走を防ぐためにしっかりと管理された環境でファシズムを実体験することは、素晴らしい教育方法だと思います。
    全体主義の持つ素晴らしさと危うさを肌で感じることができれば、実社会での不穏な風潮や空気に反応するアンテナが備わるでしょう。
    当時の勤勉なドイツ国民と日本国民が扇動されたのですから、座学だけでは不十分だということです。
    講座は外圧により休止中ということですが、学生でなくても受けたいほどの内容なので勿体ないことです。

  • ファシズムの入門書というより大学での体験授業の記録と紹介であり、ファシズムとは何かが知りたいと期待して読むと肩透かしを食います。
    でも良い本なので再読する予定。

  • ☆読書メモ☆

    ナチスドイツを代表とする「ファシズム」について、大学授業でのアクティブラーニングを経て分かりやすく説明した本。ファシズムを産み出すのは以下メカニズムによる。

    ・必要なもの
    ○絶対的な権力
    ○集団による統一目標(ナチスドイツでは国民社会主義・ユダヤ人の排斥、本授業ではリア充撲滅)
    ○集団を認識させるシンボル(ユニフォームやマーク)

    ・プロセス
    多人数による均一行動により、自己を希薄化させる。同時に圧倒的権力者の命令という「大義名分」を背負う事で自己肯定化し、自らの行動をある種他人事のように感じさせる。この状態で統一行動を行なうと、多数派に属しているという安心感が生まれ、所属に対する強い動機が生まれ、のめり込んでいく。

    上記プロセスで重要なのは、当事者は大衆に呑まれると、正しい判断力を失うということである。近年、BLMの暴走やネオ・ナチ、イスラム国といった「ポピュリズム」「ファシズム」的思考が蔓延っている。ネットの発達が、これを一層助長する側面もあるとも感じる。

    これを踏まえ、我々が意識しなければならない事は、「臭いものに蓋」をするのではなく、「毒を持って毒を制する」、つまりファシズムの原理を理解し、その上で批判的思考を持ち続ける事である。

    社会科学を学習する意義が極まった本であり、読んで良かったと思う。

  • 集団が暴走する様を疑似体験できる面白い授業だ。
    危険性を指摘する声もあるみたいだが、同じ目的を持ったコミュニティというのは世界中にあるわけで、カリスマ指導者の下、社会に認められている場合もあるので、すべて暴走する危険性があるとは一概にも言えないだろう。
    これが社会性のある動物としての人間の本質とするならば、今後も世界に悪影響を及ぼす集団が生まれないよう、その危険性について、この授業のように教育する必要もあるのではと思う。

  • 体験授業を通じてファシズムを学ぶという、大学の授業を実施していた大学教授による本。

    生徒たちが、授業を通してどこまで理解したのか何とも言えないが実施体験できるのは興味深い。

  • 「複雑化した現代社会の中で生きる人々の精神的な飢餓感に訴えるという本質的な特徴」をもって「強力な指導者のもと集団行動を展開して人々の抑圧された欲求を解放し、これを外部の敵への攻撃に誘導するという手法」がファシズムの本質であるならば、それは決して歴史的現象にとどまるものではなく、まさに今ここにある危機だと言える。
    大変よく工夫された授業で、授業の設計論としても大変に興味深い。サクラ役の学生を集める苦労など、大変に興味深く読めた。
    むしろ恐ろしいのは、この授業に寄せられたクレームの方である。教員本人ではなく大学に圧力をかける形でのクレームで、直接的にこれに屈服する形ではなかったにせよ、様々な配慮が必要となり、換骨奪胎されてしまうことを恐れ、授業の内容を継続することを辞めた無念はあとがきに詳しい。まさにこうした愚かな議員がいるからこそ、こうした授業には意味があるのだろう。

  • 4.6

  • ◆読書メモ◆


    p23
    『平気で嘘をつく人たち』と同じことを言っている。
    従属している人間は、責任を取る立場にないがために「邪悪な」行動を取っても良心の呵責が起こりにくい。

    p27
    「権力者の号令のもと『悪辣な敵』に義憤をぶつけるとき、人びとは正義の側に立ちながら、自分の不満や鬱憤を晴らすことができる。そこではどんなに過激な暴力をふるおうと、上からの命令なので行動の責任は問われない。権威の庇護のもと万能感にひたりながら、自らの攻撃衝動を発散することが許される。」
    →怖くて逆らうことができなかった。すべては命令に従っただけ。悪いのは自分ではなく脅して命令に従わせたこいつだから、自分が罪に問われるのはおかしい。
    →内心では、わざと命令に従って権威側を手玉に取っているつもりだったのでは?馬鹿にしていたはずの相手より馬鹿だった、と認めないと使えないロジックでは。
    →なんにせよ、本書にもあるような「合意独裁」、持ちつ持たれつの関係であったことは明白では?

    p31
    「芸術の評価権を『普通の人間』の手に取り戻す」
    →そんなことしたら「わかりやすいもの」が評価されるに決まってる。押し進めていったら「プロならもっとわかりやすくしろ。馬鹿にしてるのか」「意味がわからないから伝える能力に欠ける凡才」なんて評価がまかり通るようになるだろ。これ衆愚政策?

    p43
    「殺害されるユダヤ人の登録・移送・殺害が分業化・非人格化され、個々の加害者が自分の行為の結果に向き合わずに済むようなシステムが出来上がっていた。」
    →わかっててやったろこれ。

    p77・80
    独裁制の確立には、満場一致で指導者を承認することが必要。なぜなら、全員が一致団結して行動してくれないと独裁が成立しないから。

    p123
    ※ 「専制政治」というのは、支配者と国民の間に身分的な差があり、国民には政治に参加する権利がないという状況だ。
    一方「独裁政治」は、一個人や一党派が絶対的な権力を持つ政治体制だよ。国民から選ばれているという点では形の上では民主的
    https://www.kanken.or.jp/kanken/challenge/level02/180604.html

    p136
    ※ 「合意」が全員が等しい立場に立っていたのに対し、「同意」は一方が片方の意見などを聞き入れる立場となっています。
    https://business-textbooks.com/goui-doui/

  • 2010年から10年にわたって大学講義の中で実施された「ファシズムの体験学習」について、講師自らが著している。

    「ファシズムを肯定するものではなく、その危険性を認識することが目的」は当然だが、意図した効果を受講者に与えることと、暴走の危険性をコントロールすることは、相当に気を遣う、難しい舵取りで、安易に真似のできるものではない。また、小中高では、この体験学習以外にも同じ集団で過ごす時間が多いことから、暴走の危険性が高過ぎるとも。

    受講生たちは特別な感覚を与えられ、そのあっけなさに多くが驚いている。それだけでも怖いが、現代にもファシズムに通じることがいくつもあることが分かる。ヘイトスピーチ、自国第一主義、移民排斥、そして学校や職場でのいじめ。。過剰に傾くことが無いように、時々この本を思い出さなければ。

    有名な昔の実験、「青い目、茶色い目」も、この体験学習と類似。You Tubeでも映像があるが、なかなか衝撃的。

  • 書評をきっかけに読んでみたが、小難しくなく読みやすく、微妙なテーマを一歩引いて眺めることができる。
    前代未聞の授業ということが全面的に出ているが、一部を切り取らずに通読するといいと思う。

全41件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1970年生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は歴史社会学。著書に、『愛と欲望のナチズム』(講談社選書メチエ)、『魅惑する帝国――政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)ほか。
個人ウェブサイト:http://www.eonet.ne.jp/~dtano/dTANo.Mac/purofiru.html
Twitter:@tanosensei

「2020年 『ファシズムの教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

田野大輔の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
グレイソン・ペリ...
レベッカ ソルニ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×