ファシズムの教室:なぜ集団は暴走するのか

著者 :
  • 大月書店
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272211234

作品紹介・あらすじ

76万PV*を記録しネットで話題沸騰した「ファシズムの体験学習」を紹介しつつ、ファシズムの仕組みを解説。ナチスの大衆動員の実態、ヘイトスピーチなど身近な問題も論じる、全く新しい入門書! *『現代ビジネス』記事https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56393

感想・レビュー・書評

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  • ファシズムを体験学習する講座を考案し実践した著者による一冊。
    ファシズムやナチズムはいけないという漠然とした印象や意見を持つ人が多い中、それでは何がいけないのかを説明できるでしょうか。
    暴走を防ぐためにしっかりと管理された環境でファシズムを実体験することは、素晴らしい教育方法だと思います。
    全体主義の持つ素晴らしさと危うさを肌で感じることができれば、実社会での不穏な風潮や空気に反応するアンテナが備わるでしょう。
    当時の勤勉なドイツ国民と日本国民が扇動されたのですから、座学だけでは不十分だということです。
    講座は外圧により休止中ということですが、学生でなくても受けたいほどの内容なので勿体ないことです。

  • 他人事ではない、自分はそうならないと思っている人ほど必読!

    気を付けていないと、誰でも(私も含めて)渦中の人になり得る。
    服装をそろえたり、同じことをみんなで発したりって、日本にいると、日常のあちこちで実は経験している。運動会のチームTシャツ、制服に然り。号令による起立に然り。

    著者が実際に「体験学習」をして、学生からの振り返りを分析してみると、集団行動にのめり込む原因として、「集団の力の実感」「責任感の麻痺」「規範の変化」の3つが大いに関係していることが詳らかに。

    ファシズムは過去のことではなく、現代もヘイトスピーチなどと形を変えて、存在する。この闇に取り込まれないように、できることを考えたい。

  • ファシズムの入門書というより大学での体験授業の記録と紹介であり、ファシズムとは何かが知りたいと期待して読むと肩透かしを食います。
    でも良い本なので再読する予定。

  • ☆読書メモ☆

    ナチスドイツを代表とする「ファシズム」について、大学授業でのアクティブラーニングを経て分かりやすく説明した本。ファシズムを産み出すのは以下メカニズムによる。

    ・必要なもの
    ○絶対的な権力
    ○集団による統一目標(ナチスドイツでは国民社会主義・ユダヤ人の排斥、本授業ではリア充撲滅)
    ○集団を認識させるシンボル(ユニフォームやマーク)

    ・プロセス
    多人数による均一行動により、自己を希薄化させる。同時に圧倒的権力者の命令という「大義名分」を背負う事で自己肯定化し、自らの行動をある種他人事のように感じさせる。この状態で統一行動を行なうと、多数派に属しているという安心感が生まれ、所属に対する強い動機が生まれ、のめり込んでいく。

    上記プロセスで重要なのは、当事者は大衆に呑まれると、正しい判断力を失うということである。近年、BLMの暴走やネオ・ナチ、イスラム国といった「ポピュリズム」「ファシズム」的思考が蔓延っている。ネットの発達が、これを一層助長する側面もあるとも感じる。

    これを踏まえ、我々が意識しなければならない事は、「臭いものに蓋」をするのではなく、「毒を持って毒を制する」、つまりファシズムの原理を理解し、その上で批判的思考を持ち続ける事である。

    社会科学を学習する意義が極まった本であり、読んで良かったと思う。

  • 集団が暴走する様を疑似体験できる面白い授業だ。
    危険性を指摘する声もあるみたいだが、同じ目的を持ったコミュニティというのは世界中にあるわけで、カリスマ指導者の下、社会に認められている場合もあるので、すべて暴走する危険性があるとは一概にも言えないだろう。
    これが社会性のある動物としての人間の本質とするならば、今後も世界に悪影響を及ぼす集団が生まれないよう、その危険性について、この授業のように教育する必要もあるのではと思う。

  • 体験授業を通じてファシズムを学ぶという、大学の授業を実施していた大学教授による本。

    生徒たちが、授業を通してどこまで理解したのか何とも言えないが実施体験できるのは興味深い。

  • 平和ボケが危険なことを思い出させてくれる一冊。
    ナチスドイツの悪行は全てヒトラー1人に起因するのか?
    現代にファシズムが再来する可能性はないのか?

    題材が題材なだけに非常に気を使った文章なためややクドい印象もあるが、そんなに難しい本ではないので、気軽に読み始めていいと思う。

    中盤以降の授業の方法に関する記述は授業実施に際しては細心の注意が必要とのことで どうしても省けないのだと思うが、一般の読者は斜め読みでもいいかな、と思う。

    序盤から前半は全ての日本人に読んでほしい。

  • ファシズムを体験する授業の実践を紹介している。
    しかし、日本の義務教育の現場はファシズムの状態に近いようで既に馴染みがあるものだなと思った。

  • 誰にでも起こり得るという事が分かりやすく書かれている。今の時代にこそ、読んで集団暴走の可能性を理解しとくべきである

  • 「複雑化した現代社会の中で生きる人々の精神的な飢餓感に訴えるという本質的な特徴」をもって「強力な指導者のもと集団行動を展開して人々の抑圧された欲求を解放し、これを外部の敵への攻撃に誘導するという手法」がファシズムの本質であるならば、それは決して歴史的現象にとどまるものではなく、まさに今ここにある危機だと言える。
    大変よく工夫された授業で、授業の設計論としても大変に興味深い。サクラ役の学生を集める苦労など、大変に興味深く読めた。
    むしろ恐ろしいのは、この授業に寄せられたクレームの方である。教員本人ではなく大学に圧力をかける形でのクレームで、直接的にこれに屈服する形ではなかったにせよ、様々な配慮が必要となり、換骨奪胎されてしまうことを恐れ、授業の内容を継続することを辞めた無念はあとがきに詳しい。まさにこうした愚かな議員がいるからこそ、こうした授業には意味があるのだろう。

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著者プロフィール

1970年生まれ。甲南大学文学部教授。専攻は歴史社会学。著書に、『愛と欲望のナチズム』(講談社選書メチエ)、『魅惑する帝国――政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)ほか。
個人ウェブサイト:http://www.eonet.ne.jp/~dtano/dTANo.Mac/purofiru.html
Twitter:@tanosensei

「2020年 『ファシズムの教室』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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