しのびよる破局―生体の悲鳴が聞こえるか

著者 :
  • 大月書店
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本棚登録 : 91
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272330584

感想・レビュー・書評

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  • 正しいことをなんの臆面もなく正しい
    と言い募る輩(やから)には
    本当に気を付けなければならない

    ますますしんどい状況に覆われつつある
    この国に暮らしていて
    ますます感じることである

    優しい、だの 癒し、だの
    ふれあい、だの さわやか、だの
    そこらじゅうに氾濫して
    本来その言葉の持っていた
    善の意味は すっかり色褪せてしまった

    今 なにを
    今 どう考えていくべきか
    今 どのように動くべきか
    今 どのように動かざるべきか

    改めて 考えさせてもらえる
    一冊でした

  • 金融危機後にかかれた(NHKのTV番組をもとに編集された)本で、資本主義というシステムに取り込まれた現代の人々の内面の荒みを厳しく批評しています。
    こういった本や論調はそんなに珍しくないと思うのですが、この方がたぶん世界のいろんな現状を目にした上で言っているので説得力というか重みがすごいです。
    日常には「晴」と「ケ」があったはずなのに全部が「晴」になってしまったとか、欲望がたえず喚起されているとか、現在は悪が善の顔をしているというような指摘はそうだなと思いました。
    一方で、そうでない社会の動きもあると思うのですが(著者はそう思っていないかもしれないけど)、それらには一切ふれられていなかったので、とにかく暗く現代を憂えている本・・という印象でした。

  • 「昔」を知っている人は、今が危うく見える。
    金融恐慌、地球温暖化、新型インフルエンザ、そして人間の内面崩壊…。異質の破局が同時進行するいまだかつてない時代に、私たちはどう生きるべきか。「予兆」としての秋葉原事件から思索をはじめる書。

    戦後日本のモラルが生きていた良い時代を知っている著者の世代にとって、現在の日本はとても危うく見えるようです。グローバル化によって世界との結びつきが強まり、金融や環境問題が世界の大きなテーマとなってきている中、社会のモラルが崩壊し派遣切りや無差別殺人が起きる日本の行方をとても心配しています。
    でも、今の若い人達にとっては現在の日本が普通の状態ですから、現状を憂えるよりも、将来どうあるべきかの提言が欲しかったです。

  • 「人々を病むべく導きながら、健やかにと命じる」、そういうシステムが資本主義であるというのだから驚いた。22年間、そんな風に疑う術を知らなかった。きっとものすごいがんこジジイだ。がんこな人が書いている容赦のない文章。

  • 資本主義を「人々を病むべくと導きながら、健やかにと命じる」システムと断じる。現在の今と自分を考えさせる一書。

  • ここ10年、日本の年間自殺者数は3万人を割った事がない。
    この「まるで戦争状態」の日本。
    20〜50代の自殺の第一原因は「経済・生活問題」。
    この事が著者のいう「資本主義とは“人びとを病むべく導きながら、健やかにと命じる”システムである事を示す。
    そして我々の無関心と言う「精神の荒み」がそれに加担している事。
    「精神の荒み」はただ無関心なだけではなく、「Not In My Backyard(自分の庭に来るのはイヤ)」という“社会問題に興味はあるが、自分が犠牲になるのはイヤ”という身勝手さも含まれると言う。

    私の胸を容赦なく突き刺す本でした。
    一人でも多くの人に読まれる事を願います。

  • 恥ずかしいことに、私は辺見庸の30冊もある著作を一冊も読んでいませんでした。本棚には、調べてみると『もの食うひとびと』『反逆する風景』『屈せざる者たち』『眼の探索』の4冊を揃えているのに、未読でした。本書を読んで、こういう文明論的発言をする作家をどうして感知しなかったのか

  • NHKでやってた番組を編成したものらしい。

    amazonとかmixiとかのレビューみると結構賞賛の声が多くあがっていてびっくりしたんだけども。若干なにかを主張するには論証が足りない印象。
    いや、このひとがこの時代に対してものすごい危機感を持って、なんとかして変えたいって気持ちをもって生きてるのはすごくよくわかる。でもなにかを変えるためには、もっと具体的ななにかが必要だし、あるいは、このひと風に言うなればファシズムのような魅力とでもいえばいいか、そういうものが必要。エネルギーって言い換えてもいいかな。
    たぶん、実際このひとが言うとおり、一か月前まで電車で一緒に通勤していただれかが、突然紙のふくろをもって路上で寝泊まりしていたり、ということが自然にあるんだろうし、からだを壊した誰かが、治療をうけるお金がなくて公園で寝泊まりしたり、文字通り血をはいていたり、ということもあるんだろう。正直それが「マチエール」を伴って想像できないのが歯がゆいけど。確かに社会はそういうひとびとを救済するシステムが欠けている、かもしれない。実際そうだと思う。でも路上で寝るだれかのために今すぐお金をだそう、てこころから思えるひとが何人いる?本気でそう思うんだったら家に泊めてやれよ。って思っちゃうんだけど。かわいそうだと口に出すことも、憐れむことも簡単なことだけども。
    けど、なんつか、努力しだいで手に入るなにかのために努力しなかったひとを、救済すべきなのか?てとこで立ち止まってしまう。ほんとにぎりぎりのところまで頑張ればそうはならなかったんじゃないか、とか、そういうこと。そのへんよくわからん。でもたぶん、わたしみたいな人間のことを資本主義や競争原理に毒されてるっていって差し支えないとは思う。あーでも年齢とかってのはかなりネックになったりするんだろうな、たぶん。
    必ずしも資本主義が約束する公正な競争は向上に必ずしも結びつかないだろう、それは認めるし、企業が行った(行っている)ひたすら株主(企業)の利益を追求するゲームは、わたしたちの生体にとって適切なものではない「かもしれない」。
    生体が破壊される、てのは象徴的な表現だと思うけど、なんか資本主義が生体を破壊する、っていわれるとソースは?て思うのね・・・。秋葉原の事件の彼はわたしたちのうちのだれかと交換可能である、社会に問題があるのだ、生体にガタがきてるのだ、うん、それはそうかもしれない、でもなにが原因って論拠をあなたはどこで示すの?というか、経済活動の建て直しより他のなにかを目指すべきだ(ひとびとの救済?利益の追求よりも会社やひとを大事にすること?)だと言っているけれど、そのためにはどうシステムを変えるべきか、たとえば競争原理を排した場所で起こってしまうであろうなにかが、(不正な経済活動?って言い方は間違ってる気がしないでもないけど、寡占とか、独占とかによる、不当な価格とかさ)結局利益を追求する方向に向かってしまうことをどう修正するのか、とかさ。

    全体的に感情論なんじゃ、という感じがした。
    ただ、あえてもう一度言うけれど、資本主義を捨てる方向に舵をきる必要性をこのひとがものすごく感じていて、それを表現するために必死なのはよくわかった。一生懸命なのはわかったから、もうすこし具体的に論じろよ、というのが率直な感想。
    とはいえ、まあなかなか、面白いというか、実際インターネットや携帯電話をはじめとするいろんな技術の発達によって人間は変質してきてるとは思う。それが生体にとって破局に結びつくか、というところをわたしは断言できないけど。案外人間は適応しちゃうんじゃないか、とも思うのね。このひとみたいな考え方をよしとするひとびとのほうが滅びてしまうんじゃないかとも。
    いや、でも、よくわかんないな。んーむ。

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著者プロフィール

1944年宮城県石巻市生まれ。早稲田大学文学部卒。70年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、編集委員などを経て96年、退社。この間、78年、中国報道で日本新聞協会賞、91年、『自動起床装置』で芥川賞、94年、『もの食う人びと』で講談社ノンフィクション賞受賞。2011年『生首』で中原中也賞、翌年『眼の海』で高見順賞、16年『増補版1★9★3★7』で城山三郎賞を受賞。

「2021年 『月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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