- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784272330676
作品紹介・あらすじ
差別、迫学、貧困、暴力、アルコール、ドラッグ、ギャンブル依存-あらゆる困難がのしかかるアメリカ社会の最底辺で苦闘しつつ、先住民の誇りとあらたな挑戦に賭ける、同時代の、等身大のさまざまな部族の相貌。18歳で先住民居留地に迷いこみ、以来20年間、彼らと時間をともにしてきた著者のみが描きうる、唯一無二の迫真の記録。
感想・レビュー・書評
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鎌田遵さんの態度がかなり好き。部外者でありつつ、何年も身近に寄り添い、関わり、話を聞き続けた人でないと知り得ないこと、書けないこと。学術書的な側面が強いけど、感情的になりすぎない程度に感情も大切にしている。そうでなくても読み物として面白くてずんずん読めた。
知識も要するけどそれだけではなかなかできないすごい仕事だ。人柄の良さもあるんだろうな。すっかりファン、他の著書も読みたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アメリカ先住民居留地の実情を描くルポ。
著者はカリフォルニア大学バークレー校で先住民研究を行う傍ら、コミュニティでの個人的交際もしてきた人。制度や社会などの大枠と、当事者の日常やライフヒストリーなど個人的レベルの両方について触れられている。
アメリカ先住民は、19世紀の虐殺や同化政策といった歴史を経て、現在は公式に認められた居留地で部族政府による自治を行う(全部ではない)。独自の法制度もある。自治と言えば聞こえはよいが、貧困やインフラ不備、部族政府の腐敗等の社会問題が国に放置された状態であることも指摘されている。
本書に書かれたことではないが、2点連想した。1点目はちょうど現在の新型コロナウィルス騒動の中、ナバホ族の居留地で感染拡大とのニュース。水道の不備等で、頻繁に手洗いできない環境であることが一因という。
2点目は、以前観た映画「ウィンド・リバー」。これも先住民居留地の問題を扱っていた。作中人物の死が殺人であれば重犯罪として連邦捜査局の管轄となるが、暴行の末でも不慮の死と判断されれば部族政府の警察の管轄となり、そして後者は捜査体制が貧弱すぎて実質的に罪が野放しになる。法制度の違いから生じた問題。
本書の内容に戻ると、法制度の違いによってもたらされた影響のひとつがカジノ。1980年代以降、先住民居留地でのカジノ経営が盛んになった。国としては一部の特区(ラスベガス等)以外では禁止されているもの。カジノの利益は部族政府により先住民に分配され、福祉などに利用される一方、問題ももたらす。本書ではカジノ経営にあえて手を出さず、ホテル経営や再利用可能エネルギー、ハイテク産業によって経済的向上を目指す人々の取り組みも紹介されている。刊行が2011年だが、現在の状況はまた変わっているだろうか。
先住民というアイデンティティには生物学的な面と文化的な面の両方がある。制度的に先住民として認められるにはどこかの部族に登録する必要があるが、登録の基準は血。カジノの利益分配目当てで登録する人もおり、混血が進む中での基準が揺らいでいる。登録制度そのものが本来の文化に十分配慮せずに作られている。
第2-3章では黒人と先住民の関係にも触れられる。いずれもアメリカ社会全体としては差別を受けやすい側だが、先住民はかつて黒人奴隷を所持していた歴史もある。先住民と黒人両方の血を引く青年(第2章)の境遇から、先住民コミュニティには黒人への差別意識があるが、黒人コミュニティは見た目が黒ければ受け入れてくれるという実情が分かる。両者に受け入れられるアイコンとしてのマイケル・ジャクソン。差別・被差別の関係は複層的だ。 -
仕事で読む必要を感じた本。読む気があるうちに手に入れて読まなければ積読になってしまう・・・