刑務所しか居場所がない人たち : 学校では教えてくれない、障害と犯罪の話
- 大月書店 (2018年5月17日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784272330935
感想・レビュー・書評
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ブクログで見かけて気になったので購入
以下、総評
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世間知らずの自分だから、刑務所の実態を知らずに生きてきてしまった。
我々の想像に反して、イベントごとを重視している刑務所もあるのだとか。
クリスマスやバレンタインデーを受刑者で楽しむらしい。
それに対して、一部から批判がある。税金で犯罪者を楽しませるなんて…!と。
だけど筆者は説く。彼らの中には、人生で一度たりともクリスマスを祝ったことが無い人がいる。
ああ、そうか。もうすっかり、そんな人は自分の周りにはいない。ゲーテッドコミュニティではないけど、恵まれた人の中にいるのだと再認識してしまった。
知らず知らずのうちに自分の世界認識が狭まっていようだと知る。
それから、刑務所には刑務官がいる。
若い刑務官は息巻いてやってくる。犯罪者を更生させようと意気込んでいる。
だけど、想定外の現実を目にする。知的障害を抱える受刑者や、病気の受刑者、それから高齢で歩けない受刑者を前にする。
とある刑務官は恐ろしく優しくなったという。泣いて眠れない受刑者に子守唄を歌ってやる。面会を拒絶する受刑者を説得して、その後泣いて感謝される。
クリスマスを祝ったことがない人たちが、やさしい刑務官に見守れて、生まれて初めてイベントを楽しむ。
セーフティネットからこぼれ落ちた場所でさえ人情とやさしさがあるのだと、筆者の語る現実に泣けて仕方なかった。
だけど、彼らは「シャバ」に出ても居場所がないから軽犯罪を犯して戻ってくるという。
外の世界には、精神的な繋がりがない。経済的なよりどころがない。生活の基盤がどこにもない。そういう現実が待っている。
セーフティネットを突き抜けた場所として、刑務所が機能している。そういう側面はあるのだと知った。
「刑務所しか居場所がない人たち」の意味を理解する。
受刑者として過ごした筆者だからこそ、同じ目線で語ることができるのかもしれない。ポップな装丁と、やさしい語り口だけども、だからこそ現実の問題としてスッと抵抗なく胸に入ってくる。
読書家として、この本を読めて良かった。
読みながら、何度か本を閉じて一時中断した。本を閉じて目を閉じないと、涙がこぼれてきそうだった。
筆者の説く「ソーシャル・インクルージョン」のために、できることをしよう。「生き直し」を必要としている人のために、自分ができることをしたい。
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各論や細かいメモ書きについては長くなってしまうので省略。書評ブログに書いたので良ければそちらもどうぞ。
https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%A5%E3%83%BC_%E5%88%91%E5%8B%99%E6%89%80%E3%81%97%E3%81%8B%E5%B1%85%E5%A0%B4%E6%89%80%E3%81%8C%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1_%E5%B1%B1%E6%9C%AC%E8%AD%B2%E5%8F%B8詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分の中でまた新たな世界が広がった気がする。
障害者についてはまだ知らないことだらけである。自分の身の回りには刑務所に入るような人はおらず、刑務所といえば極悪人の集まりというのが正直なところであった。しかしやはり実際に獄中を経験した人の言うことは説得力があり、実態はだいぶ違ったもののようだ。障害者の犯罪は罪名がつくことで大げさになってしまっているが、なにをしたかまで知れば世間の考え方は大きく変わると思う。
中でも印象的だった点が3つある。1つは障害者にとって刑務所が一番幸せだと思わせてしまっている社会である。作中にもあったが障害を持った犯罪者は多くがそれまでの人生において被害者であったケースが多い。それに比べて獄中は虐待などの被害を受けることもなく食事も出されるため釈放されても望んで刑務所に戻ろうとしてしまう人が多いそうだ。2つ目は獄中の労働は高くても時給40円ということである。これは釈放後の生活費を稼ぐというよりもただ単に時間を潰すためのものであるということを象徴しているように感じた。そして3つ目は障害者は「悲しい」という感情に敏感であるということだ。前にも述べたようにこれまで被害を受けることが多かった障害者にとって悲しみは人一倍感じ、恐れているものであると思う。それを根底に置くというのが障害者を理解し、接する上で大切なことだと思った。-
今までに思いつくようで、実際にあることを書いた本「障害と犯罪の話」があるのがわかった。レビューも内容を読まなくても詳しいので、健常者と障害者...今までに思いつくようで、実際にあることを書いた本「障害と犯罪の話」があるのがわかった。レビューも内容を読まなくても詳しいので、健常者と障害者について改めて同じと違いを考えたい。2019/07/06
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実際に受刑者として刑務所に服役した元衆議院議員によるドキュメント。こども向けの本で、難しい言葉は使わずに、分かりやすい語り口調で書かれている。
刑務所における障がい者の割合の高さには驚いた。そして、彼らは、悪意をもって犯罪を起こすというより、十分なサポートが得られず、生活の中で困難を抱え、結果やむを得ず加害者となっているようなケースが多いようだ。
日本では、福祉サポートをする余裕はあまりない。助けを受けるために必要な障がい者認定すら、自治体によって基準がばらばら、全体の数値はWHOの半分程度だ。発症率の違いではなく、認定基準による。つまり、本当は助けが必要なのに、そこに結び付かず、社会の中で大変な思いをしている障がい者の方がおおい。
福祉施設にも断られ、刑務所以外に行くところがない、出所すればホームレス生活。刑務所が福祉施設化している現実は、ゆがんだ構造のように感じられた。 -
著者の山本譲司さんは,衆議院議員だったときに,秘書給与流用事件を起こして逮捕,
判決確定後,控訴をせずに服役することになったが,その刑期のなかで,刑務所では凶悪犯よりも知的障害者が多いことを知る。
障害があるために,社会で生きるすべを知らず,数百円程度の万引きや食い逃げ事件を起こして刑務所に入る。刑期を終えて刑務所を出ても,暮らす場所も収入もなく再び犯罪を起こして刑務所に帰ってくる。
そのような累犯障害者(というのは山本さんの造語である)を,出所後に支援し,一定の道筋をつけて社会で暮らしていけるようにするというのが山本さんが目指すあり方なのだと感じた。
受け入れる側の体制がまだ整っていないようにも感じているが,この本に出てくる「ふるさとの会」の活動で,改善されてきている途上なのだろう。
もともと中高生向けに書かれた文章なので,非常にわかりやすいし,これからどうしていくか若い人にこそ読んでいただきたい本だと思う。 -
刑務所しか居場所がない人たち:学校では教えてくれない、障害と犯罪の話。山本譲司先生の著書。刑務所が障害を持つ人たちの行き場になってしまっているという日本社会の歪んだ現状をわかりやすく説明している良書。障害を持つ人でも障害を持たない人でも誰もが幸せに暮らせる社会であってほしい。
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とても考えさせられる本だった。
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刑務所には実は多くの知的障碍者がおり、その実態は多くの人が知らない。
世の中の見えていない部分にこんなことがあるんだというのはとても衝撃的でした。
言葉にして説明するのは難しいですが色々と考えさせられる内容です。 -
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東京大学医学図書館の所蔵情報
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_search/?amode=2&kywd=4311486924 -
全然知らなかった。
著者プロフィール
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