この国の不寛容の果てに:相模原事件と私たちの時代

  • 大月書店
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本棚登録 : 309
感想 : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784272330973

作品紹介・あらすじ

「生産性」「自己責任」「迷惑」「一人で死ね」……刺々しい言葉に溢れたこの国で、男は19人の障害者を殺害した。「莫大な借金をかかえた日本に、障害者を養う余裕はない」との理由で。沈みゆく社会で、それでも「殺すな」と叫ぶ7人の対話集。

感想・レビュー・書評

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  • 「障害者は不幸を作ることしかできません」と言って障害者施設で19人を殺害した相模原事件。一報を聞いて、雨宮処凛は「とうとう起きてしまった」と思ったという。

    2000年代に始まった、自己責任論の蔓延、ヘイトデモ、嫌韓嫌中ブーム、生活保護や貧困パッシング、2018年に杉田水脈の「LGBTには生産性がない」発言。
    実はその前には公務員パッシングもあった。「いい給料をもらい、安定した雇用のもとに楽をしている。」と。
    ←このように並べると、政治家はこれらの意見に乗ってその後の悪法や経済政策、外交を進めたのだと気がつく。まさか、内閣調査室が仕掛けた!?


    「公務員を通り越して、生活保護利用者や障害者が「特権」とみなされるなんて、この国の人々の生活はどこまで地番沈下してしまったのだろう」
    (11p)と雨宮処凛は嘆く。

    ←学術会議任用拒否問題に対しても、同じ構図が広がっている。「彼らは特権階級なのに、何を守ってあげる必要があるのか」。

    この序章の「問い」から発して、雨宮処凛は6人の識者と対談をして、昨年9月に発刊した。基本的に彼らの意見に9割方賛成する。問題点はかなり整理されて提示されている。が、紹介しない。
    「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」ではないが、世界の片隅でひっそりと語られた会話では、その流れは止められない、止まらない。
    彼らの幾人かは植松被告と直接対話を試みたが、もはや植松被告に聞く耳は無かったようだ。

    加藤周一は、世界を変えるのは「科学」ではなく「文学」だと言った。それは狭義の意味ではなく、かなり広い意味であることは明らかである。文学といい、哲学といい、歌といい、体験といい、世界観が変わるためには特別なモノが必要なのだが、正解はない。わたしはずっと「体験」が必要だと思っていた。生活保護問題にしても、貧困問題にしても、パッシングしている人は、彼らと「直に」関わっていなかったからだと思っていた。けれども植松被告は、「やまゆり園」そのものに勤めていたのだ。予め殺すべきだ、と思って勤め出したとしても、直に接することでその世界観に揺らぎは起こらなかったのか?わたしは自説を修正せざるを得ない。

    どうして、バブル時代は公務員パッシングが生まれなかったのか?植松被告はこのまま「借金が膨らむと大変なことになる」と犯行に及んだが、どうしてステルス戦闘機F35を6.2兆円で147機購入(維持費含む)することに、大きな非難の声が上がらないのか?

    いかん、ダラダラ言葉を並べ出した。何の意味もないのに。

    植松被告については、それから一年後死刑が確定し、これ以上の事件の解明は難しくなった。

    ※テレビで「鬼滅の刃」を見ていると、なぜか植松被告が、悲しい運命を持つ鬼たちの姿と重なった。アニメもこの事件も、時代が作っていることでは共通性がある。

    • kuwatakaさん
      この事件について、猫丸さんがご指摘されるように「許容範囲」超えてしまって鬼と化した印象を受けます。疲れを癒やす習慣が崩れてしまっていたり、常...
      この事件について、猫丸さんがご指摘されるように「許容範囲」超えてしまって鬼と化した印象を受けます。疲れを癒やす習慣が崩れてしまっていたり、常に特定の問題に向き合い続けていると「視野狭窄」になりがちです。特に社会保障の逼迫と自分の経済的な困難な不安が「原因と結果」に見えてしまうと「命の選別(優生思想)」にハマることもあります。メンタリストDaigoさんの最近の炎上も重なります。

      僕は社会保障の逼迫が、社会に不寛容、自己責任論、新自由主義をさらに加速させていると考えてます。立場の弱い者がさらに弱い者を叩く不条理の連鎖を断ち切る鬼殺隊が存在し得るとすれば、彼らに何が求められているのか、どんな呼吸でどんな技を、何に対して繰り出さなくてはいけないのか?考えたいと思います。
      2021/08/26
    • kuma0504さん
      kuwatakaさん、コメントありがとうございました。

      私も考えていきたいと思います。
      私はずっと、ネットの中だけではなく、直に生活保護が...
      kuwatakaさん、コメントありがとうございました。

      私も考えていきたいと思います。
      私はずっと、ネットの中だけではなく、直に生活保護が必要な人や障害者に接したならば、こういうことは起きないと思っていました。労働関係で、数人だけ生活保護支給決定に関わった経験からそう思っていたのですが、今回の相模原事件でそういう単純なものではないと思い知らされました。この前起きた「人を殺したかった」若者も強い意志で実行したし、30人を殺した「津山事件」も、かなり周到な準備をしていました。彼らには、それなりのエネルギーの蓄積があったのです。そのエネルギーに見合うだけの発見がないと人は変わらない。

      これからもよろしくお願いします♪
      2021/08/27
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuwatakaさん kuma0504さん

      立岩真也・杉田俊介『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』(arsvi.com...
      kuwatakaさん kuma0504さん

      立岩真也・杉田俊介『相模原障害者殺傷事件――優生思想とヘイトクライム』(arsvi.com:立命館大学生存学研究所)
      http://www.arsvi.com/ts/2017b1.htm

      「不条理の連鎖を断ち切る」「エネルギーに見合うだけの発見」肝に銘じておきます。。。
      2021/08/27
  • 「この国の不寛容の果てに」書評 「本心」の語りが許される社会に|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12844606

    先行連載「この国の不寛容の果てに」(雨宮処凛)|大月書店|note
    https://note.com/otsukishoten/m/m8a14d9233d0a

    第494回:命の選別は「仕方ない」のか? ?『この国の不寛容の果てに 相模原事件と私たちの時代』。の巻(雨宮処凛) | マガジン9
    https://maga9.jp/190904/

    この国の不寛容の果てに - 株式会社 大月書店 憲法と同い年
    http://www.otsukishoten.co.jp/book/b471597.html

  • 【寛容さを大事に】
    金に余裕が無くなると心にも余裕が無くなる「不寛容」と「自己責任」だらけの世の中を考える本。

    神戸氏:相手の立場で考える「想像力」が「優生思想」に対抗する為の出発点。

    熊谷氏:障害者と介助者が対等な関係を保つ為、人権や構造的差別の問題として捉え、障害者の安全や人権が保たれるようにしている。
    「本音」を語れても「本心」を語れない世の中である。
    「貢献原則」が「必要原則」を上回り過ぎると優生思想に近づく。

    森川氏:「聞ききる」ことで尊重されているという感覚を生む。
    「迷惑をかけない」というモラルで「耐え忍ぶ」は安易で短絡的な日本の特徴。
    短絡的なショートカットをしないでとにかく対話することで、結果的には効果的に社会を運営できる。
    格好つけるのをやめて「面倒だ」と口にすることで追い詰められていることを自覚する。

    なるほどと思えることが満載です。対談者のそれぞれの著作を読みたくなります。

  • 副題のとおり、「相模原障害者施設殺傷事件」をめぐる対談集である。
    雨宮処凛さんがホスト役を務め、ジャーナリスト・精神科医・大学教授・批評家など、6人の論客との連続対談を行っている。

    6人は、それぞれ障害者と深い関わりを持つ人々である。自らが脳性麻痺の当事者であったり、お子さんが重度障害者であったり、元障害者介助者であったり……。

    その深い関わりをふまえた6人の言葉には、重い説得力がある。
    雨宮さんは、各対談者からよい話をたくさん引き出している。インタビュアーとしても優秀な方だと感じた。

    相模原事件で19人の重度身障者を殺害した植松聖被告を、あろうことか英雄視するような言説も、ネット上に散見される。
    そこまでいかなくても、「重度障害者は不幸しか作らない」という植松の言葉に心中ひそかに共感を覚える人は、けっして少なくあるまい。
    本書は、いまの日本社会に蔓延するそのような空気に抗う対談集である。

    相模原事件を話の起点にしてはいるものの、各対談はそこから思いもよらぬ広がりを見せる。
    たとえば、事件の底流にある優生思想の歴史をめぐって、小泉政権以来顕著になった「自己責任」論をめぐって、そして、「不寛容」な日本社会になった遠因たる貧困問題をめぐって……。
    語らいは縦横無尽に展開し、文明論的な深みすら帯びる。

    このところ、相模原事件についての本を何冊か立て続けに読んだが、その中では本書がいちばんよいと思った。質の高い好対談集だ。

  • 相模原事件をテーマに雨宮処凛さんが6名の方と語った対談集。とても良い本でした。
    熊谷晋一郎さんの、生産性ではなく必要性の方が上位だという話、森川すいめいさんのオープンダイアローグについて、そして、向谷地さんの浦川べてるの家の話がほんとに群を抜いてすごいと思った。
    みんな自分の体験から語っている。自分の体験を自分の言葉で、一人一人がそう語れるようになったら、いいのかもしれないと思った。

  • 何かの人にインタビューする形式の本。
    本の中盤まで、身につまされるような思いで読んでいたが後半になると解決の兆しが見えてくるような気分。

    小泉改革時に既得権益をぶっ壊し、自分もプレーヤーに入れて欲しいと思ったことのある人には読んで欲しい。

    そして、壊したあとの新しいルールを多数決では様々な人の意見を聞き議論していく重要性を感じた。
    もう一度、読み返したい一冊

  • 取材に近い対談集といったところ。
    ざっくり丸ごと不寛容というにはいささか乱暴だけれども、まずはありのままを受け入れること、対話をすることの大切さがテーマのような気がします。
    それから、一部の情報で自分にバイアスをかけないこと。
    当事者研究は非常に画期的だった。

  • 被告への死刑判決を前に、読んだ。
    それぞれの立場から、問題が立体的に浮かび上がる。
    ラストの「浦河べてるの家」の向谷地さんの言葉に
    簡単ではないけど未来につながる細い道を感じた。

  • 家族や医者、取材者など、日常的に障害者と深く関わりのある人たちの対談集。
    「人ごとではない」思いに溢れる内容で、どの対談も印象に残るものだった。
    対談の一部はWeb上でも公開されている。それだけでも読む価値がある。

    「コミュニケーションとは双方向のものですから(・・・中略・・・)受信者が理解できなかったとしても、送信者側だけに落ち度があるとは言えません。社会の側に、それを正しく理解できる回路がなかったからだとも言える。」

    「その人たちは、たまたま人より敏感なアンテナを持っていたために、周囲の社会の空気や現実を人よりも素直に取り込んで、その結果として生きづらさや病気というものが症状として立ち上がっているのではないか。」

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著者プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん) 1975年、北海道生まれ。作家・活動家。反貧困ネットワーク世話人。フリーターなどを経て、2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版、ちくま文庫所収)でデビュー。2006年から貧困・格差の問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版、ちくま文庫所収)でJCJ賞(日本ジャーナリスト会議賞)受賞。著書に『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社文庫)、『「女子」という呪い』(集英社クリエイティブ)、『非正規・単身・アラフォー女子 「失われた世代」の絶望と希望』(光文社新書)、『ロスジェネのすべて──格差、貧困、「戦争論」』(編著/あけび書房)、『相模原事件・裁判傍聴記 「役に立ちたい」と「障害者ヘイト」のあいだ』(太田出版)、『コロナ禍、貧困の記録 2020年、この国の底が抜けた』(かもがわ出版)など多数。

「2021年 『この社会の歪みと希望』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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