- 本 ・本 (800ページ)
- / ISBN・EAN: 9784272612475
作品紹介・あらすじ
フランスで山田洋次作品を普及するジャーナリストが監督の懐深くに飛び込み、大胆かつ細やかに著した評伝の決定版。旧満州での生立ち、『こんにちは、母さん』まで全90作品の魅力、作品が映し出す日本社会論など、ファン必携。
[目次]
日本語版への序文
まえがき
第1部(1931-1968)
豊中から大連へ
飢えた者
最初の歩み
第2部(1969-1976)
伝説の始まり
目の奥の日本
高みに向かって
第3部(1977-1983)
成熟
ずっと好調
最初の転換
第4部(1984-1990)
日本のほんとうの顔
聖杯を求めて
昭和から平成に
第5部(1991-2003)
さらなる高みへ
悲しみのとき
新しい自分をつくる
第6部(2004-2019)
どの歴史?
立ち止まることなく
源流に戻る
第7部(2020-)
映画バンザイ!
バック・トゥー・ザ・フューチャー
あとがき――夢は終わらない
訳者あとがき
山田洋次監督映画一覧
感想・レビュー・書評
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運命的な出会い:20歳で知った山田洋次監督の世界
著者のクロード・ルブラン氏が山田洋次監督の作品と出会ったのは、40年前の20歳で日本語を学び始めたことがきっかけでした。日本への旅の途中、栃木県のホームステイ先で偶然観た『男はつらいよ 寅次郎真実一路』に言葉を超えた人間味を感じ、帰国直前に山田監督の著書『こやがはねて』を手に取って以来、その魅力に深く惹き込まれます。
「使命」感の芽生え:日本、日常、そして山田作品への理解
ジャーナリストとして長期滞在した日本で、著者は山田洋次監督の映画への知識を深め、作品の舞台を巡る旅を通じて、日本人とその日常をヨーロッパ人としての視点から捉え直しました。山田監督自身の満州での子供時代の経験が、著者の日本観に影響を与えたと感じ、山田作品をフランスやヨーロッパで広く伝えることが自身の「使命」だと強く意識するようになります。
知られざる巨匠:ヨーロッパでの評価と「メンシュ」の精神
山田洋次監督の作品群は、日本国内では国民的な人気を誇る一方で、ヨーロッパ、特にフランスでは正当な評価を得られていない現状を著者は憂います。一部の批判的な見解に対し、山田作品が単なる「体制的」なものではなく、ビリー・ワイルダー監督の作品に通じる普遍的な「メンシュ(人間)」の精神を描いていると反論します。
現代日本への眼差し:「笑い」と「共同体」の重要性
コロナ禍後の日本社会における山田監督の積極的な活動を紹介しつつ、氏は戦後の飢餓体験から「笑い」の力を信じ、苦しい時やつらい時に人々を救う映画作りを目指していることが語られます。また、日本の「伝統」や「現代性」に偏らず、「庶民の日本」を描き続ける山田監督の視点を、フランスの文化政策と比較しながら評価します。
グローバルな視点:エキゾティシズムを超えた普遍性
山田監督は、日本の文化が海外で「異国趣味」としてのみ認識され、社会の矛盾や歴史を変えた人々に焦点が当たらない現状を批判的に見ています。氏の作品は、特定の文化に限定されることなく、人間関係を深く感じさせる普遍性を持つことを、坂本龍一氏の言葉などを引用しながら再確認します。
最新作『こんにちは、母さん』:現代社会へのメッセージ
最新作『こんにちは、母さん』を取り上げ、親の選んだ道を子が適応せざるを得ない現代社会の状況を描き出していること、そして戦後の日本建築や下町の風景描写を通して、失われゆく共同体の重要性を強調していることを解説します。ホームレス支援グループの活動を通じて社会の矛盾を批判し、歴史の案内人としての役割も果たしています。
「使命」の達成へ:映画製作への情熱と文化交流の願い
山田監督自身が自身の映画製作を職人の仕事に例え、映画製作への情熱が彼の活力となっていることが語られます。著者は、日本映画を語る上で不可欠な山田洋次監督の作品を欧米に広く紹介することが自身の「使命」であると改めて強調し、綿密な取材に基づいた翻訳を通して、単なる文化紹介を超えた、相互理解を深める文化交流の実現を願っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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