自然エネルギーの可能性と限界—風力・太陽光発電の実力と現実解—

著者 :
  • オーム社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784274068089

感想・レビュー・書評

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  • ・日本最大の風車は全長125m、25~30Fのビル並み。定格出力3000kw、風任せのため利用率が概ね20%。規模単位で出力において火力、原子力とは2000倍以上の差となる。水力も300倍以上。管理は容易。

    ・太陽光発電では年間日照時間分布で日本はスタートが不利。
    3600h以上…北・南アフリカ、アメリカ中西部の砂漠地帯
    3000~3600h…中東、アメリカ、オーストラリア中央部
    2400h~3000h…中国、中央アジア、インド、南欧
    1600h~2400h…日本、ヨーロッパ中央、アメリカ北部、カナダ
    1600h以下…ヨーロッパ北部
    夜動かないので、1㎡=100w程の定格出力が利用率で計算すると12%程度。各家庭への配備を進めると、廃棄物の環境負荷が高い。

    ・化石燃料は既に集中の工程を終えている。

    ・クラーク数で物質の希少さの目安がつく。地球質量の67%を占めると言われるマントルが固まった火成岩の成分の割合。ベスト10は、酸素(49.5)、ケイ素=シリコン(25.8)、アルミニウム(7.56)、鉄(4.70)、カルシウム(3.39)、ナトリウム(2.63)、カリウム(2.40)、マグネシウム(1.93)、水素(0.83)、チタン(0.46)。生物の身体を作るのに欠かせない炭素は0.08で14位、空気の8割を占める窒素は0.03で16位。

  • 再生可能エネルギーの目玉ともいえる、太陽光発電や風力発電の欠点について詳しく述べられており、非常にわかりやすい説明だった。
    ただ、著者が推進すべきだと述べていた地熱発電や中小水力発電については利点について少し述べただけで、欠点については詳しく検討されておらず、結論ありきなところが残念に感じた。

  • 表紙の絵だけ見るとこの世の終わりかという印象もある本ですが、中身は非常に面白く、かつ読みやすいです。一般的に「自然エネルギー」と言われると太陽光発電や風力のイメージが強いのですが(それ自体、メディアによってバイアスをかけられてるのかもしれない)、序盤で風力と太陽光についてはその「可能性」と「限界」をしっかり指摘してます(こう考えると、タイトルのネーミングは秀逸)。有効ではあるものの既存のエネルギーの代替物にするには厳しい、ということが、最初の100ページぐらいで納得できます。

    そのうえで、著者が「日本に適した」自然エネルギーとして挙げているのが水力と地熱。水力発電は自分が子どもの頃からエネルギー源として挙げられていた感がありますが、この二つに注目が集まらない理由もしっかり押さえられています。結局のところ、政治や利権も絡んでいるという印象も受けましたが、火山と急峻な山、ふんだんな降水量に恵まれている日本では、確かにこの二つが有力なエネルギー源となることは疑いの余地がないことなのでしょう。問題は、それを認めて協力しようというアクターが存在するかどうか。従来のエネルギー業界の利権が残る以上、なかなか難しいとは思いますが、この分野への注目がもっと集まるといいなぁと感じました。

    著者は、既存の発電システムを全否定しているわけではありません。既存システムを効率化し、今まで以上に省エネ化して消費を押さえつつ、地域の実情や癖に応じたシステムを構築する(その中には、地熱や水力の新規導入もあれば、効率性が高いならば太陽光や風力を検討することも当然含まれるでしょう)ことを提案しています。東日本大震災の半年前に上梓されたこの本には、実は日本のエネルギー政策を見直して新たなアイデアを呼び込むヒントがあったのではないかと思います。
    残念ながら既得権益の保持を前提とする現在のシステム下ではこのような提言は受け入れられないとは思いますが、日本で生きていく以上、こういったテーマに対しても冷静な視点で触れ、取り組んでいく必要があると思います。

  • 図書館HP→電子ブックを読む 
    Maruzen eBook Library から利用

    【リンク先】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000002689

  • ↓利用状況はこちら↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00513577

  • 自由研究レベル。

  • 日本にとって風力・太陽光は見込みがなく、水力・地熱こそが推進すべきエネルギー源であると主張する本。

    私小説調の、語りかけるような文体(一人称が「僕」!)で、それぞれのエネルギーの効率性などを、ネットなどで得られる情報から計算していく。
    面白い部分がないわけではないが、忙しい人間からすれば計算過程はAppendixに押し込めて、本文では計算結果だけを記述してほしいところだろう。

    また、全体の1/5は、市場原理によりエネルギーのベストミックスを達成する方法について論じられているが、経済学は著者の専門ではないのか、議論が薄っぺらい。例えば、「僕は、どんな商取引においても売る側が強気に出るシステムはいつか必ず破綻すると思っている」と述べ、電力買い取り制度でうまく行かない例を挙げるが、その気になれば回避可能な例を一つ挙げて帰納的に結論づけられても、説得力がない。単純に、「買い手有利の固定価格や強制買い取りは事業者の収益をとめどなく悪化させるため、民間企業による事業は持続可能ではなく、かといって国有企業にしても実質的に公正性が怪しい"環境税"になる」と言えば済む話だ。

    総論として、「近所の、ェネルギィに詳しぃ理工学部のおにぃちゃんが、高校生のぁたしに、日本のェネルギィ問題を説明してくれましたっ☆」という趣の、独特な味わいのエネルギー本である(尚、文体はおにぃちゃんっ☆っぽいが、著者は50代なのであしからず)。

    時間に余裕のある人は、読んでみるとちょっと面白いかもしれない。

  • ★★★☆☆
    エネルギー問題はこれから一層注目を浴びてくる分野です。
    現在どのような発電システムがあり利用されているのか、そのメリットとデメリット。
    風力発電に割いているページが多かったのが少し気になりましたが、エネルギーの定義付けなどわかりやすく、入門書に良いかと^^
    (まっきー)

  • 科学ジャーナリストが書いた著作だけあって、非常に読みやすくまた内容も個人的には過不足なく丁度よく知りたい事を知れた感じ。太陽光や風力で現実的に電力を大幅にまかなうことの難しさが数値で理解できる。よくまとまっていると思う。また本書は震災前の発行だけに冷静に書けており客観的で良い。現在の偏った自然エネルギーの持ち上げ方に否定的な著者の意見には頷けるところが多い。太陽光や風力による自然エネルギーの全量買取(通常の価格の2、3倍)や補助金に至っても将来的な普及時のコストダウン(実際は当てなし)が見込めてこその話で、当てもなく推し進めても無理があるし歪な利権構造を生み出してしまうだけだろう。とはいえ、著者は再生可能エネルギーに否定的なわけでなく、どう活かすかまたさらなる発展の可否をよく考えている。再生可能エネルギーに投資する一方で、現在の化石燃料の発電方法のさらなる効率化と省エネのさらなる効率化が必要という著者の意見にも完全に同意だ。今はこういった従来のエネルギーや消費電力の観点がよく忘れられているような気もする。ちなみに地熱で問題になりがちな国立公園内の発電所設置に関してだけど、日本には国立公園内に市町村がある場合もあり、どこまでそれを楯に保護するかというのはケースバイケースのように思う。知床のような原生林や貴重な生態系がある場合はむろん慎重であるべきだが、箱根や霧島などはどうなのだろう、とか。また、今年ニュースを見たが国立公園内に施設を設置しない方法も技術的に可能であるらしい。

  • ずっと昔からもてはやされている風力・太陽光発電って結局どうなの?
    →結局は、それぞれに適切に使える場所や発電量というものがあるんだから、全体をコーディネートすること、最終形をデザインすることが一番大事。
    燃料調達については軽視されている現状だけど、オイルショックのような事態にまたいつなるかは分からない。エネルギーセキュリティ面でも環境面でも、今後の電源比率を考えていく必要あり。節電っつっても、経済活動を停滞させてまで続けるのは無理があるし。
    本書の内容は、なにか一つブレークスルーが起きたらまるっきり変わる可能性があるけど、それでも今現在はどうなのかを知るにベストな本だと感じます。

    以下は自分用の備忘録。
    用語の違い―
    自然エネ→自然で得られる燃料を使ったエネルギー。掘ったら出てくる石炭や石油も入れることが可能。
    再生可能エネ→使うスピードより燃料の供給のほうが大きいエネルギー。普段我々が想像しているのとほぼ同じ。
    新エネ→京都議定書後に日本で独自に作った造語で、新エネ法で示されている10種類のエネルギーのこと。水力や地熱は入っていない。

    風力―
    風車は大きい物で1基3000kW,高さはタワー80m+羽根が半径45m。設備利用率は約20%。風まかせの発電で電力量が不安なので、遠隔地用に大型のものをどかどか立てるより、地産地消のために風がよく吹く僻地に設置する方が効率的。風車自体は昔からあったので研究も技術も成熟している分野。コストパフォーマンス良。
    つくば市では、作ったけど全然風が吹きませんでしたという失敗事例があり、なんとなく作らずにアセスメントすることが大事。発電に使うよりか、普通に風を使って冷房・空調がわりにするほうがいいのでないか。

    太陽光―
    日本ではオイルショック後に太陽光が盛んに叫ばれ、一時はヨーロッパ全土を足した分より多く発電していた。それがなぜ今では出遅れているのか?
    1. 日本自体が太陽光発電に適していない。アメリカ中央部の乾燥地帯やアフリカ~中東に比べ、日本の日照時間は半分程度。日中しか使えない太陽光発電は、これだけで利用率に倍の差が出る。
    2. コストパフォーマンスの悪さ→よく言われる「普及したら値段が安くなる」という論法は太陽光パネルには当てはめにくい。パソコンの価格はムーアの法則により、集積回路の向上で値段が下がっていくが、パネルは面積がモノを言うため価格決定プロセスが違う。ブレイクスルーが起きれば別だろうけど。設備利用率が12%というのも低い。
    天窓を使ったりブラインドを上げるなどして、電灯使用量を減らすほうが現実的。昔頑張ったけどこんな現状になっていることを見据えて今後を考える必要あり。日の本の国だからといって太陽を使えば良いというわけでもない。
    また、現在も進められている一般家庭への小型パネル設置は、発電の無駄が多いことや廃棄物となった際の処理について考えると効果に疑問。

    水力―
    古くから使われている発電手段のわりに、まだ発電に使える場所は残っている。現在運転中の水力発電所は945億kWh、建設中は20億kWh、調査中で未開発の分が475億kWhである。工事に不適な場所や地元との折衝が大変というデメリットがあるにせよ、今の1.5倍までは増やせる可能性があるということ。
    水力は渇水しないかぎり使える電源なので、風や光のように不安定でない。川は国や地方自治体の所有物なのでプロジェクトを起こす必要があり。

    地熱―
    ほとんど日本で使われていない(計56万kW)が、積極的に進めれば国内電力の20%以上まかなえるという試算がある。ではなんで開発が行われていないのだろうか。
    1. 建設に適した土地の多くが国立・国定公園内にあること。公園は使用用途が決まっているため、今から新しく建設の合意を得るのが大変。
    2. 地熱があるということは温泉の近くであるということ。そのため、観光関係者からの反対が大きい。地中の工事ではどのようなことが起きるか予想しづらく、湯質や湯量に影響があっては死活問題である。そのため反対が起きる。これについては技術開発により解決できる見込みがあるみたい。

    水力と地熱は、国主導でやればかなりいい結果が得られるんじゃないの?と感じた。
    ―――

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