- 本 ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784275018885
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著者の修士論文をもとにした本で、シュレーゲル兄弟やノヴァーリスに代表されるドイツ・ロマン派の思想を、現代的な問題関心のもとで解釈している本です。なお2020年現在、作品社から本書の増補新版が刊行されています。
本書の中心的な課題となっているのは、ドイツ・ロマン派の思想家たちが、フィヒテを中心とするドイツ観念論からなにを受容し、どのようにしてそこから距離をとったのかということを明らかにすることです。フィヒテの「反省」にかんする理論は、カント哲学では果たされることのなかった、「私は考える」という自己意識と「物自体」との分断を乗り越える哲学体系として構想されることになりました。フリードリヒ・シュレーゲルやノヴァーリスは、こうしたフィヒテの哲学に学びつつも、フィヒテが自己意識のうちへいっさいを収斂させていく体系をめざしたのに対して、むしろ反省はたえず自己自身からのズレを生み出していき、けっして完結することはないと考えます。著者は、ベンヤミンのドイツ・ロマン派解釈を参照し、またデリダの「散種」の概念との親近性にも目配りしつつ、こうしたドイツ・ロマン派の思想を読み解いていきます。
また著者は、ドイツ・ロマン派におけるポエジー(詩的言語)についても考察をおこなっています。ロマン主義的ポエジーは、完結した「全体」に到達することなく、つねに生成途上にある文学的運動であり、それは詩人たちの創作活動を通して再帰的に自己自身を描出しつづけるという意味で、「反省」の機能をもっていると著者は論じています。さらに著者は、こうした運動が自己をパロディ化する「イロニー」の精神を含みつつ展開していくことに注目し、「真面目」と「戯れ」の区別を侵犯する文学的実践として、ドイツ・ロマン主義文学の意義を評価しています。
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