サリエーリ―モーツァルトに消された宮廷楽長

著者 :
  • 音楽之友社
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784276222809

作品紹介・あらすじ

孤児から宮廷楽長にのぼりつめ、ベートーヴェン、シューベルト、リストなどを育てたヴィーン随一の作曲家-アントーニオ・サリエーリ。彼はほんとうにモーツァルトの天才に嫉妬し、毒殺したのか-。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなど絢爛たる才能ひしめく18世紀ヴィーンの音楽界を活写し、知られざる偉大な作曲家の真実の姿をあますところなく描く。「サリエーリ全作品目録」をはじめ、資料も充実。

感想・レビュー・書評

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  • 手紙等の文献を丁寧に読み込み、サリエーリの側からの評価を積み上げていく本。モーツァルトを毒殺したというデマが、ナポレオン以後の国際情勢とヴィーンの世論とによって出てきたことを丁寧に提示する。ロッシーニが、サリエーリにアマデウスを毒殺したか質問したところなど、サリエーリの心情を思いやるといたたまれない。サリエーリが若い頃から皇帝や師に愛され、また生み出してきた多くのイタリアオペラで評価されるべき人物であることは、この本が十分教えてくれたと思う。アマデウスを愛する人にこそ読んで欲しい。

  • 宮廷作曲家として長く王室に仕え、多数のオペラなどを作曲し、のちに有名となる人物含め多数の音楽家たちを無償で教え、西洋音楽史に重要な役割を果たしてきたサリエリ。
    晩年(実際は病死だったにも関わらず)モーツァルトを毒殺した犯人に仕立て上げられ、今日に到るまで正当に評価されてはいませんでしたが、ここ数十年でようやく彼の再評価の気運が高まり、水谷先生はそこから更に踏み込んで膨大な資料を参考に本書を執筆されています。
    前半は年代順に淡々とオペラや作品の作曲時期、初演キャストなどが羅列され、読み物としては少し退屈するかもしれません(史料としては勿論超一級品です)。あくまで客観的な立場から事実を列挙されています。もう少し著者の見解を知りたいと思いながら読んでいましたが、晩年の項にてこの本の一番の目的である「モーツァルト毒殺疑惑の否定とサリエリへの正当な評価」にかかると、俄然文章にも力が込められてきます。
    「…だからこそ、彼の晩節を汚し、名声と功績を地の底へと叩き落したモーツァルト毒殺疑惑に関して検討を加えることなしに、筆を置くことができないのだ。…」(第六章最後)
    第六章までで淡々と語られてきた資料が、ここに来て生きてきます。「なぜサリエリが殺人犯に仕立て上げられる必要があったのか?」という新しい観点から、残された書簡などを吟味・その真偽も考察し結論を導き出していきます。この辺りは読んでいて物語の伏線が繋がったときのような快感を覚えました。
    また、巻末には全作品目録があり、こちらもサリエリ資料としては随一ではないでしょうか。
    水谷先生は日本ロッシーニ協会の会長で、サリエリに関しては専門では無かったと思いますが、ここまで丹念に調べ上げ慧眼を以て考察されたのには脱帽です。モーツァルトとサリエリが和解したのを説明する文章にも、彼らに対する水谷先生の愛情が感じられます。大変な良書に巡り合えたことに感謝します。

  • まずページをめくると目に入る、ちょっと神経質そうだけど困ったようにこちらを見ている肖像画のやさしそうなこと!『アマデウス』大ファンとして読んでおかねばと資料的に手を伸ばしたけれど、読み物としても面白く、さらに直筆の楽譜の画像や、かかわる人物とのエピソード、書簡などの情報も豊富。というか、真面目に生きてきたのに晩年にモーツァルト毒殺疑惑をかけられ(それも、陰謀によって!)中傷されて気の毒すぎます。毒殺説は当時かなりスキャンダラスにサリエリの晩節を汚し、そのことについて、著者は冷静な筆致のなかに憤りをにじませます。客観的事実から展開される擁護論に、サリエリ愛を感じました…!
    巻末には年表ほか、付録のウィーンにおけるイタリア・オペラ上演の一覧、サリエリ作品の一覧などもあり、読み応えたっぷり。サリエリの作品を(観)聴きしたくなりました。あとロッシーニ作品も!

  •  マジか。天才モーツァルトを恨みねたんだおっさんじゃなかったのかってなる。
     サリエーリが現代にも愛される音楽家だと評価されていることを知らなかった。
     そして、歴史は過去に定められたものというイメージがあるけれど、後世になって調査を進めると知らない新事実があることって、なんだか不思議だ。過去は変わらない定められたものではなく、常に現在書き換えられるもののような気がしてくる。

  • 2018年5月12日紹介されました!

  • 映画『アマデウス』及び定本『モーツァルトとサリエーリ(プーシキン)』のせいですっかりモーツァルト毒殺犯に仕立てられたサリエーリ。その生涯を現存資料によって明らかにする物語調を省いた現存資料による歴史ドキュメント。時系列に沿って淡々とサリエーリの生涯が綴られる。

    当時の文化がいかに集中していたか、いかに激動の時代であったかが判り歴史の観点から見ると面白いが、書簡や当時の記事を使うことに徹底しており、華美な宮廷物語を期待すると無味乾燥にも思える。

    晩年を語る終盤になってはじめてサリエーリ冤罪の論拠が延べられ、ここで前半の資料の列挙が生きてくる。
    「誰がモーツァルトを殺したか?」ではなく「なぜサリエーリが犯人に仕立てられたのか?」という観点から望む好著。
    巻末に膨大な資料と付記あり。

  • サリエリ先生の本!!

  • モーツァルトのライバルとしてしか知られていないサリエリその人について、とても丁寧に書かれている。
    思いこみや主観を排した記述で、大変好感を持った。
    貴重な本だと思う。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。音楽・オペラ研究家。日本ロッシーニ協会会長。フェリス女学院大学オープンカレッジ講師。2004~09年、国立音楽大学にて「オペラ史」「作品研究」などを講ずる。著書に『消えたオペラ譜 楽譜出版にみるオペラ400年史』『サリエーリ モーツァルトに消された宮廷楽長』『イタリア・オペラ史』(共に音楽之友社)、共著に『オペラ・キャラクター解読事典』『新編 音楽中辞典』『新編 音楽小辞典』(共に音楽之友社)、『魅惑のオペラ』(小学館DVD BOOK、全30巻)、『ジェンダー史叢書・第4巻 視覚表象と音楽』(明石書店)、『ローマ 外国人芸術家たちの都』(「西洋近代の都市と芸術」第1巻、竹林舎), 楽譜編纂ほか多数。ロッシーニ、オペラ、エディション、歌手、歌唱法、歴史的声楽教本に関する論文や論考を日本ロッシーニ協会紀要「ロッシニアーナ」と同協会ホームページ(http://societarossiniana.jp/)に多数掲載。『サリエーリ』により第27回マルコ・ポーロ賞を受賞。

「2015年 『新 イタリア・オペラ史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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