海潮音 (愛蔵版詩集シリーズ)

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  • 日本図書センター
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784284700160

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  • 西欧29詩人の訳詩57編が収められています。
    高尚で洗練された外国の言葉が上田敏という日本人によって日本の言葉へと訳されると、何だか郷愁を誘うとても懐かしい響きへとそれらは変わっていくようでした。
    日本語の美しさ、日本人としての美意識に惚れ惚れします。
    それはヴェルレーヌの詩「落葉」での「ためいき」という言葉の訳しかた1つにも表れています。
    「Les sanglots long」は「むせび泣き」「嗚咽」であり、激しく泣きじゃくることなのだそうです。そして「秋」には「死」のイメージがあるようです。決して感傷的な意味でうたわれる日本の秋ではない、まして「ためいき」などでは有りえないそうです。それを上田敏は「ためいき」としたのです。そのひと言でとても日本的な詩になっているように思えたのですが、どうでしょうか。
    この詩を書いたとき、ヴェルレーヌは従姉との恋に破れたあと。その恋愛の日々を思い出しながら、木枯らし吹きすさぶパリの町をさまよいます。もしかしたら恋に破れたこの時代の日本人だったら人前で泣き叫ぶよりも、ぐっとこらえて感情を表に出さなかったのではないでしょうか。男なら泣くなとか、顔で笑って心で泣いてとか。だから、やっぱりこの「ためいき」はとても日本的なんじゃないかと思いました。その方が心に染みるような。
    言葉ひとつでがらりと印象が変わってしまう訳詩って不思議だなって思います。
    印象に残ったのはやっぱり「山のあなた」。涙がでそうになります。好きです。

  • 有名な「秋の日の ヰ゛オロンの ためいきの」が収録されている訳詩集。予想していた以上に意味が取れない、それにもかかわらずリズムの美しさはしっかり伝わってきて、「わかる」ってなんだろうと思った。

  • 上田 敏の翻訳センスがとても
    大胆にステキ。
    例えば、キリストを表現する箇所が
    仏教用語だったり、けれども
    その組み合わせの妙が臨場感を
    生んでいたりと、ドラマチック。
    私のベストオブ翻訳本です。

  • 石川などを舞台とした作品です。

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