ウェゲナーの大陸移動説は,以前,小学校の国語の教科書にも取りあげられていたので,その理論の浮き沈みの顛末のおよそのことは知っていました。
また,教師になってから(30年以上前)も,少なからぬ学者が,「プレートテクトニクスによる大陸移動説は仮説であり,教育現場で教えるべきではない」というようなことを言っていることも聞いていました。
本書は,ウェゲナーの著書の内容を軸としながら,「大陸移動説」が認められ,忘れられ,再評価されるまでの壮大な科学の歴史ドラマの一端を紹介してくれています。
また,武谷光男氏の三段階理論を取りあげて説明しているあたりは,すとんと腑に落ちた気がします。現象論的段階であっても,それをしっかりと捉えることで,次が見えてくるんですからね。ウェゲナーの姿が「現象論的には私のいっていることは間違いない。実体や本質がどこにあるのかは,以降の科学者がきっと見つけてくれるだろう」というように見えて,なんか,達観しているなと思いました。
科学的に考えるとはどういうことなのか? 専門家とは何か? いろんなことを考えさせられる本です。