「本能寺の変」は変だ! 435年目の再審請求 (文芸社文庫 あ 5-2)

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  • 文芸社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784286195155

作品紹介・あらすじ

「秀吉がねつ造し、軍記物に汚染された戦国史を今一度洗濯いたし申し候」-刑事・民事の裁判には、判決が確定した事件について、法に定められた事由がある場合に判決を取り消して、裁判の審理をやり直すよう申し立てることが可能です。これを再審請求といいます。本書で解説するのは歴史捜査で得られた光秀謀反の動機と実行経緯についての定説・通説の変な話、そして定説・通説を支えているこれまでの研究の変な話をどうやって暴いて真実に迫っていったかを明かす、いわば再審請求のための公判記録です。

感想・レビュー・書評

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  • 暫く前に先にでていた、「真実」を読み感心した記憶がある。

    という事で、さらに前作を深めて発展させた物を期待して読み始めたが、どうやら違う。読む順番はこっちを先にしたほうがいい。それを考えると書名も不親切だし、版元の売り方も悪い。

    「真実」を読んでいる人は、それで十分かもしれない。

  • 明智光秀の子孫の手による本能寺の変の再考本。多くの資料を科学的・論理的に評価、突き合わせる"歴史捜査"によって、本能寺の変の動機や経緯についてのこれまでの定説の問題点をひとつずつ明らかにしていく。
    その結果得られた筆者の説は興味深いものだが、本書は個々の定説の問題点と、それを解き明かす過程に重点を置いて書かれており、"捜査結果"全体を通して読むには、同じ筆者の"本能寺の変 431年目の真実"がおすすめ。

    歴史小説と史実を混同してはいけないという指摘には、定説を疑いなく信じていた一人として耳が痛い。

  • 今年のNHK大河ドラマの主人公は「明智光秀」ですね、とうとう彼が主人公となる時代がやってきたことに歴史ファンの私は感慨深いものがあります。

    明智光秀といえば「本能寺の変」というクーデターを計画した人となりますが、果たして真相、彼の狙いは何であったのか。どこまで綿密に計画を立てていたのか、当事者の血を引く、この本の著者の明智氏が、長年にわたって研究を進めてそれを本にまとめてくれています。

    彼の膨大な研究の成果を楽しみながら読むことのできる時代に感謝しつつ、それでも続編を期待してしまう私です。

    以下は気になったポイントです。

    ・何年も後になって書かれた本に初めて出てきた話に信ぴょう性があるケースは次の3つ、1)当事者が後になって書いた、2)後になって、当事者から取材した人物が書いた、3)信ぴょう性ある本から引用して書いたが、元の本は消失して現存しない。そして120年後となるとあり得るのは3)のケースのみ(p30)

    ・歴史捜査を始めるにあたって「答」は想定せずに、仮説は2つ設定した、1)失敗すれば一族滅亡してしまう謀反を決断するのだから、謀反を起こさなければ一族滅亡するという危機意識が存在しなければならない、2)謀反が成功する目算が存在しなければならい、これらは企業人には当たり前の論理である(p78)

    ・光秀と義昭、あるいは毛利氏とが事前に接触した証拠がまったくない、このことから足利義昭黒幕説にも冤罪説と同様に実行経緯、すなわち犯行プロセスに重大な欠陥がある(p79)

    ・すでに50代に達していた正親町天皇も皇位を譲りたかったので、天皇側から譲位の資金援助に信長に申し入れた、これが朝廷黒幕説では「信長が天皇に譲位を迫った」と解釈している(p86)

    ・利休切腹が第一次朝鮮出兵への動きが本格化した時点で起き、関白秀次切腹事件が秀次の朝鮮出陣準備が進められていた時点で起きたことをみれば、やはり唐入りがからんだ事件とみるべき、おそらく二人とも反対する言動があった(p1・秀吉は本能寺の変の勃発を事前に知っていたことになる、それを知らせることができる人物は細川藤孝しかいない(p159)

    ・信長は家康を本能寺へおびき出して光秀に打ち取らせる計画をたてた、その計画を光秀にだけ内密に相談した、それを知った光秀は信長も信忠も打てると確信した、しかもこれを家康にうちあければ家康にとって光秀は命の恩人となる(p163)

    ・道三に追われて美濃守護職を失った土岐氏は江戸時代に上野沼田藩の藩主となって復活する、家康の家臣の菅沼貞政が家康から大名に取り立てられ、土岐姓を与えられ明治まで続き華族となった。家康は明智氏を復活させると同時に、明智姓ではなく土岐姓を名乗らせた。これは明智氏が土岐姓の正統を継承したことを意味する(p170)

    ・横浜に三溪園という庭園がある、その庭園を造った実業家「原三溪」も土岐一族である、道三に追放された美濃守護の弟で道三に暗殺された人物の子孫である(p173)16)

    ・有名な信長の「是非に及ばず」とは命令したこと、さらに、この言葉を発した後に「直ちに御殿へ移って戦闘態勢をとった」ことから、「なに、光秀の謀反らしいと?それが是か非か(本当かどうか)確認する必要はない、それよりも即刻戦え」という意味で森乱丸に命じた(p127)

    2020年10月31日作成

  • ミーハーなので、大河ドラマの広告を見てまず、「信長を殺した男」漫画を読み始めました。そこから原作が読みたくなって本書を購入。歴史は勝者に塗り替えられるものですね。詳細は知りませんが、歴史学はもう少し客観的な学問かと思っていましたが、そうではなさそうな事が本書でよく分かりました。本書についても、300冊、600冊と目を通された著者が書かれている一次資料を全てリスト化されるくらいして欲しかった。非常に面白く読めた。

  • 前作『本能寺の変 431年目の真実』の前に読むと良い。
    著者の歴史捜査の方法、推理の仕方には共感を覚える。ポイントは、蓋然性。

  • 前作の「本能寺の変431年目の真実」に対しての「反論」に対して著者が更なる証拠固めをしてきた作品。
    かなり信憑性はある気がするし、歴史の授業やドラマで伝えられた歴史が軍記物という物に依存しているということが興味深いものだった。

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著者プロフィール

1947年生まれ。明智残党狩りの手を逃れた光秀の子・於寉丸の子孫。慶應義塾大学大学院修了後、大手電機メーカーに入社。長年の情報畑の経験を活かした「歴史捜査」を展開し、精力的に執筆・講演活動を続ける。

「2019年 『明智家の末裔たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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