紫式部の一人娘 (文芸社文庫)

  • 文芸社 (2024年2月6日発売)
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感想 : 5
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  • 本 ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784286245690

作品紹介・あらすじ

女流文学界の最高峰、加茂齋院に出仕し、都に名の通った女流歌人である齋院中将。13歳で藤原教道と結婚し、ひたすらに子を産むことを求められ命を削った藤原公任の娘。東宮を寝とるという野望に挑むべく宮仕えを決めた、美貌と才能と度胸をもつ藤原隆家の孫娘、元子女王。三者三様の生き様を紫式部の娘・賢子は冷静に見極めて、己の道を決めていく。平安の世を必死に生きる女達の物語。

感想・レビュー・書評

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  • どんな感じの作品かなと思いながら買ったけれど、良い意味で、予想外に面白く読み切りました。

    会話が古文調(地の文の説明で現代調)という、私が読んだ中では珍しい作りの小説。

    古文は苦手という人は読みにくいと思うけど、なんとなく雰囲気で分かるという人は大丈夫です。

    登場人物のクライマックスで出る関西弁が、アクセントになっていて、面白い。

    それぞれの章で出てくる人たちの腹の中、政治的思惑が主のように思えて、夫や妻との愛情が知らぬ間に深くなっていて、別れのシーンでは、自分も引き込まれていたことに気付いて、じーんときた。

  •  大河ドラマ便乗商戦として書店に平積みになっていたのを見つけて購入。いや~、期待以上に面白かった! みやびな文語と京言葉と現代口語が入り乱れる文体に、最初は面食らったけど、読み進むうちにハマってきた。著者の阿岐有任という名前は性別不詳、見返しのプロフィール欄にも詳細は書いていないし、ググってもデータがほぼない。この小説は『源氏物語』同様、男には書けない気がするのでたぶん女性だろうが、いくつくらいの人なんだろう?
     受領階級の女性として最強の勝ち組人生を送った大弐三位/藤原賢子のことはずっと以前からいくつかの歴史小説や解説書のたぐいで知ってはいたのだが、この小説が一番リアルに感じられて面白かった。賢子本人のエピソードは4章のうちの最終章、しかも他の章より分量的にはやや少ないくらいなのだが、初めの3章で斎院の女房(同じ受領階級)、公卿の正妻(藤原家の中でもトップクラス)、皇孫の女王(身分的にはさらに上だが政治的には本流から外れている)の人生を描き、彼女らの人生を第三者としてじっくり観察していた賢子が自らの意志で勝ち組人生を勝ち取っていく様子が鮮やかで胸がすく。きっと実際の賢子も、紫式部と藤原宣孝のいいとこ取りの娘だったのだろうな。
     中毒性のある文体と扱っている時代・題材の面白さに惹かれて、同じ作者の旧作も取り寄せて読んでいるところ。表紙のデザインがダサいのがちょっと残念な気がするが、むしろ狙ってそうしているのかもしれない。

  • ヘンな罵詈雑言と、雅な古文が混ぜ混ぜの、独特の風味がある作品だった。喜劇と思って楽しく読んでいたら、ラストにまさかの悲劇。えっそういうオチ?と。そして全体を通して、女の生き方とは、という大きな問いをかけている。なんだこれ!めちゃくちゃ面白かった。

  • 内容は良かった。宮中に起こる駆け引きや打算など現代風でしかも辛口でぽんぽんと出てくる感情など、でも会話が古文なのが読むスピードを落とし、そして意味不明となる。全部現代風にして、家系図もあったらよかったのに。

    道長亡き後の子どもらの話は全然知らなかったので知識は得られた。
    元子女王の話は面白く高飛車だけど計算高く審美眼があるのが羨ましいし潔さも好感がもてる

  • それぞれの女性の生き様を通して紫式部の娘である賢子がどう生き抜くかのお話。宮女は恋愛は自由とは言うけれど、やはり後見のない女君は儚い。会話がやまと言葉に加えて史実に沿い感情移入がしやすく、綺麗ごとではないリアルさで読み応えがあった。今まで賢子のお話は数あれど策士とまで言わなくてもこういった思惑は渦巻いていたであろうお話に納得がいった。

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著者プロフィール

早稲田大学卒業。東京大学大学院修了。修士(欧州研究)、法務博士。2018年、歴史文芸賞(文芸社主催)にて「籬の菊」で最優秀賞を受賞。

「2022年 『【文芸社文庫】 隆家卿のさがな姫』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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