- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296000296
作品紹介・あらすじ
ヨーロッパを席巻した北斎、歌麿の19世紀末ジャポニズム。
いま、宮崎駿が、エヴァが、ポケモンが創り出す新ジャポニズム
が世界を魅了する秘密とは?
東京在住のアメリカ人ライターが描いた「夢の国」
のクリエーターと消費者の物語。
「バブルの崩壊、政治的カオス、若年世代のバーチャル逃避など、日本が数十年早く経験した現象がいまや他の国にも起きている。日本が作ってきたのは、単なる製品ではなかった。これまでになくつながっているかと思えば、これまでになく孤立する奇妙な新しい世界を旅するためのツールだった。日本のクリエーターと消費者は単なるトレンドセッターではなかった。先進国が迎えた晩期資本主義世界で、彼らは未知の領域のすこし先を歩いていたのである。」(本書序章から)
感想・レビュー・書評
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サブカル現代史小説といった感じ。小菅のジープやカラオケ、ウォークマン、Kawaiiとキティちゃん、アニメそしてゲーム。それぞれ社会的ヒットとなったモノについて、その時々の時代的背景を鋭く解説しつつ、その生みの親や渦中の人と情熱にも丁寧にスポットライトをあてる。サブカルという側面から戦後史を楽しくなぞることができたし、登場人物の大義に触れて目頭が熱くなる場面も多くあった。著者の持論に若干違和感を抱く部分もあったが、それを補って余りある日本の産業史を紐解くために費やした熱量と知的好奇心には素直に敬意を表したい。
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<目次>
第1部 1945年の敗北
第1章 ブリキの玩具~小菅のジープ(1945年)
第2章 アニメ誕生~アニメ(1963年)
第3章 みんなスターだ~カラオケマシン(1971年)
第4章 かわいい~ハローキティ(1975年)
第5章 持ち歩く音楽~ウォークマン(1979年)
第2部 1990年代
第6章 女子高生天国~スクールガール文化、世界へ
第7章 アニメ新世紀~オタク
第8章 世界を虜にするゲーム~ファミコン&ゲームボーイ
第9章 反社会的ネットワーク~2ちゃんねる
第3部 そして2010年代
終章
<内容>
アメリカの研究者による、戦後日本の文化の発展を,「モノ」から見て行ったもの。海外でこれほど日本のモノが影響を与えたとは、当の日本人は気づいていなかっただろう(私も知らなかった)。その影響力は若者文化においてはすごいものだと知れる。ただこれを意図的に作ってきたわけでないところが、悩ましいところだが、どんな文化も意図的に発展するわけではないが、こうした本で学ぶところは多いだろう。 -
日本人が日本人向けに作ったプロダクトが、世界に受け入れられていく過程が読める。日本人が世界向けに作ったプロダクトがなかなか受け入れられない現状を照らして明らかにしてくれる。
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ポップカルチャー、サブカルチャー史ではなく
産業史か
そうか
こういうの日本人ではなく海外の方が書くと面白いな
楽しめた -
竹内まりあの「プラスチックラブ」や松原みきの「真夜中のドア」などの日本のシティポップスが海外に見つけられた、という話題に触れると、なんだかうれしいような気がします。YouTubeでいろんな国の人がとても上手な日本語で「♪私のことを本気で愛さないで♪」なんて歌っているのを見ると、こっちだって単なるリスナーだったのに変にプライドが満たされるような気持ちになってしまいます。この本を読んでもそんな気分になります。ハイスクールの日本語のクラスで手塚治虫にハマったことで日本のポップカルチャーの研究家になった著者が、世界の人々の生活を変えた日本発サブカルチャーの歴史をぐいぐい紐解いていく本です。玩具、アニメ、カラオケ、ハローキティ、ウォークマン、女子高生、オタク、ファミコン&ゲームボーイ、2ちゃんんる…本書はグローバルの読者に向かれて書かれたものなので日本人の自意識を離れた外からの視点に立っていて、しかし日本生まれのコンテンツ愛にまみれて書かれたものなのでかなり新鮮な論考でした。キーマンへのインタビューも丁寧にしているし。インタビューされる側も外人顔の人にマニアックな質問されるとうれしかったのではないか、とかも考えました。それを世界の流れの座標軸に置く、という作業なので辛辣な部分も出てきます。例えば「鉄腕アトム」の「アストロボーイ」としてのアメリカ上陸は決してコンテンツとして評価された訳じゃなくローカル局にとっての激安アニメとして実現したとか。この本の原題は「PURE INVENTION How Japan Made the Modern World」というように、邦題の「新ジャポニズム産業史1945-2020」という大きな物語ではなくて、ひとりひとりのクリエイターのファニーで熱い熱情のお話です。どれもが、まるでイグノーベル賞のような隅っこの物語。しかし、産業史というより社会史として大きく世界を変えてきたことがわかります。いや、成熟した資本主義の中での生活の変化史かも。「実際には、日本というもの自体が純然たる創作(pure invention)なのだ。そんな国は存在しない、そんな人々はいない…日本人というものは…単に一つの表現様式であり、芸術の精巧な空想の産物にほかならない。ーオスカー・ワイルド『虚言の衰退』1889年」ワイルドの時代、つまり日本は開国した時代から、世界にファンタジーとして発見されるそんな存在でありました。クールジャパンって今どうなっているのか知りませんが、国の政策というより一人ひとりのファンタジーの蓄積が気になります。
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まず翻訳者のセンスの良さが光っている。もしかしたら著者が日本語で書いているのではと思ってしまうくらいハマっている。
内容は現代日本文化を学びたい外国人学生向けの入門書というよりレビューという感じ。ゼミの種本として本書を起点に学生に関連トピックを調べさせるのも良い。 -
『#新ジャポニズム産業史』
ほぼ日書評 Day471
一見、堅そうに見えるタイトルだが、ページをくれば、あっという間に時間が過ぎる。
ジャポニズム、19世紀末、モネやゴッホを始めとする印象派の画家達が憧れ、ティファニー等の工芸品にも大きな影響を与えた日本の美術・芸術・工芸の数々。
太平洋戦争による一時的な断絶はありつつも、SONYによる復活から、パックマン、マリオ、ポケモン、AKIRA等々にいたる、「日本発文化」がいかに西欧社会に影響を与え、さらには根付いて行ったかを、米国出身の著者が紐解いてくれる。
その根底にあったものは、巻頭の一節がよく物語る。いわく、(外国の消費者が、もっと日本らしいものを求めるようになってきたように見えたのは、実は)外国の消費者自身が日本人にどんどん似てきたのだ。バブルの崩壊、政治的カオス、若年世代のバーチャル逃避など、日本が数十年早く経験した現象が今や他の国にも起きている。日本が作ってきたのは、単なる製品ではなかった。日本のクリエイターと消費者は単なるトレンドセッターではなかった。先進国が迎えた晩期資本主義社会で、彼らは未知の領域の少し先を歩いていたのである。
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