みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296105359

作品紹介・あらすじ

ついに完成した「IT業界のサグラダファミリア」、その裏側に迫る

みずほフィナンシャルグループ(FG)が2011年から進めてきた「勘定系システム」の刷新・統合プロジェクトが2019年7月、ついに完了した。
富士通、日立製作所、日本IBM、NTTデータを筆頭に1000社ものシステムインテグレーターが参加したものの、2度にわたって開発完了が延期になったことから、なかなか完成しないスペイン・バルセロナの教会にちなんで「IT業界のサグラダファミリア」とまで呼ばれた史上最大級のITプロジェクトだ。みずほFGは完了までに8年もの年月と、35万人月、4000億円台半ばをつぎ込んだ。
1980年代に稼働した「第3次オンラインシステム」の全面刷新は、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合したみずほFGにとって、2000年の発足以来の悲願だった。
しかしシステム刷新は何度も挫折し、2002年と2011年には大規模なシステム障害を引き起こした。80年代の非効率的な事務フローが残ったままになるなど、勘定系システムの老朽化は経営の足かせになっていた。
なぜみずほ銀行のシステム刷新は、これほどまでに長引いたのか。そして今回はどうやって完了に導いたのか。「メガバンクの勘定系システムとして初となるSOA(サービス指向アーキテクチャー)全面導入」「AS IS(現状通り)を禁止した要件定義」「1000社のシステムインテグレーターを巻き込んだプロジェクト管理」など、新勘定系システム「MINORI」開発の全貌と、みずほ銀行がこれから目指す金融デジタル化戦略を、みずほFGにおける19年の苦闘の歴史を追いかけ続けた情報システム専門誌「日経コンピュータ」が解き明かす。
多くの日本企業が直面する情報システムの老朽化問題、「2025年の崖」を乗り越えるヒントがここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 過去から何度もシステム問題が生じるみずほ。その根源的な理由や統合までの歩みの歴史を本書で学べます。

  • IT界隈では有名なみずほ銀行システム統合について書かれた本。経営層がITを理解する重要性や要件定義の大切さが実例を通して示されており、結果論ではあるもののシステム障害対応の考察もあるので、学べる点は多いです。一方で、上手く纏まりすぎているので、失敗事例から学びたい人にとっては物足りないかもしれません。多くの人が知りたいリアル感ある混沌とした状況までは書かれていませんでした。

  • エンジニアリングをする際の、そしてレガシーと向き合う際の組織アンチパターン。
    2011年、2002年の障害に関しては組織構造や社内政治の混沌が生み出す不協和音について掘り下げられており、小規模ながらそこかしこでも見られるような課題が山盛りだ。
    対岸の火事ではなく、明日のみずほになるかもしれないという危機感を持つことができる。

    一方で2019年に完成した新システムについては、工程の膨らみや開発途上で発生した課題に対しての掘り下げが浅いのではないか。
    なぜ大規模リプレイスを経てもCOBOLが残存しているのか、ここでは肯定されているコード自動生成ツールに課題はないのか(入力する数式のメンテナンス性はどうなのか、など)、ソフトウェアエンジニアが感じる疑問への回答はなく少し肩透かしを食らった気分だ。

    しかし、19年にも及んだ大規模な案件に踏み込み、これからのシステム開発でニの轍を踏まないようにと本書をまとめた意義は大きい。

  • IT関係者として読ませていただきました。友人を自殺で、あるプロジェクトで失いました。みずほには、現場任せという表現がありましたが、要は、業務要件をドキュメント化して、可視化する能力が不足していたとの認識です。人の継承もなく、更新が途絶えたシステムについて、仕様、ドキュメントの振り返りなしに統合すれば失敗するにきまっている。その原因は要件定義ができる行員がいない。が結論かとおもいます。

  • ここに登場するみずほ銀行のIT史は、この本をもとに今後長く語り継がれることになると思います。

    システムをどの立場で見るかで印象は変わるのだなぁと思いました。
    元にした記事の筆者の視点の違いで第1部、第2部、第3部と楽しめます。
    少しでもここに登場するシステムたちと関係した人には、懐かしい部分と、ちょっと深堀が足りないんじゃないという部分とあるかと思います。関係しないIT業界の人でも、思い当たるフレーズはあるはずです。他人の振り見てではないですが、いろいろ確認作業があったはずです。そういったものも思い出させてくれる本でした。
    個人的には「老朽化」で切り捨てられている部分をもう少し丁寧に解説した方が良いのでは思いました。そういう部分も含めて、良くも悪くも「日経コンピュータ」の作品だと思います。

  • 日本の企業の特性とか、日本のSIerとかそういう話が全部入っていて、凄まじいといえばすさまじいし、痛ましいし、そして悲しい。こういうのに巻き込まれたら本当に人生が変わってしまいそう。何かやるときに必ず作るPros&Cons。いつも思うけど恣意的。誰が作っても恣意的。一度判定が出たものでも、「実はこうやれば・・・」なんて不毛な議論をしていつまで経っても結論が出ない。もう、そこはリーダーシップでまとめるしかないのではないかと、正にそういう苦闘の19年史です。採算度外視で入ってくるベンダー、システム部長のメンツで意地でも譲らないシステム子会社、本当にいかにもありそうな話のオンパレード。そして、どこまでも続くデスマーチ。それでも、最後にサクラダファミリアは出来上がった。それだけでも素晴らしい。そして、この反省は金検マニュアルにこを反映されるけど、経営には反映されないんですね。日本の企業の本当にダメなところ。これじゃあ、生産性なんて絵空事にしかならないですね。明日は我が身かも知れない。

  • 詳細な19年の振り返りがされているが、どうしても2021年に起きたシステム事案のせいで再発防止策が霞んでしまう。「人が育った」というのを読むとどうしても笑ってしまう。
    という冗談はさておき、全く他人事では無いので読んでいて苦しかった。一番はリスク管理として全体像の把握と迅速な対応ができなかったところにあると思うが、BCPが細部まで整理できていないことはあるし、システムが大きくなりすぎると全体の把握は難しい。E2Eのフロー図を作成したとのことだが、それ自体が膨大になって結局調査に使えないとかアップデートは大変難しいという問題から逃れられない。調査対象がどうしても全量になってしまうので、それはスタートラインで、その後のユーザビリティの改善が再発防止には必須なのだと思う。
    キャパシティテストがされていなかったことは結果論で見るとお話にならないように見えるが、コスト削減でテストを省力化していることはあるし、過去のテストの蓄積を確認する余裕もないのが実態なので、こうしたまさかのテスト漏れはいつ起きてもおかしく無いと思う。
    話は逸れるが、遠因は邦銀(というか日系企業)の行き過ぎた顧客志向もあると思う。声の強い顧客の声に応えようとするあまりシステム設計が複雑になり管理しきれなくなることが、積もり積もってこうした障害の原因になっていると思う。業務をシステムに合わせる発想を持つべきというが、どれだけ顧客の要望に応えるかはもう少し見直されて然るべき。営業店もそうした観点で自行のシステム開発と運用に理解を深めるべきだろう。
    きっと2021年の障害もまとめられるので、是非読みたい。

  • 2019年統合完成
    ⬇︎
    2011年震災時障害
    ⬇︎
    2002年合併時障害

    と歴史を遡って書かれている。

  • 自分もこのプロジェクトに関わっていたので、たしかにそんなことやってたな〜、とか、この人いたな〜、とか懐かしい気持ちになった。このプロジェクトが終わったら本ができそうだ、とかその頃お昼に話していたんだけど、本当に本ができたのおもしろい。
    ついに成功!みたいに言ってるけど、本当に成功なのか?現場でだけ感じられるようなことはこの本には書かれていないから、自分の経験は自分の胸にしまっておく。

  • ブラック企業も裸足で逃げ出すような背筋も凍る凄まじいノンフィクションホラーではないかと前評判だった本。
    実際には期待したようなホラーではなかったが、より高次元の絶望をもたらしてくれる斜め上のホラー。


    ITシステムを「ズブの素人」がどのように捉えているかを端的に示す本。

    このような考え方では、そりゃうん十万人月をドブに捨てるだろうなというダメなパターンが随所に出てくる。
    また、上が無能だと何をやっても失敗するという単純な法則を見事に示している。

    技術や学術的に妥当な見解は全くない。根拠も無い時代錯誤も甚しい妄想が沢山出てくる。
    赤提灯でプロ野球中継を見て監督の采配に文句つける酔っ払いと同じようなレベル、とでも言おうか。

    また、言外から経営者の無知蒙昧やモラルハザードが極めて深刻である事も窺い知れる。
    日本のホワイトカラーは生産性が低いとよく揶揄されるが、そのエッセンスが凝縮されたような本だ。本に書かれている事をやれば確実に士気は下がり、生産性が下がり、プロジェクトは炎上し失敗するハズだ。

    この本の内容は、正直出版して残す価値があるとは到底思えない。全てがバッドプラクティスの塊の様な本。
    唯一価値があるとすると、21世紀初頭の日本の大企業 はこれほど杜撰なマネージメントや酷いモラルハザードの下で劣悪な運営がなされていた、そしてメディアはそれを見抜けない無能である、という歴史的な記録であろう。

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