- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296106318
作品紹介・あらすじ
コロナ禍がアフターデジタルを加速
リアルも変える変革の本質
デジタルが隅々まで浸透した「アフターデジタル」社会。日本はその社会に向けてゆっくりと進んでいましたが、コロナ禍で状況は一変し、速度を上げてアフターデジタル社会に突き進んでいます。
多くの日本企業は「DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」で活路を見いだそうとしていますが、実はその立脚点が危ういケースは少なくありません。すべてがオンラインになるという前提に立っていないのです。
本書ではアフターデジタル先進国に注目し、特に中国のアリババやテンセントといった巨大デジタル企業の「戦略」、表面的な取り組みの奥にある「本質」に迫ります。事実として、アフターデジタル社会では産業構造がひっくり返ってしまいます。これは予測ではなく、実際の中国市場がそうなっており、こうした世界が広がれば、日本のお家芸ともいえる製造業は最下層に位置づけられてしまうのです。
いわゆるデジタル企業だけでなく、デジタルビジネスとは直接関係ないと思っているビジネスパーソンにも、本書を読んでほしい。なぜなら、アフターデジタルでは、リアルがなくなるのではなく、リアルの役割が大きく変わると言われているからです。
アフターデジタル社会になると、市場のルールが変わると考えたほうがいい。キーワードは「UX」。そして、アフターデジタル社会において成功企業が共通で持っている思考法を「OMO」(Online Merges with Offline)と呼びます。社会の変革は避けようがないなら、こうした新たなルールをいち早く学び、自社の立ち位置を決めて戦略を練らねば負けてしまいます。既に新たな成果を出し始めている日本企業もあります。デジタルを強みにするには必読の書です。
感想・レビュー・書評
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本書は、前著『アフターデジタル』に続いて、ほぼ1年後に出版された。その間に起きたことは言うまでもなく「新型コロナ」。この影響によって、急激にリモートワークなどが進んだこの1年。著者は逆に管理社会のディストピアのイメージが広がって、アフターデジタルの社会発展が止まるのではないかとの懸念からこの本を書いたという。個人的にはディストピアによって進展が止まるというものではなく、変化はもはや押しとどめようもなく、いかに利便性を享受するのかという観点で進むのではないかと期待する。
本書において、前著と比較して強調されているのは、「データを持っているだけではお金にならない」という点だ。もちろんそれは当たり前のことなのだが、さらに付け加えてデータを売買して儲けるというのは幻想だとまで言う。データはソリューションにしなければ価値がない、ということだ。持っているだけでは、それはリスクにしかならない。ここは多くの企業が誤解をしているところであるが、一方でいくつかの企業はそれに気が付き始めている。UXと結びつけた自社のビジネスのイノベーションにつなげることができなければ、それは意味がないのだ。一方で、今後ますます重要になるUXの改善のためには属性データだけではない行動データ・状況データの分析が欠かせない。
また最近、遅ればせながら決済サービスに多くのプレイヤが本格参入して、キャッシュバックキャンペーンを連発してシェア獲得競争を始めていることにも言及される。今は、決済に続いてスーパーアプリ化とミニアプリ化の検討がされているという状況である。
一方、決済プラットフォーマーがアフターデジタルでは有利な立場であるが、ペイメントのシェアを取ることがすなわち決済プラットフォーマーになるわけではないということも指摘されている。そこで中心になるのが、「UX」だというのが本書のキーメッセージのひとつだ。「UXインテリジェンス」という言葉を使って、著者が所属するビービットが提唱する「Ideation by Data」を紹介し、「バリュージャーニー」が重要だと説いていく。
今の日本は、決済プラットフォームを押さえるべく各社競争し、表面上では中国のあとを追う形で進んでいるようにも見える。著者も、中国と同じことを単純にするべきではない、という前置きをしながらも、必要な点は十分に参考にして前に進めるべきだという。アリババがECを起点に「デジタルによって商取引を円滑にし、中小企業を支援する」というミッションを実現するためにAliPayを拡張し、テンセントが「すべてをコミュニケーション化する」というミッションを実現するためにWeChatPayを拡張しているという指摘を考えると日本の決済サービスが大きく異なる帰結になるような気がしてしまう。著者が指摘するように「UXは企業ミッションと密にかかわっている」のだ。
また、世界に目を向けると、決済サービスが成功しているのは、レガシーな金融サービスにアクセスできない人々、いわゆる「アンバンクト」、の存在が大きかったという。となると日本ではこの点でも世界の一方の趨勢とは異なる動きにならざるを得ないのかもしれない。
エストニアやインドの事例の紹介もあるが、本書は基本的には前著に引き続き中国の事例が中心となっている。ただ、官と民をいかに混ぜ、経済をいかに巻き込んでいくのか、という観点が必要になってくる、などそのアドバイスはより日本に合わせてきたものになっているようにも感じた。
『アフターデジタル』と重複するところはあるが、読むのなら併せて読みたい本である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書に限らず、いたずらに耳慣れない専門用語を連発する、この手のビジネス書や啓蒙書には辟易させられることが多い。小難しく、大袈裟に表現されていても、結局言わんとしていることはいたってシンプル。要するに、ビジネスの視点を変えよ、顧客目線へと発想を転換せよ、(オンライン・オフラインを含めた)ビジネス全体を最適化せよ、ユーザーの反応を見てサービスを常に進化させよ、と言うようなこと(まあ、本書はデータの扱いや企業理念・倫理等についてもう少し深いことを言っているけど)。コンサル業界の人達は、自らの付加価値を高めようとして意図的にやっているんだろうけど、カタカナ語やアルファベットの略語をふんだんに使うものだから、分かり難いったらありゃしない。読んでいて腹立たしくなったので、まずは文句を一言。
その上で、本書から得られたこと、なるほどと思ったことを整理してみる。
オンラインビジネスとリアルビジネスの関係について著者は、「リアル接点は「今までよりも重要な役割を持つが、今までよりも頻度としてはレアになる」と捉えるのが正しい」と言っている。実物を見て触って確かめることの大切さは変わらないから、これはよく分かる気がする。
著者はまた、ビジネスが「商品販売型」から「体験提供型」になることで、「コマースの遍在化」(「まったく関係のないビジネスドメインの商品でも、その世界観やブランドが好きなので、特に比較もせずに購入してしまう」現象)が起きるとも言っている。これはビフォーデジタルでもブランド全般について言えることだと思うが、幅広い領域に手を拡げて体験価値を最大化しようとするアフターデジタルのビジネス世界では、遍在が際立つということだろうか? 楽ではあるけど、ブランドに盲目になってしまってはいけない。
「利便性はコピー可能である一方、ブランドは模倣が難しい」から、高級ブランドは仮にDXに乗り遅れても「時代に合わせて価値を再定義して技術を正しく導入すれば」挽回できる余地があるとのこと。やはりブランドが世界を制する、だな。
書籍「NEWTYPE ニュータイプの時代」を引用して、日本のように成熟した社会は、ビジネスの主眼が「役に立つ」(=機能的便益の有無)から「意味がある」(=自己実現的便益の有無)ヘ移るとも言っている。画一的な商品・サービスの大ヒットはなくなり、個人の趣向に合わせた多様な体験価値が次々生まれていく、ということかな。自動車も多様化していくのだろうか(ソフトウェアによって味付けが自分好みに変えられる、ということになるのかな、いやいや、自動車を所有すること自体がなくなっていくのかも)。
これらの内容にも増して本書でなるほどと思ったのは、中国がDXで大きく先行し、成功を収めている理由。これに関して中国のある企業家の「これまでの中国は、人々が信頼し合わず、不便で、本当にひどかった。だけど、自分も家族も育ったこの国が好きだし、自国の文化も大好きなので、自分たちの手で、この社会を良くしていこうと思う」というコメントが紹介されている。つまり、金を稼ぎたい、豊かになりたい、生活を便利にしたい、しかし社会的なモラルが低く安心してビジネス(金儲け)を行うことが出来ない。こんな課題山積の社会に、低コストで便利でかつ不正を許さないオンラインビジネスの仕組みが瞬く間に広まっていったのは当然。不正の被害者にならないようにするためなら、がんじがらめに監視されることをも厭わない。中国人は今かなりハッピーなんじゃないかな。翻って、中途半端感のある日本の状況はどうなんだろう。
最後に本書への不満をもう1つ。本書はDXのコスト面に言及していないが、システムの構築・維持コストはばかにならないと思う。使えないシステムを作っておいて、その改造や保守でバカ高い料金を要求する、システムベンダーボロ儲けの構図もあるようだし。世の中の非効率を無くし便利な社会に作り替えていく、という方向には大賛成だが、システムベンダーの食い物にされないようにすることも大事だと思う。 -
UXが起点となり、企業の社会における存在価値、マーケティング活動の評価も問われる時代になっている。
デジタルとリアルが融合し、膨大で高頻度な行動データを使い、商品販売型→体験価値提供型へ競争原理を変える必要がある。
バリュージャーニーを使って運用する事で、新たな顧客との関係性を再定義し、どのような体験を提供する存在となるべきかを考える活動があるべきDXの定義。
その中で、わかりやすく顧客提供価値を定義出来るかが重要な活動となる。
UXとはユーザー(デザイン)、ビジネス、テクノロジー(機能)の3つがそれぞれ関わり合うときに生まれる体験・経験の総称。
このような背景の中で、UXを議論しないDX、顧客視点で提供価値を捉え直さないDXは本末転倒。
上記UXの実現の為、旧来の属性データから行動データを活用し、最適なタイミングに、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション手法で提供していく。
状況ターゲティングという概念を理解し、OMO:オンライン、オフラインを一体のジャーニーとして捉え、これをオンラインの競争原理から考えていく。
結果、体験提供型ビジネスをOMOの思考法で運営、エクスペリエンス×行動データのループを回すモデルがバリュージャーニーとして機能していく。
企業はカスタマーサクセス理論に基づく接点を繋ぐループ活動の中、ハイタッチやロータッチで得られた信頼、関係性をテックタッチでの高頻度行動に還元。テックタッチで得られたユーザー行動を基に、再度ハイタッチやロータッチに誘導。デジタルとリアル接点のそれぞれの強みと弱みを使い、相互に行き来出来るようなUXを作っていく。その際に、個社で取得できる行動データ、First party dataをUX改善に使う意識が必要。
結果、企業のDXが社会をアップデートする事を実施者は認識するべき。その時々で自分に合ったUXを選べる社会の中、社会のアーキテクチャー設計を担うのは自社で、企業のDXが社会全体のDXの形を作り、繋がりを持つ世界が生まれる。
その為には、UXインテリジェンス(企業家精神とケイパビリティ)を備えてUXとテクノロジーを活用出来るかが重要となる。
●UX精神
・人の行動を変え得るアーキテクチャーを設計している事を自覚する
・悪用する事は、テクノロジーによる社会発展を止める事と同義と認識
・金儲けでは無くUXに還元し、ユーザーとの信頼関係を作ることを最優先とする
・多様なジャーニーの中から最適な生き方を常に選べるという社会で、選択肢としての自社を位置づけ、新しい世界観を持って事業、サービスを構築する
◎データを何に使うか
プライバシーが無くなりディストピアに近づく意見に対し、アフターデジタルの社会では実現するビジョンやサービスによって、どちらにも傾き得る事を認識すべき。
ユーザーの行動データを自社の利益のみにつなげるのではなく、UXに還元し、ユーザーとの信頼関係を作り、行動データを使って提供価値を増幅させる事。
●UXケイパビリティ
バリュージャーニーを作り、運用する力、UX企画力を指す。ユーザー、ビジネス、テクノロジーの3つを補完しながら体験設計を実行する事を組織的に解決していく。
◎世界観の構築 コンセプトフェーズ
企業の系譜と環境変化を意識し、自社の起源や提供価値を改めて見つめ直す。
ペインポイントのゲインポイント化に注力、不幸せな状況を、幸せな状況に転換する。
↓
◎コンセプト検証プロトタイピング
初めて使う際の体験を再現するプロトタイプを作成し、実際のターゲットとなるユーザーに当てで反応を見る
↓
◎コア体験
不幸せな状況を解決し、幸せな状況に転換し得る体験
頻度が少なくても圧倒的な提供価値により、信頼を覚え、また使いたいと思うようになるか=オンボーディング化に繋げる。
↓
◎高頻度接点の設計
得られる接点やデータからUXが改善出来るか、どのようにビジネスに繋げていくのかが目的。コア体験とセットで考え、コア体験に隣接する領域で高頻度接点を作ることが肝となる。
↓
◎ユーザー成長シナリオ
世界観に沿ったなりたい自分、送りたい生活に向かって成長出来るように設計し、サービスロードマップ化する。
↓
◎自動化する体験の設計
アーキテクチャーを作動させ、最適なタイミングに最適なコンテンツを最適なコミュニケーションで伝え、価値提供が自動に回るように設計。
ユーザー条件把握、条件を満たしたら指令を出すシステムを構築する。
UX企画力においてグロース業務(行動データやユーザーの状況洞察から既存のジャーニーを改善し、成果を上げていく活動)ができる組織ケイパビリティも併せて必要となる。
◎人とテクノロジーの共創 ideation by data
人がUXの改善やシステム更新を企画する、いかにテクノロジーで人の価値を増幅させるか。いかに人の企画を支援し、共創出来るか。
ユーザーの置かれた状況を理解するという共感の技術から、より良いUXを作り、UXが良いから行動データが高頻度にたまり、それによってさらにUXが高められる循環が必要。サービス単体でスケールさせながら、既存事業にも貢献してシナジーを生んでいく役割を持たせる。
-
昨年読んでとても良かった「アフターデジタル」の続編が出たということで、発売日から読みたくてウズウズしていた本。
ようやく読むことができました。
※アフターデジタル
https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4296101625#comment
本の冒頭に「アフターデジタル」のおさらいになる章があるので復習にももってこいです。
まず、この章を読んで、自分は正しく「アフターデジタル」を理解できていたのだろうか?と疑問に思ってしまいました。
面白くて、スイスイ読んでしまったが故に、
ちゃんと・深く理解できなかったのではないか?と感じてしまいました。
なので、この章は自分には大変ありがたかったです。
さて、本題ですが、この本を読んで、自分の中で企業のDXというビッグ・ワードが
一番しっくり腹に落ちてきました。
「DXの目的は、UXを高めること」って、
多少、所属している会社のポジショントークもあるでしょうが、
うまいこと言うなぁ。。と感心。
他にも「データの蓄積だけ」では意味がないとか、
「精神が大事」とか目からウロコなことややっぱり納得なことが色々出てきて、
付箋が足りなくなるくらい本にペタペタ貼ってしまいました。
再読必須。
「アフターデジタル」と一緒にもう一度読み返して、
理解を深めたいと思います。 -
【デジタルにダイブしてみる?】
デジタルが流れて来ているのに移行しない。
モノつぐりはいいこと。
モノづくりをしないとダメになる。
この迷信が浸透し過ぎているように感じます。
一時期は正しい真意だったと思います。アメリカがモノづくりを捨てたとき日本はモノづくりで隆盛を極めていました。
「ほらな、モノづくりを怠るとアメリカみたいになってしまうのだ」と。。。
しかし、今は逆のことを言われているのです。
モノをつくらないソフト、デジタルをいち早く進めた結果、今のアメリカがあるのです。
さらに、次はオンラインです。オンラインで人にサービスを与えるのです。
いかにオンラインに人を呼び込めるかです。
リアルっぽい方が実はオンラインで、バーチャルっぽい方がリアルというような世界もできそうです。 -
オンラインとオフラインを融合させて考える「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方を軸に、今後のサービス提供のあり方について考えさせられる内容だった。前作にも出てきた「最適なタイミングに、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション方法で提供する」という顧客価値に視点を合わせた考え方をさらに深掘りすることができた。
属性データから行動データの分析ができるようになっているので、行動データに合わせた顧客提供価値を考えていく時代になってきたと感じた。新しい時代への変化をより実感させてくれてる内容だった。顧客により良い体験をしてもらうには、何をどのように提供していけばいいかを考えて、ビジネスの仕組みにしていきたい。 -
個人的には1のほうが驚きがあってワクワクしながら読めた気がする。やや復習的な内容もあり、1を読んでいたおかげですんなり内容が入ってきたというのもある。
「DXの目的は、「新しいUXの提供」であり、その実現と成功に対しては「単発の事業がビジネス的に成功する」ことよりも、「組織としてバリュージャーニーの企画運用ができるようになる」ことのほうがよほど重要です。」
この一文に限ると思った。時代がデジタルに向かっているから、むやみやたらとアプリ開発やサイト作成、データの蓄積を行うのでは、目的と手段がすり替わってしまっている。データを蓄積するのは目的がきちんとあり、それを活用してさらにUXを高めるという理由があって初めて意味がある。
データそのものに意味はなく、それを活用し、ソリューション化することが重要である。データを貯める→UX改善に活用する→UX改善によりより多くのデータを蓄積する。このサイクルの繰り返しでより良い顧客体験を提供することが、今後成功するためのカギになるんだな…と考えさせられる。 -
勉強になりました! アフターデジタルから続けて読んでよかった! もうさすが「今!」という旬な本ですね。中国側の取り組み、大変勉強になります。
自分が勤めている会社(NTTコミュニケーションズ)での一年に一度のフォーラムが10月に開催され、本年はオンラインでの開催となるのですが藤井保文さんをお招きしてのセッションがあるのでしっかり予習しようと、アフターデジタルおよび2を連続して読んでみた。実際のところ、まだまだ自らに経験が少ないこともあって/中国のことを知らなすぎる無知もあって、理解が追いつかないところもいくつかはあったけれど、そのへんはこれから動画を見たり、フォーラムでのセッションを聞いたりして引き続き勉強していこうと思う。アフターデジタル2は、前作を踏まえてより踏み込んだ内容に進んでいて、ますます勉強になります。新しい時代に追いついていく勉強本として、買ってよい本だと思います。オススメです。
さて、レビュというより、抜粋もだいぶ増えてきましたが、いつもの通り、個人的に気になった(興味を引いた)部分の抜粋です。
(特に一番初めの部分は本書のキモの部分かと)
==========
P2 「新たな顧客体験(=UX:ユーザーエクスペリエンス:User Experience)を作り、顧客とアフターデジタル型の関係性を築くことがあるべきDXである」。別な言い方をすると、「UXを議論しないDX、顧客視点で提供価値を捉え直さないDXは本末転倒である」ということをきちんと伝えたく、本書を書き始めました。
P34 これまでの中国は、テクノロジーの力で「負や不から解放」して利便性を獲得し、リープフロッグ(注)を起こしてきました。ペイメント、タクシー配車、フードデリバリーなどです。そうした便利なサービスはマスマーケットが対象になりますので、2018年までの中国は新たなインフラが次々と整備される感覚で、日本では経験できないようなスピード感で進められました。
(注)新興国が新しい技術を導入した社会を作る際、インフラや技術が未整備で既得権益の妨害がないことによって、先進国がたどった発展段階をすべて飛び越し、一気に最先端の技術を社会実装してしまうこと。例えばPCやガラケーを飛び越してスマートフォンが普及するケースや、通信が未整備な中で5Gが一気にインフラになるケースなどが挙げられる。
P54 そのとき、テンセントの狙いをはっきりと感じ取りました。「すべてをコミュニケーション化する」テンセントは、「お金の受け取り一つにもコミュニケーションが発生する」と考え、日本でよく行われる「財布を出すポーズ」をデジタル上でできるようにしたのです。「なるほどな」と思いました。通常のWeChatペイの操作はなるべくタッチ数が少なくて済むように無駄が省かれているのに、あえて「無駄」を作っているのはそういうことだったのです。
P84 これは推測でしかありませんが、おそらくデリバリー浸透時代のスターバックスは、「いつでもどこでもサードプレイス化できるという価値を提供すべき」と捉え直したのではないかと考えています。実際、専属配達員がコーヒーを届ける際、両手をそろえて商品を手渡しし、お辞儀をするのです。他のデリバリー配達員では絶対いにやらないようなことです。これも「スターバックスの店員の代理となる存在」として配達員んを見ていることの表れであると言えます。
P198 DX・UXに携わるすべてのビジネスパーソンは、ユーザーに不義理を働かず、在りたい自己実現ができる世界観や、心の底から共感する世界観を提供しているUX(バリュージャーニー)があふれ、UXの善さを競う環境になることで、ディストピアではない「多様な自由が調和するアフターデジタル社会」を目指すべき。
P215 丸井グループでは、「信用の共創」をコアバリューとして掲げています。これはいわゆる与信、信用を与えるという言葉の反対にあるものだとしており、若くてやる気も野心もある人が、ただ若いというだけで信用してもらえず、クレジットカードが作れないという状況に陥るのが与信的な考え方だとすると、「丸井グループ側もあなたを信用することで、信用を共に作り上げる」というのが信用の共創だそうです。
P218 「組織戦略の基盤となっているのは、それを実行する社員であり、それを形作るのは組織文化である」とした上で、「命令型組織ではもううまくいかない時代になっていた、対話型組織でないとDXは実現しないのではないか」と提起されます。
(中略)
対話型組織とは、「この世界観とは、自分の事業においてはこういうことなんじゃないか」「今皆で合意に至ろうとしているこの方針は、世界観や提供価値に合ってないんじゃないか」といったことを現場で考え、対話し、それによって経営者も言葉にできなかったような、よりよい表現や提供価値ができる組織です。バリュージャーニーで価値を提供する時代において、様々なユーザー接点を担当するメンバーそれぞれが自ら考え、体現しながら動かないとスピードが遅すぎるのです。ただし当然ですが、対話型組織は、社長や上長からの十分な説明や発信があって初めて成り立ちます。
==========
帯の裏には『DXの目的は、なぜUXなのか?』とあります。 -
社会への還元
データは顧客のために使う
ユーザーがデータを提供してくれるかどうか
データ提供の対価は社会やユーザーへの還元
販売のマッチング最適化、プロモーション効率化は悪
製品を販売することがゴール
製品はあくまで顧客との接点の一つ
顧客が成功することがゴール
メーカーが下請けになる時代
-
前著アフターデジタルから1年程度での2冊目。
この1年程度で、それだけ世の中の変化のスピードがあがったということ。またその変化を知ること、変化についていくことの大切さを伝えたいという思いの伝わる一冊。
前著のは、中国での事例を中心にこんな世の中になってますよ、日本として取るべき方向性はこうなのでは?という内容。
新たな視点、気付きを与えてくれた指針書的な感覚。
それに対して、本書は一歩踏み込んで、UX(ユーザーエクスペリエンス)が最重要であり、すべての考えの基本になるよ、という内容。
そのUX重視の実例から、新型コロナ後に今後とるべき動きまで書かれた実践書的な感覚。
著者としても書いている方向性に確信を持ち、自信が伝わる一冊。
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