いかなる時代環境でも利益を出す仕組み (日経ビジネス人文庫)

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  • 日経BP (2024年4月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (312ページ) / ISBN・EAN: 9784296120154

作品紹介・あらすじ

危機のときに必ず業績が飛躍的に伸びるのはなぜか?
「15の選択」で会社は根本から変わる

■新製品の売り上げ比率は50%以上
■設備稼働率は70%以下にとどめる
■「選択と集中」「選択と分散」をバランス

みんなの感想まとめ

危機においても業績を伸ばすための戦略が紹介されており、時代の変化に柔軟に対応する企業の姿勢が印象的です。著者は、アイリスオーヤマの成功事例を通じて、効率性だけでなく、イノベーションや顧客ニーズの重要性...

感想・レビュー・書評

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  • 今後のビジネスの戦略を考えるに、とても参考になる一冊でした!

    アイリスオーヤマが、オイルショックの頃からあったなんて、びっくりです。これだけ時代の変化に対応しながら企業を成長させてきた大山さんはやっぱ凄い。

    その主張は、トヨタのカンバン方式に相対するように、「変化に対応できる余裕をもっておくことが大切」といったもの等。

    - 松下幸之助も言っていました。一割、二割を値下げするのは難しいけれど、半値にしろと言われたら知恵が出る。

    - 高い位置にターゲットが定まれば、別方向から新しいヒントが出てくるのです。イノベーションとは不可能なことを可能にすることであり、それを可能にするのが、「ユーザーのためにこの不可能を実現しなければ」というユーザーインの執念です。

    - 「ジャスト・イン・システム」によって、大きなチャンスを逃すこともあるのです。目の前で需要が急拡大しても対応できない。「在庫は悪である」と信じている会社は、設備も倉庫も人員もギリギリ、大きな需要変動には弱い組織となっています。

    - 目先の効率を追って外注生産ばかりしていると、自社に蓄積されるのはマーケティングや営業機能等、一部になりかねない。どこまで内製化するかよく考える必要がある。

  • 継続は経営者の思想次第
    未上場で親族系の典型的な経営戦略がここにある。だが現状多くの商習慣的、形式的経営にハマらない、時代・市場に見合うタイムリーな情報の共有、製品開発をスピード感を持った判断と決断は素晴らしく、強みだ。驚きなのは基本的な予算を組まず、年間1千種以上の新製品を出す仕組み(生産・物流・問屋機能を持つ)と社員管理(毎週・毎月の定期的な開発会議・ICジャーナル(日報)、会社・社員の評価・育成(実績・能力・360度評価)で切れ間なくフォローしている仕組みは素晴らしい。社風である「ピンチはチャンス」ではなく「ピンチがチャンス」、「ユーザーイン」と言われる「役にたつ・使い勝手がいい」を重視した企業。生き残る為に下請けでも自社ブランドを持つことの経営革新を提案している。

  • 金言の数々に背中を押される思いがした。

  • 「顧客を中心に経営を組み立てる」というと当たり前のように聞こえるかもしれませんが、多くの会社は十分にできていません。注意しなければならないのは、顧客は誰かということです。アイリスでいえば、顧客は小売店なのか、それとも消費者なのか。
     そこのところを明確にするには、経営を3つの型で捉えるといいと思います。「ブロダクトアウト」「マーケットイン」「ユーザーイン」です。プロダクトアウトと対になる言葉としては、マーケットインが一般的ですが、経営で重要なのはユーザーインの思想です。
     順に説明しますと、プロダクトアウトは、自社独自の強みを深掘りすることで勝負する戦略。かつては需要が供給を上回っている状態でしたから、松下幸之助氏が提唱した「水道哲学」のように、とにかくモノを大量に安く作ることが、企業経営の模範とされました。
     現代においてプロダクトアウト型が通用しなくなったわけではなく、製造業なら品質、価格、納期などを極めれば勝つことができます。ただ、外的環境の変化や競争条件の変化で需要がなくなれば、せっかくの強みが帳消しになる危険性は常につきまといます。
     次にマーケットインですが、これは業界や市場の要望に応える戦略と私は位置づけています。独自性の高くない製品でも、市場で必要とされるものはたくさんあります。 価格競争に耐えるだけの資本力や営業力のあるメーカーは、マーケットイン型で戦うことができます。ただし、市場の競争環境によって業績が上下するので、資本力に劣る中堅・中小企業が利益を上げるには無理があります。オイルショックで大赤字を出した、かつてのアイリスがその典型です。
     プロダクトアウト型、マーケットイン型の経営が間違いというわけではないのですが、環境変化に翻弄されない会社をつくろうとすれば、ユーザーの動きをしっかりとらまえたユーザーイン型の経営ということになります。
     アイリスのように生活者向けの製品を作っている場合、ユーザーとは「エンドユーザー(使う人)」のことです。使う人が「これは役に立つ」「これは安くて使い勝手がいい」などと満足するかどうかを考えるのが、ユーザーインの思想です。
    「買う人=使う人」とは限りません。技術者はどうしても、プロダクトアウトの発想になりやすい。また営業社員は、マーケットインの発想になりがちです。営業社員にとっての直接の顧客は問屋や小売店のバイヤーですが、彼らのニーズは大抵、流通のニーズです。流通は、文字通り製品を流すことが役目であり、必ずしもエンドユーザーのニーズとは一致しません。
     例えば、多数の製品を扱う問屋は、売れるかどうか分からない斬新な新製品よりも、安定して売れる製品を扱いがちです。確実に利益が得られる製品をメーカーの営業社員に求め、うのみにした営業社員がそれがエンドユーザーのニーズだと開発に伝える。そうしたニーズのずれはよくあることです。マーケットのニーズとユーザーのニーズを混同しているのです。
     ユーザーとカスタマー (顧客)は違います。問屋は、メーカーにとってのカスタマ ―ではありますが、ユーザーではないのです。しかも、問屋などの流通企業は、製品の性能ではなく、あちらのメーカーのほうが価格が安いからという理由で仕入れ先を切り替えることがあります。顧客のニーズを聞いても安泰ではありません。マーケットのニーズとユーザーのニーズのずれを放置し、修正せずにいると、いずれ行き詰まります。
     メーカーが、自社の製品を売ってくれる問屋や小売店を大事にするのは至極当然のことです。しかし、その先にいる真のユーザーを見ることが経営の要点なのです。


     自分たちはユーザーのことを、どこまで真剣に考えているだろうか。 そう問い直すだけで経営は随分変わります。
      過度な値下げはマーケットの要望で、個々のユーザーはそこまで望んでいないことがほとんどです。経営者は、そこをはき違えてはいけない。あくまでもユーザーニーズに深く入り込んだ製品、サービスを考えるのです。日本企業はマーケットインの発想が強い。今していることは、「誰の要望なのか」と、まずは落ち着いて考えてみましょう。
     使う人の視点に立てば、値付けに対する考え方も変わります。
    「原価がこれだけかかったから、利益を乗せると、この価格で売らなければ割に合わない」といったコスト積み上げ式の値付けをしていないでしょうか。なぜ、このような思考回路が出てくるのかというと、組織の維持を優先しているからです。
     どの企業も、もともとは何かしらの事業を顧客に提供したくて組織をつくったはずです。組織を存続するために事業を開始した会社は一つもない。しかし長く経営を続けていると、組織が事業をするための手段ではなくなり、組織を維持することが目的で、事業がその手段になるという逆転現象が起きやすくなります。それは結果的に組織をむしばんでいくのです。
      企業が創造する価値を提供する相手は、ユーザーです。そのユーザーには「原価がいくらかかったから、この値段にしました」という作り手の言い訳は全く通用しません。
     この価値ならいくら払うか。それだけで購買の決断を下します。
     だからアイリスでは、顧客になりきって値段を考えます。ユーザーは製造原価が分かりません。流通コストがどれだけかかっているかも関知しません。けれど、目の前にある製品の価格が「高いか、安いか」を知っています。「欲しいか、欲しくないか」 を知っています。作り手の事情を排除し、ユーザーの目線で値段を決めることが、売れる製品を作る基本です。
     

     おそらくどの会社もそうですが、創業したときは面倒くさいことに一生懸命に取り組み、会社を大きくしてきたはずです。ところが創業時にはできていたのに、新規事業を立ち上げるときには、目先の効率を優先する会社が多い。皆が注目している分かりやすい成長市場、しかしその分競争が激しい市場にわざわざ飛び込み、失敗します。
     そのため、特定の市場・技術によりかからず、そして、誰もが注目している分かりやすい成長市場以外にも、製品ジャンルをできるだけ広げておかなければならないのです。そうすればどんなに激しい環境変化が起きても、有望な市場に人員や資金をシフトすることで、利益を伸ばし続けることができます。


    プレゼン会議の特長
    ・社長が決めるから速い
    ・その場で問題解決するから速い
    ・社長の考えが全員に伝わるから速い
    ・毎週実施するから速い


     アイリスのユーザーインの「仕組み」がご理解いただけましたでしょうか。かけ声なら簡単ですが、仕組みにするのは難しい。しかし、仕組み化しなければ、経営ではない 。固有の技術があったとしても、それがいつまでも続く保証はない。必要なのは、 売れる製品をたくさん生み出す固有の仕組みです。仕組みがなければ、いかなる時代環境でも、利益を出すことはできないのです。


    消費者の利用シーンに合った素材展開
     さて、プラスチック加工以外の技術をどのように身につけていったのか。外部企業と提携し、製品を融通してもらう選択肢もあるでしょう。あるいは下請けに発注する方法もあります。アイリスではそうした選択は極力せず、社内に新しい製造機械を入れていったのです。
     理由は、内製化したほうが売れる新製品を効率的に出せるからです。外部企業といちいち交渉していたら、ユーザーニーズを取り逃がします。あちこちの下請けにその都度発注していては技術の融合が進まず、ユーザーニーズの対応に限界が生じます。
     3章でも触れますが、アイリスでは今もビス1本から内製しています。初めて作る製品でも、試行錯誤を繰り返しながら社内で作り上げる。最初のうちは、すぐに対応できない素材の製品もありましたが、経常利益の50%を投資に回しながら、プレゼン会議でPDCA(企画・実行・確認・改善)を週単位で高速で回し、着実に品ぞろえを増やしていったのです。


    どこまで内製するかを検討する
     目先の効率を追って外注生産ばかりしていると、自社に蓄積されるのはマーケティング機能や営業機能など一部だけになりかねません。人口減少社会では、需要創造が企業の成長には不可欠です。そのためには、ユーザーのニーズを「的確に捉える」ことができ、そのニーズを「的確に形にする」ための体制が必要です。
     アイリスでは、その一つが設備や部品の内製化というわけです。安い調達先・加工先を世界から探して、長いサプライチェーンを組み上げ、ジャスト・イン・タイムで補完する仕組みは、もはや効率的ではない。経営の仕組みの再構築が問われています。
     自前主義に否定的な人は、それがスピーディーなイノベーションを妨げると指摘します。
     社外の技術を取り入れれば、自社の強みがさらに生きてイノベーティブな製品を開発できるのは確かです。アイリスが家電事業を始めるときには、大手電機メーカーの技術者を中途採用し、彼らの持っていたノウハウを生かしながら、事業を立ち上げました。私は何でも自前にこだわるわけではなく、自前にしたほうが結果的に効率的だと考えているものに限定しています。部品を自前で生産するのも、生産設備を自前で作るのも、そのほうが迅速な開発とコスト削減の効果が享受でき、ユーザーの満足度を高められるからです。
     自前主義がいいのかどうかは、その会社が何を求めるのかによって異なります。ただし、目先の効率を求めるだけの理由で「反自前主義」を選択するのは、ビジネスチャンスを逸しますし、企業競争力もそぐことは、ぜひ知っておいてほしいと思います。



     スピード復旧は多くのメディアで取り上げられました。
     要因の一つは、工場を分散していたことで受発注システムと生産の代替ができたこと。もう一つは、部署の垣根がないため、全社一丸となって復旧に取り組めたことです。「部署の垣根がない」というのは、プレゼン会議や、4章で説明する全社日報データベース「ICジャーナル」などの仕組みを通し、全部署・全社員での情報共有の場をつくってきたアイリスの強みです。
     一般に、企業は規模が大きくなると事業部制になります。事業部が太い幹で、その下の部や課は、事業部から伸びた細い幹です。そのため、部や課のレベルでは他の事業部と情報交換をする場がほとんどありません。
     その状態は、特定の事業を推し進める機能としてはよいかもしれませんが、新しいことを始めるときには逆効果です。「新規事業のプロジェクトはいろいろな部門から集めた横断チームで走らせる」という会社もあるでしょうが、一時的なものではなく、 普段から情報交換ができていないと、その組織の力が十分に発揮できません。
     アイリスの組織も事業部制ですが、縦割りの「ツリー構造」ではありません。実質的には俯瞰して物事が見られる「ネットワーク構造」です。プレゼン会議では機能別の全部署が集まりますし、開発現場では多能工化が進んでいるので、互いの強みをよく知っている。そうした関係性をICジャーナルで補完します。これは、グループの全社員が日々の業務についてまとめるデイリーリボートで、全社員が閲覧できます。 全社員の情報を全社員が見る。これにより神経細胞のように各部署,各社員が自律的につながるのです。
    「選択と分散」の本質的な強みは、分散しているからこそ得られる多様な知恵です。 それを生かすのが情報共有の仕組みです。この点は4章で詳しく考えていきます。


    ROA、ROEはあまり関知しない
     見てきたように、アイリスでは設備稼働率が7割以上になれば追加投資をします。 それによって急な需要が起きたときに、一気に増産できるからです。また、各工場では、いつでも使えるように汎用ロボットをたくさん備蓄しています。それは、自動化ラインをすぐに構築し、スピーディーに製品を市場に投入するためです。そして、小売店にすぐに届けられるように、同じ製品を全国各地の工場で作っています。
     これらは目先の資本効率を落とします。けれど、外的環境が変化する前提に立てば、こちらのほうが経営的には正しいはず。ROAは市場が安定している条件下での指標です。
     株主資本をどれだけ利益につなげているかを示すROEについても同様です。
     資本主義社会では、企業は株主のものです。その株主が供した資本をどれだけ効率的に使っているかを示す指標は意味があるように見えますが、ROEの高さは現時点での効率性を示すものにすぎません。
     金融機関からの借り入れを増やして株主資本を低く抑えることでROEは高まりますが、それは企業体力を落とします。加えて、無駄を省き、利益を増やす経営をしていると、急に現れた需要に応える余裕もない。
     アイリスではROEは資本効率という意味で参考にしますが、経営において重要なのは、チャンスをいかにつかむかです。ROEを指標にすることに意義があるとするなら、やはり市場が安定し、拡大を続けているときですが、これからの時代はROE が求める効率性を追求すると会社を傷めます。本当の効率を追求しなければいけません。


     数値がない目標は認めません。数値で見ることで計画の達成度を細かくチェックできますし、自分の努力・工夫が数字に表れることで社員のモチベーションにつながるからです。改善の手を直接打つのは、社員たちです。社員は毎月、自分の仕事ぶりが損益として全社員の目に触れるのですから、安穏とはしていられない。赤字なら頑張ろうと思うし、黒字ならもっと利益を伸ばそうと考える。数字をオープンにすれば、 社員は自ら知恵を絞るのです。


    アイリスオーヤマの企業理念は次の5つです。
    1.会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境においても利益の出せる仕組みを確立すること。
    2.健全な成長を続けることにより社会貢献し、利益の還元と循環を図る。
    3.働く社員にとって良い会社を目指し、会社が良くなると社員が良くなり、社員が良くなると会社が良くなる仕組みづくり。
    4.顧客の創造なくして企業の発展はない。生活提案型企業として市場を創造する。
    5.常に高い志を持ち、常に未完成であることを認識し、革新成長する生命力に満ちた組織体をつくる。

  • アイリスオーヤマ会長 大山健太郎氏が、その経営に対する考え方を書いた本。序文で楠木建氏が絶賛しているように、極めて優れた競争戦略が構築されているのだと思う。特に、誰もが真似しようとは思わない非合理な要素が、強力な独自性を生んでいるといえる。とても勉強になった。

    「組織には「手段を目的化するシステム」という面があります。放っておけば必ず手段の目的化に陥ります」p21
    「自社運営のネット通販サイト「アイリスプラザ」で販売している製品点数は自社製品だけで2万5000点以上になります。ここまでの点数を1社で扱っている通販サイトは、日本国内ではありません」p37
    「普通の会社は1割増し、2割増しの急な出荷増には対応できても、5割増の注文には、工場や物流がパンクしてすぐには出荷できません。でもアイリスは大丈夫です。それは生産体制に余裕があるからです。アイリスでは、あらゆる施設の稼働率を7割以下にとどめています。注文が増えて7割を超えるようになったら、工場を増床するか、工場を新たに建てる。もちろん、具体的な需要があって増やすわけではないので、普段はただの予備スペースです。けれど、何かの需要が急に出現した時に、その予備スペースで瞬時に増産できる。他社とは瞬発力が違うのです」p38
    「「アイリスはいつも世の中がピンチのときに業績を伸ばしますね。もともと作っていた製品が追い風を受けて儲かる。運がいい」とよく言われます。申し訳ないのですが、運だけではありません。経営の仕方が他社と違うのです。危機の時に必ず業績を伸ばせる経営をしているからであり、戦略によるものです。「ピンチをチャンスにする経営」ではなく、「ピンチが必ずチャンスになる経営」の結果です」p39
    「これまでのアイリスの歴史を振り返れば、およそ10年ごとに起きる環境変化のたびに大きく成長しています。具体的には1991年の土地バブル崩壊、1997年の金融危機、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、そして2020年のコロナショックです。そうしたピンチが来た時に慌てるのでもなく、嵐が過ぎるのをただ待つのでもなく、確実にチャンスに変えて、業績を伸ばしてきました」p41
    「個々の製品は重要ではないことをオイルショックで学びました。ヒット商品に頼っていると、製品開発力が弱まり、時代の変化に適応できなくなるというリスクが生じます。それを防ぐのが、仕組みです」p46
    「(ユーザーイン)需要と供給のバランスで動く市場経済と一線を画すためには、自ら需要を生み出す市場創造型の製品が必要です。それを「ユーザーイン」という言葉に昇華し、経営の軸に据えます。その考えの下、1980年代にはガーデニングブーム、ペットブームを仕掛け、会社は大きく息を吹き返しました」p47
    「需要創造型の製品は過去の実績を示せないため、確実に売れるものを求めたがる問屋は取り扱いに難色を示しました。そこで私は新興勢力のホームセンターとの直接取引を狙い、問屋機能を包含した「メーカーベンダー」という業態を確立しました」p47
    「アイリスは「仕組み至上主義」の会社です。仕組みをつくらない社長は、自分で何でも決めたいだけなのでしょう。そんな会社は、社長が引退した途端、傾きます」p50
    「(プロダクトアウト)「作ればどんどん売れるぞ」と踏んだ瞬間から、顧客のことは向こうにやり、品質のいいものを安く大量に作って問屋や商社に納めさえすれば儲かるという、プロダクトアウト型の経営に転じてしまったのです」p56
    「「好況時だけ儲かるビジネス」ならプロダクトアウト型で構いません。しかし「不況時でも儲かるビジネス」をするには、常に顧客側に立脚しなければならない」p56
    「プロダクトアウトは、自社独自の強みを深掘りすることで勝負する戦略。とにかくモノを大量に安く作ることが、企業経営の模範とされました。外的環境の変化や競争条件の変化で需要がなくなれば、せっかくの強みが帳消しになる危険性は常につきまといます」p57
    「マーケットインは、業界や市場の要望に応える戦略と私は位置付けています。価格競争に耐えるだけの資本力や営業力のあるメーカーは、マーケットイン型で戦うことができます。ただし、市場の競争環境によって業績が上下するので、資本力に劣る中堅・中小企業が利益を上げるには無理があります。オイルショックで大赤字を出した、かつてのアイリスがその典型です」p58
    「(あくまでもユーザーニーズに深く入り込んだ製品、サービスを考える)日本企業はマーケットインの発想が強い。今していることは「誰の要望なのか」と、まずは落ち着いて考えてみましょう」p63
    「企業が創造する価値を提供する相手は、ユーザーです。そのユーザーには「原価がいくらかかったから、この値段にしました」という作り手の言い訳は全く通用しません。この価値ならいくら払うか。それだけで購買の決断を下します」p64
    「アイリスでは、顧客になりきって値段を考えます。ユーザーは製造原価が分かりません。流通コストがどれだけかかっているのかも関知しません。けれど、目の前にある製品の価格が「高いか、安いか」を知っています。「欲しいか、欲しくないか」を知っています。作り手の事情を排除し、ユーザーの目線で値段を決めることが、売れる製品を作る基本です」p64
    「(松下幸之助)1割、2割を値下げするのは難しいけれど、半値にしろと言われたら知恵が出る」p66
    「価格競争が起きた市場に固執してはいけない」p72
    「ビジネスは面倒くさいことにこそチャンスがあります。面倒くさいことは誰もやりたがらないからです」p74
    「ヒット商品やロングセラーに寄りかかることは会社の活力を奪います」p79
    「(全ての製品が生まれる開発会議「プレゼン会議」)毎週月曜日午前9時半から午後5時まで、本拠地の会議室で行い、出席者は、月曜は他の予定を一切入れないのがルール。すり鉢で階段式に席が配置され、社長を中心に役員全員、そして各部門のマネジャーを中心に総勢50人がずらりと後方に控え、東京や大阪、中国などの関係者もテレビ会議で参加する。毎回60案件前後が議題に上る。アイリスでは毎週、トップから現場までが一堂に会して話し合い、年間50回の提案機会がありますから、製品の新陳代謝が非常に高速になります」p87
    「「プレゼン会議」は、事前の根回しは一切禁止。「来週、こんな提案をしますのでよろしくお願いします」といった事前交渉には一切応じません」p100
    「(問屋の壁と小売店の壁)問屋にしてみれば、売れるか売れないか分からないものはできれば扱いたくない。小売店にとって、今まで見たことがない新しい製品を扱うのはリスクです。自分の判断で仕入れた製品のせいで売上を落としたくない。そのため、ヒットの可能性を秘めた製品より、確実に売れそうな製品を求めがちです」p113
    「アイリスはホームセンターの成長を軌を一にするメーカーベンダーでしたが、その後、ドラッグストア、家電量販店、スーパー、コンビニエンスストアと取引する小売店を広げてきました」p137
    「他業界を見ても、需要創造と市場創造の両方を押さえている企業は強い。典型例は「ユニクロ」。毎年、新しい機能の衣服を開発し(需要創造)、その機能をしっかり店舗でアピールしています(市場創造)。衣料を作るか、売るか、どちらかをしていた方が経営としてはラクです。けれど、それでは今のユニクロはなかった」p138
    「(同業者との集まりには参加しない)仲間内の利益が優先され、ユーザーの期待に応えることができません。考え方が横並びにもなってしまう。経営者に必要なのは「多長根」の考え方(多面的、長期的、根本的)」p140
    「これから必要なのは、チャンスロスをなくす仕組みです」p152
    「世間が外注にシフトした1980年代、私は懸命に内製化を進めました。「大山は何をバカなことをしているのか」と笑う人もいましたが、マネジメントの本質はどちらにあるだろうかということが常に頭にありました」p162
    「現在、アイリスには自動化ラインを設計・構築する専門スタッフが200人以上います。国内大手メーカーで、自動化の専任者が200人以上もいる会社は少ないでしょう。アイリスでは、プレゼン会議を通じて年間1000種類以上の新製品が出てきます。自動化スタッフはその設計図をもとに、どのような加工・輸送ロボットを使って、ラインをどう設計するかを日々考え、組み立てます」p164
    「ユーザーのニーズを「的確に捉える」ことができ、そのニーズを「的確に形にする」ための体制が必要です」p169
    「これからの時代はROEが求める効率性を追求すると会社を傷めます。本当の効率を追求しなければいけません」p180
    「(未上場)アイリスが目先の効率ではなく、中長期の効率を追う会社である以上、短期的な収益を求める第三者を株主に入れることは絶対に避けなければいけません」p185
    「会社が小さなうちはトップの人間的魅力で社員をまとめるしかない。そのためには社長は人の2倍、気遣いができないと務まりません」p192
    「(情報共有の重視)アイリスでは、仕事の中で最も優先度が高いのが、会議や朝礼など皆で集まる場に出席することだと言ってもいいでしょう」p211
    「くどくど話さなくても、社員はそれぞれ自分の役割を理解し、働いてくれる」という見方は間違いです。社長は社員の心に火をつけるためにも、社員に向けて繰り返し自分の思いを話さなければならない。「話すのが億劫」という人に社長は務まりません。社員と思いを共有できないと嘆く社長は、おそらく社員に話す量が圧倒的に不足しているのだと思います」p216
    「ヌシがいると、そこに情報が吹きだまりのように集まり、組織のためにはなりません。また、ヌシのような専門家がいれば仕事の能率が上がるようにも見えますが、マンネリ作業は効率を下げます」p229
    「同じことを繰り返すな。単調になると創造力が失われ鈍くなる」p230
    「(ヌシの排除)「人の意見を素直に聞いて、あなたの仕事の進め方を改善しなさい」と言っても、ヌシは絶対に聞き入れません。ヌシとして仕事を独り占めした方が、自分の存在価値を保ち続けることができるからです。しかし、それは全体最適ではないのです」p232
    「いったん仕組みをつくって習慣化してしまえば、組織は自律的に回り始めますが、最初に仕組みをつくるとき、そして仕組みを変えるときには、トップの強いリーダーシップが必要です」p234
    「(アイリス社員の感想)働く社員にとっては、すごくいい会社。働かない社員にとっては、しんどい会社」p234
    「Amazonの巨大物流倉庫を報道で見た人もいるでしょうが、ネット通販事業とは究極的には物流事業です」p279
    「アイリスの炊飯器はよく売れています。価格は3万円です。他社は同等の機能で10万円もする。勝負は火を見るより明らかです。他社とは製造方法や物流方法が異なるからです」p300
    「(経営資源の集合体を社会の変化に対応させる)企業の構成要素(資本、人材、技術、ブランドなど)を社会の変化に対応させるのです。資本についてはトップの判断で移動できても、社員の意識を変えたり、先を見通して技術を育てたりするのは容易ではありません」p301
    「担当者がいくら優れた製品だと主張しても、私は必ず「おまえの嫁さんなら、この製品を買うか」と聞きます」p307

  • すごく勤勉で体力もあり、あたまもいいし持続力もあるパワーのある人。
    カスタマーファースト、カスタマー創造ができる。
    毎週一回商品会議、決断は一瞬。
    物がいつでも作れるように工場の生産は7割。

    そこはよかったんだけど、部下に対する命令的な箇所がとても浮かんできた。
    勉強にはなるけどなんだか好きになれない人かなぁ。

  •  本書は、2020年9月に日経BPから刊行された同名書を再編集した文庫版であるという。文庫版あとがきで、大山氏からのメッセージが記載されている。「ビッグチェンジがビッグチャンスといえる企業経営を目指しましょう。」というメッセージが最後に記されていて、(外部的な)大きな変化をチャンスと捉えて革新してきたアイリスオーヤマの会長らしいメッセージであると感じた。設備稼働率7割にし、設備は自社で調整して長く扱えるようにしてしまうなど、素晴らしいと思った。あえて上場していないため、株主のためではなく、自社社員のための経営をされていると感じた。

  • ICジャーナルが知りたかったので読んだ。
    こういった一つ一つの仕組みづくりが大事なんだなと。

    たとえば、
    毎週のプレゼン会議は上役がすべて出席する。
    情報格差を少しでも減らすためだ、など。

    理論や経験を形に落とし込んで、体系化していく流れが
    どれも一貫している。

  • アイリスオーヤマの会長さんの本。上場してないからできることも色々あるよね。

  • ところどころに刺さる文言がある良本です。

  • やはりオーナー経営者は違う、という感を改めて持った本。
    長期的視点、ユーザーインで経営を行っている。
    もとはプラスチック成型の下請け工場、それがブイやプランターなど自社ブランドを持つことで目覚め、
    現在の、押しも押されぬ「アイリス」ブランドを持つ企業になっている。
    前回読んだ豆腐屋社長の本に通じるものがある。

    利益を出す仕組みにこだわり、工場は7割稼働まで。
    それ以上の稼働率になったら新工場を建てる、というからすごい。
    「効率」だけ考えたら100%が当たり前、になりそう。

    経営トップがしっかりした理念を持てば、社員は余計な「政治」をせず、
    業務に専念できる。
    すばらしい。

    ただ、、オーナー会社の弱みはあるはず。
    今はマーケティング会議で最後は会長の目利きで商品化が決まるという。
    ここに忖度はないのか?
    いや、もちろん、彼が一番すごい目を持っているとは思う。
    しかし、
    兄弟や子供を幹部に登用しているところからすると、、、
    一族がみな優れているとは限るまい。
    何の根拠もないが、そこに一抹の不安?を覚える。

    なので、代替わりしても大丈夫、という会長の考え通りになるか、見てみたいものだ。

    それ以外はすべてうなづけるものばかり。
    会社はトップの考え次第だ、と改めて思う。


    序章 効率偏重経営の終わり

    CHOICE 1 「環境変化に対応する」か「環境を自ら変革する」か

    1章 製品開発力 売れる製品を最速で大量に生む仕組み

    CHOICE 2 フォーカスするのは「買う人」か「使う人」か
    CHOICE 3 KPIの目的は「業績向上」か「新陳代謝」か
    CHOICE 4 開発は「リレー型」か「伴走型」か

    2章 市場創造力 流通を主導し、顧客と結びつく仕組み

    CHOICE 5 「自社の強みに絞る」か「自社の強みを絞らない」か
    CHOICE 6 強みは「固有の技術」か「固有の仕組み」か

    3章 瞬発対応力 急な外的変化を成長に取り込む仕組み

    CHOICE 7 上げたいのは「稼働率」か「瞬発力」か
    CHOICE 8 瞬発力があるのは「身軽な外注」か「柔軟な内製」か
    CHOICE 9 「選択と集中」か「選択と分散」か
    CHOICE 10 「短期の効率」か「中期の効率」か

    4章 組織活性力 仕事の属人化を徹底的に排する仕組み

    CHOICE 11 社長にとって「いい会社」か社員にとって「いい会社」か
    CHOICE 12 経営情報を「独占する」か「共有する」か
    CHOICE 13 組織内に「ヌシがいる」か「ヌシがいない」か

    5章 利益管理力 高速のPDCAで赤字製品を潰す仕組み

    CHOICE 14 PDCAの要所は「PLAN」か「ACTION」か

    6章 仕組みの横展開

    7章 ニューノーマル時代の経営
    CHOICE15 業界は「守るべきもの」か「壊すべきもの」か

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著者プロフィール

アイリスグループ会長、アイリスオーヤマ株式会社 代表取締役社長
1945年大阪府生まれ。64年大山ブロー工業代表者に就任。91年アイリスオーヤマに社名変更。
仙台経済同友会 代表幹事、日本ニュービジネス協議会連合会 副会長、東北経済連合会 副会長、東北大学 総長顧問、復興庁復興推進委員会 委員を務める。
1990年第1回ニュービジネス大賞(主催:社団法人ニュービジネス協議会)、2004年中国大連市栄誉公民、09年藍綬褒章、同年仙台市特別市政功労者賞。
著作に『メーカーベンダーのマーケティング戦略』(共著)『ホームソリューション・マネジメント』『ピンチはビッグチャンス』(以上ダイヤモンド社)『ロングセラーが会社をダメにする』(日経BP社)がある。

「2016年 『アイリスオーヤマの経営理念 大山健太郎 私の履歴書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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