漂流するリベラル国際秩序

  • 日本経済新聞出版 (2024年7月19日発売)
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本 ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784296120727

作品紹介・あらすじ

●欧米主導の国際政治経済システムはどのような危機に直面しているのか
 ロシアのウクライナ侵攻、中国のアメリカ一極体制への挑戦――。米国主導のいわゆるリベラル国際秩序の揺らぎが指摘されるが、その実相はどうなっているのか、米中の覇権争い、国際通商体制、安全保障、米欧の政策潮流などはこれからどこに向かって行くのか。本書はこれらの問いを、とりわけ西側世界への影響や課題という視点から第一級の国際政治研究者が一堂に会して考察する。

 第1章では、リベラル国際秩序の歴史と将来を論じる。中ロやトランプ氏などの影響だけでなく、自由主義と秩序の根本的なジレンマに加え、工業国家モデルを揺るがす新たな社会状況に即した安定的な政治秩序の発見が将来を左右すると主張する。

 第2章では、金融・通貨体制を巡る米中対立を分析した。米国が通商分野で対中攻勢を強める前から、中国は米ドル覇権の弱体化を狙い、西側主導の国際経済体制の内側から外側へと活動を広げてきたと指摘、米中による共同覇権は困難だと見る。

 第3章では、米国の経済政策の潮流変化を分析した。市場原理重視の新自由主義から、「大きな政府」による課題解決重視の「新ワシントン・コンセンサス」への転換が、今後の国際秩序にもたらす期待とリスクを論じている。

 第4章では、国際通商秩序の変容と行方を展望した。トランプ米政権以降、従来の多国間自由貿易体制は、安全保障化、分断化、非法化の3点で変化しつつあり、今後もこの流れが続くことを前提に自由貿易体制のver.2 を探るべきだと指摘している。

 第5章では、アジアが正面となる「新冷戦」時代に戦争を防ぐ道を考察した。日独が米国を支えつつ、NATO と日韓豪、ニュージーランドがグローバル・ウエストの安保協力体制を築くことや、中ロを含む軍縮・危機管理と信頼醸成の枠組み創設を提唱する。

 第6章は、EU が新たな地政学的現実を前に、理念と実利の二兎を追って揺れる姿を描く。規範や理念を掲げリベラル国際秩序を守ることは、EU にとって利益確保と存在意義のアピールにつながっているという見方を提示した。

感想・レビュー・書評

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  •  論者によりテーマや重点は異なるが、リベラル国際秩序の揺らぎと米中対立という認識は共通。序論で中西は、その揺らぎの主たる原因を中露に帰すのは無理があるとし、ガザ地区の状況や、欧州を含む世界規模での権威主義化を指摘。他の複数の論者も、米国の経済政策での「大きな政府」化や経済安全保障を指摘する。
     かかる米国に対し、同盟国はどう対応するのか。岩間は日独等で大国間協調を支えるしかないと述べる。刀祢館もEUのリベラル国際秩序堅持の重要性を述べるも、同時にEU域内の産業保護・育成の観点から米国への対抗と競争も最近顕著になっていると指摘。さて日本で、かかる「対抗と競争」はどの分野でどれだけ可能なのだろう。

  • 東2法経図・6F開架:319A/N38h//K

  • 21世紀世界の挑戦と西側世界:リベラル国際秩序の歴史と将来 リアリズムによる自由主義批判 近代性の屈曲
    米中対立と国際経済体制:融・通貨体制 中国の台頭・米中対立激化
    米国・新ワシントン・コンセンサスの挑戦:経済政策の潮流変化と国際秩序
    自由貿易体制:安保志向、断片的、非法的なレジームへ 西側同盟とリベラル国際秩序 軍備管理・軍縮と信頼醸成の将来
    安全保障ーグローバル・ウエストの可能性:米欧とアジアつなぐ新・安保構想
    EUの理念と実利:リアリズム・パワー化 地政学的リアリズム・欧州委員会 経済安全保障 環境・移民・右派

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著者プロフィール

京都大学教授

「2013年 『国際政治学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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