キーエンス解剖 最強企業のメカニズム

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  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296200917

作品紹介・あらすじ

営業利益率は脅威の55%超、社員の平均年間給与は2000万円超──。売上高は1兆円に満たないながらも日本の時価総額ランキングで第3位に入るのがキーエンスだ。日本を支えてきた製造業の弱体化が指摘される中、なぜキーエンスはこれだけの結果を残せるのか。その神髄は顧客の心をつかむ営業や商品開発、人材育成の仕組みにある。外部にほとんど明かされないキーエンスの正体に日経ビジネス記者が迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 『キーエンス解剖』
    【A;購読動機】
    時価総額15兆円近くのセンサー製造業です。
    営業利益率50%、一人あたりの社員年俸2,000万円以上でも有名です。
    また、経営、人事そして営業に関する公式本が少ない企業の1社です。
    そのため、非公式本とはいえ、日経取材の結集であるため購読しました。
    結論、読まないともったないかも・・・です。
    ーーーーーーーー
    【B;こんなひとにおすすめ】
    経営に近しい立場で業務を執行している方。
    営業最前線または営業責任者の立場を執行している方。
    強い会社(差別化製品かつ売上・利益が良い会社)に関心がある方。
    ーーーーーーーー
    【C;読み終えて】
    営業利益50%時価総額15兆円近くには、明確な原因があったと再認識することができた。それが書籍にある「ロジ」(キーエンス用語。ロジックの略)だ。
    目的、目標そして問題を分解し、特定し、達成する行動を持続させていることだ。
    その徹底ぶりは、取材記録からだけでも十分に読み取れる。
    ――――――――
    「時間チャージ」
    売上総利益/付加価値を全社員の総労働時間数で割った数値。
    時間当たりの稼ぎが過去と比較していいのか?悪いのか?が判断できる指標。
    ーーーーーーーー
    【D;書籍内容】★印が「そうきたか!?」の視点。
    【財務/結果】
    10年間で従業員数が1.4倍にもかかわらず、売上高は4倍で成長。
    2022年度は売上高前年比140%成長。
    【原因】
    1)共通
    目的はなんだ?目標はどこだ? 課題・問題はなんだ?
    上記を主体的に考えて、解決に向けて動くこと。
    2)営業
    ①外勤3営業日内勤2営業日
    ②外勤1日あたり商談件数5から10社。
    ③内勤1日あたり電話商談件数50社以上。
    ★④商談議事。議事終了5分以内に記載。正確性。
     商談先の状況、課題
    ★⑤1日の振り返り。
     共有をする振り返りでなく、顧客の課題の特定、解決/次回商談シナリオの確定。
    ⑥KPI
     OB、商談件数、キーマン接触回数含めて20以上。
    ⑦ロープレ
     新人は基本200営業日連続。毎日18時以降10分。
     シナリオトークあり。
     機能的価値<意味的価値
    3)質量チェック
    ①KPI 個人別順位をメール配信
    ★②ハッピーコール。上司→商談先TEL.裏とり。
    ★③内部監査。マルサ。正しく行動しているか?
    ★④性弱説。ひとは怠ける。ゆえに①のガラス張り。
    【財務】
    ★①時間チャージ
    粗利益額を全従業員数の全労働時間で控除する。
    年、四半期ごとに社内に開示される。
    →生産性を意識
    ②営業利益分配

  • 【感想】
    サラタメさんの書評動画を見て興味が湧いた1冊。キーエンスの「30代で家が建ち、40代で墓が建つ」というキーワードは、ビジネスマンなら誰しも耳にしたことがあるのでは?
    前述のキーワードと、ぶっちぎりの高年収である事以外、正直キーエンスって個人的に関わりがなく謎めいた企業でしたが、本書を読んでとても面白くて先進的な企業だなと思いました!
    サラタメさんのYouTubeでも紹介していた「ロープレ千本ノック」「ハッピーコール」「アポ5件ないと外出できない」といったブラック寄りのところにも目が行ったが、個人的にやっぱり自分と違うなと感じたのは以下の2点。

    1つ目は顧客訪問よりも社内にいる時間が長いこと。
    キーエンスって神出鬼没で外回り営業に駆け回っているイメージが強かったが、週2回の社内日や学習(製品や市場について)など、結構「内勤」をする事が多いのだなと思った。
    本書でも解説しているように、「よく勉強して、顧客に商品の良さを理解してもらう事に努める」といった点が新鮮だった。
    僕はどうしても外を駆け回って量で行くタイプの営業なので、こういった"学習"に時間をもう少し割く必要があるなと参考になりました。

    2つ目は、これはかなり個人的な意見ですが、「即納:全商品当日出荷、全商品在庫あり」という概念です。
    僕自身メーカー業なのですが、欠品は本当に時間の無駄!!笑
    というか、それ理由で逸した案件や既存取引先がどれだけ多い事か・・・
    キャッシュフローという点において過剰に在庫しないのは企業の宿命なのですが、それ以上に失うモノが多いんよね。
    なので、単純に「全商品当日出荷、全商品在庫あり」というシステムが羨ましいなと思いました。笑

    また、あくまでもイメージですが、キーエンスの社員って一匹狼タイプが多いのかなと勝手に思っていました。
    が、個人の売上・数字などの結果ではなく過程が評価されたり、自分の数字ではなく会社への貢献度が評価されているという点も、イメージと全然違いました。
    やはり成長していて存続できる企業は、そのあたりの共通認識が社内でもしっかり統率されているんですね。
    ウチの会社もそれを謳っていますが、僕は自分自身のエリアや数字の事しか常に頭にありません。笑

    絶対に自分はキーエンスに入りませんし、キーエンスでやっていける自信なんて微塵もありませんが、参考になるマインドが多数ありましたので活用していきたいと思います。
    顧客が気付いていない潜在需要を掘り出して製品を提案・・・これが出来るようになりたいものですね。



    【抜粋】
    1.キーエンスは、属人的な才能に頼っているのではない。
    とにかくめちゃくちゃ働く。キーエンスは仕組みと、それをやり切る風土がすごい。
    「人が成長し、成果を出すための仕組みを作り、その仕組みの中で社員たちが徹底的にやりきる」と言う組織の強さで、類を見ない高収益を実現

    2.商談のレベルを引き上げる「ロープレ」1000本ノック
    ロープレを実施するのは、新製品発表前などの特別なタイミングだけではない。
    10〜15分ほどで手短に、では毎日のように繰り返すのがキーエンス流。まるで歯を磨くように当たり前にやる。

    3.「商談から5分以内に書く」外報
    営業担当者は商談の前と後に必ず外報を記入する。どんな準備をしたか。どこを訪問してたりとあったのか。そして反応はどうだったのか。
    顧客とのやりとりをタブレットなどで入力し、上司と共有する

    時間が経つと主観が強まったり、細かいことを書くのが億劫になったりする。
    気づいたことをすぐに書き留めておけば、顧客が何を求めているのかが見えやすくなり、次の戦略を練るのにも役立つ。

    4.営業だってソフトを組める。
    キーエンスの社員は技術にも精通している。営業担当者でもちょっとしたソフト、プログラミングができる。
    キーエンスは営業担当者がなるべく個人で、現場で解決することを強く意識付けられている。

    5.営業は、顧客を訪問しているよりも社内にいる時間の方が長い。それだけよく勉強している。
    これが、商品の良さを理解していただくことにつながっている。

    6.全商品当日出荷、全商品在庫あり、「即納」
    驚くべきは、カタログに掲載している商品すべてを即納の対象としていること。
    10,000種以上ある製品の在庫を常時、例外なく持っていると言うのだ。
    在庫が増えるとキャッシュフローが減少する上、売れなかった在庫を廉価で販売したり処分したりすると利益率の悪化を招く。
    そのため「完全受注生産」と言う無駄な製品を作らずに済ますことを多くの製造業は重視してきたが、生産にかかる時間だけ顧客を待たせてしまうと言う課題がある。

    キーエンスは、なぜ在庫を積むのか?
    それは直近の利益よりも当日出荷が重要だと言う絶対的な優先順位があるからだ。
    キーエンスだったらすぐに持ってきてくれると言う他社にない価値を守り続ければ、商品の売値を維持でき、それが長期的な利益率向上につながると言う発想だ。

    7.なぜ徹底的にできるのか?
    それは、「人は油断するし、ラクをしたいと考えるもの」という“性弱説”に基づいている。
    だから、社員が何をしているのかをガラス張りにして、いい数字も悪い数字も見せる。
    やるべきことを、手を抜かずにやり切ってもらうためだ。



    【引用】
    センサーを活用し、顧客の工場に対する生産改善をコンサルティングする事業


    ・30代で家が建ち、40代で墓が建つ。
    とにかくめちゃくちゃ働く。
    キーエンスは仕組みと、それをやり切る風土がすごい。後輩の指導もしっかりするから、人が育たないわけがない。

    キーエンスは、属人的な才能に頼っているのではない。
    人が成長し、成果を出すための仕組みを作り、その仕組みの中で社員たちが徹底的にやりきると言う組織の強さで類を見ない高収益を実現している。


    p20
    ・訓練された営業担当者が常に需要を探り続け、チャンスと見たら電光石火で勝負をかける。
    こんなシェア奪取劇が世界中で起きていることを、キーエンスの業績がはっきりと示している。

    22年3月期の売上高は過去最高の7552億円で、10年前の4倍近くにまで拡大した。
    営業利益も過去最高で、売り上げに対する営業利益の比率はメーカーとして脅威の55.4%に達する。
    コロナでの投資抑制の影響受けて一時足踏みしたものの、ほぼ右肩上がりで成長続けてきた
    それも、営業利益率が50%前後と言う高い収益性を維持しながらだ。


    p20
    1974年の設立以来、主力にしてきたのはセンサーを中心とした業務用の電子機器。
    製造現場で異常を発見したり、生産性を高めたりするために使うものだ。
    工場の自動化(ファクトリーオートメーション)の進展とともに事業領域を広げ、バーコードなどを読み取るハンディーターミナルやロボットビジョン(ロボットと組み合わせて検査等に使うカメラシステム)などでも存在感を高めてきた。

    商品はハイスペック一辺倒ではなく、意外なものを組み合わせる斬新なアイディアを特徴とするものも多い。


    p40
    ・商談のレベルを引き上げる「ロープレ」1000本ノック
    ロープレを実施するのは、新製品発表前などの特別なタイミングだけではない。
    10〜15分ほどで手短に、では毎日のように繰り返すのがキーエンス流。まるで歯を磨くように当たり前にやる。


    p45
    週2日ほどの「社内日」は、例えば午前8時半に出社した後、午前中は電話やメール、オンライン面談などの顧客フォローをこなす。
    午後は商品の提案や外出アポ取り、見積もり作成などに充てる。
    電話は1日あたり30から80間ほどに及ぶ。

    週3日ほどある「外出日」には、1日後から受験の後を詰め込むのが当たり前。5件以上ないとそもそも外出が許されない。


    p47
    ・外報
    営業担当者は商談の前と後に必ず外報を記入する。どんな準備をしたか。どこを訪問してたりとあったのか。そして反応はどうだったのか。
    顧客とのやりとりをタブレットなどで入力し、上司と共有する

    外報記入の暗黙のルールとして、「商談から5分以内に書く」というものがある。
    時間が達人主観が強まったり、細かいことを書くのが億劫になったりするから。
    気づいたことをすぐに書き留めておけば、顧客が何を求めているのかが見えやすくなり、次の戦略を練るのにも役立つ。


    p62
    ・ハッピーコール
    営業担当者の上司が、顧客に対してフォローの電話をかけることをそう呼んでいる。
    部下がきちんと顧客のニーズを聞き出したのか、顧客にとって満足のいく提案ができたのかなどを確認するのが第一目的だ。

    フォローのつもりでかけたハッピーコールで、営業担当者の「サボり」が発覚することも…

    ハッピーコールを「監視」と捉えるか「サポート」と捉えるかは自分次第。
    良いことも悪いことも上司はよく見ている。キーエンスでは、嘘をつかないことが最も大切。


    p68
    ・営業だってソフトを組める。
    キーエンスの社員は技術にも精通している。営業担当者でもちょっとしたソフト、プログラミングができる。
    キーエンスは営業担当者がなるべく個人で、現場で解決することを強く意識付けられていると感じた。


    p75
    営業は、顧客を訪問しているよりも社内にいる時間の方が長い。それだけよく勉強しているのです。
    これが、商品の良さを理解していただくことにつながっている。


    p92
    ・顧客の「欲しい」それでは遅い。
    顧客が欲しいと言うものは作らないと言う価値観。
    どういう商品を開発するかを、お客さんから言われて決めているようでは、すでに遅いんです。
    顧客の要望通りのものを作っても、付加価値は高くならない。

    開発人は現在の市場の情報を把握した上で、顧客自身が気づいていないような潜在需要を掘り起こさないとダメです。
    他人から依頼された仕事をせず、自分から問題を見つけ、解決方法を探るようにもっていくのが、経営の重要課題だと思っています。


    p112
    ・全商品当日出荷、全商品在庫あり、「即納」
    驚くべきは、カタログに掲載している商品すべてを即納の対象としていることだ。
    キーエンスの商品は10,000種以上あるとされ、数千円から数万円の工場向けセンサーから1500万円ほどするマイクロスコープのような高価な商品まで幅広い。
    それらの在庫を常時、例外なく持っていると言うのだ。

    在庫が増えるとキャッシュフローが減少する上、売れなかった在庫を廉価で販売したり処分したりすると利益率の悪化を招く。
    そのため「完全受注生産」と言う無駄な製品を作らずに済ますことを多くの製造業は重視してきたが、生産にかかる時間だけ顧客を待たせてしまうと言う課題がある。

    キーエンスは、なぜ在庫を積むのか?
    それは直近の利益よりも当日出荷が重要だと言う絶対的な優先順位があるからだ。
    キーエンスだったらすぐに持ってきてくれると言う他社にない価値を守り続ければ、商品の売値を維持でき、それが長期的な利益率向上につながると言う発想だ。


    p134
    給与をモチベーションにできる社員が多く、自然と業績を上げるための行動に移すため、さらに業績が上がり、給料が上がると言う好循環が継続している。
    また、現状維持は悪いと言うフードのため、常にレベルアップをし続けたいと言う人材にとっては非常に働きがいのある会社。


    p192
    スーパーでお肉を焼いて売るように、技術営業が工場に来てデモをしてくれる。だからつい買ってしまう。


    p198
    単純に商品を紹介するスタンスだと門前払いになる。
    だから、どれだけ具体的な提案をして、具体的な反応が得られるかが大事になる。
    相手の話をよく聞いて、キーエンスが掲げる共通理念で勝負をしていく。


    p235
    ・「製販一体」の価値
    商品のことをよく知っている営業が顧客のコンサルティングをしながら、ニーズの裏にあるニーズを探る。
    企画や開発はその情報を参考にしつつ、顧客に提供する付加価値を最も大きくすることを追求した商品を開発していく。
    それが高い利益率の源泉だ。


    p243
    「普通じゃない」と感じる部分。
    それは、仕組みを作ったら、その仕組みが役立つように本気で運用を徹底するという、「最後の数センチメートル」の差だ。
    一言でいえば、手を抜かないのだ。そして、全員がそれをやる。

    なぜ徹底的にできるのか?
    それは、「人は油断するし、ラクをしたいと考えるもの」という“性弱説”に基づいている。
    だから、社員が何をしているのかをガラス張りにして、いい数字も悪い数字も見せる。
    やるべきことを、手を抜かずにやり切ってもらうためだ。

  • 当たり前とされることを当たり前にやる抜くこと。夢や理想を掲げるのも大事だが、基本を忠実に守る会社が正当に評価され、従業員は相応の対価を受け取り時価総額も高い。
    アメリカや中国のITに伍していく日本の勝ち筋はここなのではないかと感じた。

    日経ビジネス、いい本出しましたね。自分も基本を疎かにしないよう肝に銘じました。

  • 最近読んだ本で1番面白かった。
    他社でもやっていることをやっているだけだが、それを本気で活用しているところが違う。あとはロープレ。自分も真似したい。

  • ・端的にキーエンスの強さを表せば、仕組みづくりで脱属人化の極み。
    ・チャレンジャーセールスモデルで主張されていることと被っている要素がいくつかあった。(価格は購買ファクターではない、意思決定者は部下の同意を求める、営業担当は中間層を伸ばす、業界動向を教えることで顧客を教え導く=その分膨大な勉強量が必要)
    ・顧客が気づかない潜在需要を掘る。顧客が言う需要にはアプローチしない。
    ・目標が明確なことは前提として、進捗を全て行動KPIで徹底的に可視化する。(電話回数、顧客へのデモ回数、ロープレ千本ノック、商談面談は5分以内)。成果をもたらすKPIを選別し、性弱説に基づき、徹底的に監視。社員はその行動KPIを追わざる負えない。
    ・行動KPIを設定することで、属人化を徹底排除。システム化していく。行動KPIの設定は営業担当からの生データ(=報告書)から設定。どこまでも論理的。
    ・ロープレでは何を言うかを考えるわけではなく、本社の販売促進部門が決めた方針をどう言うかをトレーニングする。(ちゃんレンジャーセールスモデルと同じ)

  • 色々と参考になることが多い。
    経営層だけではなく、中間管理職層にも響くと感じる実例が多々出てきます。

    組織は人、を強く再認識させられる一冊。

  • 巻末のおわりににも書いてるけど、ユニークな制度があるというよりも、一貫する哲学があってそれが全ての制度に反映され文化になっているのが伝わってきて面白かった。営業利益率55%は伊達ではない(凄い)

  • 顧客の "潜在ニーズ"という言葉ひとつとっても、キーエンスのそれとは全く違った。ひとつの事柄の知識や行動力、洞察力など、その深さが同じ営業という職種から見て正直恐ろしい。とても厳しい環境で生きていく大変さは計り知れない。

  • キーエンスがなぜあんなにも高収益で高収入な仕組みになってるのかわかった

  • 学びが多かった。
    自分が就活をしてたころは、ブラック企業というイメージが先行してたけど、今や日本を代表する企業。チャンスがあれば働いてみたい!

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