1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録

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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296202553

作品紹介・あらすじ

政府・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長、唯一のコロナ手記。著者は世界保健機関(WHO)で西太平洋地域事務局長を務め、同地域のポリオ撲滅やSARS制圧に尽力した感染症対策の専門家だ。中国・武漢市で謎の感染症が発生したという話を聞いたときから「日本での感染拡大は時間の問題だ」という危機感を抱いていた。政府・厚労省に感染症対策の専門家は少なく、2020年2月に入って立ち上がった専門家助言組織では国がしようとしている政策について意見を聞かれたのみ。このままでは対策が間に合わないと「ルビコン川を渡る決意をした」。専門家たちは土日などに集まっては手弁当で勉強会を開催し、対策の提言を出した。その数は3年間で100本以上になった。それらの提言の裏に、葛藤があった。疫学データが足りない、政府と専門家の役割分担が不明確、社会経済活動と感染対策のバランスは? 一般医療とコロナ医療をどう両立するか。人々の価値観が多様で、唯一絶対の正解はない中で、どう社会の共通理解を見いだすか……。新型コロナ・パンデミックは日本社会に様々な問いを投げかけた。専門家のまとめ役として新型コロナ対策の中心にいた著者が、新型コロナの1100日間を自身が抱いた葛藤とともに振り返る。

感想・レビュー・書評

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  • 尾身氏、コロナ対策一線退く「葛藤の記録残したい」 政府が体制刷新 [岸田政権]:朝日新聞デジタル(有料記事2023年8月25日)
    https://www.asahi.com/articles/ASR8T6D5PR8TUTFK00C.html

    【独自】新型コロナ1100日とは何だったか…いま尾身茂が明かすコロナ対策の「自己検証」とは(広野 真嗣) | 現代ビジネス | 講談社(2023.09.23)
    https://gendai.media/articles/-/116678

    はじめに:『1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録』 | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/091900424/

    1100日間の葛藤 新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録 | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/23/09/06/00987/

  • あの新型コロナウィルス感染症の専門家会議のメンバーとして活躍された尾身茂さんの1100日間の記録。
    それは、政府と専門家とのお互いの立場での違う考え方で生まれる軋轢と緊張感。もとより政府を批判することではないが、無用に忖度するものでもなく、そのままでは感染が急速に広がる可能性があれば、やはり見解は示さねばならない。

    そのメンバーは疫学、ウィルス学、呼吸器内科、感染症、公衆衛生、医療社会、リスクコミュニケーション、法律、経済学と多様にわたっていた。
    「専門家は政府から聞かれた個別の課題に答える」という暗黙の了解のもとに推し進めるが、でも本来の敵のウィルスは外に居り、その未知なるモノが次々襲ってくる課題に悩み、大いに葛藤し続けた記録です。

    「感染拡大防止に向けた日本の基本戦略」は、「社会・経済機能への影響を最小限としながら、感染拡大防止の効果を最大限にする」でもその施策は時として対応の遅れ、強力なるリーダーシップの無さ、市民まかせの後ろ向きなる施策。政府と地方自治体との共創的連携不足。

    でも、一般市民の従順なる自発的協力により最低限に抑えることができた感染。医療崩壊を眼目にして辛うじて日本的と言えるギリギリのところで耐えきった。

    まあ、色んな課題が明白になっただけに、今後起きるべきパンデミックに対する対策を今から準備して欲しいですな。日本人の悪いところ、喉元過ぎれば熱さを忘れるにはしたくないですな。

  • 社会は許容できる死亡者数を決められるか…。
    あまりにも重い提言だ。どうしても出せなかったとはいえ、こんなことを検討しなくてはならないほど逼迫した状況を3年も戦い続けてくれた専門家の皆さんにまずは感謝したい、と本書を読んで思った。

    誰も最も最良と言える確かな判断を出来ない状況の中で、時には怒鳴り合いながら六時間以上も話し合うのはものすごい精神力や忍耐や体力も必要だったことと思う。
    そしてこれだけ詳細なデータややり取りを残しておくこと自体も必要とはいえ大変な作業量だったことと思う。
    よくぞこれだけの文章にまとめられたものだと思う。
    著者は常に矢面に立たされる立場だったことから世間から批判されることも多かったと思う。
    本書には感情表現はほぼなかったけれど(あえて記録に徹しようとする本書の著者のスタンスだったのでしょう)記録を掘り起こして書きながら、その時の辛さが耐え難かったことを思い出されたりしたこともそれはそれは多くあっただろうと文のあちこちで推察させられた。

    まだコロナは収束していっているとはとても言えないけれど、何十年後かにこの本の記録の価値を今以上に見直さなくてはならない時は必ず来ると思う。
    それは今のコロナ禍が終息を迎えたときかもしれないし(終息、するだろうか?)、新たなパンデミックに見舞われたときかもしれない。

  • 本書を読むと、特にコロナ禍の後半では政府の情報の取り扱いや意思決定が非常に軽かったのが目立ってくる。 日本ではこれまでも、そして現在も日々当たり前のように事前リークが行われているが、政治や行政では既成事実を作って物事を進めると言うのが1つの様式になってしまっているように見える。

    また実際には専門家に相談していないにもかかわらず、専門的な知識から決定したと言うのは、厳密には嘘のわけで、この辺もわが国の政治における言葉の軽さが如実に現れていると感じた。

    本書が書かれた理由の一つでもあり、専門家の奮闘を支える原動力の一つとなっていたが「対策は最終的には歴史が判断する」という価値観だ。言葉が軽い、あるいは情報の取り扱いが軽いという人の価値観はいわばその対局にあるわけで、究極的には「今を生きる」政治家や官僚と、「歴史の一部である」専門家たちの価値観と違いがそこにはあったように思う。もちろん個人的には、自分は後者にシンパシーを感じているのは言うまでも無い。

    一般的には「終わった」ことになっているコロナとの戦いがまだ続いていることを改めて思い出させるとともに、何があったのかを当事者が残す貴重な一冊になっている。

  • 議論されたことや様々な対策をきちんと検証して後世に伝えるために記録として残す、すばらしいです。

  • コロナ対策を振り返る尾身会長の手記。コロナ対策は必ずふりかえって置かなければならず、尾身氏は対策の中枢であった人。具体的なコロナ対策の記録という点でも価値があるが、このような困難な問題と状況で、きちんと文書を残し、粘り強くコミュニケーションをし、ときには苦言を呈し、内部からの反発もあったり、外部状況の急速な変化に対応したり、それを自分自身が悩みを含めて語っているところに価値がある。専門家としてのリーダーシップのあり方を示した。

  • 先生に対してお礼の言葉以外になにがある?

    ・葛藤は避けるのではなく、突き詰める。
    わからないこと、もやもやしていることがあると、つい避けたくなる。逃げたくなる。そこをこらえて突き詰めることで、道が開ける。まさに。

  • 背ラベル:498.6-オ

  • 『1100日間の葛藤――新型コロナ・パンデミック、専門家たちの記録』
    著者:尾身茂
    価格:1,980円(税込)
    ISBN:9784296202553
    発行日:2023年09月25日
    発行元:日経BP
    ページ数:408ページ
    判型:四六判

    政府・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長、唯一のコロナ手記。

    著者は世界保健機関(WHO)で西太平洋地域事務局長を務め、同地域のポリオ撲滅やSARS制圧に尽力した感染症対策の専門家だ。中国・武漢市で謎の感染症が発生したという話を聞いたときから「日本での感染拡大は時間の問題だ」という危機感を抱いていた。

    政府・厚労省に感染症対策の専門家は少なく、2020年2月に入って立ち上がった専門家助言組織では国がしようとしている政策について意見を聞かれたのみ。このままでは対策が間に合わないと「ルビコン川を渡る決意をした」。専門家たちは土日などに集まっては手弁当で勉強会を開催し、対策の提言を出した。その数は3年間で100本以上になった。それらの提言の裏に、葛藤があった。

    疫学データが足りない、政府と専門家の役割分担が不明確、社会経済活動と感染対策のバランスは? 一般医療とコロナ医療をどう両立するか。人々の価値観が多様で、唯一絶対の正解はない中で、どう社会の共通理解を見いだすか……。

    新型コロナ・パンデミックは日本社会に様々な問いを投げかけた。
    専門家のまとめ役として新型コロナ対策の中心にいた著者が、新型コロナの1100日間を自身が抱いた葛藤とともに振り返る。
    [https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/23/09/06/00987/]

    【目次】
    第1部 パンデミックと専門家
     第1章 葛藤の始まり
     (1―1)武漢の第一報、そのとき何を考えたか?
     (1―2)ルビコン川を渡る
     第2章 専門家とは?
     (2―1)正解のない中での勉強会
     (2―2)私を含むメンバー同士の衝突
     (2―3)私の風変わりな経歴と与えられた役割
     (2―4)役割の異なる専門家組織
     (2―5)専門家集団が直面した壁
     第3章 専門家の最も重要な役割
     (3―1)なぜ100を超える提言を出すことになったのか
     (3―2)政府の諮問にどのような心構えで臨んだか
     (3―3)“エビデンス”を得る困難さの中で

    第2部 提言の裏にあった葛藤
     第1章 試行錯誤
     第2章 長期戦の覚悟
     第3章 緊急事態宣言の発出を避けたい。しかし……
     第4章 史上初の無観客五輪を提言
     第5章 八方ふさがり
     第6章 これまでと全く異なるオミクロン株の出現
     第7章 日常に戻す議論
     第8章 異なる景色
     第9章 日本はエンデミック化に向かうか

    第3部 新型コロナが投げかけた問い
     第1章 未知の感染症ゆえの苦労
     (1-1)したたかな感染症
     (1-2)なぜクラスター対策?
     (1-3)専門家は検査を抑制しようとしたのか
     (1-4)なぜ医療の逼迫が頻繁に起こったか
     第2章 政府との関係における難しさ
     (2-1)政府とどんな交渉をしたのか
     囲み 諸外国の専門家組織について
     (2-2)提言に対する政府の6つの対応パターン
     (2-3)各政権期における提言の採否
     第3章 誰が市民に伝えるのか
     (3-1)専門家が「前のめり」に見えた理由
     (3-2)新型コロナ対策におけるリスコミの難しさ
     (3-3)専門家が「前のめり」になったために起きた問題
     第4章 葛藤の果てに
     (4-1)皆が大変な思いをした
      囲み 諸外国との累積死亡者数の比較
     (4-2)社会は許容できる死亡者数を決められるか
     (4-3)パンデミックが引き起こした「分断」
     (4-4)葛藤のもう一つの意味
     (4-5)感染症危機に強い社会へ

    付表1:専門家助言組織や勉強会に参加した専門家リスト
    付表2:新型コロナ対策分科会やアドバイザリーボードなどに出した主な提言、および、基本的対処方針分科会などにおける様々な意見の概要
    提言に根拠はあったのか
    グラフ:日本の新型コロナ感染者数、死亡者数の推移

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