ブランディングの誤解 P&Gでの失敗でたどり着いた本質

  • 日経BP (2024年12月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (300ページ) / ISBN・EAN: 9784296205486

作品紹介・あらすじ

「ブランディング」という言葉ほど、多くの誤解をはらんでいるマーケティング用語はありません。

最大の誤解は「ブランディングをすれば売り上げが上がったり、業績が回復したりする」という過剰な期待にあります。ブランディングの成功例として必ず挙げられ、広告業界で伝説的と称される米アップルの「1984」や「Think different.」ですら、業績への影響はほとんどなかったことをご存じでしょうか。

そうした過剰な期待を抱きながら、ブランディングの成果を業績と直結する指標できちんと効果分析されているケースは非常に少ないのが現状です。

ブランディングが、事業成長のために行うマーケティング活動の一つであるならば、当然ブランディングの成功は、事業成果に反映されるべきです。「ブランドが強い」「ブランディング投資をした」と話す一方で、売り上げや利益につながらないという事態は本来あってはならないはずです。

にもかかわらず、ブランディングの領域は依然として評価が難しいとされ、まるで芸術分野のように扱われ、ビジネスへの直接貢献の議論が許されない聖域になりがちです。

「ブランディングは効果測定ができない」

これも、大きな誤解の1つです。

筆者もプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に所属していた20代のころに、「ブランディングの誤解」による数多くの失敗を経験しました。

ブランディングの測定指標にも悩みました。一般的にブランディングの指標としては認知度、好感度、NPS(ネット・プロモーター・スコア)などがよく使われます。ただ、これらの数値が高くなっても、必ずしも事業がうまくいくわけではありませんでした。ずっと「ビジネスの今後を予測できるような先行指標がほしい」と考えていました。

そうした、筆者が経験してきた数多くの失敗と成功の末に導き出した、「実務で使えるブランド論」や「ブランディングの測定指標」を分かりやすく説明し、すべてのマーケターが明日から使える知識として身に付けられるようにまとめたいと考えました。

本書では、既存のブランディング論やブランド論に関する解説は最小にし、数々の有名な巨大ブランドがつくり出す誤解や罠の解説を含めて、具体的な事例を用いて、ブランディングの効果を最大化するための考え方を紹介。どのように目的を設定すべきか、中小企業が目指すべきニッチブランドとは何かなど、誰もが実務活用できる「ブランディング」を解説します。

感想・レビュー・書評

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  • まずはモノやサービスの良さを高め、人を中心に置いて広げていく。

    ブランディングという概念は誤解されがち。アップルなど印象的な広告を出しても売上に繋がってないことなども盛り込みつつ、じゃあどのようにブランディングすれば良いかを、本書は問うてくる。

    印象的だったのは、4Cの中心に本来は人を据えるということ。今は欠けて紹介されるため、人(顧客)を考えずにプロモーションなどしてしまうのは、あらためて聞き腑に落ちた感じがある。 顧客の声に耳を向けるで,前に読んだN1分析も入ってきて、あらためて繋がりを感じることができた。

  •  ブランディングの主たる目的は、商品・サービスを売るためではなく、あくまで商品・サービスを記憶し、識別しやすくするためのものです。ブランディングそのものが、買ってもらうための「便益」になるわけではありません。
     BtoC(消費者向け)、BtoBを問わずほとんどのカテゴリーにおいて、購入される理由、継続的に購入してもらえる理由は機能的な便益や独自性です。ブランディングとしての記号化は、それらの便益や独自性を競合や同類から区別するものです。
     ブランディングは、付加的な価値として情緒的、感情的な好感度を生み出すことはできますが、好感度だけでは購入にはつながらない可能性が高いことを理解しておく必要があります。そもそもの商品・サービスの便益や独自性が弱ければ、ブランディングに大きな投資をして、ブランドに対する好感度などを向上させられたとしても、継続的な購入にはつながりません。


     筆者が所属していたプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)でも、1990年代から、ブランドエクイティの概念はマーケティングに導入され、活用されていました。ですが、厳密な調査を土台に運用されていました。
     具体的には顧客が実際に認知しているブランドのイメージである結果としての「ブランドエクイティ」と、企業視点で顧客に認知してもらいたい期待としての「デザイアード・ブランド・エクイティ(望ましいブランドエクイティ)」を分類して運用していました。
     しかし、多くの企業では、このような区別はなく、「顧客が既に持っているイメージ」「企業が発信するイメージ」「企業として顧客に期待するイメージ」「売り上げや利益に貢献するイメージ」「売り上げや利益に貢献しない(するかどうか分からない)イメージ」などが一緒くたにされ、無用な混乱と誤解が起こっています。
    「ブランディング」とは、BRAND=あるべき姿を規定し、形にし、ING=あらゆる活動を通じてそれを伝達、浸透させることです。
     ブランド・マネージャー認定協会によれば「ある特定の商品やサービスが、消費者・顧客によって『識別されている』とき、その商品やサービスを『ブランド』と呼ぶ」とされています。
     つまりブランドとは、消費者や顧客から自社の商品・サービスが、他の企業の商品・サービスとは「違うもの」として認められることで成り立つものです。ですから、ブランディングとは単に認知を高めることではありません。
     アップルをはじめ、現在成功しているブランドの多くが独自性のあるロゴやネーミングをつくり、最初から消費者や顧客が識別しやすくしていたという点は重要です。ですが、必ずしも、それが直接的に売り上げを上げたり、顧客を増やしたりする要因にはなっていません。
     自社の商品・サービスと他社のものとが明らかに区別されること、消費者や顧客に「その企業ならではのもの」として認識させるための取り組みがブランディングです。そこでは、自社が伝えたい企業や商品の価値と、顧客が購入したり、使用したりするにあたって必要とするイメージを一致させることが大切です。
     他社と区別できると、集客、販促、PRといったマーケティング全域において優位性を保つことができます。「このカテゴリーなら、このブランド」といったイメージを定着でき「顧客から選ばれやすくなるため、市場競争力が高まります。


    ブランティングの3つの目的
    ①プロダクト(商品・サービス)の記憶化と想起性の確立
    ・顧客が価値を見いだす機能的な「便益」と「独自性」の特定
    ・価値となる機能的な「便益」と「独自性」の記憶化と想起性の確立
    ・商標の法的保護
     →購入の継続性
    ブランディングがもたらす6つの効果
    (1)競合からの区別化
     ブランドネームやロゴ・意匠などで、他競合とは区別されて認識されるようになる。
    (2選択意思決定の単純化・固定化
     顧客の認知が整理されることで、再び同じ物を選ぶようになる。
    (3)顧客のロイヤル化
     商品・サービスの便益と独自性が記憶され、ブランドロイヤルティー(継続購入、購入頻度、購入単価)が形成される。
    (4)価格優位性の獲得
     同じ品質・スペックの商品について、競合よりも高い価格で販売が可能になる。
    (5)価格競争の回避
     「顧客にとっての価値」を無視した価格競争に参加する必要がなくなる。
    (6)プロモーションコストの削減
     (1)~(5)の結果、販売促進のコストを低下させられる。

    ②情緒的・心理的価値の提供
    ・機能的な便益と独自性に付加する、「情緒的・感情的な便益と独自性」
     →付加価値の創出

    ③インナー、モチベーション、リクルーティング
    ・ビジョニング、モチベーション、リクルーティング


    ブランディング実施の3つのステップ
    ステップ1:商品・サービスの便益と独自性の明確化
    ステップ2:その便益と独自性を「誰に」伝えたいのかを、カスタマーダイナミクスのフレームワークを用いて明確化する
    ステップ3:対象者に便益と独自性を伝える上で最も適切な施策を検討する


     そこで、NPIの優位性を検証するため、M-Forceとマクロミルで6カテゴリー・ブランドに対する調査を実施しました。調査では対象カテゴリーとブランドのそれぞれで、20年12月に実施した調査で取得した認知度、満足度、好感度、NPS、NPI、半年、1年が経過した後の金額シェアの相関を調査しました。これらのマーケティング指標と市場シェアを、半年後、1年後でそれぞれで比較して相関関係を分析しています。相関性が高いほど、未来の市場シェアを予測する有効な先行指標だと言えます。その調査結果が上表となります。数値が1に近づくほど、相関性が高くなります。
     半年後、1年後の市場シェアとNPSを比較した結果、相関係数は0.276と最下位でした。これは、NPSが高くても、顧客自身がその商品やサービスを継続的に購入するかどうかには大きく影響しないことを示しています。
     一方で、NPIは市場シェアとの相関性が高く、1年後の相関係数は0.713と最も高い数値を示しました。これは、NPIが市場シェア拡大の先行指標として有効であることを示しており、ブランドの強さや成長性を見極める上で重要な指標として活用できることが証明されています。さらに、u-NPIについても同様に、リピート率や購入頻度と強い相関を示しており、NPSとは対照的に、実際の購入行動に密接に関連する指標であることが明らかになっています。



    NPIの割合:高、u-NPIの割合:高
    ・既存顧客の維持率が高く、継続的な利益の獲得が見込める
    ・かつ、市場全体の購入意向も高いため、新規顧客の獲得がしやすく、CPA(顧客獲得単価)も低く抑えられる
    ・既存顧客の離反を上回る新規顧客獲得と高い定着率が見込める理想的な状態

    NPIの割合:高、u-NPIの割合:低
    ・既存顧客のリピートが見込めず、一過性の消費になりやすい
    ・市場全体の期待は高いため、一定の新規流入は見込めるものの、離反しやすく顧客の入れ替わりが激しい
    ・広告やPRに多額を投資し、市場の期待は高めたが、商品自体の魅力が薄い場合に起こりやすい

    NPIの割合:低、u-NPIの割合:高
    ・既存顧客の維持率は高いため、一定期間は継続的な利益の獲得が見込める
    ・市場全体での購入意向は低いため、CPAは高くなる傾向があるが、一度購入されれば定着する可能性は高い。未購入層のNPIが低いままだと、ニッチ化する可能性がある

    NPIの割合:高、u-NPIの割合:高
    ・既存顧客のリピートが見込めず、新規顧客の獲得も期待が薄い
    ・市場全体の期待が低いため、新規顧客獲得と既存顧客の維持の両方に大きな課題がある


    中小企業のブランディングの基本的な戦略
     1つめは、「自社の商品・サービスに備わっている強い便益と、他の選択肢を選ばない独自性を定義する。そして、その価値を見いだす顧客を特定し、その顧客層に絞り込み、愚直に提案し続ける」こと。そして、2つめは「価値を見いだしてくれるかどうかが分からない不特定多数に提案するような施策や投資は避ける」ことです。

  • ブランドとあれこれ。
    ブランドコミュニケーションに偏る昨今。
    自分自身のブランドとはなれたブランド

  • 【販促にお金をかけるか、ブランディングにお金をかけるか】美味しくなれば売れるだろう!と踏んだコーラは昔、"ニュー・コーク"を売り出して失敗したらしい。失敗から学ぶ、ブランディングの基礎本、それが本書です。

    マーケ起点で一貫して物事を考えているので、かなりロジカル。明日から仕事に活かせるし、誰にでも真似できる手法。でもわたしは、潜在的な欲求を掘り起こして人間の本能に働きかける、ジョブス的圧倒的クリエイティブにめちゃくちゃ憧れがあるので頭の隅にだけ置いておきます。笑

    point
    ・独自性は言い換えれば、他の商品やサービスを買わない理由
    ・企業の多くが自分たちが伝えたいこと、売りたいことが顧客にとっての価値だと思い込んでいる
    ・大事なのは、便益や独自性を通じてどんなイメージを形成したいか
    ・そのイメージは顧客が求めるものと乖離はないか

  • ブランディングの目的を見失った時に読みたい本

  • いかにもP&G卒業生らしい内容だった。データを基にするのは分かるが、そのデータの信憑性はどう担保するのかは書かれておらず、著者は分かっているが、鵜呑みにする人はハマるであろうと推察。かなり頭が良くないと言われていることは真似できないと感じた。

  • ブランディングとマーケティング。広告業界では当たり前のように使用される概念だが、その実ピントハズレな議論になりがち。そこのところを上手くまとめていると感じた。

  • ブランディングの独り歩きの手前で、商品を手に取ってもらうのに最も大切なのは前書に引き続き「便益」と「独自性」。

    個人的にはなぜリブランディングするのか?の章が印象的。

    たしかによく企業がリブランディングしますというのを見るが、顧客視点だと何で?必要?となることが多い。
    ただ企業目線だと長く売っている製品の売上が下がると、「製品は良いはずなので、見飽きられた?ブランドを刷新してインパクトを与えるべき?」など考えてしまいそう。
    この企業と顧客のギャップが、失敗を生んでるんだなぁと実感できた。

    誰のために何の価値を提供したいか。
    ブランディングとは、価値の記憶化と想起率を上げるための活動。

  • 著者の本はわかりやすい。ブランディング流行りに、くぎを刺す一冊。ブランディングの基本は独自性=「他を買わない理由」、適切性=「そのブランド買う理由」と説く。DifferenciationとRelevancyという以前に習ったことがそのまま書いてあり納得。さらにそこから好感、ファンになっていくという習ったことばでいうとEsteemにも言及されている。マーケティング、ブランディングにかかわる人にはお勧め。

  • 3. 目的が明確でなければ、ブランディングへの投資は、高い確率で無駄になります

    19. 一般的な消費財やBtoB事業の場合、情緒的なスタイルやデザインの商品を作ったら、物が売れるかというと必ずしもそうではありません

    20. ブランディングとしての記号化は、それらの便益や独自性を競合や同類から区別するものです

    33. 「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」byコトラー

    34. ブランドという言葉は、「牛の焼き印」が語源だといわれています。農家が他者の牛と自分の牛を識別ふるための印です

    35. アーカー氏はブランドエクイティを、次のように定義しています
    「ブランドは組織から顧客への約束」「顧客の中で生まれるイメージの総体」「ブランドエクイティとは、ブランドの名前やシンボルと結びついたブランド資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大(あるいは減少)させるもの」

    37. 「ブランディング」とは、BRAND=あるべき姿を規定し、形にし、ING=あらゆる活動を通じてそれを伝達、浸透させること

    46. 顧客は何を基に商品を購入しているのでしょうか。答えは商品・サービスの持つ具体的な「便益」と「独自性」です。便益は言い換えれば「買う理由」です。独自性は言い換えれば「他の商品・サービスを買わない理由」です

    52. 「鼻セレブ」は商品としての機能的な便益、すなわち圧倒的なやわらかさをネーミングが伝え、実際に使用して実感しているから選び続けているのです。実質的な機能便益に加えて、「凄くやわらかいティッシュである」と識別しやすくするネーミングがブランディングです

    54. その商品・サービスがなくなると何が困るのか。どういうとき、どの場面で困るのか、それが商品の便益が価値となる場面です

    55. うまくいっていない企業の多くが自分たちが伝えたいこと、売りたいポイントわ、便益と独自性だと思い込んでいるという事実。それは実際に顧客が価値を見い出すものと異なっているケースが多い

    70. 「ブランドイメージ」とは一般的には、顧客がそのブランドをどのように認識するかを形成・維持し、時には修正するプロセスとされています。形成・維持のためにはブランドを定義し、ブランドのメッセージやビジュアルを一貫させ、全てのマーケティングチャネルを統一されたコミュニケーションが重要だとされています

    70. 「ブランドアイデンティティー」は、企業起点の「こういうブランドでありたい」「こう思ってほしい」という願望です。企業がブランドをどのように位置づけ、表現しようとしているかについての内部的な観点です

    71. アーサー氏は、ブランドエクイティを「ブランド認知」「知覚品質」「ブランドロイヤルティー」「ブランド連想」「プロプライエタリアセット(独自の資産)」の5つの要素に分解します。これを管理することで、企業は競争優位を築き、長期的に古客基盤を保持し拡大することが可能だとしています

    78. どのようなカテゴリーや商品で成功して、失敗したのかをきちんと分析することでブランド育成の過程が分かります

    81. どんな便益と独自性を、どの顧客層と結びつければ価値が生まれるのか、その便益、独自性と顧客層の複数の組み合わせを合算したブランドエクイティの枠をどのように設定するかは経営層として、非常に重要な意思決定です

    81. 経営層や上司が誤ったブランドエクイティにこだわり、それが購入理由になると信じ込んでいる場合には、まず、本当に購入につながっているのかどうかを事実として検証すべきです

    87. ブランドエクイティは固定的なものとして見るのではなく、変動するものと捉えることも重要です。ブランドエクイティとは単に一つの特徴やイメージに限定されるものではなく、様々な顧客が商品・ブランドに対して見出した多様な便益や独自性などのイメージの集合体です。固定せず、「変化し続ける枠」として捉えるべきでふ

    93. 想起性は、そのプロダクトを識別する記憶が、その顧客が価値を見い出す商品・サービスの便益と直結していなければ意味がありません

    95. 識別記憶と想起性の強化により、顧客の初回購入から、継続購入に至る選択プロセスを簡素化し、商品選択の失敗のリスクを減少させることが目的です

    105. ブランディングは、直接的な売り上げの向上を目指すだけでなく、商品・サービスや企業の存在意義を通じて、社内外のモチベーション強化や優秀な人材の獲得に貢献することも可能です

    107. ブランディングにおいて重要なのは、目的の違いを理解した上で、今、自社が何を求めて、何を優先するために、何をブランディングの主目的とすべきなのかを明確にすることです

    109. ブランディングにおける最大の問題は、目的設定と前提となるべき顧客理解の不足にあります

    109. ブランディングの活動を行うに当たって、既存顧客(ロイヤル顧客、一般顧客)、新たに獲得したい潜在顧客(離反顧客、潜在的な非顧客)の誰を対象とするのか。また、どれくらいの割合に、いつ、どれくらいの時間で、認知され、体験してもらいたいのか。それにより心理状態を変えて、顧客の行動(購入行動、購入頻度、購入量)をどのように変化させたいのかといった計画は必須です

    110. カスタマーダイナミクス。様々な施策や商品体験をへて、顧客の心理状態は変わり続け、行動が変化します。その結果、徐々に購入の頻度や単価が上がってロイヤル化することもあれば、静かに変化することもあります。この変化のこと。
    「9segs」で管理します。商品・サービスの認知の有無、購入の有無、現在の購入頻度などで顧客層を9分類します。その分類に沿ってマーケティングで投資すべき顧客層を明確化し、マーケティング戦略の立案に生かすためのフレームワークです
    商品・サービスを優先的に選択する意向の高低で「積極」「消極」の2分類します

    115. ステップ1:商品・サービスの便益と独自性の明確化。ステップ2:その便益と独自性を「誰に」伝えたいのかを、カスタマーダイナミクスのフレームワークなを用いて明確化する。ステップ3:対象者に便益と独自性を伝える上で最も適切な施策を検討する

    115. 「パンテーン」は「プロビタミンB5」という成分を具現化した黄色の透明な粒を活用したコミュニケーション施策が有名だが、このプロビタミンB5は「パンテノール」と呼ばれる成分で、その成分を特徴として生まれてきたブランドです。ですが、パンテーンを継続購入するロイヤル顧客層の調査をする中で、パンテノールという成分に対する認知度の低さが浮き彫りになりました。他の製品とは何か違うとは実感してくれてましたが、パンテノールの便益と独自性については伝わっていなかった。一方、調査の中でビタミンという言葉に、非常にいい印象を持たれるロイヤル顧客が多いことを発見しました。この発見から、プロビタミンB5という名称に変更することを思い付きました

    120. 新しいアイコンは新規を獲得する上でも決して優位ではないのです

    137. 事業とは新規顧客を増やしながら、既存顧客の継続率を向上させ、離反率を下げることで、積み上げ式に成長するもの

    178. リブランディングの目的が低調気味なブランドをてこ入れして、売り上げを上げることだとしても、明確な顧客イメージや何を便益と独自性とするのかのイメージを持たず、闇雲にブランド名やロゴを変えたり、プロダクトの中身を変えたりすることはむしろ悪手です。既存顧客が対象のブランドを想起出来なくなり、むしろ離反率の増加を招く恐れがあります

    185. ロングセラーブランドになると、徐々に売り上げが低下するケースがあります。この課題は、大きく2つの問題点が理由であることが多いです。一つは強い競合が現れて「既存顧客の離反率が高まるケース」。もう一つは「新規顧客が取れなくなるケース」

    194. 「マーケティング」とは「顧客への価値の創造」

    194. 「ブランディング」はあくまで、マーケティングの一手段

    198. マーケティングとは、「価値を創造し、得た利益を再投資して、価値を再創造する活動」。ブランディングとは、「創造した価値の記憶化と想起率を上げるために行う社内外への活動」

    200. マーケティングやブランディングという言葉を一度忘れて、自分たちが誰のために何の価値を提供したいのかという目的で議論するという発想

    202. マーケティングにしてもブランディングにしても、必ずWHOとWHATに関する目的ベースで会話すべきです。
    現状の課題は何で、達成したい目的は何か。どのような顧客(WHO)に対して、どのような便益と独自性(WHAT)を届けないのか

    204. P&G→プロタクター・アンド・ギャンブル。
    「SK-Ⅱ」を1991年に買収したときは、まだ売上高が数十億規模の日本中心のローカルブランドでした。しかし、P&Gは、SK-Ⅱの天然由来成分「ピテラ」(独自性)による強いスキンケア効果(便益)に対して、ロイヤル顧客の多くが価格の高さをいとわず評価し、象徴的なローションの圧倒的なリピートにつながっていることに着目。さらに、このような顧客層が潜在的に大きく存在することに気付きました。その潜在的な顧客(WHO)に、SK-Ⅱが提供できる強力なスキンケア便益と独自性(WHAT)を提供するために、積極的なマーケティングとブランディングを実行し、結果として1000億円を超えるグローバルブランドへと成長させました

    205. 多くの場合は誰(WHO)にとって、何(WHAT)が購入や継続購入の動機になっているのかが曖昧なまま、売り上げが下がっている、利益が減少した、顧客の不満が増えているという事実に振り回されています

    219. 価値を見い出すかどうか分からない不特定多数の顧客層への投資は、顧客獲得において、得てして、価格競争に陥りがちです

    220. 中小企業のブランディングの成否は、「いかに、自社の商品・サービスに価値を見いだしてぬれる顧客層を特定するか」にかかっています

    225. 3日間の函館旅行の間に多くの観光名所、海鮮を楽しみましたが、結局、最も記憶に残ったのはラッキーピエロでの体験でした。函館に期待していた観光や海鮮は、ある意味想定通りで、ラッキーピエロだけが、予想外だったため、強く記憶に残ったのです

    230. 東京で何番目というより、地方でオンリーワンになることが面白いと思うんですね byラッキーピエロ会長

    230. 観光客に人気があるだけのお店は成立しません。我々が観光で行くのは地元で本当に美味しくて楽しいから。だから地元の人に拍手喝采してもらえないと、観光客はいらっしゃらないと思うんです byラッキーピエロ会長

    233. お客様な飢え死にするから食べに来ているのではなくて、私どものお店が美味しくて楽しいから来ていただけるのだと思っています。だから、帰る時にはもっと幸せになってほしい、そういうイメージで仕事をしています。 byラッキーピエロ会長

    234. 私どもは何を売っているのかと言ったら、それを食べてくださる体験、面白さ、それを周りで見る可笑しさ、愉快さをお売りしているんです。私どもは、チェーン店部門から考えるとメニューが多すぎるし非効率的です。ですが、私達は常にお客様と美味しい事、楽しい事を共に分かち合いたいし、考え願っています。私は美味しさだとか良い仕事というものは、結局愛と愛が重なりあってできるものだと思うんです。 byラッキーピエロ会長

    238. ヤッホーの創業は1997年。長野県軽井沢町にて星野リゾートの代表である星野佳路さんが設立しました。日本ビール市場は大手メーカーによるラガービールが主流でしたが、星野さんはアメリカン・ペールエールというフルーティーな香りのビールを選択しました。これがよなよなエールの特徴を際立たせました

    246. 中小企業ブランディングの基本的な戦略は2つ導き出せます。1つめは、「自社の商品・サービスに備わっている強い便益と、他の選択肢を選ばない独自性を定義する。そして、その価値を見い出す顧客を特定し、その顧客層に絞り込み、愚直に提案し続ける」こと。2つめは、「価値を見いだしてくれるかどうかが分からない不特定多数に提案するような施策や投資は避けること」

    257. エクスチェンジというのは、売りたい人と買いたい人の利害を一致させ、売り買いを成立させることが根底にあります。マーケティングは顧客のニーズを優先的に考えることで、この利害の一致という問題を解決していくことだと理解しています

    259. ブランド戦略は「経営」「マーケティング」「コミュニケーション」の3つの層から成りなっている

    280. シュルツはカフェを始めた当初は店内の音楽をオペラにして、メニューの表記をイタリア語にしていました。ですが米国の顧客とイタリアの顧客では、居心地の良さを感じるポイントが異なります。そので改善を加えていき、今のスタバの姿になったと本人の著書に書かれています。ブランドとはそういう色々な失敗をへて、徐々につくられているのはその通りです

    282. ニューバランスのブランドの起源をたどったところ、靴の補整器具(インソール)にありました。1906年の創業時、創業者は靴をつくったのではなくて、労働者が働きやすくなるために、既製品の靴を顧客の足に合わせるための補助から、事業を始めていたのです。創業から50年以上たち、ようやく靴の製造に入ったのは1960年代です

    284. ロクシタンの創業者はもともとアーティストてました。エッセンシャルオイルをかわいい小瓶に詰めてギフトとして売ることから始めたものの赤字続きでした。その後、絵の具のチューブにハンドクリームを入れたらかわいいというアイデアを思いつき、売り出すと、それが大当たりしました。お土産として大人気となり、さらに共同創業者が加わり、投資を加速して世界中で大きく売り上げを上げました

  • 私が西口さんのファンなので、果たして公平に評価できているか不明だが、今回の書籍も大変面白かった。
    ブランディングの目的をお忘れではないですか? というお話だと解釈した。いつものN1の観点からブランディングへの見解を示している。
    そもそもブランディングには商品やサービスに便益と独自性が必要というお話には全く同感だ。
    西口さんの書籍からは、いつも顧客視点の大切さを再認識できる。私にとっては、繰り返し読みたい大切な1冊になりそうだ。

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著者プロフィール

1990年大阪大学経済学部卒業。P&G入社後ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。2006 年ロート製薬入社、執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。2015 年ロクシタンジャポン社長就任。2016 年にグループ最高利益達成、アジア人初のグローバルエグゼクティブメンバー、退任後、社外取締役。2017年スマートニュースに日本と米国のマーケティング担当執行役員として参画。2年で累計5000万ダウンロード、時価総額1000億円超のユニコーン企業化に貢献、退任後、マーケティング戦略顧問。2019年に「顧客起点マーケティング」(翔泳社)を出版。発行部数5万部を超え、台湾、韓国、米国でも翻訳される。2021 年8月現在、Strategy Partners 代表取締役。経営改革、マーケティング改革の支援を行うM-Forceの共同創業者。

「2021年 『マンガでわかる新しいマーケティング 一人の顧客分析からアイデアをつくる方法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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