日本の音楽は世界への壁を越えられるのか マネジメントのはなし。2

  • 日経BP (2024年12月13日発売)
3.67
  • (3)
  • (2)
  • (3)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 54
感想 : 3
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784296206612

作品紹介・あらすじ

社長・SKY-HIの挑戦をたどれる“ドキュメンタリー本”


2020年9月、わずか数人でスタートしたBMSG。創業から4年の間に、BE:FIRSTはドームアーティストに成長、2つ目のグループとしてデビューしたMAZZELはアリーナに進出し、各ソロアーティストも存在感を高めている。今やスタッフは約80人、今年は自社ビルを購入するなど、設立以来のビジョンを次々にかなえてきた。

本書は所属アーティスト、スタッフともに増え、業容を拡大してきた2023年~2024年のBMSGの歩みをリアルに記録した“ドキュメンタリー本”。挑戦を続けるSKY-HIが折々で何を大切にし、どう判断してきたのかを克明に語っている。月刊誌『日経エンタテインメント!』の連載のほか、急成長したこの2年を改めて振り返った書き下ろしも収録する。

今や音楽界の枠を超え、次世代リーダーとしてビジネス界からも注目の存在となったSKY-HI。会社が急速に大きくなるなか、スタッフとどうコミュニケーションを取り、組織をどうやって運営してきたのか。次の世代のアーティストとそれを支えるスタッフをいかに育成したのか。そして、レーベル/マネジメントの存在感を高めるためにどんな試みをしてきたのか。本書で明らかにされるSKY-HIの経営者/リーダーとしての足跡には、ビジネスのヒントが数多く見つかるはずだ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第二弾。

    前作より音楽業界について詳しく知ることができました。
    アーティストの面しか知らなかったですが、いろいろ考えて行動していて、すごいと思いました。

  • 選書番号:582

  • 概要:
    提示された複数のBMSG社長 SKY-HIのインタビュー記事から、彼の経営哲学、音楽業界への問題意識と改革への強い意志、BMSGのビジョンと戦略、所属アーティストへの想い、そして今後の展望について詳細にレビューします。SKY-HI自身の言葉を引用しつつ、記事全体を通して見られる主要なテーマと重要なアイデアや事実を抽出します。

    主要テーマ:
    カリスマ性と風通しの良い組織運営の両立:
    起業当初、SKY-HIはアーティストとの関係において、上下関係を感じさせないコミュニケーションを重視。「アーティストに対してはその接し方は今後も変わらない」と述べています。
    一方で、組織が拡大し多様なバックグラウンドを持つ人材が増えたことで、社内においては「社長に怒られたくないっていうテンションを始めてもいいのかもしれない」と感じ始めています。「今までの会社でやってきたこととBMSGって、そもそも違うんです」という認識を強く持ってもらう必要性を感じているためです。
    フィジカルなコミュニケーションの重要性:
    自社ビル設立の意義として、アーティスト、スタッフ、SKY-HI自身が一箇所に集まることの重要性を強調。「顔を合わせる回数が多いことのメリットの大きさについてはGoogleなどでも言われてましたが、リモートワークを止める会社が増えましたよね。コストを抑えてそのぶんを別の投資に回すことが効率的とされ、コロナ禍を機にその流れに拍車が掛かりましたが、やはり顔を合わせることでしか生まれないものの効果の大きさを痛感しているところです」と述べています。
    ダンススタジオ、レコーディングスタジオ、会議室などが同じビル内にあることで、偶発的な出会いや交流が生まれ、新しい関係性が構築されることを期待しています。サウナもその一環として、反対意見もあったものの、グループやソロアーティストの垣根を超えた交流の場となっていることを紹介しています。
    BMSGの独立性と自主性の強調:
    自身がプレーヤーと社長を兼任していることで「社長っぽく見えないこととはこれからも戦っていかなくてはいけない」と感じています。
    いわゆる「お飾りの社長」ではなく、完全に独立した企業であることをもっと知ってほしいと強く訴えています。「実際のところ、端的に言えば、いわゆる‘飼い殺され社長’というか、何か大きな組織が後ろ盾についていたうえでのマスコット的な社長だと思われている誤解は解いていきたいです。完全に独立した1つの企業であることはもっと知ってほしい」と語っています。
    エンタテインメントによる社会貢献:
    BMSGの目標として「エンタテイメントで社会を善くしたい」という強い意志を表明。
    アイドルの風俗化や、ファンの欲望を刺激することで搾取するようなビジネスモデルに強い嫌悪感を示し、「そうしたビジネスをやっぱり徹底的に否定しないといけないと思う。搾取しているシステムを否定したいけれども、実際に搾取されている側の人からしたら、自分の楽しみ=欲望の出しどころを奪われていることになるから、非常に難しいんです」と問題提起しています。
    SNS上での過剰な炎上や、才能を殺すような行為に対抗し、BMSGのファンによる他アーティストへのリスペクトある応援といった新しいカルチャーを醸成していくことに誇りを感じています。
    新しいリーダー像とマネジメント術への挑戦:
    ビジネス系メディアから「新しいリーダー」「音楽業界の革命児」として取材を受ける中で、世の中が常に「救世主」を探していると感じています。
    サッカーに例え、「ゴール前でいいパスをもらえるために走る」ことの重要性を説きつつ、状況に応じて自分でゲームを作り、チームの士気を高められるような存在を目指す必要性を感じています。「自分でゲームを作れて、チームの士気も上げられて、なんなら試合に出なくても概念を浸透させてチームを勝たせられるような人間に、最終的にはなっていく必要があるのかなとすごく感じています」と述べています。
    音楽業界の「普通」が世の中に知られていない現状に驚きを感じ、一般社会の感覚から見ておかしいと感じていたアーティストやアイドル業界の在り方、ビジネスモデルを変革したいという強い思いを持っています。
    データや数字に偏重しない「本能的な好き」の重視:
    データや数字でアーティストを評価する風潮に対し、「ファンがその数字やデータを見て感じるのが充足感だけならいいですが、実際には逆に無力感で落ち込んだり、ファン同士で殺伐としている感じが少しあります」と懸念を示しています。
    ダンスミュージック本来の、リスナーが本能的に音楽を楽しむ行為としてのダンスの喜びを取り戻したいと考えています。「本質、ダンスミュージックって、踊っている人を見るためではなくて、リスナーが踊るために存在するものです。音楽に合わせて体を動かすことへの喜びを人間は本能的に感じているはずなんですよ」と語っています。
    「D.U.N.K.」を通して、所属を超えたアーティスト同士の共演や交流を促進し、「好きイコール好き」「好きビコーズ好き」というシンプルな楽しみ方を提唱したいと考えています。
    「夢」の本質と向き合うことの重要性:
    目標設定や課題解決に追われるビジネスパーソンに対し、「夢」という言葉と疎遠になっているのではないかと問いかけ、「本当に自分の人生と向き合っている人ならば、絶対に1つや2つ『何でこうじゃないのかな』という疑問が生まれると思うんです。その『何で』を考え続けると腹落ちする瞬間が来ると思うんですよね」と、自身の内発的な動機に基づいた夢を持つことの重要性を説いています。
    オンラインサロン「B-Town」の役割:
    創業当初は抵抗があったものの、現在は「成功している」という自信と、ファンビジネスと啓蒙の両面を考慮し、「オンラインサロン」として運営。「同じメンタリティーの方が増えていくと追い風が強くなっていくと思います」と、思想やメンタリティを共有できるコミュニティの重要性を語っています。
    共創による新しい価値創造:
    「D.U.N.K.」や「BMSGFES」といったイベントを通して、事務所やジャンルの垣根を超えたコラボレーションを積極的に推進。「純粋に音楽を楽しむ場を作りたかったのが『D.U.N.K.』の定義の1つなんですが、『D.U.N.K.Showcase』は、どのアーティストが出演しているときも会場の空気感が素晴らしかったんです」と、その成果を実感しています。
    他事務所との連携においては、理念や未来への共感が不可欠であると考えており、責任とプレッシャーを感じながらも、成功させて次につなげていきたいという意欲を示しています。
    次世代育成への情熱と冷静な視点:
    オーディションを通してデビューしたMAZZELの成長を温かく見守りつつも、「人間性をジャッジするのは時期尚早」という冷静な視点も持っています。「彼らの今の人間性が素晴らしいのは大前提ではありますが、世間的に評価されるような高い人間性を持つのは、先の話なんじゃないかな」と語っています。
    グループのメンバー構成においては、個性を尊重しつつ、相互作用によって生まれる可能性を重視しています。
    アーティストとしての純粋な欲求:
    ビジネス面での使命感とは別に、アーティストSKY-HIとしての活動は「自分がアーティストをやりたいとか、やるべきと思うか、それが何か自分にとって納得できる理由かどうか」が全てであると語っています。ライブの時間を「唯一仕事をしない時間」と捉え、純粋にステージを楽しんでいます。
    海外展開への明確な意識と戦略:
    「世界」というキーワードは設立当初からの目標であり、具体的な動線も見えていると述べています。アメリカ在住のスタッフを配置し、海外の音楽市場の特性を分析しています。日本の音楽業界がガラパゴス化している現状を認識しつつ、その独自性を活かした海外展開を目指しています。
    ストリーミング利用の遅れなど、日本の音楽ビジネスの課題を認識しつつも、安易な海外受け狙いではなく、「クオリティファースト」「クリエイティブファースト」「アーティストファースト」を重視した上で、海外市場へのアプローチを考えています。
    音楽業界の持続可能性への提言:
    CD多売ビジネスへの反旗を鮮明にし、「世の中に『これはおかしい』『変えなくてはいけない』と提言するのは、僕らのようなベンチャー企業の役割。そもそもより良い社会のために起業しているわけだから」と、業界の構造的な問題に積極的に取り組む姿勢を示しています。
    韓国のCD販売戦略やストリーミングサービスの活用状況などを参考に、日本の音楽業界がグローバル市場で生き残るための変革を提唱しています。
    ガールズグループオーディション「NoNo Girls」への期待:
    自身がジェンダーギャップで苦しんできた経験から、女性アーティストが活躍できる場を作りたいという強い思いがあり、ちゃんみなをプロデューサーに迎えたガールズグループオーディションに大きな期待を寄せています。「自分がこれまで諸々のギャップで苦しめられてきたにもかかわらず、考え方によってはすごくジェンダーギャップの促進につながりかねないことをやってるんじゃないかという自責の念も感じていました」と、その動機を語っています。
    BMSGの理念や哲学に共感する才能ある女性たちが、性別によって機会を奪われることのないようにしたいと考えています。
    ソロアーティスト集団「BMSGPOSSE」の始動:
    各ソロアーティストの個性が確立した段階で、「遊び心」や「プリミティブな欲求」を解放する場として「BMSGPOSSE」を始動。「音楽って本来は純粋に楽しいものだけれども、情熱的に人生に対して取り組んでいる我々は全てにおいて頑張ってしまうし、自らの活動は結果も含めてコミットしていきたいと思うのも当然なので、時にはビジネス面に目を向けていろいろ考えることもある。でも、世の中は得てしてよりビジネス的でないもの、プリミティブな欲求を直接出したもの、より遊べているものが数字につながったりもするものです」と、その意図を説明しています。
    真面目さだけでなく「緩」と「急」のバランスも重要であると考え、遊びを通して個々の活動への良いフィードバックや、新たな創造性の可能性を追求しています。
    BE:FIRSTのドーム公演成功と次なる展望:
    BE:FIRSTの初のドーム公演成功は、事前の周到な準備とメンバーの成長、そしてファンとの強い繋がりによって実現したと分析。「単に規模としてのドーム公演をやればいいわけでなく、いろんなものを背負ったうえで立つ必要があったので、迷ったことは決してゼロではなかったけれども、本当の意味で不安になったことはなかったです」と、プレッシャーを感じつつも自信を持って臨んだことを語っています。
    ドーム公演は「THE FIRST」からのストーリーの集大成であり、新たなファンにも彼らの軌跡を伝える機会と捉えています。
    早くも「次は世界」という声があることに対し、今後2年間の具体的な計画があることを示唆しつつ、常に変化する状況に対応していく柔軟性も示唆しています。
    Novel Coreの武道館公演成功への深い感慨:
    BMSG設立当初からの夢であったNovel Coreの武道館公演成功に、深い達成感と喜びを感じています。「3年前のコアと自分にとっては、『3年後に武道館』ということが決定事項としてありました。何しろコアが武道館に対して尋常ではないほどの思い入れがあり、自分も『それは絶対できる』と答えました」と、長年の目標達成を振り返っています。
    夢を持ち、信じ続けることの重要性を改めて感じ、「夢をかなえる可能性を上げる方法のまず1歩目として必要なのは、夢がかなうと強く信じることだと思います」と語っています。
    Novel Coreの成功は、BMSGの最初のアーティストとしての意味を改めて証明するものだと捉えています。
    ソロアーティストの可能性への期待:
    SKY-HI、Novel Core、Aile The Shota、edhi boi、REIKOといった個性豊かなソロアーティストたちの潜在能力に大きな期待を寄せており、「うちのソロアーティストが並ぶと、単純に全員のキャラクターがバラバラで面白すぎて(笑)。このキャラの面白さとクリエイティブとクオリティーのレベルは、もっと押し出して形に残すべきだし、それは結果として、世界に誇れるものになるんじゃないかなという感触があります」と、グループとは異なる可能性を感じています。
    マネジメントにおける「居場所」の重要性:
    所属アーティストに対し、「居場所だと感じてもらうこと」が成長にとって非常に重要であると考えています。特に社会人経験のない若いアーティストにとって、安心できる環境を提供することが不可欠だと強調しています。「『自分の居場所はここなんだ』って強く感じて安心してもらうこと、生理的安全性が完全に保たれていること、っていうのは絶対に必要です」と語っています。
    プロデューサーとしての役割と視点:
    所属アーティストの楽曲制作だけでなく、成長の機会を作ることも自身の重要な役割だと認識しています。「僕が意識しなくてはいけないのは、彼らの成長の機会をつくる必要があるということ」と述べています。
    メンバー自身が楽曲制作に関わることで、音楽への理解を深め、新たな才能を開花させる可能性にも期待しています。
    ライブに対する哲学:
    ライブはファンとアーティストが直接コミュニケーションを取り、健全な関係を築くための最も重要な場であると考えています。「アーティストはファンとライブのステージで会うのが1番正しい」という信念を持っています。
    ライブでのMCを通して、ファンに対し一人の人間として真摯にメッセージを伝えようとする姿勢を重視しています。
    「嘘のないエンタテインメント」の追求:
    アーティストやアイドルは、社会の固定観念や期待に縛られることなく、ありのままの自分でいることが重要であると考えています。「今の時代は、自分がどういう存在であるかということを、普段から嘘をつかずに発信することができていると、自ずと共感が生まれるんじゃないかなと思います」と語っています。
    BMSGの今後の展望と変わらぬ決意:
    今後もアーティストそれぞれの「本当に好きなもの」や「こう在りたいという自分」の追求をサポートし続けることを最重要視しています。「アーティストそれぞれが、本当に好きなものだったり、こう在りたいという自分だったりを追求することをサポートし、それをやめないこと。これに尽きるかなという気がします」と、その決意を表明しています。
    エンタテインメントを通して、アーティストやファンだけでなく、関わる全ての人々の人生を豊かにしたいという願いを持っています。
    自身の過去の苦い経験を糧に、音楽業界の構造的な問題を解決し、「あの頃の俺予備軍」を一人でも多く救いたいという強い使命感を持って活動を続けています。
    結論:
    SKY-HIのインタビュー記事からは、単なる音楽事務所の経営者という枠を超え、音楽業界全体の変革を目指す強烈なビジョンと、それに伴う具体的な戦略、そして所属アーティストへの深い愛情が強く伝わってきます。彼のカリスマ性と、オープンで風通しの良い組織文化を両立させようとする姿勢、フィジカルなコミュニケーションの重視、データ至上主義への警鐘、そして何よりも「音楽を愛する」という純粋な気持ちを大切にする経営哲学が、BMSGの独特な魅力を形成していると言えるでしょう。グローバル展開への明確な意識を持ちながらも、日本の音楽文化の独自性を尊重し、新しいエンタテインメントの形を追求していく彼の今後の活動に、引き続き注目が集まります。

全3件中 1 - 3件を表示

SKYーHIの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×